刑事事件

痴漢の常習にあたるケースの弁護活動と、示談して起訴を回避する方法

2021年9月13日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

痴漢で逮捕されたり、起訴されて刑罰を受けたりしたのに、また懲りずに痴漢行為を繰り返したとき、「常習」として、より厳しく処罰されるおそれがあります。痴漢常習犯の場合、より厳しく処罰しなければ再犯を防げないと判断されてしまうからです。

痴漢は、程度にもよりますが軽度の迷惑防止条例違反のケースで、初犯であれば、不起訴もしくは罰金刑で終わることはよくあります。示談に成功すれば、初犯であれば不起訴となることが通常です。

しかし、せっかく示談を成立させて早期釈放・不起訴を勝ちとっても、再度痴漢行為を行っては元も子もありません。常習痴漢では、起訴される可能性が高く、かつ、前回よりも重い刑罰となることが基本です。

今回の解説では、

  • 痴漢の常習は2倍の刑事罰
  • 痴漢の常習と判断される基準
  • 常習痴漢の弁護活動

といった常習の痴漢に関する弁護活動について、弁護士が解説します。

痴漢の常習は2倍の刑事罰

痴漢の常習とは

常習とは、同種の犯罪行為を反復して行うことです。痴漢行為を繰り返し行っていると、常習の痴漢となります。常習は、その行為そのものというより、その人の特性による判断となります。

痴漢行為が趣味、楽しみになってしまっていたり、病的に痴漢を繰り返してやめたくてもやめられないような方は、痴漢常習犯となってしまう傾向が強いといえます。

痴漢以外にも、常習累犯窃盗(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律)、常習賭博罪(刑法186条)などの犯罪類型が、常習を重く処罰することを定めています。

痴漢の常習の刑事罰

痴漢の常習となってしまうと、初犯の場合に比べて厳しい処罰となります。常習犯の刑罰が重くなるのは、常習者のほうが、より違法の程度や責任が大きく、強く非難されるべきと考えられているからです。

痴漢の常習について、迷惑防止条例では、非常習の場合に比べて法定刑が倍になることを定めています。例えば、東京、さいたま、千葉では、通常の痴漢が「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるところ、常習の痴漢は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります。神奈川は、通常の痴漢が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」常習では「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります。

東京都迷惑防止条例における常習に関する定めは次のとおりです。

東京都迷惑防止条例8条

1. 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 第2条の規定に違反した者
(2) 第5条第1項又は第2項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)
・・・(略)・・・
8. 常習として第1項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
・・・(略)・・・

痴漢では、着衣の上から触ったり卑わいな行為をしたりという軽度なケースは迷惑防止条例違反、着衣に手を入れ性器を触るなど重度なケースは強制わいせつ罪となります(参考解説:「痴漢行為で成立する犯罪の種類」)。

条例違反を繰り返した場合だけでなく、過去に強制わいせつ罪を行っていたときにも、繰り返し痴漢行為をはたらけば常習と判断されるおそれがあります(神奈川県の条例違反を行った後、東京都の条例違反を行った、という場合も同様に常習となるおそれがあります)。

痴漢の常習と判断される基準

常習として痴漢行為をしたとき、迷惑防止条例違反の法定刑が倍となる定めがあることを解説しました。ただし、この「常習」について条例上には定義がないため、個別の痴漢行為ごとに、「常習の痴漢にあたるかどうか」を判断する必要があります。

そこで次に、常習の痴漢と判断される基準について解説します。

前科・前歴

まず、痴漢行為について過去にも刑事事件化されているときは、常習と判断されやすくなります。つまり、過去の痴漢行為について懲役や罰金の刑事罰を受けているという「前科」のあるケースや、過去の痴漢行為について逮捕されたという「前歴」のあるケースです。

過去の前科・前歴は、今回の痴漢行為に近接しているほど、反省がなく、繰り返し再犯のおそれが高い状況だといえますので、常習として厳しく処罰されやすくなります。逮捕されて釈放されたが、すぐに痴漢をはたらいたケース、刑期が終了した後すぐに痴漢したケースなどが常習の痴漢の典型例です。

そのため、同種の前科・前歴が複数回あることに加え、最後の前科・前歴から数年以内といった点を、常習性を認定する際のポイントとするのが実務です。

なお、前科・前歴は、同種のものであるほど常習となりやすく、一方で、痴漢とはまったく別の前科・前歴があったとしても常習にはなりません。

痴漢の回数、余罪の有無

繰り返し痴漢が行われる回数が多ければ多いほど常習と認定されやすく、より厳しい処罰となります。

これまでの前科・前歴の回数はもちろんですが、直近の前科・前歴から、今回逮捕・起訴されるまでの間にはたらいた痴漢の余罪がどれほどあるかについても、常習性の判断に影響します。

痴漢の手口・態様

次に、痴漢行為の手口や態様が、過去に犯した前科・前歴と似通っているほど、常習性を認定されやすく、厳しい処罰を受ける傾向にあります。

同様の手口・態様の痴漢行為が繰り返されることは、厳しい刑罰を与えることで抑止しなければならないためです。

痴漢の動機に酌量の余地がないこと

痴漢の動機には様々なものがあり、ふと魔が差して、ムラムラとして、といった軽い気持ちでやってしまうこともあります。しかし、常習で繰り返していると、このような言い訳はきかなくなります。

