労働問題

勤務先が倒産したら、解雇されても仕方ない?偽装倒産への対応

2020年10月9日

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倒産解雇偽装倒産

勤務先の会社が、経営状況の悪化によって解散したり、倒産したりしたとき、社員として働いていた労働者は労働契約を解消されることとなります。つまり、解雇されるということです。

このように、会社の都合を理由として行われる解雇のことを「整理解雇」といいます。「リストラ」と呼ばれることもあります。勤務先が解散したり、倒産したりしてしまえば、これにより会社自体が消滅してしまいますから、労働契約の一方当事者がいなくなってしまいますので、契約は自動的に解消されることとなります。

しかし一方で、規模を縮小しながらも会社が存続し続けていたり、親会社や社長個人にもうかる事業を譲渡していたり、業績悪化といいながらなかなか倒産しなかったりといったようなケースでは、解雇の対象となった労働者側でも、文句の1つも言いたくなるのも当然です。労働者にとって、生活の糧である給与を失ってしまうことは、とても大きな不利益となります。

そこで今回は、勤務先が解散したり、倒産したりしたときに、解雇を言い渡された労働者側の適切な対応方法と、偽装倒産であったときの解決策について、弁護士が解説します。

「労働問題」弁護士解説まとめ

倒産による解雇と、整理解雇の4要件

倒産解雇偽装倒産

会社の解散、倒産に伴う解雇は、整理解雇の一種ですが、解散、倒産によって会社は清算手続に入り、清算が結了すれば法人格が消滅しますから、労働契約は消滅することとなります。

ただし、解散、倒産による解雇が有効であるためには、当然ながら会社の解散、倒産が真実であることが必要です。中には、ある労働者を解雇したいがあまりに、業績悪化を口実として解雇をする会社もありますが、そのような場合には「整理解雇の4要件」を満たす必要があるため、簡単には解雇することができません。

すなわち、実際には解散、倒産はせず、規模の縮小などを理由として整理解雇をするためには、①業務上の必要性、②解雇回避の努力義務、③人選の合理性、④手続の適正性という4要件を満たさなければ、違法な不当解雇となります。

倒産が真実なら、解雇は有効

解雇権濫用法理によって解雇は制限されており、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要ですが、解散、倒産の事実がないのに、あたかも倒産寸前であるかのように労働者に説明をして解雇をすることに合理的な理由は全くありません。

この点、解雇権濫用法理をより詳しくした「整理解雇の4要件」に照らして判断をしたとしても、会社の解散ないし倒産が真実なのであれば、解雇は有効となります。

  • 業務上の必要性
    :会社が倒産せざるを得ない状況まで経営状況が悪化すれば、業務上、解雇が必要であることは明らかです。
  • 解雇回避の努力義務
    :倒産手続きを行うほどに業績が悪化しているのであれば、もはや解雇を回避する努力は十分に尽くされていると考えられます。
  • 人選の合理性
    :会社が解散ないし倒産すれば全社員が解雇されることになりますから、対象者の人選には十分な合理性があります。
  • 手続の適正性
    :倒産手続きに伴って解雇をする場合であっても、労働者ないし労働組合との間で、適切な協議、説明を尽くさなければなりません。

ただし、清算手続きを進めていくために一定の労働力が必要となる場合には、清算手続き中にどの人から順に解雇をしていくかという点で、人選の合理性が争点となることがあります。

なお、会社が解散したり倒産したりしたとしても、その事業が親会社や社長個人などに引き継がれている場合には、労働者と雇用契約も同時に引き継がれるのではないかという点が問題となります。

参 考
業績悪化による整理解雇は違法?認められる要件と整理解雇の方法

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適切な協議が行われたか

さきほど解説した通り、解散や倒産にともなう解雇であっても、労働者に対する説明、協議は十分に行う必要があります。これは、規模縮小にともなう整理解雇でも同じことです。

労働者に対して十分な説明がなされていないときは、解雇の無効を主張し、その間の賃金支払いを請求することができます。

倒産による解雇の違法性を争えるケース

倒産解雇偽装倒産

会社が本当に倒産したのであれば、清算手続きの結了によって会社自体が消滅しますから、契約解消となるのは当然です。しかし、会社から突然、倒産せざるを得ないという報告を聞いたとき、本当なのか疑わしい場合もあります。

実際には会社を解散したり倒産したりする気はないのに、会社を辞めてもらうために倒産を偽装していた場合には、安易に退職に応じるのではなく、解雇の無効を主張して会社と争うべきケースもあります。

【ケース1】偽装倒産の場合

倒産に伴う解雇を争うべきケースの1つ目は、偽装倒産の場合です。

会社の解散ないし倒産が真実であり、会社がなくなってしまうのであれば解雇をされても仕方ないとしても、偽装倒産であり実際には会社はなくならないのであれば、解雇無効を主張して争うべきです。

