
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
「婚約は、どこから法的な効力を持つのですか?」という相談があります。
結婚を直前に控えても、将来に不安を抱き、パートナーとの関係性に悩む方は多いものです。「婚約」は日常的に使われる言葉ですが、法的な意味合いを十分に理解していない方も少なくありません。
婚約に法律上の明確な定義はありません。しかし、裁判例では、婚約の成立後に一方的に破棄された場合、慰謝料の請求を認めたケースがあります。口約束でも成立する可能性がある一方、破談となった場合に損害賠償請求が認められるかは、状況によって異なります。婚約に伴う法的なトラブルを未然に防ぐには、その意味を正しく理解し、裏付けとなる証拠を集めることが大切です。
今回は、婚約とはどのようなものかという基本的な意味から、必要となる証拠、婚約破棄に伴う責任などについて、弁護士が解説します。
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まず、婚約の法的な意味や、プロポーズとの違いといった基本から解説します。
現在の日本の法律には、「婚約」について明確に定義した規定は存在しません。
裁判例では、「婚約」は婚姻の予約にあたり、「婚約者は互に誠心誠意交際し、将来夫婦となるよう努める義務を負う」と示されています(東京高裁昭和43年3月5日判決)。
結婚は当事者の自由な意思に基づくもので、婚約したからといって強制されるわけではありません。しかし、婚約関係にあったにもかかわらず一方的に破棄された場合、相手に損害賠償を請求できる可能性があります。例えば、最高裁昭和33年4月11日判決は、「内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできる」と判断しています。
したがって、婚姻届の提出前でも、法的に「婚約」が成立していれば、破棄した側に法的な責任が生じます。婚約は、将来の結婚に向けて当事者が真剣に意思を固めたことを示すプロセスです。結婚指輪の交換、結納の授受、結婚式の準備、親族との顔合わせなど、婚姻を前提とした具体的な行動が、婚約の成立を裏付ける要素となります。
「婚約」と「プロポーズ」は混同されがちですが、法的な意味合いは異なります。
婚約は、将来の結婚についてお互いが合意することで成立します。これに対し、プロポーズは片方からの一方的な申込みに過ぎず、これだけで婚約が成立したとはいえません。
したがって、婚約が成立するには、プロポーズに対して相手が承諾することが必要です。たとえプロポーズをしても、相手が回答を保留したり、断ったり、明確な同意を示さなかったりした場合には、婚約は成立しません。
婚約と結婚の違いは、戸籍上の扱いや発生する権利義務にあります。
婚約は将来結婚するという約束であり、当事者間の契約であって戸籍に変更は生じません。関係の解消にも法的な手続きは不要です。一方、結婚は、婚姻届の受理によって成立して戸籍に反映され、法律上も様々な権利や義務が発生します。解消時にも、離婚届の提出を要します。
「婚約中の浮気の責任」の解説


次に、婚約とはどこから成立するのか、判断の参考とすべき事情について解説します。
婚約の成立は、当事者双方の合意によりますが、どこから効力を有するのかが争われることが少なくありません。どのような基準で婚約の成立が判断されるかを理解することが重要です。
婚約が成立するには、当事者双方の真摯な意思に基づく婚姻の合意が必要です(大審院昭和6年2月20日判決)。つまり、冗談や酔った勢いでプロポーズし、相手がそれに応じたとしても、それだけでは法的に婚約とは評価されません。
婚約可能な年齢について法律の定めはないものの、裁判例では、たとえ婚姻適齢に満たない場合でも、婚約が当然に無効になるとは限らないとされています(大阪高裁昭和5年7月31日判決)。一般には、15歳以上であれば単独で婚約の意思表示が可能であると解されています。
婚約は当事者間の合意なので、法律上は家族の同意を要件としません(ただし、親族が強く反対している場合など、事前に配慮すべきケースもあります)。
「義理の両親からの離婚強要」の解説