性的な欲求を満たすなど自分の快楽のために痴漢をしているとき、その動機には酌量の余地がまったくなく、常習と認定されて厳しく処罰される可能性が高いです。痴漢の常習犯の中には、もはや依存症のようになって癖として繰り返している人もいます。

痴漢で逮捕されたあとに家宅捜索され、痴漢もののAVや、余罪となる盗撮動画が見つかって、性犯罪者の傾向が見られるといったとき、重罰化に拍車をかけます。

執行猶予中の痴漢は、執行猶予が取り消される

直近の痴漢行為について、執行猶予付きの刑罰を科されていたときは特に注意が必要です。執行猶予中に再び痴漢して刑を科されると、前刑の執行猶予が取り消される可能性が高いからです。

  • 今回の痴漢事件が、懲役刑・禁固刑となったとき
    →再度の執行猶予が付されない限り、前刑の執行猶予は取り消される
  • 今回の痴漢事件が、罰金刑となったとき
    →前刑の執行猶予が取り消される可能性がある

執行猶予が取り消されると、今回の痴漢行為に対する刑罰とともに、前刑もあわせて科されることとなり、相当長期間の間、刑務所にいなければならないおそれがあります。

なお、例外的に再度の執行猶予が認められることがありますが、前刑で執行猶予が認められたときよりも、厳しい要件を満たさなければなりません。刑法では、再度の執行猶予は「情状に特に酌量すべきものがあるとき」にしか認められないという高いハードルが課されています(刑法25条2項)。前の執行猶予に保護観察が付されていたとき、再度の執行猶予は認められません。

常習痴漢における弁護活動

常習の痴漢であると認定されてしまうようなケースでも、弁護活動の必要性は、初犯の痴漢と何ら変わりません。むしろ、常習として厳しく処罰されてしまうからこそ、できる限りの情状を集め、できるだけ軽い処罰としてもらえるよう求めていくことが大切になります。

常習の痴漢でも、情状弁護を行うことには、不起訴処分を勝ちとってこれ以上重い前科をつけずに済ませたり、仮に起訴されてしまっても罰金刑や執行猶予を含む軽い刑で済ませる効果があります。

そこで次に、痴漢の常習のケースで行っておくべき弁護活動について解説します。

なお、弁護活動により示談成功を勝ちとり、不起訴になれば「前科」はつきませんが、「前歴」としては残るため、次の痴漢行為があれば結局は常習として厳罰が予想される点には注意が必要です。

示談交渉

常習の痴漢のときでも、被害者と示談することが最重要であることに変わりはありません。被害者との示談が成立すれば、被害者の処罰感情がなくなったものと評価され、不起訴処分となる可能性が上がるためです。

常習のときには、示談が成立しないと通常の痴漢のケースよりも重い刑罰が科される可能性がありますから、なんとしても示談を成立させるため、示談金を増額することも検討してください。

あわせて、被害者から、「犯人を許し、厳しい処罰を求めない」という、いわゆる「宥恕文言」付きの示談書を得たり、「減刑を求める」という、いわゆる「嘆願書」を示談書とは別に作成してもらったりといった方法が有効です。

参考解説

家族の協力

常習に痴漢のとき、再犯を防止する環境を整備しておかなければ、「また次も痴漢を繰り返すのだろう」と思われてしまい、厳しい処罰を免れられません。そのため、再犯を防止することのできる環境を整備しておく必要があり、このとき、家族の協力が必要となります。

痴漢を常習的に繰り返していると、もはや妻の協力を得ることは難しく(もしくは、離婚済みであり)、親からも見放されてしまっていることも多いです。しかし、家族の協力を得て少しでも有利な情状としたいのであれば、「これで必ず最後にする」という強い決意を示し、真剣に頼み込まなければなりません。

顧問弁護士をつける

常習の痴漢として処罰されてしまった方のなかには、残念ながら、本当は触っていないのに痴漢と疑われてしまった、痴漢冤罪の方もいます。

一度ならず二度、三度と痴漢冤罪の被害にあい、常習痴漢として厳しく処罰されてしまうようなときは、仮に痴漢はしていないとしても、「自分の行為に、痴漢に疑われやすい問題点があるのではないか」と自問自答し、普段の行動を痴漢に間違われないよう改善することがおすすめです。

このような方には、痴漢に備えて顧問弁護士を契約する方法が有益です。顧問弁護士を依頼することで、毎月定額の顧問料を支払う代わりに、疑問や相談にいつでも回答してくれたり、いざ痴漢に間違われてしまったときにすぐにかけつけてくれたりといったサービスを受けることができます。

また、損害保険会社の中には、上記のような非常事態に、弁護士費用の一部または全部を負担してくれる痴漢保険を用意している会社もあります。

参考解説

刑事弁護は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、痴漢の常習についての法律知識を解説しました。

常習の痴漢では、通常の痴漢に比べてより厳しく処罰されます。この際、どの程度の前科・前歴などを積み重ねると常習となってしまうかを理解し、常習となるかどうかにかかわらず、示談交渉など適切な弁護活動を行うことが大切です。

痴漢は、初犯では軽はずみな気持ちで行ってしまう人が多いですが、常習と認定されるほど繰り返し行っていると、その悪質性は高く、厳しい判断が下ります。示談に成功したときには、今度こそ「二度とやらない」という決意が大切になります。

痴漢など性犯罪をはじめ、刑事弁護にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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