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会社が倒産したら解雇でも仕方ない?偽装倒産による不当解雇への対応

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

倒産解雇偽装倒産

経営状況の悪化によって会社が解散したり、倒産したりしたとき、社員は解雇されてしまいます。業績などを理由に行われる一方的な労働契約(雇用契約)の解消を、法的には「整理解雇」といいます(より一般的には「リストラ」といわれます)。

解散・倒産によって会社自体が消滅してしまえば、労働契約(雇用契約)の一方当事者がいなくなるわけで、契約が自動的に解消されるのはしかたありません。しかし「会社が倒産して解雇されてしまった」という法律相談のなかには、違法な「偽装倒産」による不当解雇ではないかと疑われるケースもあります。

労働者側にとって、解雇は生活の糧を失ってしまう、とても不利益の大きな処分ですから、「本当に解雇が有効なのか」、「不当解雇なのではないか」をよく吟味しなければなりません。

今回の解説では、

  • 倒産による解雇が無効となる要件(整理解雇の4要件)
  • 偽装倒産を疑うべきケース
  • 偽装倒産への適切な対処法

といった業績悪化により倒産してしまいそうな会社の社員に知っておいてほしい知識を、労働問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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倒産が本当なら、解雇は有効

倒産解雇偽装倒産

会社の解散もしくは倒産にともなう解雇(いわゆる「リストラ」)は、法律の専門用語では「整理解雇」といいます。

解散・倒産により会社は清算手続きに入り、清算が結了すると法人格が消滅します。そのため、いますぐ解雇されなくても近い将来には労働契約(雇用契約)は消滅してしまいます。

ただし、解散・倒産による整理解雇が有効となるためには、当然ながら解散・倒産が本当であることが必要です。悪質なブラック企業は、ある労働者を解雇したいがために「業績悪化」を口実としてくることがあるからです。

このような違法な不当解雇を判別するために、整理解雇の有効性について、裁判所の実務では「整理解雇の4要件(4要素)」という厳しい基準にもとづいた判断が行われます。

整理解雇の4要件(4要素)

労働者にとって不利益の大きい解雇は、「解雇権濫用法理」という厳しいルールで制限されています。具体的には、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」という2つの要件を満たさなければ、不当解雇として違法、無効となるというものです。

そして、整理解雇では、その解雇理由が会社側の事情によるものであるため、「整理解雇の4要件(4要素)」という、解雇権濫用法理を詳細化した、より厳しい要件で判断されています。

「整理解雇の4要件(4要素)」では、①業務上の必要性、②解雇回避の努力義務、③人選の合理性、④手続の適正性という4要件を満たさない解雇は、違法な不当解雇となります。

整理解雇の4要件(4要素)

  • 業務上の必要性
    :解雇が必要となるほどに、業績が悪化していることが必要となる。
  • 解雇回避の努力義務
    :業績を改善するための施策を十分に行い、解雇を回避する努力を十分に行っていることが必要となる。
  • 人選の合理性
    :解雇がやむをえないとして、解雇対象者の人選について十分な合理性が必要となる。
  • 手続の適正性
    :解雇を行う前に、労働者ないし労働組合などと、十分な協議・説明を尽くすことが必要となる。

したがって、会社の倒産が真実であるときには、上記の4つのすべての要件を満たすと考えられるため、整理解雇は有効です。

参考解説

解雇理由について説明を求めておく

解散・倒産が真実であれば解雇は有効であると解説しました。しかし、たとえ有効な解雇にあったとしても、解雇理由についてはしっかりと説明を求めておくようにしてください。

整理解雇の要件の4つ目にあるとおり、会社は、解散・倒産に先立って、労働者に対して説明・協議を十分に尽くす必要があります。十分な説明が尽くされていないとき、「倒産・解散するといっているが本当なのだろうか」、「自分を解雇したいから業績悪化を口実にしているだけではないのか」という疑問を持つのは当然です。

