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痴漢の常習にあたるケースの弁護活動と、示談して起訴を回避する方法

痴漢で逮捕されたり、起訴されて刑罰を受けたりしたのに、懲りずに痴漢行為をくり返したときには、「常習」として、より厳しく処罰されるおそれがあります。痴漢の常習犯は、厳しく処罰しなければ再犯を防げないと判断されてしまうからです。

痴漢の程度によっては、軽度の迷惑防止条例違反で、かつ、初犯であれば、不起訴もしくは罰金刑で解決できるケースもよくあります。もう少し重い態様であっても、示談に成功すれば、初犯なら不起訴となるのが通常です。

しかし、せっかく示談を成立させて早期釈放・不起訴を勝ちとっても、再び痴漢行為をしてしまっては元も子もありません。常習痴漢では、起訴される可能性が高く、かつ、前回よりも重い刑罰となってしまうのが基本です。

今回は、痴漢の常習と判断されてしまう基準と、常習痴漢の弁護活動について、刑事弁護にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 痴漢の常習では、刑事罰が2倍になる
  • 痴漢の常習と判断されるのは、前科・前歴があるほか、余罪や痴漢の回数などが基準とされる
  • 痴漢の常習犯の弁護活動では、通常のケースにもましてすみやかに示談するのが大切
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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痴漢の常習は2倍の刑事罰

悩む男性

痴漢の常習とは

常習とは、同種の犯罪行為を反復して行うことです。痴漢行為をくり返していると、常習の痴漢となります。常習は、その行為そのものというより、その人の特性による判断です。痴漢行為が趣味や楽しみになっていたり、病的に痴漢をくり返し、やめたくてもやめられない方は、痴漢常習犯となってしまう傾向が強いといえます。

痴漢以外にも、常習累犯窃盗(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律)、常習賭博罪(刑法186条)などの犯罪類型が、常習を重く処罰することを定めています。

痴漢の常習の刑事罰

痴漢の常習となってしまうと、初犯のケースに比べて厳しい処罰となります。常習犯の刑罰が重くなるのは、常習者のほうが、より違法の程度や責任が大きく、強く非難されるべきと考えられているからです。

痴漢の常習とは
痴漢の常習とは

痴漢の常習について、迷惑防止条例では、非常習の場合に比べて法定刑が倍になると定められています。例えば、東京、さいたま、千葉では、通常の痴漢が「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」のところ、常習の痴漢は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります。神奈川は、通常の痴漢が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」常習では「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります。

東京都迷惑防止条例における常習に関する定めは次のとおりです。

東京都迷惑防止条例8条

1. 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 第2条の規定に違反した者
(2) 第5条第1項又は第2項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)
・・・(略)・・・
8. 常習として第1項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
・・・(略)・・・

痴漢では、着衣の上から触ったり卑わいな行為をしたりという軽度なケースは迷惑防止条例違反、着衣に手を入れ性器を触るなど重度なケースは強制わいせつ罪となります(参考解説:「痴漢行為で成立する犯罪の種類」)。

条例違反をくり返した行ったケースだけでなく、過去に強制わいせつ罪をしていたというときでも、くり返し痴漢行為をはたらけば常習と判断されるおそれがあります(神奈川県の条例違反を行った後、東京都の条例違反を行った、という場合も同じく、常習となるおそれがあります)。

痴漢の常習と判断される基準

はてな

次に、常習の痴漢と判断される基準について解説します。

常習として痴漢行為をしたとき、迷惑防止条例違反の法定刑が倍となる定めがあると解説しました。ただし、この「常習」について条例には定義がないため、個別の痴漢行為ごとに「常習の痴漢にあたるかどうか」を判断する必要があります。

前科・前歴

まず、痴漢行為について過去にも刑事事件化されているときは、常習と判断されやすくなります。つまり、過去の痴漢行為について懲役や罰金の刑事罰を受けているという「前科」のあるケースや、過去の痴漢行為について逮捕されたという「前歴」のあるケースです。

