労働問題

内定取り消しは違法?不当な内定取り消しの慰謝料を請求するポイント

2020年6月24日

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内定取り消し違法不当慰謝料

採用選考に合格をすると、「採用内定」を受けることができます。通常は、会社から採用内定通知書が交付され、これを受けて労働者側が入社承諾書、誓約書などの所定の書式を差し入れることによって内定が成立します。

しかし、採用内定が成立した後であっても、さまざまな理由により、会社の期待に沿うこととならなかったり、会社の意向に反したりする結果、会社が一方的な意思により突然、内定を取り消してくることがあります。これを「内定取り消し」といいます。

内定取り消しは、内定成立により入社を期待して他社の選考を辞退したり、直前検収を行ったりした内定者にとって、突然将来の就職を失うこととなり被害は甚大です。特に、まだ学生である新卒内定者にとっては、人生に一度しかない新卒入社の機会を、会社の不当な判断で奪われることを意味し、慰謝料や逸失利益などの補償を要求したいと考えるでしょう。

そこで今回は、内定取り消しが違法となるケースと、不当な内定取り消しの慰謝料を請求するときのポイントについて弁護士が解説します。

「労働問題」弁護士解説まとめ

採用内定とは

内定取り消し違法不当慰謝料

採用内定とは、専門用語で「始期付解約権留保付労働契約」とされています。簡略化して「内定」ということがあります。これに対して、逆に内定者側から内定をやめることを「内定辞退」といいます。

この意味は、雇用期間の開始日が到来してから働く期間がスタートする(始期付き)、そこまでは、採用選考時には知ることのできなかった事情や不測の事態があった場合には契約を解約する権利を留保している(解約権留保付き)、という内容の労働契約を締結した、ということです。

つまり、採用内定は「将来この会社で働く約束」だけではなく、既に労働契約まで結んでいる状態です。そのため、内定取り消しは、既に締結済の労働契約を会社が一方的に解約することを意味するものであり、「解雇」と同様の性質を持つものです。

このことは、内定の性質について判断した有名な最高裁判例(大日本印刷事件:最高裁昭和54年7月20日判決、電電公社近畿電通局事件:最高裁昭和55年5月30日)でも次のとおり判断されています。

大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)

以上の事実関係のもとにおいて、本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であつて、被上告人の本件誓約書の提出とあいまつて、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和四四年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのを相当とした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。

電電公社近畿電通局事件(最高裁昭和55年5月30日)

被上告人から上告人に交付された本件採用通知には、採用の日、配置先、採用職種及び身分を具体的に明示しており、右採用通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたと解することができるから、上告人が被上告人からの社員公募に応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する被上告人からの右採用通知は、右申込みに対する承諾であつて、これにより、上告人と被上告人との間に、いわゆる採用内定の一態様として、労働契約の効力発生の始期を右採用通知に明示された昭和四五年四月一日とする労働契約が成立したと解するのが相当である。

なお、採用内定の法的性質について「始期付解約権留保付労働契約」と解釈して、既に労働契約が締結されているものと考えると、労働契約とは労働者・使用者の合意によって成立するものですから、意思表示が合致していることが必要ということとなります。

つまり、会社や労働者のいずれか一方が、内定があったと思っているだけでは足りず、労働者側が就労する意思を示し、会社も働いてほしいという意向を表示していなければならないということです。

この点で、証拠が重要視される労働審判や裁判などでは、内定の証拠として内定通知書、承諾書、誓約書、その他の入社手続きに関係する書類などにより「内定が成立している」という事実を証明することとなります。

したがって、内定者としては、のちに内定を取り消されて争いにならないよう、内定通知書を必ず書面の形で送付してもらい、承諾の意思表示を証拠に残る形で行うことを心掛けてください。

