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痴漢の示談金の相場は?痴漢で示談する流れと示談書の書き方も解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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痴漢事件を起こしてしまったとき、最優先で行うべき弁護活動が「示談」です。

痴漢事件では、被害者との示談が成立すると、身柄拘束された場合には早期釈放、不起訴処分による前科の回避といった有利な解決を目指せるため、早急に対応することが重要です。放置すれば逮捕されたり、起訴されて前科がついたりといった不利益を受けてしまいます。当事務所でも、痴漢をした方からの次のような相談が寄せられます。

  • 「示談金はいくら支払えばよいのか」
  • 「示談をすれば不起訴になるのか」
  • 「被害者との示談交渉はどのような流れで進めたらよいのか」

示談交渉をスムーズに進めるには、示談金の相場を知る必要があります。ただし、一律の基準はないため、痴漢行為の態様や被害の程度、被害者の意向などによって異なります。また、加害者本人が直接被害者と交渉することはできず、示談を成功させるには弁護士への依頼が必須です。

今回は、痴漢事件における示談金の相場や金額を左右する事情、示談を進める流れと示談書の書き方などについて、弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 痴漢の事実を認めるケースでは、示談交渉を最優先で速やかに進めるべき
  • 痴漢の被害者と直接接触するのは適切ではないため、弁護士に示談を依頼する
  • 痴漢の示談金の相場は30万円〜150万円が目安だが、行為の悪質さにより異なる

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痴漢の示談金の相場

はじめに、痴漢の示談金の相場について解説します。

痴漢の示談を進めるにあたり、示談金の相場を知っておかないと、過大な請求に応じて不利益を被ったり、逆に低すぎる提案をして被害者を刺激したりする危険があります。ただし、示談金に一律の基準はなく、痴漢行為の態様や悪質さ、被害の程度などによって変動するため、裁判例や過去の統計をもとに判断する必要があります。

痴漢の示談金の相場は30万円~150万円

痴漢事件の示談金の相場は、30万円〜150万円程度が目安となります。

もっとも、示談金には法律で定められた一律の基準はなく、事件の内容や被害者が受けた精神的苦痛、加害者の反省状況などを総合的に考慮して決められます。痴漢のうち、軽微なものは迷惑防止条例違反となる一方で、悪質なものは不同意わいせつ罪が成立します。成立する犯罪の種類によって、示談金の相場は次のように説明できます。

迷惑防止条例違反の示談金の相場

痴漢行為が軽微な場合、比較的低い示談金で解決できることがあります。

「服の上から胸を触る」といった軽度の痴漢は、迷惑防止条例違反に該当する犯罪です。この場合の示談金の相場は30万円〜50万円程度が目安となります。ただし、刑罰が軽いからといって被害が小さいとは限らず、被害者の処罰感情を見て慎重に対応すべきです。

不同意わいせつ罪の示談金の相場

痴漢行為が悪質な場合、示談金も高額となる傾向があります。

「下着の中に手を入れて性器を触る」といった重度の痴漢は、不同意わいせつ罪に該当する犯罪です。この場合の示談金の相場は50万円〜150万円程度が目安です。被害者の処罰感情が強いと、相当高額な提案をしても示談交渉が難航するケースも少なくありません。

痴漢の示談金の金額を増減させる事情

痴漢事件の示談金は一律ではなく、様々な事情によって増減します。以下では、示談金額に大きく影響する事情について解説します。

痴漢行為の態様や被害の程度

示談金額に最も大きく影響するのが、痴漢行為の態様や被害の程度です。

例えば、衣服の上から短時間触れた場合と、執拗に身体を触った場合や下着の中に手を入れた場合では、被害者の精神的苦痛は異なります。また、計画的に繰り返されるケースも悪質と判断されます。そして、悪質性が高いほど示談金も高額になる傾向があります。

身柄拘束の有無

身柄を拘束されていると、早期釈放を優先するため、相当高額な示談金を支払わざるを得ないケースもあるでしょう。

前科・前歴の有無

加害者に痴漢をはじめとした性犯罪の前科・前歴がある場合、示談金が高額になる可能性があります。初犯で深く反省しているケースと比べ、再犯や常習性があるケースでは被害者の処罰感情が強くなり、示談交渉も難航しやすいためです。