会社が説明を曖昧にし、協議を避けているようなときには、次章以降で解説するとおり「偽装倒産」の疑いが強くなり、争うべきケースの可能性があります。

整理解雇が有効なときでも、「倒産してしまうような放漫経営を行った」ことについて、会社の社長、役員の個人責任を追及できることがありますから、この点でも、会社側の説明を強く求めておく必要があります。

次章で解説するように「偽装倒産」を理由としてさまざまな責任追及を行いたいと考えるときは、解雇理由を具体的に明らかにしておく必要があるからです。

倒産による解雇の違法性を争えるケース

倒産解雇偽装倒産

会社が本当に倒産したのであれば、清算手続きが結了すれば会社が消滅してしまいますから、労働契約(雇用契約)は解消されます。しかし、会社から突然「倒産せざるを得ない」という報告を聞いたとき、本当なのか疑わしいことがあります。

実際、当事務所に寄せられる法律相談でも、「会社が倒産するといわれて解雇に応じたのに、半年経ってもホームページが消えない」というご相談もあります。

会社を解散・倒産する気はまったくないのに、労働者に会社をやめてもらうために倒産を偽装しているとき、安易に退職に応じるべきではありません。このようなブラック企業に対しては、不当解雇の無効を主張し、争っていくべきです。

【ケース1】偽装倒産の場合

倒産を理由とした解雇を争うべきケースの1つ目は、「偽装倒産」の場合です。

倒産を理由として解雇されてしまったのに、次のような兆候があるときには、あなたの受けた解雇は、「偽装倒産」による不当解雇である可能性があります。

  • 規模は縮小したものの、会社は存続し続けている
  • 結局、解雇されたのは数人だった
  • 親会社や社長個人に、儲かる事業を譲渡して仕事を続けている
  • 業績が悪化しているといいながら、なかなか倒産しない

偽装倒産による解雇であり、実際には会社がなくならないのであれば、不当解雇の無効を主張して争うべきです。

実際、経営者が危機感をもって解雇を進めていたものの、労働者に説明しているほどには深刻な状態ではなく、あなたを解雇したあとに規模を縮小して生き延びることができているケースも少なくありません。

【ケース2】清算中の会社での雇用を主張すべき場合

倒産を理由とした解雇を争うべきケースの2つ目は、清算中の会社での雇用を主張すべき場合です。

解散の場合、会社が解散決議をすると、清算手続きに入ります。破産申立を行ったときも、その後に管財人による清算手続きが行われます。このように解散・倒産のいずれも、清算手続中は、清算のために法人格が残り続け、そして、清算手続きに必要となる労働者については、即座に解雇をしないことがあります。

そのため、まだ会社が清算手続中であれば、清算中の会社に対して、不当解雇の無効を主張し、地位確認請求を行うことができます。

清算手続中の会社に対して地位確認を求める仮処分を提起した裁判例(横浜地裁昭和34年11月13日決定)では、次のように述べて、地位確認請求が可能であることを示しています。

横浜地裁昭和34年11月13日決定

被申請人はその後解散したが、現在清算の段階にあり、清算目的の範囲内で法人として存続するものとみなされるのであるから、右各申請人について従業員たる地位を仮に定める利益は依然存するものといわなければならない。

このような請求の末、地位確認請求が認められたときには、清算期間中の間、賃金や退職金などの支払いを受けることができます。

【ケース3】実質的に同一性のある別会社で雇用を引き継ぐべき場合

倒産を理由とした解雇を争うべきケースの3つ目は、実質的に同一性のある別会社で雇用を引き継ぐべき場合です。

会社の倒産が本当だったとしても、倒産した会社と実質的に同一性のある会社が事業を継続しているときには、労働者の雇用もその会社が引き継ぐべきだからです。

倒産しておきながら、別会社で事業を継続することは、不当な責任逃れであり、「偽装倒産」です。事業から生じる責任やリスクだけを残して倒産し、事業から得られる利益だけを別会社に移すことは、労働者に不利益を押し付けて逃げているだけです。