内定取り消しの違法性と慰謝料・逸失利益

内定取り消し違法不当慰謝料

採用内定の性質を「始期付解約権留保付労働契約」としたとき、内定取り消しとは、「留保されていた解約権の行使」を意味しています。

次に、内定取り消しが違法となるかどうかについてどのような基準で判断されるか、そして、違法、不当な内定取り消しを受けてしまった労働者が、どのような救済を求めるべきであるかについて、弁護士が解説します。

解雇権濫用法理

労働契約を解約する方法には、3つしかなく、それは、労使の合意で解約する「合意解約」、労働者側の一方的な意思により解約する「自主退職(辞職)」、そして、会社側の一方的な意思により解約する「解雇」です。この3つの解約の種類の中で、内定取り消しは「解雇」にあたります。

そのため、留保された解約権の行使である内定取り消しは、解雇を制限する「解雇権濫用法理」のルールが適用され、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と是認できる場合でなければ違法、無効となります。つまり「不当解雇」ということです。

このことは、労働契約法16条に次のとおり定められています。

労働契約法16条(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

内定取り消しについて、解雇権濫用法理と同様の制限のあることは、さきほど解説した最高裁判例でも次のとおり示されています。

大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)

採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また、知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる。

内定取り消しの適法性の判断基準

内定取り消しは解雇と同様の性質を有すると解説しましたが、解雇と全く同じなわけではありません。

まだ会社で働いていないという点で、内定取り消しは解雇とは異なる特殊性があります。そのため、解雇が認められる場合と内定取り消しが認められる場合には差があります。

一方で、このような差は、必ずしも「内定取り消しのほうが解雇よりも容易だ」ということではありません。内定取り消しと解雇の違いは、次のような点にあらわれます。

  • 内定取り消しは、採用選考の過程において知り得ない理由によって行うものであり、採用選考の過程で質問・調査などが可能であった理由での内定取り消しは認められづらい
  • 特に、新卒者の内定を取り消す場合、試用期間による十分な注意指導・教育によって是正が可能な能力不足などを理由とした内定取り消しは認められづらい
  • 内定取り消しは、解雇に比べて従業員としての適格性を見抜く機会が少ない段階での解約である点で、解雇よりも会社の裁量が広く認められる側面がある
  • 内定取り消しのほうが、解雇に比べて、長期勤続の功労を評価するという側面が薄い分、解雇よりも会社の裁量が広く認められる側面がある

内定取り消しの違法性の判断は、これらの内定取り消しの一般的な性質を踏まえて、個別のケースに応じて具体的に判断する必要があります。そのため、内定取り消しを行った会社側の理由により、その内定取り消しが認められるか、認められないかを検討する必要があります。

慰謝料・逸失利益の請求

会社側の一方的な都合によって、正当な理由のない違法、不当な内定取り消しにあってしまったとき、労働者側が求めるべき救済には、主に慰謝料と逸失利益があります。

慰謝料は、精神的苦痛を負ったときにその損害を賠償するための金銭です。

内定取り消しを受けたことによる精神的苦痛はもちろん、その過程において、違法な入社前研修を強要されたり、圧迫面接を繰り返し行われたり、就活セクハラの被害にあったりといった事情がある場合には、その分請求する慰謝料を増額することができます。

逸失利益は、将来得られたはずの利益に関する損害賠償です。

内定が取り消されずに働けていれば給与が支給される予定でしたし、どうせ取り消されるくらいであればその内定がなければ他社の内定を受諾して、より高額な給与を受け取ることができた可能性もあります。特に新卒就活は人生に一度きりのため、その機会を失ってしまった逸失利益は、第二次新卒や中途採用の就活では取り戻せません。

【理由別】内定取り消しが認められる場合、認められない場合

内定取り消し違法不当慰謝料

内定取り消しは、内定者に及ぼす影響が甚大ですが、一切認められないわけではありません。

採用内定時に知ることができない事情で、雇用することが適当でないと判断されるときには、解雇権濫用法理にしたがって客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であれば、内定取り消しは認められます。