予想される刑罰の重さ

予想される刑罰の見込みが重いほど、不起訴で終えられるという示談のメリットが大きく、示談金を増額することが多いです。なお、迷惑防止条例違反で罰金刑が予想される場合、その見込額も、示談金を判断する際の参考にされます。

被害者の処罰感情

被害者がどの程度処罰してほしいと考えるかも、示談金額に影響します。処罰感情が穏やかであれば、適正な示談金で早期に解決できる一方、精神的苦痛が大きく、厳罰を望んでいる場合、高額な示談金を求められたり、そもそも応じてもらえなかったりする場合があります。

被害者の年齢

被害者が若年であるほど示談金は高額化する傾向があります。特に、未成年の被害者は抵抗が困難であり、精神的な苦痛が非常に大きいと考えられます。

示談の時期

示談を成立させるタイミングも、示談金額に影響する場合があります。

事件発覚後の早い段階で誠実に謝罪し、示談交渉を開始できれば、被害者の精神的負担を軽減できるため、比較的円滑に合意できる可能性があります。反対に、起訴後や裁判が進行した後では、被害者の負担が大きくなっていることも多く、示談金が高くなる傾向があります。

否認事件か自白事件か

加害者が事実を認めているか、否認しているかも、示談交渉に影響します。

事実を認めて反省し、被害者に誠実に謝罪している場合は示談が成立しやすく、不起訴や刑の軽減につながる可能性もあります。一方、加害者が否認する場合、被害者との信頼関係を築くことが難しく、示談自体が成立しないケースも少なくありません。否認の場合、痴漢を認める形では示談できないため、示談書の文言にも注意を要します。

実際の痴漢の示談金の決まり方

相場と影響する事情を解説しましたが、実際の示談金の決まり方も理解しておきましょう。

示談は、加害者と被害者が合意しないと成立しません。そのため、適正な示談金の相場を理解しているからといって、相手に押し付けることはできません。特に、被害者側の処罰感情の強いケースでは、相場だからといって強く求めると、示談成立が困難になることもあります。

示談金を適正な額に抑えたいのであれば、裁判例を知り、過去の解決実績を豊富に有する弁護士に交渉してもらうのが有益です。一つの基準として、交通事故の損害賠償基準を定める「赤い本」の入通院慰謝料を参考にすることが考えられます。

痴漢事件で示談をするメリット

次に、痴漢事件で示談をするメリットについて解説します。

痴漢事件で被害者との示談が成立すると、早期釈放や不起訴処分、処罰の軽減につながる可能性があるなど、多くのメリットがあります。一方で、示談金の支払いが必要となるほか、事実を認める内容で示談すると無罪を争うのは難しくなるため、方針の見極めが重要です。

とはいえ、痴漢をはじめ被害者のいる犯罪では、示談するメリットは非常に大きいため、罪を認める方針であれば、非常に重要な弁護活動となります。

早期釈放につながる

逮捕・勾留により身柄拘束を受けている場合、示談が成立すると釈放されることが多いです。そのため、被害者と示談を成立させることで、早期釈放につながるメリットがあります。被害者の処罰感情が軽減され、後述のように不起訴処分となることが予想されること、逃亡や証拠隠滅のおそれといった身柄拘束の要件を満たさなくなることなどが理由となります。

身柄拘束されると社会的な影響が大きいため、事実を認める方針の場合、早期の示談が優先される最大の理由となっています。

不起訴処分となる可能性が高まる

痴漢事件で示談をすれば、不起訴処分となる可能性が高まります。

痴漢事件のように被害者がいる犯罪では、検察官は起訴するかどうかを判断する際に、処罰感情の強さや被害回復の有無を重視します。そのため、示談が成立し、被害者が加害者を許している、または処罰を望まない意思を示している場合、不起訴処分となる可能性が高くなります。

