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直接触ってないのに痴漢と疑われたときの対応方法

満員電車の人混みで、直接触ってないのに痴漢と疑われてしまうケースがあります。

男性であれば、満員電車に乗ったとき

  • 「痴漢をしたと疑われてしまうのではないか」
  • 「距離が近いけど、痴漢に勘違いされてしまうのではないか」
  • 「痴漢の冤罪被害にあったらどうしよう」

と不安、疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。

人混みでどうしても女性との距離が近くなったり、満員電車で偶然女性の後ろに立ってしまったりしたとき、そのままでは痴漢と疑われるのではと焦るでしょう。あなたに痴漢する気がなくても、女性が不快に感じて警察に相談し、逮捕されてしまう例もあります。

あなたが直接触ってなくても、痴漢を疑われて逮捕されてしまうケースもあります。逮捕・起訴といった不利益が現実化する前に、早急に対処する必要があります。直接触らなくても、わざと近づいて鼻息荒く「フンフン」とにおいをかぐ、不必要に近づく、下半身を押し当てるなども痴漢になることから、こういった疑いをかけられるおそれもあります。

今回は、触っていないのに痴漢を疑われたときの対応と、痴漢冤罪で逮捕されてしまったときの対応について、刑事事件にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 痴漢は、その程度によって不同意わいせつ罪か、迷惑防止条例違反の罪になる
  • 直接さわっていなくても、女性に近づいたなどの事情で、痴漢を疑われてしまうことがある
  • 痴漢冤罪のときは、逃げずに証拠収集に協力し、その場で疑いを晴らすのが大切
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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痴漢とは

男性

痴漢は、よく起こる性犯罪の1つで、法的にはその程度に応じて、不同意わいせつ罪(刑法176条)、もしくは各都道府県の迷惑防止情勢違反の罪のいずれかにあたります。不同意わいせつ罪と迷惑防止条例違反の区別は痴漢の「悪質性」にあり、より悪質な行為が不同意わいせつ罪として重く処罰されます。

不同意わいせつ罪となる痴漢とは、着衣に手を入れたり性器に触れたりといった悪質性の高い痴漢行為であり、「6月以上10年以下の懲役」(刑法176条)の刑事罰を科されます。

刑法176条(不同意わいせつ)

1. 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

2. 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

3. 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

刑法(e-Gov法令検索)

これに対して、服の上から胸や尻を触るといった痴漢行為は、各都道府県の迷惑防止条例違反の罪となります。

迷惑防止条例は「公共の場所又は乗物」で、正当な理由なく身体に触れる、身体を撮影する、卑わいな言動をするといった行為を禁じています。迷惑防止条例違反の刑事罰は各都道府県によって異なりますが、東京都迷惑防止条例の違反に対しては「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」の刑事罰(同条例5条1項、8条1項)が科されます。

触ってないのに痴漢と疑われたとき、直後の対応

ポイント

直接触ってないのに痴漢と間違われ、痴漢の冤罪に巻き込まれてしまったとき、その直後に行うべき適切な対応について弁護士が解説します。

痴漢に間違われ、痴漢の冤罪に巻きこまれないためによくある対策は「両手を上に上げる」、「両手でつり革につかまる」など、女性にさわる意思がないとアピールする方法です。しかし、実際にはさわらなくても痴漢を疑われてしまうおそれがある以上、このような対策を徹底しても痴漢と名指しされてしまうケースがあります。

否認しつづける

被害者に直接さわっておらず、痴漢していないのであれば、警察にも被害者にも、断固として否認しつづけるという対応が重要です。「早く帰りたい」、「お金を払えば許してくれるのであれば示談したい」といった安易な気持ちで、やっていないことを認めてはなりません。

後に逮捕されたり、起訴されて裁判になったりするとき、「疑惑をもたれた当初から一貫して否認しつづけていた」という供述の一貫性が重要になります。

痴漢を疑われた直後の誤った対応
痴漢を疑われた直後の誤った対応

「少しは触れたかもしれない」、「よくわからない」、「記憶にない」など曖昧な返答は、疑惑を強めます。怒鳴ったり声を荒げたり被害者を批難したりする対応も、あなたの発言の信用性を下げてしまうため、冷静に反論するのが大切です。

なお、痴漢を疑われた直後の被害者や駅員、警察官とのやりとりは録音しておくことがおすすめです。

逃げない

痴漢冤罪を回避するため「逃げる」という選択はおすすめできません。あなたが被害者に触っていないのであれば、逃げずに証拠収集に協力することで、あなたにとって有利な証拠(被害者の衣服の繊維が検出されなかった、体液が検出されなかったなど)を得ることができます。

逮捕の要件である逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが認められ、逮捕の必要性があると判断されてしまうことから、逃げる素振りを見せると逮捕のリスクが増加してしまいます。逮捕には、その犯罪を行ったであろうという嫌疑の相当性とともに、逮捕の必要性(逃亡のおそれ、または、証拠隠滅のおそれがあること)が必要となるからです。