また、労働者に説明しているほど深刻な状態ではなく、実際には規模を縮小して等分の間生き延びるケースも少なくありません。

なお、経営状況が悪化しているにもかかわらず、なかなか会社が破産せず、このままだと会社の資産が流出してしまうといった事態が続くような場合、最終手段として、債権者側(労働者側)から破産申立てをする方法もあります。

【ケース2】清算中の会社での雇用を主張できる場合

倒産に伴う解雇を争うべきケースの2つ目は、清算中の会社での雇用を主張できる場合です。

会社を解散する決議をすると、会社は清算手続きに入ります。会社が破産申立てを行った場合にも、管財人による清算手続きが行われます。このように、解散なり倒産なりする場合でも、清算手続き中は、清算のために法人格が残り続けます。清算手続きに必要となる労働力について、即座には解雇をしないこともあります。

そのため、まだ会社が清算手続き中なのであれば、会社に対して解雇の無効を主張し、地位確認請求を行うことが検討されます。

清算手続き中の会社に対して地位確認を求める仮処分を提起した裁判例(横浜地裁昭和34年11月13日決定)でも、「被申請人はその後解散したが、現在清算の段階にあり、清算目的の範囲内で法人として存続するものとみなされるのであるから、右各申請人について従業員たる地位を仮に定める利益は依然存するものといわなければならない」と判断されています。

この場合には、地位確認が認められた場合には、賃金や退職金について、条件付き債権として清算期間中に支払われることとなります。

【ケース3】実質的に同一性のある別会社で雇用を引き継ぐべき場合

倒産に伴う解雇を争うべきケースの3つ目は、実質的に同一性のある別会社で雇用を引き継ぐべき場合です。会社の倒産が真実であったとしても、倒産した会社と実質的に同一性のある会社が事業を継続しているのであれば、労働者の雇用もその会社が引き継ぐべき場合があるからです。

このような場合、事業から生じる責任やリスクだけを会社に残して倒産をし、事業から得られる利益を別会社に移すことを意味しており、不当な責任逃れであると言わざるを得ません。

例えば、業務内容が同じで、経営者や株主の構成も同一であり、会社財産なども引き継がれているような場合には、同一性があるものであり、偽装倒産、偽装解散であって、解雇は無効であると判断される可能性があります。

【ケース4】親会社の責任を追及できる場合

倒産に伴う解雇を争うべきケースの4つ目は、親会社の責任を追及できる場合です。

企業グループの1社であり、親会社が子会社を支配し、その解散、倒産の決定をしているような場合に、子会社に雇用される社員であっても、親会社の責任を追及できるケースがあります。

この場合には、親会社が子会社の経営を実質的に支配しており、法人格が形骸化しているとして、「法人格否認の法理」によって親会社の責任を追及し、解雇の無効を求めて争うこととなります。

【ケース5】役員の個人責任を追及できる場合

倒産に伴う解雇を争うべきケースの5つ目は、役員の個人責任が認められる場合です。

会社の経営状況の悪化を理由として行われた解雇について、解雇回避の努力が不十分であるなど整理解雇の4要件を満たさない可能性があるとき、その判断過程に関わった代表取締役をはじめとする役員に対して不法行為責任を追及することが考えられます。

特に、社員数や役員数の少ない小規模な会社ほど、役員個人の判断が会社に及ぼす影響は大きくと考えられます。

【ケース6】不当労働行為の場合

倒産に伴う解雇を争うべきケースの6つ目は、解雇が不当労働行為にあたる場合です。つまり、労働組合つぶしのために会社を倒産させるといったケースです。

不当労働行為とは、労働組合法に定められた違法行為であり、団体交渉拒否(不誠実団交)、不利益取扱い、支配介入の3種類があります。労働組合であることを理由に解雇をすることは、不利益取扱いの不当労働行為にあたり、違法です。

このような場合には、労働委員会に、不当労働行為救済申立てを行い、解雇を争うことができます。労働組合との協議中であるにもかかわらず、これを打切って解雇をすることも同様に無効となる可能性があります。

倒産により解雇された労働者が、利用すべき手続・制度

倒産解雇偽装倒産

会社が解散したり、倒産したりしてしまって、解散・倒産による解雇が有効となる場合には、労働者はとても大きな不利益を被ることとなります。これまで継続的に得られていた給与が、来月から突然なくなるわけですから、そのダメージは計り知れません。

給与がもらえることを前提として、家のローンを組んでいたといった事情がある場合、そのダメージは更に大きいものとなります。

勤務先の倒産は、あらかじめ予想しておくこともなかなか困難です。将来の生活が立ち行かなくなってしまう前に、利用できる手続や制度を理解し、最大限活用するようにしてください。

解雇予告手当

労働者を解雇するときには、解雇日の30日前に解雇予告を行うか、もしくは、その不足する日数分の平均賃金相当額の解雇予告手当を支払わなければならないことが、労働基準法で定められています(労働基準法20条)。例えば、30日前に予告をすれば解雇予告手当は不要ですが、10日前に予告をすれば20日分の平均賃金相当額を解雇予告手当として請求できます。