特に、初犯であり、反省の態度が認められ、早期に示談が成立したケースでは、不起訴となるのが通常であるため、できる限り早く示談交渉を進めることが重要です。

刑罰が軽くなる可能性がある

示談が成立しても必ず不起訴とは限りませんが、起訴されても刑罰が軽くなる傾向があります。

裁判所が量刑を判断する際にも、被害弁償や示談の有無、被害者の処罰感情などが重要な事情として考慮されます。そのため、示談が成立し、示談金によって精神的苦痛が慰謝されていれば、執行猶予が付されたり罰金刑にとどまったりなど、軽い処罰となることが期待できます。

ただし、常習性がある場合や行為態様が悪質な場合、示談が成立していても実刑判決となる可能性があるため、示談だけでなく、その他の弁護活動も適切に行うことが重要です。

被害者との民事紛争を解決できる

示談には、刑事事件だけでなく、民事紛争を解決できるメリットもあります。

刑事の「示談」と同時に、民事の「和解」が行われることが多いからです。痴漢は、刑事罰を受ける犯罪であるとともに、不法行為(民法709条)に該当し、慰謝料などの損害賠償を請求できます。示談書に「本件に関して今後一切の請求をしない」といった清算条項を盛り込むことで、示談金を支払う代わりに、被害者からの追加の請求を受けるリスクをなくすことができます。

刑事事件の解決だけでなく、将来の民事トラブルを防ぐためにも、適切な内容の示談書を作成することが大切です。

痴漢は何罪?」の解説

痴漢事件で示談をする流れ

ステップ

次に、痴漢で示談交渉するときの実際の流れについて解説します。

示談は被害者との合意が必要なため、適切な手順で進めることが重要です。特に、身柄拘束を受けている場合、早期釈放のために示談交渉を速やかに進める必要があります。

STEP

弁護士に相談・依頼する

痴漢事件で示談を目指す場合、まず弁護士に相談・依頼することが重要です。

痴漢という犯罪の性質上、再犯や証拠隠滅を防ぐため、被疑者や被告人が被害者と直接会って示談交渉を行うことはできません。身柄拘束されている場合はもちろん、在宅事件であっても、加害者自身が示談交渉をすることはできません。

そのため、痴漢の示談は、弁護士に依頼して進めるのが通常です。弁護士は、捜査機関(警察・検察)に被害者の連絡先を確認し、示談の意思を伝え、交渉を開始します。被害者の承諾を得られれば、弁護士限りで連絡先を開示してもらい、交渉を進められます。また、適正な示談条件の提案や示談書の作成まで一貫して対応できます。

STEP

示談を申し入れる

弁護士は、捜査機関を通じて被害者の示談の意向を伝えます。

被害者が交渉に応じる場合、弁護士に連絡先が提供されますが、被疑者や被告人には伝えません。弁護士は速やかに被害者に連絡し、謝罪と示談の意向を伝えます。この段階で「金銭で解決しよう」という意図が前面に出ると被害者に不快感を与えるおそれがあるため、示談金よりも謝罪の意思を伝えるのが先決です。

STEP

謝罪文を作成する

痴漢の示談の場で謝罪の意思を伝えるため、謝罪文を作成するのが通常です。

前述の通り、加害者は被害者と直接会うことはできないため、弁護士を通じて書面を渡してもらう方法で気持ちを伝えます。謝罪文は、自身の言葉で誠実に記載することが重要です。ネット上には例文もあるでしょうが、定型的な書式では反省の気持ちが伝わりません。拙い文章でも、自力で作成することが重要です。

STEP

弁護士が被害者と面談する

痴漢の示談の流れの中で、最重要なのが被害者と弁護士の面談です。

示談交渉は、被害者の都合に合わせて面談の場を設け、対面で進める流れが基本です。被害者が未成年である場合や、精神的に面談が難しい状態にある場合、電話やメールのほか、被害者の家族を窓口にして交渉するケースもあります。