「逃げるということは痴漢をしたのだろう」というイメージから周囲の人が敵になり、結局取り押さえられる可能性も高いです。仮に逃げ切れても、防犯カメラ映像などから後日逮捕されるリスクが十分あります。痴漢を疑われてしまったとき、その場から逃走してしまうと「痴漢したから逃げたのではないか」、「いやらしい気持ちがあり後ろめたいのではないか」と疑われる材料にもなります。

なお、名刺を渡す、免許証を示すなどで身分を明らかにし、逃げないことを示すことで、現行犯逮捕されてしまうリスクをさらに下げることができます。

証拠を集める

刑事事件には「疑わしきは被告人の利益に(無罪推定の原則)」というルールがあります。つまり、あなたが「痴漢していない」と証明する必要はなく、処罰する側が「痴漢した」ことを証明しなければ有罪にはなりません。ただ、無罪を証明する必要まではないものの、周囲の状況や被害者の証言から有罪とされてしまうおそれがあるため、疑われた直後の証拠収集はとても重要です。

女性に触っておらず、痴漢行為をしていないというときは、証拠調べに協力し、冤罪を晴らす努力をしておいてください。特に、次のような痴漢の証拠は、後日では収集できないため、その場での対応がとても重要です。

  • 微物検査(繊維鑑定)
    被害者の衣服や細胞片が、あなたの手や指についているか検査する方法
  • DNA鑑定
    被害者・加害者から検出された体液・皮膚などについて誰のものかを調べる方法
  • 目撃証言
    周囲の乗客に証言を求めるなどの協力をしておく。触ってなかった、痴漢ではなかったと証言してくれる人がいれば、連絡先を聞いておき、裁判での協力を求める

触っていないという確信があるときは、警察が臨場したらすぐに微物検査を要求するようにしてください。また、正しい検査結果を得るために、痴漢を疑われた後も、手を上げてなににも触れないようにしておいてください。

正確に反論する

被害者に直接さわってないのに痴漢を疑われてしまったとき、あなたのなにげない行為が、女性に不快感を与えてしまった可能性があります。このようなとき、不快感を与えたとはいえ、痴漢ではありませんから、冤罪ということになります。

また、仮に女性の身体に手を触れてしまっていたとしても、電車の揺れなどの不可抗力であり、いやらしい気持ちが一切ないのであれば痴漢ではありません。痴漢の故意がないからです。

このとき、女性の被害申出の内容をよく聞いた上で、正確に反論するよう心がけてください。相手の話を聞かなかったり、不正確で曖昧な反論をしたりしては、かえって「言い逃れではないか」と疑われ、痴漢の容疑を強めるおそれがあります。

触ってなくても痴漢となるケース

悩む男性

痴漢は、典型的には満員電車の人混みにまぎれて女性の身体をさわったり着衣に手を入れたりといった行為がありますが、直接触っていなくても痴漢となってしまうケースがあります。

前章で解説した痴漢が該当しうる2つの罪(不同意わいせつ罪・迷惑防止条例違反)のそれぞれについて「触らなくても痴漢にあたるのか」を解説していきます。

触ってなければ不同意わいせつ罪ではない

前章で解説したとおり、痴漢で成立する犯罪には不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)と迷惑防止条例違反があり、不同意わいせつ罪となるのは着衣に手を入れて性器にふれるなど悪質性の高いものに限定されます。

そのため、被害者に直接触っていないのであれば、たとえいやらしい気持ちを抱いたり、女性に不快な思いをさせたりしてしまっても、不同意わいせつ罪として処罰されることはありません。

触ってなくても迷惑防止条例違反となるケース

これに対して、被害者である女性に触れていなくても、痴漢行為が迷惑防止条例違反となってしまうケースがあります。

東京都迷惑防止条例では、痴漢となりうる行為について「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること」(同条例5条1項1号)だけでなく「卑わいな言動をすること」(同条例5条1項3号)を規定し、禁止しています。そのため、直接被害者に接触しなくても、いやらしい行為をすること自体が痴漢行為として処罰の対象となりうるということです。

例えば、被害者にさわらなくても、いやらしい気持ちで行われる行為には次のものがあります。いずれも痴漢となる可能性が十分あり、注意が必要です。

  • 満員電車で、女性の背後に立ってにおいを嗅ぐ行為
  • 女性の近くにいって首筋に息をふきかける行為
  • 満員電車でもないのに、女性に必要以上に接近する行為
  • 女性の下半身に、自分のバッグや持ち物を押し当てる行為
  • 女性の容姿をスマートフォンで盗撮する行為
  • 女性に聞こえるように卑猥な発言をし続ける行為

触らなくても女性が不快に感じる性的言動は多く存在するため、違法となる行為が触る行為だけに限定されてはいないわけです。その結果、直接触ってはいなくても、女性が「不快だ」と感じると、迷惑防止条例違反にあたる痴漢を行ったという疑いをかけられてしまうおそれがあります。