採用内定時に十分精査して内定を決定すべきですが、このままでは入社しても活躍の機会が全く見込めない場合や、会社の業績が悪くこのままでは破産するような場合であれば、内定取り消しをして補償を与えるほうが労働者にとっても利益が大きい場合もあります。

そこで次に、内定取り消しをした会社側の理由別に、内定取り消しが認められる場合、認められない場合について弁護士が解説します。

以下で解説するとおり、内定取り消しが認められるかどうか、すなわち、内定取り消しの適法性を判断するにあたっては、内定取り消しの理由が重要となります。内定取り消しの理由は会社が判断したものですが、対象となる内定者にも必ず伝えられなければなりません。

内定取り消しにあってしまったにもかかわらず、内定取り消しの理由がわからないという方は、取り消し通知書などを確認し、それでも不明なことは会社に問い合わせをし、回答を得ておくことが重要です。

入社前研修の拒否を理由とする内定取り消し

採用内定後であっても、入社前であれば、研修を行う場合には内定者の同意が必要となります。内定が「始期付き」であり、あくまでも雇用契約開始時から就労することを予定している以上、入社前に研修を命令する権限まではないからです。

そして、同意があってもなお、新卒内定者でありまだ学生の場合には、内定者の学業などに配慮をしなければなりません。合理的な理由を付して、入社前研修に出られない旨の申請があった場合には、これに配慮して、代替手段を検討しなければなりません。

特に、入社直前は、学生である新卒内定者にとっては卒業直前を意味し、卒業論文の審査や学会発表など、学業もピーク時期であることが予想されます。

当然ながら、このような配慮が必要なわけですから、入社前の内定者研修や課題、内定者懇親会などに出席できなかったことを理由として内定取り消しをはじめとした不利益な取扱いをすることは許されません。

適格性欠如を理由とする内定取り消し

採用内定後に、内定者に従業員として適格性を欠く事情が明らかとなったときには、内定取り消しが認められる場合があります。

例えば、適格性欠如を理由として内定取り消しが認められる可能性のあるのは次のようなケースです。

  • 採用選考時に経歴詐称をしていたことが発覚したケース
    :会社が採用選考時にきちんと調査をして適格性を判断すべきですが、労働者側が意図的に経歴詐称を行っており、その経歴が、必須の資格の有無など、採否を決めるにあたってとても重要な内容であったときには内定取り消しが認められる場合があります。
  • 採用内定後に犯罪行為を起こして逮捕されたケース
    :犯罪行為を起こして逮捕された場合、それが会社の業務に大きな支障を生じる場合には、内定取り消しが認められる場合があります。
  • 採用内定を受けたが、卒業資格を得られなかったケース
    :新卒者の内定の場合には、最終学歴について「卒業予定」として内定を成立させているところ、卒業資格を得られなかった場合には内定の前提を満たさず、内定取り消しが認められます。入社日に入社をし、就労を始められることが雇用契約の内容となっているからです。
  • 採用内定後に、健康状態の問題が明らかになったケース
    疾病があることを隠していたなど健康状態に問題があり、業務を遂行できる状態ではなかったことが明らかになった場合、雇用契約上の約束となっている仕事がこなせない程度に至っていた場合には、内定取り消しが認められます。就業に全く影響のない傷病の場合には、内定取り消しの理由とはなりません。

なお、いずれの理由であっても、客観的に合理的な理由であり、社会通念上相当な程度に至っていると評価できる内容でなければならず、採否の判断に支障がない程度の経歴詐称や、業務に支障のない内定者の性格などを理由とする内定取り消しは違法、無効です。

一方で、著しく社内の秩序を乱すような問題行為や素行不良が、入社前の研修や説明会などの場で明らかになった場合、その程度によっては内定取り消しが有効となる場合もあります。