面談では、改めて加害者の反省を伝え、本人が作成した謝罪文や反省文を手渡します。その上で、示談が被害者にもメリットがあることを説明し、交渉を進めます。例えば、次のようなメリットを提示し、示談に応じてもらえるよう働きかけます。

  • 早期の被害回復を実現できる。
  • 適正な補償を受けられる。
  • 被害者の要望を遵守させることができる(例:接近禁止・転居など)。
  • 守秘義務を取り決めることができる。

「捕まりたくない」「刑を軽くしたい」といった加害者側の都合を優先したり、解決を急いだりすると被害者の心情を害し、交渉が難航してしまいます。

STEP

示談書を作成する

被害者と示談条件について合意できたら、示談書を作成します。

示談書は、示談が成立したことを証拠に残し、捜査機関や裁判所に対して有利な情状を主張するために必須の書面です。民事の損害賠償も一括解決するために、清算条項を記載するのが通常です。身柄拘束中の場合、代理で署名押印します。

具体的な内容は、次章「痴漢事件の示談書の書き方」で解説します。

STEP

示談金を支払う

示談書を締結したら、その内容に従って示談金を支払います。

よく行われるのは、示談書に記載された口座に振り込む方法や、示談書作成時に現金を手渡す方法などです。証拠を残す必要があるため、振込の場合は明細を保存し、その場で現金を交付する場合には領収書を受け取るようにしてください。

示談が成立しても、示談金の支払いが完了するまでは有利な情状として考慮されないため、支払いはできる限り速やかに行うべきです。

STEP

検察官・裁判所へ示談成立を報告する

最後に、示談の成立を検察官と裁判所に報告します。

この際、示談書とともに、示談金の支払いを証明する振込明細や領収書を提出します。加えて、早期釈放や不起訴処分を求める弁護士の意見書を提出するのも効果的です。

検察官は、示談が成立したことやその内容、示談金の支払い状況などを総合的に考慮して、刑事処分を決定します。前述の通り、初犯かつ軽微な痴漢であれば、示談が成立すれば不起訴処分とされる可能性が高いです。

痴漢事件の示談書の書き方

次に、示談交渉が成立した際に作成すべき示談書について解説します。

痴漢事件で示談が成立したら、後のトラブルを防ぐために、合意内容を示談書として書面に残すことが重要です。内容に不備があると、新たな紛争が生じたり、刑事手続きで十分な評価を受けられなかったりするため、慎重に作成してください。

痴漢事件の示談書に記載すべき事項

痴漢事件の示談書には、次のような事項を記載することが一般的です。

  • 当事者(加害者・被害者)の氏名・住所
  • 事件の概要(発生日、場所、痴漢行為の内容など)
  • 反省と謝罪
  • 示談金の金額、支払方法・期限
  • 示談金の受領をもって紛争を解決する旨
  • 清算条項(今後互いに追加請求をしないこと)
  • 宥恕条項(被害者が処罰を望まない意思を示すこと)
  • 守秘義務
  • 接近禁止
  • 示談書の作成日・署名押印

これらを明確に定めておけば、示談内容をめぐる紛争を防ぐことができます。また、検察官や裁判所へ提出することを目的とするため、内容に漏れがないように注意してください。

痴漢事件の示談書の記載例

痴漢の示談書の記載例について、テンプレートを紹介します。

示談書

◯◯◯◯(被害者、以下「甲」という)と、◯◯◯◯(加害者、以下「乙」という)は、以下の通り示談した。

第1条 乙は甲に対し、本年◯月◯日の◯時頃、◯◯駅付近にて、着衣の上から尻を触るなどの痴漢行為を行ったことを認め、真摯に謝罪する。

第2条 甲は、乙の謝罪を受け入れ、乙を宥恕し、処罰を求めない。

第3条 乙は甲に対し、示談金◯◯◯万円を本日現金にて交付し、甲はこれを受領した。

第4条 乙は、今後甲に接近せず、見かけた場合には直ちにその場を立ち去るものとする。また、本日以降、通勤などの理由があっても◯◯駅を使用しないことを約束する。

第5条 甲及び乙は、本示談書の内容及び作成経緯について相互に秘密を守り、正当な理由なく第三者に口外しないことを確約する。

第6条 甲及び乙は、本件について一切の債権債務が存在しないことを相互に確認する。

○年○月○日

甲 住所・氏名
乙 住所・氏名

示談書を締結するとともに、「宥恕する(許す)」という一筆があったり、減刑を嘆願する旨の文言(減刑嘆願書)があったりすると、より有利な情状として考慮されます。実際には事件の内容や合意事項によって必要な条項は異なるため、個別の事情に応じて内容を調整する必要があります。