次のような事情を参考にして、「偽装倒産」にあたると考えられるときは、不当解雇の無効を主張すべきです。

  • 事業内容、サービス内容などが全く同じである
  • 経営者が同じである
  • 株主構成が同じである
  • 会社の重要な資産が引き継がれている

【ケース4】親会社の責任を追及すべき場合

倒産を理由とした解雇を争うべきケースの4つ目は、親会社の責任を追及すべき場合です。

企業グループの1社であり、親会社が子会社を支配しており、子会社の解散・倒産を決定しているようなときには、子会社から解雇されてしまった社員が親会社の責任を追及すべきケースがあります。

このような争いでは、親会社が子会社の経営を実質的に支配しており、法人格が形骸化しているとして、「法人格否認の法理」によって親会社の責任を追及し、不当解雇の無効を主張する方法が有効です。

【ケース5】役員の個人責任を追及すべき場合

倒産を理由とした解雇を争うべきケースの5つ目は、役員の個人責任を追求すべき場合です。

会社の経営状況の悪化を理由として行われた解雇について、解雇回避の努力が不十分であるなど整理解雇の4要件を満たさない可能性があるとき、その判断過程に関わった代表取締役をはじめとする役員に対して不法行為責任を追及することが考えられます。

特に、社員数や役員数の少ない小規模な会社ほど、役員個人の判断が会社に及ぼす影響は大きいです。

【ケース6】解雇が不当労働行為にあたる場合

倒産を理由とした解雇を争うべきケースの6つ目は、解雇が不当労働行為にあたる場合です。

これは、労働組合つぶしのために会社を倒産させ、組合員を解雇したといったケースです。

「不当労働行為」は労働組合法に定められた違法行為であり、団体交渉拒否(不誠実団交)、不利益取扱い、支配介入の3種類があります。「組合員であること」を理由に解雇することは、不利益取扱いの不当労働行為にあたる違法行為です。

このような争いでは、都道府県労働委員会に対して不当労働行為救済申立て手続を行うことで、不当解雇の無効を主張することができます。

倒産により解雇された労働者が、利用すべき手続・制度

倒産解雇偽装倒産

会社が解散したり倒産したりすることで解雇されてしまったとき、労働者はとても大きな不利益を被ることとなります。

これまで継続的にもらえていた給与が来月から突然なくなるわけで、そのダメージは計り知れません。給与がもらえることを前提に家・車などのローンを組んでいるとき、更に被害は大きくなります。とはいえ、勤務先の倒産を予想しておくことは、社員の身分では難しいことが多いです。

倒産による解雇によって将来の生活が立ち行かなくなってしまわないよう、いざ解雇されてしまったときに利用しておくべき手続や制度について弁護士がまとめておきます。利用できるものを最大限活用するようにしてください。

解雇予告手当

労働者を解雇するときには、解雇日の30日前に解雇予告を行うか、もしくは、その不足する日数分の解雇予告手当を支払わなければならないことが、労働基準法20条に定められています。

労働基準法20条(解雇の予告)

1. 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2. 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3. 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

会社の解散・倒産にともなって整理解雇するときには、30日前からあらかじめ予告されていないことが多いため、労働者は解雇予告手当の請求をすることができます。解雇予告手当は、正社員だけでなく、契約社員、アルバイト、パート社員でも請求可能です。

勤務先が倒産してしまうとき、労働者としては寝耳に水で、次の転職先をすぐには探せないことが多いですから、解散、倒産による解雇後しばらくの生活費の足しにするためにも、必ず請求しておきましょう。

未払賃金立替払制度

会社が破産したときに未払賃金が存在すると、破産申立て時に会社の有する財産(破産財団)からしか弁済を受けられません。そのため、業績悪化で倒産したとき、もらえるはずの給与を満額支払ってもらえないことがあります。