前科とはつまり、過去に刑事裁判で有罪の刑罰が確定していることをいい、前歴とは、過去に逮捕されたことがあるなど捜査対象となったことを指しています。

前科と前歴の違い
前科と前歴の違い

過去の前科・前歴は、今回の痴漢行為に近接しているほど、反省がなく、繰り返し再犯のおそれが高い状況だといえますので、常習として厳しく処罰されやすくなります。

  • 逮捕されて釈放されたが、すぐに痴漢をはたらいたケース
  • 刑期が終了した後すぐに痴漢したケース
  • 執行猶予中に痴漢をしたケース

といった悪質性が高いほど、常習の痴漢とされやすくなります。

そのため、同種の前科・前歴が複数回あることに加え、最後の前科・前歴から数年以内といった点を、常習性を認定する際のポイントとするのが実務です。なお、前科・前歴は、同種のものであるほど常習となりやすく、一方で、痴漢とはまったく別の前科・前歴があったとしても常習にはなりません。

痴漢の回数、余罪の有無

くり返し痴漢が行われる回数が多ければ多いほど常習と認定されやすく、より厳しい処罰となります。

これまでの前科・前歴の回数はもちろんですが、直近の前科・前歴から、今回逮捕・起訴されるまでの間にはたらいた痴漢の余罪がどれほどあるかについても、常習性の判断に影響します。

痴漢の手口・態様

次に、痴漢行為の手口や態様が、過去に犯した前科・前歴と似通っているほど、常習性を認定されやすく、厳しい処罰を受ける傾向にあります。

同じような手口・態様の痴漢行為がくり返されることは、厳しい刑罰を与えることで抑止しなければならないためです。

痴漢の動機に酌量の余地がないこと

痴漢の動機にはさまざまあり、ふと魔が差して、ムラムラとして、といった軽い気持ちでやってしまうこともあります。しかし、常習でくり返していると、このような言い訳はきかなくなります。

性的な欲求を満たすなど自分の快楽のために痴漢をしているとき、その動機には酌量の余地がまったくなく、常習と認定されて厳しく処罰される可能性が高いです。痴漢の常習犯のなかには、もはや依存症になって癖としてくり返す人もいます。

痴漢で逮捕されたあとに家宅捜索され、痴漢もののAVや、余罪となる盗撮動画が見つかって、性犯罪者の傾向が見られるといったとき、重罰化に拍車をかけます。

執行猶予中の痴漢は、執行猶予が取り消される

直近の痴漢行為について、執行猶予付きの刑罰を科されていたときは特に注意しなければなりません。執行猶予中に再び痴漢して刑を科されると、前刑の執行猶予が取り消される可能性が高いからです。

  • 今回の痴漢事件が、懲役刑・禁錮刑となったとき
    再度の執行猶予がつかないかぎり、前刑の執行猶予が取り消される
  • 今回の痴漢事件が、罰金刑となったとき
    前刑の執行猶予が取り消される可能性がある

執行猶予が取り消されると、今回の痴漢行為に対する刑罰とともに、前刑もあわせて科されることとなり、相当長期間の間、刑務所にいなければならないおそれがあります。

再度の執行猶予とは
再度の執行猶予とは

なお、例外的に、「再度の執行猶予」が認められることがありますが、前刑で執行猶予が認められたときよりも、さらに厳しい要件を満たさなければなりません。刑法では、再度の執行猶予は「情状に特に酌量すべきものがあるとき」にしか認められないという高いハードルが課されているからです(刑法25条2項)。また、前刑の執行猶予に保護観察が付されていたとき、再度の執行猶予は認められません。

常習痴漢における弁護活動

相談する男性

次に、痴漢の常習のケースで行っておくべき弁護活動について解説します。

常習の痴漢だと認定されてしまうケースでも、弁護活動の必要性は、初犯の痴漢とまったく変わりはありません。むしろ、常習として厳しく処罰されてしまうからこそ、できる限りの情状を集め、できるだけ軽い処罰としてもらえるよう求めるのが大切です。

常習の痴漢でも、情状弁護を行うことには、不起訴処分を勝ちとってこれ以上重い前科をつけずに済ませたり、仮に起訴されてしまっても罰金刑や執行猶予を含む軽い刑で済ませる効果があります。

なお、弁護活動により示談成功を勝ちとり、不起訴になれば「前科」はつきませんが、「前歴」としては残るため、次の痴漢行為があれば結局は常習として厳罰が予想される点には注意が必要です。