痴漢事件の示談書を作成する際の注意点

示談書は、一度締結するとその内容に拘束されるため、慎重に作成すべきです。

痴漢の示談書では、事件の発生日時や場所、状況などの事実関係を正確に記載してください。曖昧だと、後から争いにつながる危険があります。また、示談金の金額や支払期限を明記し、できる限り早く解決するために、一括払いとするのがおすすめです。将来の紛争を防ぐには、清算条項を盛り込み、本件についての追加の慰謝料請求などがないことを明確にしておきます。

さらに、不起訴処分や量刑への考慮を期待する場合、被害者が加害者を許し、寛大な処分を希望する旨を記載した「宥恕条項(宥恕文言)」を設けるのが有効です。ただし、事件の内容や被害者の意向によっては宥恕条項を盛り込むのは難しいケースもあります。

できる限り被害者に示談に応じてもらうために、被害者目線での検討が欠かせません。例えば、再発防止のために、接近禁止や通勤ルートの変更、転居などを取り決めたり、被害者のプライバシーを守るために第三者に秘密を漏らさないことを約束したりといった点が挙げられます。

テンプレートを使用すれば漏れや不備は少なくなりますが、自身のケースに応じた追記・修正が必要となるため、不安がある場合は弁護士に依頼するのが最善です。

痴漢事件で示談をする際の注意点

ポイント

痴漢事件では、示談の成立が非常に重要ではあるものの、進め方を誤ると示談がまとまらなくなったり、かえって不利な事情となったりするおそれがあります。

加害者本人が直接被害者へ連絡しない

痴漢事件では、加害者本人が被害者へ直接連絡することは避けるべきです。被害者の恐怖心や不安を強め、処罰感情が悪化する原因となるおそれがあるからです。

また、犯罪の性質上、ストーカー行為や証人威迫であると誤解されるリスクがあるため、示談交渉は弁護士を通じて行うのが適切です。弁護士であれば、被害者との交渉を代わりに進め、適正な示談金の提案や示談書の作成、不起訴や刑の軽減に向けた対応まで一貫してサポートできます。

示談成立前に示談金を支払わない

示談書を取り交わす前に示談金を支払うのは避けるべきです。

示談金を支払ったにもかかわらず示談が成立しなかったり、追加の条件を求められたりするおそれがあります。実務では、「痴漢事件で示談をする流れ」の通り、示談書を締結してから振込で支払うか、締結と同時に現金を交付する方法が多いです。

痴漢事件では、示談を早期に成立させるのが望ましいものの、焦りすぎてはいけません。示談書の内容を十分に確認せずに合意するのは危険なので、示談金額や宥恕条項(宥恕文言)、守秘義務条項、清算条項などが正しく記載されているか、不利益な条件がないかを検討しましょう。

守れない条件で合意しない

早く事件を終わらせたいからといって、履行できない条件で示談すべきではありません。約束通りに示談金が支払えないと、示談が無効になったり、被害者との信頼関係を損ねたりするおそれがあるため、無理のない条件で合意することが大切です。

痴漢事件で示談できないケースと対処法

痴漢の示談交渉は、円滑に進むケースばかりではありません。被害者の処罰感情が強いケースなどでは、示談できないこともあります。この場合、対処法も理解しておいてください。

示談交渉を拒否された場合の対応

被害者から示談交渉を拒否された場合、強引に進めるのは逆効果です。

痴漢の直後など、動揺や不安、感情的な対立がある場合、すぐに示談交渉を進めるのではなく、しばらく状況を見極めることも重要です。一定の時間を置いてから再び申し入れることで、処罰感情が和らぎ、被害者が示談に前向きになってくれるケースもあります。