会社の解散、倒産にともなう整理解雇の場合、30日前からあらかじめ予告されていないことが多いため、労働者は解雇予告手当の請求をすることができることとなります。このことは、正社員だけでなく、契約社員、アルバイト、パート社員でも同様です。

勤務先が倒産してしまうとき、労働者としては寝耳に水で、次の転職先をすぐには探せないことが多いですから、解散、倒産による解雇後しばらくの生活費の足しにするためにも、必ず請求しておきましょう。

なお、解雇予告手当については、次に解説する立替払制度の対象とはなりません。

未払賃金立替払制度

会社が破産したときに未払賃金が存在する場合、破産申立て時に会社の有する財産(破産財団)からしか弁済を受けられません。そのため、業績悪化で勤務先が倒産してしまうと、もらえるはずの給与を満額支払ってもらえないことがあります。給与は、財団債権ないし優先的破産債権として優先的に支払われますが、そもそも破産する会社にはほとんど財産がないことも少なくありません。

このとき、労働者保護のために利用できる制度が、未払賃金立替払制度です。この制度は、一定の条件を満たした場合に、受け取れなかった未払賃金の80%を労働者健康安全機構に立替払いしてもらえる制度です。

立替払いを受ける要件は次のとおりです。

未払賃金立替払制度の要件

  • 会社が、労災保険適用事業であり、1年以上事業活動を継続していたこと
  • 未払賃金が2万円以上であること
  • 労働者が、会社の破産申立6か月前の日を起算点として、その後2年以内に退職したこと
  • 破産手続開始決定日から2年以内に立替払いの請求を行うこと

未払賃金立替払制度の対象となる賃金は、退職日の6か月前の日から、立替払い請求日の前日までに支払期限が到来しているものです。立替払いを受けられるのは、未払額の80%ですが、次のとおり年齢に応じて上限額が決められています。

退職時の年齢 未払賃金の限度額 立替払いの上限額
30歳未満 110万円 88万円
30歳以上45歳未満 220万円 176万円
45歳以上 370万円 296万円

この上限額を超える未払賃金が存在する場合には、その差額は破産手続きの中で配当を求めることとなります。詳しくは、破産管財人や清算人に問い合わせ、債権届を提出するのを忘れないようにしてください。

なお、未払賃金立替払制度の対象となるのは給与と退職金であり、前述した解雇予告手当や、賞与、役員報酬、解雇一時金などは立替払制度の対象外です。

参 考
未払賃金立替払制度とは?企業倒産でも賃金を最大8割回収可能!

未払賃金立替払制度は、会社が倒産して、賃金が支払われないままに退職を余儀なくされてしまった労働者を救済するための制度です。 具体的には、未払賃金立替払制度は、「賃金の支払の確保等に関する法律」(賃金支 ...

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会社財産の保全処分

会社が倒産しそうだという場合に、給与の支払を確保するためには、会社財産が散逸してしまわないよう、財産を調査し、保全しておく必要があります。

会社財産を保全するための法的手段として、代表的なものに仮差押えがあります。仮差押えは、未払賃金などを被保全債権として、会社財産である預貯金や不動産の現状を維持するという手続きです。なお、保全した財産から支払いを受けるためには、別途訴訟提起が必要となります。

また、会社がその資産を譲渡するおそれのある場合には、処分禁止の仮処分によって財産を保全することができます。

雇用保険(失業保険、失業手当)

業績悪化による整理解雇であれば、いわゆる「会社都合」での退職となりますので、雇用保険(失業保険、失業手当)については7日間の待機期間が経過した後、8日目から支給を受けることができます。また、給付額も、自己都合よりも金額が多くなります。

退職後、会社から離職票の交付を受け、これをハローワークに持参することによって手続きを行いますが、必ず「会社都合」の退職となっているかどうかを確認するようにしてください。

健康保険・年金の任意継続

会社が解散したり、倒産したりすると、健康保険などの資格喪失手続きを行うことにより、労働者は被保険者資格を失い、会社の健康保険証を使用することができなくなります。

この場合、労働者の次の転職先が既に決まっている場合には、新たに入社する会社の制度へ加入することになります。しかし、次の就職先が決まっておらず、しばらく再就職の予定がない場合には、国民健康保険に変更する方法のほかに、退職前の健康保険を任意継続するという方法を選択することができます。

任意継続を選択する方が、国民健康保険に変更するよりも労働者にとって保険料などの点で金銭的メリットのある場合があるからです。

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倒産解雇偽装倒産

今回は、倒産、解散する会社に勤務している労働者の方に向けて、倒産、解散にともなって解雇をされてしまうときの対応方法、救済策と、偽装倒産への対応策について、弁護士が解説しました。

リーマンショックや新型コロナ禍など、外的な要因によって残念ながら会社経営が思うように進まないことがあります。ましてや、労働者の立場にあっては抜本的な対策を打つこともできず、解雇をされてしまっては将来の収入も絶たれてしまうこととなります。

倒産をしてしまう会社に勤務している方をはじめ、労働問題にお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

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