労働問題

採用面接で「SNSをやっている」と言ったら不採用!違法性ない?

2021年7月5日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

「採用面接で『SNSをやっている』と回答したら不採用になった」という体験談がTwitterで話題になりました。面接官から「SNSをやっていますか?」と質問され、「Twitterをやっています」と回答したところ内定が出なかったとのこと。

面接官いわく、「SNSをやっていると、会社の悪口を言ったり、問題投稿をしたりなど会社に悪影響のため、当社はSNSを禁止している」とのことでした。同様に、SNSをやっていたことが見つかって不採用となってしまったという相談はよくあります。

しかし、現在ではむしろTwitter、Facebook、インスタグラムなどのSNSをまったくやっていない人のほうが珍しいことでしょう。「SNSをやるかどうかは個人の自由ではないか」という反論・批判もあります。

このようなことがあると、「SNSをすべて監視されてしまうのではないか」、「SNSの投稿内容が合否に影響するのか」と戦々恐々とする方も多いのではないでしょうか。

今回の解説では、

  • 「SNSをやっている」という理由で内定を与えないことが違法ではないか
  • 不採用とされてしまうようなSNS利用
  • 求職者がSNS利用で気をつけておくべきこと

といった法律問題について、労働問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

採用面接におけるSNS事情

実際のところ、採用面接で、Twitter、Facebook、インスタグラムなどのSNSは、どのように扱われているのでしょうか。

まず、次のグラフにもあるとおり、現在ではほとんどの人がプライベートではSNSを利用していますが、一方で、就職活動ではSNSを利用していません。このことはまさに、採用面接におけるSNSが敵視されている事情を反映しています。

それでもなお、冒頭に紹介したように「SNSをやっている」と回答しただけで不採用となったケースについて、肯定的な意見、否定的な意見があります。それぞれの意見は次のようなものです。

【否定的な意見の例】

  • 「閉鎖的な社会、年齢層の高い面接官にありがちな時代遅れの考え方だ」
  • 「ブラック企業であり、入社しなくて正解だ」
  • 「今時SNSやスマホをやっていない人のほうが珍しい」

【肯定的な意見の例】

  • 「バイトテロ問題、バカッター騒動など、SNSはよく悪用されている」
  • 「社員の不適切なSNS利用、炎上トラブルで、会社に大きな被害を与える事例は実際にある」

SNSを敵視しているような考え方は、いかにも古臭く、年寄りの意見のようにも聞こえます。しかし一方で、偏見も多くありますが、SNSにはまりやすい人の中には、根暗だったり、執着しやすく考え方が固定しやすかったり、自己顕示欲や承認欲求から不適切な投稿をしてしまったりといった問題性のある人が確かに存在します。

SNSをとりまく採用事情は、「世代間ギャップ」によっても大きく変化します。

「SNS利用を理由に不採用」は適法?違法?

SNSが広く普及した現代、冒頭の事例のように「SNSを利用していたら不採用」という判断は時代遅れであり、ブラック企業である疑いがあります。

一方で、会社側としても、不適切なSNS利用をするような常識のない人を採用しないよう、採用面談ではある程度厳しい目で見ているはずです。たとえ今は不適切な利用をしていなくても、将来トラブルの火種となりそうな社員は差し控えたいと考えるはずだからです。

そこで、SNSの利用を理由として不採用とすることが「適法なのかどうか」という労働法的な観点から、弁護士が解説します。

会社側に認められる「採用の自由」

会社側には「採用の自由」があります。そのため、法的に許されない差別(男女差別・年齢差別・人種差別)でない限り、「誰を、どのような条件で採用するか」は労使の合意によって決めることができます。

そのため、他にも迷う採用候補者がいたとき、「SNSの不適切な利用をするのではないか」と疑われるような態度の人よりも、「SNSを全く利用せず、今後も利用しないだろう」という人を採用することは、法的に問題ある採用態度とまではいえません。

したがって、「SNSを利用している」という理由で不採用とすることについて、いかにも時代錯誤的で、不合理、理不尽な判断だという印象は抱くものの、「違法」とまでは言いきれません。

参考解説

内定取り消しは制限される

会社側に認められた「採用の自由」があり、SNS利用を理由に不採用としても「違法」とまではいいきれないことを解説しました。

しかし、ひとたび採用した後は、会社の一方的な判断で社員を辞めさせることはできません。採用した後に入社を取り消すことを「内定取り消し」といいますが、法的には「解雇」と同じ性質を持つとされており、「解雇権濫用法理」が適用されます。