具体的な示談金額の提案が突破口になるケースもあります。最初からお金の話をするのはおすすめできませんが、謝罪を重ねても示談が進まない場合、金額提案に進む手もあります。拒否されてもあきらめるのではなく、誠意を示して粘り強く交渉を続けることが大切です。

相場を超える高額な示談金を要求された場合の対応

痴漢の示談金の相場」を大きく上回る高額の示談金を要求されることがあります。

被害者の処罰感情が強いケースが典型例です。このとき、相場を示して減額交渉をすることとなりますが、一定の限界があります。相場だからといって強制的に引下げられるわけではないからです。このとき加害者は、「痴漢事件で示談をするメリット」を優先して高額の示談金に応じるか、それとも示談しないかを選択することとなります。

したがって、要求額が過大であるときは、示談を断念せざるを得ないケースもあります。

一方で、示談が成立しても、必ずしも希望通りの解決になるとは限らず、示談しても起訴されたり、略式起訴されて罰金刑となったりして前科を回避できないケースもあります。そのため、法外な示談金を支払ってまで示談を成立させるのが最善策とは限りません。

示談が成立しない場合にすべき弁護活動

様々な事情で示談が成立しない場合、それ以外の弁護活動を怠らないようにすべきです。

例えば、捜査機関や裁判所に対し、「示談が成立しないのは被害者の請求が過大であることが理由である」「適正額であれば示談に応じる意思がある」と弁護士に意見書で伝えることで、誠意ある示談交渉を行っていたと評価され、一定の情状として考慮してもらうことができます。

痴漢の行為態様や希望額に差があり、示談が成立しない場合でも、被害弁償として一定の金銭を支払うことで、有利な情状として考慮してもらう手があります。また、被害者が受け取らない場合には、提案した金額を供託したり、贖罪寄付を行ったりする方法もあります。

痴漢の示談交渉に強い弁護士の選び方

弁護士法人浅野総合法律事務所

痴漢事件で示談を成立させるには、弁護士選びが非常に重要です。

示談の成否は、身柄の釈放や不起訴処分、刑罰の軽減に影響します。痴漢事件をはじめとした性犯罪では処罰感情が強くなりやすいため、交渉の進め方次第で結果が大きく変わります。

まず確認すべきなのが、痴漢事件の示談交渉を解決した実績が豊富かどうかです。性犯罪特有の被害者対応に精通した弁護士であれば、適切な伝え方で示談交渉を円滑に進められます。この際、被害者の心情に配慮することができるコミュニケーション能力も重要です。さらに、刑事事件を多く扱い、警察や検察との連携に慣れていることも重要なポイントとなります。

依頼前に、無料相談を通じて、事件の見通しや示談の方針を丁寧に説明してくれるかを確認すれば、安心して任せられる弁護士を選ぶことができます。

当事務所では、痴漢をはじめとした性犯罪について多くの相談・依頼を受けてきました。家族が痴漢で現行犯逮捕されたケースでも、受任後すぐに示談交渉を開始したことで早期釈放と不起訴を獲得したケースがあります。痴漢事件は、初動対応の早さが結果を大きく左右します。当事務所では、複数名の弁護士により、原則当日に接見できる体制を整えています。

痴漢の示談に関するよくある質問

最後に、痴漢の示談についてのよくある質問に回答しておきます。

痴漢で示談しないとどうなる?

痴漢をした場合に、示談することは必須ではありません。

示談しないと捜査が進み、捜査機関(警察・検察)や裁判所の判断に委ねられますが、証拠が十分であれば、起訴されて刑事裁判となり、有罪とされます。不同意わいせつ罪は「6月以上10年以下の拘禁刑」、迷惑防止条例違反の場合は地域によりますが、東京都条例であれば「6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」となります。有罪判決が下されると「前科」がつきます(執行猶予付き判決や罰金刑も「前科」です)。

なお、示談しなくても「必ず起訴される」わけではありません。軽微なケースや、被害者が相場からかけ離れた高額の請求に固執していたために示談が成立しなかったケースなどでは、示談が成立しなくても不起訴や略式起訴が選択される例もあります。

痴漢の前科があっても示談すべき?