痴漢冤罪で逮捕されたときの対応

最後に、触ってないのに痴漢の容疑で逮捕されたときの対応方法について弁護士が解説します。

痴漢で逮捕されるケースには、その場で取り押さえられて捕まってしまうケース(現行犯逮捕)と、後日警察が家にやってきて逮捕されるケース(通常逮捕)とがあります。そのため、現場でしっかり対応して逮捕を免れたとしても、逮捕されないとは限りません。

弁護士に相談する

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

痴漢を疑われ、逮捕されてしまったとき、ただちに弁護士に相談する機会を設けることが重要です。刑事事件は初動が重要であり、逮捕されたら即座に弁護士のアドバイスを受けるべきだからです。

逮捕直後から勾留決定を受けるまでは、一般の面会は制限されていますが、弁護士であればいつでもすぐに接見できます。不安や恐怖で、やってもいない痴漢の自白をしてしまうことを避けるため、弁護士に今後の見通しを聞くようにしてください。

なお、現行犯逮捕されなかったときにも、防犯カメラ映像、乗車履歴、目的証言などの証拠がそろい次第逮捕されるおそれもあるため、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

示談交渉

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

示談とは、被害者と交渉し、一定の示談金支払などを条件に被害届を取り下げてもらったり罪を許してもらったりする弁護活動です。被害者のいる犯罪では、示談は重大な情状として考慮され、早期釈放や不起訴といった有利な処分につながるメリットがあります。

痴漢を疑われたが、実際には触っていないといった痴漢冤罪のケースでは、示談をするかどうかはとても悩ましい判断です。

示談が成立すれば釈放され、不起訴となる可能性が高いものの、ケースによっては示談が成立しても罰金などの前科がついてしまったり、やってもいない痴漢について高額な示談金を払わなければならなかったりするデメリットがあるからです。

被害者の理解が得られるときには、痴漢自体は認めないままに、「迷惑をかけてしまったこと」に限って謝罪し、示談することも、情状として考慮してもらうことができます。

捜査機関・裁判所と交渉し、早期釈放

痴漢が冤罪であり、触ってもいないとき、示談は多くのデメリットがあるため、示談しないことを選択したときは、それ以外の方法で早期釈放を目指す方針となります。なかでも、意見書を提出するなどして捜査機関や裁判所と交渉する方法が有効です。

逮捕後は、48時間は警察、24時間は検察で身柄拘束を受け、更に勾留請求されて勾留決定がおりるときは10日間の勾留を受け、更に10日間の限度で延長されます。その結果、最大で23日間の身柄拘束を受けることとなります。

逮捕後の身柄拘束期間
逮捕後の身柄拘束期間

早期釈放に成功すれば、その後は在宅事件として、身柄拘束を受けずに取調べを受けることができます。

社会生活への影響を軽減する

逮捕され、長期の身柄拘束を受けてしまうと、社会生活に大きな支障が生じます。学校や職場に痴漢の容疑を受けたことが発覚してしまえば、退学や解雇などの厳しい処分を下されてしまうおそれもあります。そうすると、冤罪であっても取り返しのつかない不利益を負ってしまいます。

触ってなくて、痴漢冤罪だと主張したいとき、無罪を勝ちとりたいという方針のときには、社会生活への影響を軽減する努力をしておく必要があります。弁護士を依頼することで、代わりに学校や職場、家族に連絡をしてもらうなどの弁護活動を行ってもらうことができます。

まとめ

今回は直接触っていないのに痴漢と疑われてしまったときの対応方法について弁護士が解説しました。「触らない痴漢」がニュース報道されるように、被害者に直接接触していなくても痴漢となってしまうことがあります。

触ってないのに痴漢と疑われてしまったとき、その場での対処を誤ると、警察に相談され、逮捕されてしまうケースもあるため、痴漢冤罪の回避のためにも、正しい理解が必要です。現場で即座に逮捕されなかったとしても、後日、警察がやってきて逮捕されてしまうこともあります。誤解、冤罪なのであれば、その場できちんと解消しなければなりません。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、刑事事件のなかでも、特に性犯罪について、豊富な解決実績があります。

痴漢の冤罪に巻き込まれてしまった方や、ご家族がやっていない痴漢で逮捕されてしまった方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

痴漢事件のよくある質問

さわっていなくても痴漢を疑われることがありますか?

直接さわっていなくても、痴漢になってしまうことがあります。不適切なほど女性に接近したり、においをかいだりといった行為で不快に思われてしまったとき、痴漢といわれてもしかたありません。なお、本当になにもしていない痴漢冤罪でも、疑われてしまうことがあり、この場合には否認し続けるのが大切なポイントです。詳しくは「触ってないのに痴漢と疑われたとき、直後の対応」をご覧ください。

痴漢冤罪で逮捕されてしまったとき、どう対応したらよいですか?

痴漢冤罪で逮捕されてしまったら、まずは早急に弁護士と接見して、法的なアドバイスを受けるのが大切です。方針によって、示談交渉をしたり、早期釈放を目指したりして、不利益を軽減するための弁護活動をおこないます。もっと詳しく知りたい方は「痴漢冤罪で逮捕されたときの対応」をご覧ください。

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