そのため、「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」と認められない限り、「不当解雇」として違法、無効になります(労働契約法16条)。

そのため、一旦採用した後は、SNSを利用していることや、その利用態様を理由として、内定を取り消すことは「不当解雇」となる可能性が高いです。特に、SNSが広く一般に普及している現代、「SNSを利用している」というだけの理由では、内定取り消しはできません。

不当な内定取り消しを受けてしまったときは、内定取り消しの撤回を求めて争うとともに、慰謝料請求を行いましょう。詳しくは、次の解説も参考にしてください。

参考解説

SNSの種類、利用態様によって判断は異なる

「SNS」は「Social Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)」の略であり、Facebook、Twitter、インスタグラムなどが有名です。

一方、Youtube、ニコニコ動画などの動画配信サービスや、LINEやメッセンジャーなどのコミュニケーションツールが含まれることもあります。このようにSNSを広い意味で捉えると「SNSをやっている人は採用しない」と、若年層のほとんどが採用されないこととなってしまいます。

他方で、援助交際を助長しかねない違法なアダルトSNS、出会い系アプリなど、企業秩序維持のために禁止が正当化されるようなSNSであれば、利用していることを理由に不採用とすることが可能なケースもあります。

要は、一律に「SNSを利用しているから不採用」というのではなく、そのSNSがどのようなものか、その人の利用態様などにしたがって採否を判断するという採用態度が適切だということです。

企業側は、SNSを調査・監視している

就職活動は「特別なタイミング」と心得て、特に慎重に行動することをおすすめします。

会社側として、不適切なSNS利用をする社員がいると経済的リスクを負うことは数々のニュース報道から明らかですから、企業の人事担当者はSNSをすべてチェックし、求職者のアカウントを見つければ監視をしていると理解しておくべきです。

特に、新卒採用の場合には、対象者がまだ学生であるため、中途採用に比べて、社会常識に欠ける社員が入社してしまう危険があります。そのため、会社はSNSに厳しく目を光らせています。

次のような点は、調査、監視されているものと考えてSNSを利用すべきです。

  • Facebookなどの実名で検索可能なSNSを利用するとき
  • 「XX年卒」など、就職する年度を明らかにしてSNSを利用するとき
  • 応募した社名、内定した社名を記載してSNSを利用するとき

企業側の「SNSを監視したい」というニーズから、SNSをはじめとしたインターネット上の情報を代わりに調査してくれる「インターネット探偵」のサービスも登場しているほどです。

採用拒否されてもしかたない不適切なSNS利用とは

ここまで解説したとおり、採用面接のとき、SNSを理由として不採用とすることについて、適切ではないケースもありますが、必ずしも違法とまでは言いきれません。

そのため、採用面接にのぞむ求職者としては、企業が「SNSの利用態様」までをも採用の判断材料としているという事実を理解して、問題視されるようなSNS利用をできる限り慎まなければなりません。

そこで次に、採用面接で問題視されうる、採用拒否されてもしかたないような不適切なSNS利用について、弁護士が解説します。

実名投稿

はじめに、実名で投稿しているSNS(例えばFacebook)について、真っ先にチェックしておきましょう。

実名で投稿するということは、「その人の意見・考えを表明したものと受けとられる」ということです。そのため、「自分ではそのようなつもりで書いたわけではないのに」という投稿が、読む人によっては思いもよらないとらえ方をされてしまうことがあります。

自分が客観的に読めているか自信がないときには、投稿内容に問題がないかどうか、周囲の人の意見も聞いてみることがおすすめです。

愚痴・悪口・不平不満

愚痴・悪口・不平不満といったネガティブな感情を他人にぶつけることは、社会的には非難されるべき行為ととらえられることがあります。例えば、次のようなものです。

  • 「今日も明日も実験でまじでダルい」
  • 「鬼教授の授業うざい」
  • 「就職説明会いったらダサいやつらばっかりだった」

愚痴・悪口・不平不満は必ずしも法違反となるものばかりではありませんが、採用側目線でいえば、ネガティブな感情をSNSに投稿して拡散しまうような人よりも、ポジティブで会社に良い影響をもたらしてくれそうな人材のほうを採用したいと思うのが当然です。