痴漢の前科がある場合でも、被害者との示談は行うべきです。

前科がある場合、再び起こした痴漢事件ではさらに厳しい処罰が予想されます。そのため、初犯の場合にも増して示談を成立させる必要性は高いと考えられます。

ただし、前科のある痴漢事件では、前回誓った再犯防止を破ったこととなるため、裁判所では厳しく評価されます。示談が成立しても、実刑判決は免れないケースもありますが、少しでも軽くするためにも示談しておいた方がよいでしょう。

痴漢の常習における弁護活動」の解説

痴漢の冤罪でも示談すべき?

冤罪を主張する場合には、示談をすべきでないケースもあります。

痴漢の示談は、罪を認めて謝罪することを基本とします。そのため、「痴漢をしていない」と主張する場合、示談することは矛盾します。被害者も「罪を認めないなら示談には応じない」という方が多いため、中途半端な提案は意味がありません。

ただし、例外的に、冤罪であっても示談が成立するケースがあります。

例えば、故意の有無や痴漢の態様について加害者と被害者に認識の差があるけれども、「触れた」「迷惑をかけた」「不快な思いをさせた」といった争いのない部分に限定して謝罪することで示談を成立させられるケースが典型例です。

こうした限定的な示談でも、早期釈放や不起訴処分を得るための有利な情状として、一定の効果が期待できます。なお、痴漢冤罪のケースにおける示談交渉や示談書の作成は、慎重な見極めが必要な点が多いため、経験豊富な弁護士に依頼すべきです。

痴漢を疑われたら?」の解説

匿名で示談書を作成することは可能?

匿名で示談書を作成したいという相談を受けることがあります。

自分の氏名や住所を知られたくないという理由は理解できますが、加害者側の名前が記載されていない示談書は、加害者にとってあまり意味がありません。

痴漢事件で示談をするメリット」の通り、加害者が示談をした場合、その示談書を捜査機関や裁判所に提出することで有利な情状として役立てることが目的となっています。しかし、誰が示談したのかが証明できないと、その役割を果たすことができません。

一方で、被害者の中には、氏名や住所を加害者に知られたくないという方が多いため、被害者の名前を記載せずに匿名で作成した示談書には意味があります。この場合、検察官が被害者に示談をしたかどうかを確認し、示談の成立が確認できれば、起訴・不起訴の判断に影響を与えることができます。

なお、加害者側で示談書に実名を記載する場合、守秘義務条項を設けることで情報漏洩を防ぐ対応を求めるのが適切です。

【まとめ】痴漢の示談金の相場

今回は、痴漢の示談について、示談交渉の流れや示談金の相場を解説しました。

痴漢事件では、示談が成立するかどうかが刑事手続きや処分に大きな影響を与えます。示談が成立すれば、早期釈放や不起訴処分の獲得といった結果につながりやすくなるからです。ただし、示談金の相場は事件の内容や被害の程度などによって異なるため、慎重に見極めるべきです。事件の性質上、被害者との直接交渉はできないため、弁護士を通じて進める必要があります。

痴漢事件を起こしてしまい、示談を検討している場合、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが重要です。弁護士であれば、被害者との示談交渉を代理し、相場に基づいた適正な示談金額を提案し、示談書の作成から不起訴獲得まで一貫してサポートすることができます。

早期の対応が有利な解決につながることも多いため、痴漢事件の示談交渉に精通した弁護士に早い段階で相談することが重要です。

この解説のポイント
  • 痴漢の事実を認めるケースでは、示談交渉を最優先で速やかに進めるべき
  • 痴漢の被害者と直接接触するのは適切ではないため、弁護士に示談を依頼する
  • 痴漢の示談金の相場は30万円〜150万円が目安だが、行為の悪質さにより異なる

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