労働者保護の観点から、給与は財団債権ないし優先的破産債権として優先的に支払われますが、そもそも破産する会社にはほとんど財産がないことも少なくありません。

このとき、労働者保護のために利用できる制度が、未払賃金立替払制度です。この制度は、一定の条件を満たした場合に、受け取れなかった未払賃金の80%を労働者健康安全機構に立替払いしてもらえる制度です。

立替払いを受ける要件は次のとおりです。

未払賃金立替払制度の要件

  • 会社が、労災保険適用事業であり、1年以上事業活動を継続していたこと
  • 未払賃金が2万円以上であること
  • 労働者が、会社の破産申立6か月前の日を起算点として、その後2年以内に退職したこと
  • 破産手続開始決定日から2年以内に立替払いの請求を行うこと

未払賃金立替払制度の対象となる賃金は、退職日の6か月前の日から、立替払い請求日の前日までに支払期限が到来しているものです。立替払いを受けられるのは、未払額の80%ですが、次のとおり年齢に応じて上限額が決められています。

退職時の年齢 未払賃金の限度額 立替払いの上限額
30歳未満 110万円 88万円
30歳以上45歳未満 220万円 176万円
45歳以上 370万円 296万円

この上限額を超える未払賃金が存在する場合には、その差額は破産手続きの中で配当を求めることとなります。詳しくは、破産管財人や清算人に問い合わせ、債権届を提出するのを忘れないようにしてください。

未払賃金立替払制度の対象となるのは給与と退職金であり、解雇予告手当、賞与、役員報酬、解雇一時金などは立替の対象外です。

参考解説

会社財産の保全処分

会社が倒産しそうだという場合に、給与の支払を確保するためには、会社財産が散逸してしまわないよう、財産を調査し、保全しておく必要があります。

会社財産を保全するための法的手段として、代表的なものに仮差押えがあります。仮差押えは、未払賃金などを被保全債権として、会社財産である預貯金や不動産の現状を維持するという手続きです。なお、保全した財産から支払いを受けるためには、別途訴訟提起が必要となります。

また、会社がその資産を譲渡するおそれのある場合には、処分禁止の仮処分によって財産を保全することができます。

雇用保険(失業保険、失業手当)

業績悪化による整理解雇であれば、会社都合での退職となるため、雇用保険の失業手当について、有利な扱いを受けることができます。

つまり、退職後7日間の待機期間が経過した後、8日目から支給を受けることができます。また、給付額も、自己都合よりも金額が多くなります。

退職後、会社から離職票の交付を受け、これをハローワークに持参することによって手続きを行いますが、必ず「会社都合」の退職となっているかどうかを確認するようにしてください。

健康保険・年金の任意継続

会社が解散したり、倒産したりすると、健康保険などの資格喪失手続きを行うことにより、労働者は被保険者資格を失い、会社の健康保険証を使用できなくなります。

労働者の転職先がすでに決まっているときには、新たに入社する会社の制度へ加入することになります。しかし、転職先が決まっておらず、しばらく再就職の予定がないときには、国民健康保険に変更する方法のほかに、退職前の健康保険を任意継続するという方法を選択できます。

任意継続を選択する方が、国民健康保険に変更するよりも労働者にとって保険料などの点で金銭的メリットのある場合があります。

労働問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

倒産解雇偽装倒産

今回は、業績悪化により倒産・解散してしまいそうな会社に勤務している方に向けて、倒産・解散にともなって解雇されてしまったときの対応方法と、偽装倒産のときの戦い方について弁護士が解説しました。

経済の不況などの外的要因から、残念ながら会社経営が思うように進まないことがあります。ましてや、労働者側の立場では、経営について抜本的な提言は難しく、会社側の都合によって解雇をされてしまっては、将来の収入も絶たれてしまいます。

倒産・解散が真実であり、適切な説明が尽くされているとき、解雇は有効です。しかしよく注意しなければ、「偽装倒産」など、業績悪化を理由とした不当解雇の犠牲になってしまっていることもあります。

会社の業績があやうく、倒産・解散によって解雇されてしまうおそれのある方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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