更には、愚痴・悪口・不平不満が行き過ぎると、誹謗中傷となり、更に問題が悪化するおそれがあります。他人に対する攻撃となると、名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)などの犯罪行為にあたる可能性があります。

参考解説

価値判断を押し付ける投稿

自分の価値判断を押し付けるような投稿も、問題ある投稿とみられるおそれがあります。例えば、次のようなものです。

  • 「今度の選挙はXX党の勝ちに決まってる」
  • 「家事な女がやるべき」

このような価値判断を押し付けるタイプの人は、仕事上でも上司や同僚とトラブルを起こしがちで、特にパワハラ、セクハラなどを起こしやすい傾向にあります。

SNSでの情報発信が容易になったことにより、個人の意見をインターネット上で気軽に発表できるようになりましたが、発表する意見の内容は選別しなければなりません。特に、政治や宗教など、人によって考え方が異なるものについては、他者への理解が必要となります。

独自の価値判断を押し付けたり、強硬に主張しているようなSNS投稿が企業に見つかれば、不採用の理由となるおそれがあります。

犯罪、社会常識に欠ける行動

SNSに、犯罪行為をしたことを自慢げに投稿している人がいます。例えば、次のようなものです。

  • 「昨日じゃまなおっさんがいたから蹴っ飛ばしたった」
  • 「高速で空いてたからXXkmで走ったら爽快だった」

犯罪行為は、当然やってはいけないことですし、ましてや、SNSで自慢していては採用上不利益となるのは当然です。

酔った勢いや、その場のノリで、社会常識に欠ける行動を行ってしまい、その様子を動画や写真にとってSNSに投稿してしまう例もよく見られます。

ハメを外した悪ふざけは、仲間内では評価されるかもしれませんし、ノリについていけないと「空気の読めない人」と思われるかもしれません。しかし、場の雰囲気や一時的な感情に流されて行ったあやまちがインターネット上に残り続けると、デジタルタトゥーとなり、採用面接で不利な事情として考慮されるおそれがあります。

企業側のSNSルールを理解する

企業側の立場にたって考えれば、SNSの不適切利用によって大きな被害を被る可能性があり、そのような兆候のある人が採用面接で不採用となることを理解いただけることでしょう。

そこで、「SNSを利用している」というだけで、「不適切な利用をするのではないか」という誤解を会社に与えてしまわないためには、企業側の立場をよく理解し、企業側が求めるSNSルールへの理解を示すことが重要です。

企業側が設けているSNS利用のルールの例には、次のようなものがあります。

  • 出会い系・アダルトSNSなどの不適切なコンテンツを含むSNSの利用を禁止する。
  • 業務時間中のSNS利用を禁止する。
  • 業務時間外であっても、会社の公式見解の発表ととられかねないSNS投稿を行わない(個人の意見・感想であることを明記する)。
  • 違法性のあるSNS書込みを行わない。
  • 違法ではなくても、社会的批判の対象となったり炎上の原因となったりするSNS書込みを行わない。

会社の定めるSNS利用のルールが、企業秩序を守るための合理的範囲内のものであるときには、これを守れない社員を懲戒処分、懲戒解雇にすることができます。したがって、採用段階においても、不採用にすることが許されると考えるべきです。

会社によっては、SNS利用に関するルールを、就業規則やSNS規程、内規、マニュアルなどの形式で作成していることがあります。

入社するときには、社員であれば就業規則は周知してもらうことができるので、選考が先に進んでいくときには、そのような社内に存在するルールについて面接時に質問しておいてもよいかもしれません。

労働問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、TwitterやFacebook、インスタグラムなどのSNSの投稿内容や、SNSを利用していること自体を理由として不採用とされてしまうケースについて、労働法の観点から弁護士が解説しました。

SNSが広く普及している現在、「SNSを利用している」というだけで採用・不採用を決定することは不適切です。しかし一方で、バイトテロ、バカッター問題のように、不適切なSNS利用が企業に大きな損害を与えるケースもあり、採用時にSNS利用について敏感になっている現状も理解しなければなりません。

求職者側の立場では、どのようなSNS利用が問題となっているのかを理解し、人事が問題としがなSNSの不適切利用を行わないよう、就職活動中はとくに慎重に行動しなければなりません。

理不尽な理由で不採用とされてしまった方はもちろん、労働問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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