婚約は当事者間の契約なので、決まった形式はなく、口頭の合意でも成立します。
しかし、口約束による婚約は、その成立を証明するのが困難であり、「軽率な言葉のやり取りに過ぎない」と受け取られるおそれもあります。例えば、カップル間で日常的に「いつか結婚しよう」と雑談していたとして、それだけでは婚約の成立は認められません。
最終的には、当事者の言動、交際の経緯、周囲の認識、将来に向けた具体的な行動などを総合考慮して、社会通念上「婚約が成立していた」と判断できるかどうかがポイントとなります。
なお、判例では口約束で婚約が認められたケースがありますが、求婚をきっかけに交際を開始し、互いに結婚するつもりで付き合いを続けたという背景がある事案であり、軽い口約束だけで婚約の成立を認めたわけではありません
幼馴染の男女が、21歳頃から情交関係を伴う交際を5年以上続けていたものの、男性が別の女性と事実上の婚姻をするに至った事案です。
裁判所は「真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約し、長期にわたり肉体関係を持ち続けていた」ことを理由に、双方の婚姻の意思は明確であったと認定し、婚約破棄を理由とする慰謝料の請求を認めました。
なお、親兄弟に相手を紹介しておらず、結納や同棲をしていなくても、婚約は成立するという判断が示されています。
婚約は、出会ってすぐ成立するものではなく、一定の交際期間を経て、互いが将来の結婚について合意することで成立します。婚約に至るまでの一般的な流れは、次の通りです。
したがって、婚約までの進め方に明確なルールはなく、当事者の合意とその裏付けとなる様々な事情の積み重ねによって進みます。
プロポーズや婚約から、婚姻届を提出するまでの期間にも法律上の決まりはありません。家庭にもよりますが、平均して半年から1年程度の期間を設けることが多いです。この間に、両親への挨拶や結婚式の日取りの決定、新居の準備など、将来に向けた準備を進めるのが通常です。
なお、交際開始の直後に結婚する「交際0日婚」のようなケースもあります。期間の長さは当事者の自由であり、大切なのは互いのペースに合わせて着実に準備を整えることです。
婚約が口約束だけだと、その成立を客観的に立証することは難しいです。しかし、口約束に加え、以下のような外形的な事情があれば、婚約成立と評価されやすくなる傾向にあります。
高価な指輪の贈与は、一般的に婚約の意思を示すものとされます。
そのため、婚約指輪の購入や授受の事実があれば、婚約の証拠となります(なお、一方的に指輪をプレゼントしても、他方が結婚に反対していれば婚約は成立しません)。
婚約が破断となった場合、婚約指輪の返還がよく問題になります。婚約を前提にやり取りした指輪や金品は、不当利得として相手に返還するのが通常ですが、一方に重大な非(浮気やDV、親族への非礼など)がある場合、返還義務の有無が争いになります。
結婚を考えるほどの間柄なら、家族に紹介することは珍しくありません。この場合、結婚を意識した交際であることが周囲に伝わるため、婚約を推認させる事情となります。
友人や職場への紹介も、状況次第では婚約を裏付ける材料となります。
結婚式への招待や社長への挨拶の依頼など、話が具体的に進んでいるほど、婚約であると認定されやすくなります。いわゆる「寿退社」を前提に交際の事実を社内で公言していた場合、婚約破棄の影響が大きく、法的な責任を問われやすくなります。
結納は、両家が婚約の成立を確認する儀式であり、重要な証拠となります。ただし、昨今は簡略化や省略されるケースもあり、結婚を前提とした食事会や顔合わせといった代替となるイベントの実施が婚約成立を裏付ける事情となります。
その他にも、結婚やその後の共同生活に向けた具体的な動きがあれば、婚約の存在が認められる可能性があります。例えば、次のようなものがあります。
「離婚までの流れ」の解説


婚約に関するトラブルが生じたとき、重要なのが「婚約の事実を証明できるかどうか」です。特に、慰謝料請求を訴訟などの法的手段で進める場合、証拠の有無が結論を大きく左右します。以下では、婚約の成立を証明するための代表的な証拠について解説します。
以上の証拠は、それぞれ単体でも一定の効果はありますが、複数を組み合わせることで証明力が一層強化されます。したがって、婚約の成否が争点となる可能性のあるときは、日頃から証拠を意識して記録・保管しておくことが重要です。
「離婚裁判で証拠がないときの対処法」の解説

婚約から結婚までの期間は、結婚準備のストレスや課題からトラブルが生じやすくなります。幸せに包まれる一方で、思わぬ破局や法的な問題を防ぐためにも慎重に進めてください。
婚約後は、結婚式や披露宴の準備、新居探し、両家への挨拶など、これまでの恋愛関係よりも現実的な課題に直面します。準備を進める中で、金銭感覚の違いや相手の非協力的な態度が浮き彫りになり、婚約破棄に至るケースも珍しくありません。
このとき、「結婚すると決めたのだから」と相手に無理な要求を押し付けたり、一人で抱え込んだりするのは避けるべきです。話し合いの過程では、婚約者が自分とどのように向き合ってくれるかを確認することが重要です。マリッジブルーによるすれ違いを防ぐためにも、互いの価値観を共有し、計画的にスケジュールを進めていくことが求められます。
最後に、婚約に伴う法的な責任について解説します。
婚約が成立すると、当事者双方が、正当な理由がない限り将来結婚するという合意を誠実に履行すべき義務を負います。したがって、一方的かつ不当な理由で婚約を破棄した場合、債務不履行や不法行為に基づく法的な責任が生じ、損害賠償の対象となります。
正当な理由のない婚約破棄は、例えば次の通りです。
婚約者が浮気していた場合、慰謝料を請求することができます。婚約中の貞操義務を認め、不貞行為を理由に損害賠償請求を認めた裁判例があります(佐賀地裁平成25年2月14日判決)。もっとも、婚約中の貞操義務の強さについては議論のあるところで、仮に認められるとしても、夫婦間の不貞に比べれば、請求できる慰謝料額は低めに抑えられる傾向があります。
式場や新婚旅行のキャンセル料など、婚約破棄に伴う損失があるときは、「どちらの原因で婚約破棄に至ったか」を基準に判断します(当事者の合意があれば折半で負担することもあります)。なお、婚約破棄の責任は民事の問題であり、刑事責任を問われることはありません。ただ、婚約破棄を切り出されたのがきっかけで暴行トラブルなどに発展する例もあるので、冷静に対応してください。
「浮気した婚約者に慰謝料を請求できる条件」の解説


今回は、婚約とはどこから成立するのかについて解説しました。
婚約とは、当事者間で婚姻の意思が合致した場合に成立するもので、法的にも一定の効果を有する合意です。書面がなくても成立しますが、後日のトラブルを回避するために、婚約を証明できる外形的な事実(婚約指輪や結納の授受、親族顔合わせなど)を証拠に残しておくことが重要です。
婚約成立と認められれば、一方的な破棄には法的責任が生じ、慰謝料や損害賠償を請求されるリスクがあります。そのため、安易な婚約は避け、慎重に進める必要があります。
「自分達の関係が婚約にあたるか」「トラブルになったら、どう対応すべきか」など、不安がある場合は、弁護士に早めに相談することが大切です。
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