能力不足を理由とする内定取り消し

次に、採用内定後に、内定者が従業員としてふさわしい能力を有していないとき、能力不足を理由とした内定取り消しが認められる場合があります。

例えば、能力不足を理由として内定取り消しが認められる可能性のあるのは次のようなケースです。

  • 採否の判断基準となった資格を有していないことが明らかとなったケース
    :採否の判断基準として、一定の資格を有していることを要件とする場合があります。このような場合に、実はその資格を有していないことが明らかになったとき、業務能力を欠くことから能力不足を理由とした内定取り消しが認められる場合があります。
  • 職歴に偽り、過大申告があったことが明らかとなったケース
    :中途採用の場合に、前職で一定の役職についていたり、一定の実績をあげたりしていたことを採否の判断基準とすることがあります。採用選考で自分を良く見せようとすることはよくあることですが、あまりに過大な申告や虚偽の申告があったとき、内定取り消しが認められる場合があります。
  • 内定者の性質に基づき、通常であれば有しているであろう能力を有していないケース
    :能力不足について、内定者の性質に応じて検討する必要があります。例えば、中途採用者であればそのキャリアに応じた能力を有しているのが当然ですが、新卒者に能力を求めるのは行き過ぎです。その内定者の性質に応じて通常であれば有しているであろう能力の欠如が明らかとなった場合には、内定取り消しが認められる場合があります。

なお、いずれの理由であっても、その能力の不足が、試用期間による教育、指導によって改善が不可能でなければ内定取り消しは難しいです。特に新卒内定者の場合には、入社後の教育を行う責任が会社にあり、これを全く行わない状態での「能力不足」との評価は当たりません。

業績悪化を理由とする内定取り消し

募集・採用を行うということは、業績が好調である、事業拡大の予定があるなど、会社が好ましい状況にあることを示しています。しかし、一旦は採用内定を出したものの、予測していなかった業績悪化によって、採用を行うことができなくなってしまうことがあります。

このようなとき、採用内定時に留保されていた解約権を行使し、内定取り消しを行うことは、業績が悪化しているからという理由だけで許されるわけではありません。

経営悪化しているとき、内定者だけでなく正社員についても、整理解雇をすることが認められることがあります。整理解雇の適法性は、整理解雇の4要件(業務上の必要性、解雇回避の努力義務、人員選定の合理性、手続の適正)によって判断されます。したがって、内定取り消しについてもこの判断基準で判断をし、要件を満たさない場合には内定取り消しは違法です。

ただし、解雇者の選定を行うにあたって、既に十分な貢献のある正社員よりも内定者を選択することには一定の合理性があります。この点を判断した裁判例(インフォミックス事件:東京地方裁判所平成9年10月31日決定)では、次のように判断されています。

インフォミックス事件:東京地方裁判所平成9年10月31日決定

⑶ 被解雇者選定の合理性
 本件では、債権者と債務者は、採用内定関係にあり、未だ就労していなかったのであるから、前記事実経過のとおり、債権者が既にIBMに対して退職届を提出し、もはや後戻りできない状態にあったことを考慮しても、債務者が既に就労している従業員を整理解雇するのではなく、採用内定者である債権者を選定して本件内定取消に及んだとしても、格別不合理なことではない。

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内定取り消し違法不当慰謝料

今回は、内定取り消しの違法性に関する基本的な考え方を説明し、内定取り消しを受けてしまったときの対応方法などについて弁護士が解説しました。

内定取り消しされてしまった場合には、すぐに弁護士にご相談ください。内定取り消しを争う場合には、初動が重要となります。内定取り消しの理由をきちんと確認し、労働審判、訴訟などの法的手続きを見すえて適切な補償を勝ち取るサポートができます。

特に、新卒採用は人生で一度しかない大切な機会であり、台無しにされたとすれば損失はとて大きいものです。人生を狂わせてしまわないよう、慎重な決断をしてください。

「労働問題」弁護士解説まとめ

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