示談交渉

常習の痴漢のときでも、被害者と示談することが最重要であるのに変わりはありません。被害者との示談が成立すれば、被害者の処罰感情がなくなったものと評価され、不起訴処分となる可能性が上がるためです。

常習のときには、示談が成立しないと通常の痴漢のケースよりも重い刑罰が科される可能性がありますから、なんとしても示談を成立させるため、示談金を増額することも検討してください。

あわせて、被害者から、「犯人を許し、厳しい処罰を求めない」という、いわゆる「宥恕文言」付きの示談書を得たり、「減刑を求める」という、いわゆる「嘆願書」を示談書とは別に作成してもらったりといった方法が有効です。

家族の協力

常習に痴漢のとき、再犯を防止する環境を整備しておかなければ、「また次も痴漢を繰り返すのだろう」と思われてしまい、厳しい処罰を免れられません。そのため、再犯を防止できる環境を整備しておく必要があり、このとき、家族の協力が必要となります。

痴漢を常習的に繰り返していると、もはや妻の協力を得ることは難しく(もしくは、離婚済みであり)、親からも見放されてしまっていることも多いです。しかし、家族の協力を得て少しでも有利な情状としたいのであれば、「これでかならず最後にする」という強い決意を示し、真剣に頼み込まなければなりません。

軽い痴漢であれば家族に知られず解決できる場合もありますが、常習の痴漢ですとそれは難しく、家族の協力が得られるよう努力しておくほうがおすすめです。

顧問弁護士をつける

常習の痴漢として処罰されてしまった方のなかには、残念ながら、本当は触っていないのに痴漢と疑われてしまった、痴漢冤罪の方もいます。

一度ならず二度、三度と痴漢冤罪の被害にあい、常習痴漢として厳しく処罰されてしまうようなときは、仮に痴漢はしていないとしても、「自分の行為に、痴漢に疑われやすい問題点があるのではないか」と自問自答し、普段の行動を痴漢に間違われないよう改善するのがおすすめです。

刑事顧問弁護士のメリット
刑事顧問弁護士のメリット

このとき、痴漢に備えて顧問弁護士を契約する方法が有益です。顧問弁護士を依頼することで、毎月定額の顧問料を払う代わりに、疑問や相談にいつでも回答してくれたり、いざ痴漢に間違われてしまったときにすぐにかけつけてくれたりといったサービスを受けられます。

損保会社のなかには、非常事態に、弁護士費用の一部または全部を負担してくれる痴漢保険を用意する会社もあります。

まとめ

今回は、痴漢の常習についての法律知識を解説しました。

常習の痴漢では、通常の痴漢に比べてより厳しく処罰されます。この際、どの程度の前科・前歴などを積み重ねると常習となってしまうかを理解し、常習となるかどうかにかかわらず、示談交渉など適切な弁護活動をするのが大切です。

痴漢は、初犯では軽はずみな気持ちで行ってしまう人が多いですが、常習と認定されるほど繰り返し行っていると、その悪質性は高く、厳しい判断が下ります。示談に成功したときには、今度こそ「二度とやらない」という決意が大切です。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、痴漢をはじめとした性犯罪の弁護を多数取り扱っています。

常習の痴漢についても、豊富な解決実績がありますので、刑事弁護にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

刑事弁護のよくある質問

常習の痴漢とはどのようなものですか?

常習の痴漢とは、痴漢行為をくり返し行ってしまうことをいいます。常習となると、2倍の刑事罰が定められており、厳しい処罰により反省をうながし、これ以上の犯罪行為を抑止するという観点から、厳しい刑罰が科されるおそれが強まります。もっと詳しく知りたい方は「痴漢の常習は2倍の刑事罰」をご覧ください。

常習の痴漢となってしまったら、どのような弁護が必要ですか?

常習の痴漢の場合、初犯の痴漢よりも厳しく処罰される可能性が高まりますので、痴漢について認めるときには、情状弁護を行う必要性が高いです。このときにも、示談が最重要となることは、常習でも初犯でも変わりはありません。もっと詳しく知りたい方は「常習痴漢における弁護活動」をご覧ください。

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