労働問題

試用期間中や試用期間満了時の解雇・本採用拒否は違法?

2020年6月23日

試用期間解雇本採用拒否

終身雇用の慣習が長く続いた日本では、長期雇用を想定する正社員の雇入れにあたっては、採用選考の過程では知ることのできない従業員としての適格性を判断するために、試みに使用する期間、すなわち、「試用期間」を設けて入社させることが一般的となっています。

会社にとって面接で全てを見抜くことは難しく、ある程度働いてもらうことで適正を見極める期間を設けようというわけです。しかし一方で、ひとたび採用されたにもかかわらず、能力や適格性といった抽象的な理由で一方的な解雇・本採用拒否をされてしまっては、労働者側にとっては突然収入を失うこととなり、不利益が大きすぎます。

そのため、試用期間中の解雇、試用期間満了時の本採用拒否には、本採用後の解雇と同種に「解雇権濫用法理」による制限が課されており、会社の自由に許されるわけではありません。

そこで今回は、試用期間の基本的な性質と、試用期間中の解雇、試用期間満了時の本採用拒否がどのような場合に違法となるのかについて、弁護士が解説します。

「労働問題」弁護士解説まとめ

試用期間とは

試用期間解雇本採用拒否

試用期間とは、長期雇用を予定している正社員の雇入れにおいて、採用面接、採用内定といった採用選考の過程を経て入社した社員に対して、この採用選考の過程では図ることの難しい従業員としての適格性や職業能力を判断するために設けられる、試みの試用期間です。

「試み」というイメージから、「試用期間であれば、あくまでもお試しであり、解雇や本採用拒否は容易にできる」と考える労働法の知識の乏しい会社が少なくないため、試用期間中の解雇、試用期間満了時の本採用拒否は、しばしば労働問題の火種となります。

そこでまずは、試用期間に関する法律の基本的な知識を弁護士が解説します。

試用期間の法的性質

一旦採用後に、いつでも解雇、本採用拒否ができるのでは労働者の地位が極めて不安定になってしまうため、試用期間の法的性質について「既に労働契約が成立している状態である」とされています。つまり、試用期間という、本採用後とは別の契約が結ばれているのではなく、試用期間開始時から既に本採用と同様の契約が締結されているということです。

ただし、採用選考の過程ですべての能力と適性を図ることには限界があるため、試用期間中もしくは試用期間満了時には、労働者の不適格性を理由とした解約権を行使することができます。

このことから試用期間を「解約権留保付雇用契約」と呼びます。

試用期間の長さ

試用期間の長さについて、多くの会社では3か月から6か月程度の期間が設定されています。自分の試用期間の長さがわからない場合には、雇用契約書もしくは就業規則を見せてもらうことで知ることができます。

試用期間の長さについては、法律上の制限はありませんから、会社が自由に決めることができます。ただし、上記のように解雇・本採用拒否などの解約権が留保される、労働者にとって不安定な地位である以上、不当に長期の試用期間を定めることは適切ではなくありません。

年単位の試用期間の定めなど、あまりに長期間の試用期間が設定されているときは、公序良俗に反して無効となる可能性もあります。

試用期間の延長

入社当初に定められた試用期間のうちでは、能力・適性についての判断が不十分な場合に、試用期間の延長がされることがあります。

ただし、試用期間の延長が許されるためには、会社の就業規則に試用期間の延長に関するルール(延長の理由、延長できる期間など)が明確に定められており、それに従っていなければなりません。試用期間の延長は、労働者側にとっては明確に不利益だからです。

労働者側で、試用期間の延長を通知されたときは、今後不当な解雇や不当な本採用拒否を受けないためにも、次のことを必ず確認し、できれば書面にして通知してもらうようにしてください。

  • 延長された試用期間の満了日
  • 試用期間が延長された理由(能力不足・適性不足と評価された理由)
  • 本採用されるための改善点

有期契約が試用期間となる場合

試用期間は本採用前であってもすでに雇用契約が成立しており、その契約は本採用後の契約と連続的なものです。

一方で、このような規制を回避しようとする悪質な会社の中には、採用して試用期間を課すのではなく、一旦有期契約社員として雇用し、試用期間と同様の一定期間の経過後に正社員として採用する、という方法をとることがあります。

しかし、次の最高裁判例では、このような「試用」としての意味を持つ有期雇用契約の場合には、有期雇用契約とその後の無期雇用契約は別々のものではなく、試用期間と評価されると判断されました。つまり、このような場合には、有期契約だからといって期間満了で解約をすると、「不当解雇」となる可能性があるということです。

神戸弘陵学園事件判決(最高裁平成2年6月5日)

使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。

試用期間中の解雇は違法?

試用期間解雇本採用拒否

試用期間とは、解約権留保付き労働契約であると解説しました。そして、この留保された解約権の行使は、次の2つの場面で問題となります。

  • 試用期間中の解雇
  • 試用期間満了時の本採用拒否

いずれも、労働契約の締結後にこれを会社側からの一方的な意思で解約をするという点では同じことですが、そのタイミングが異なるため、「違法となるかどうか」を判断する基準が異なることがあります。

試用期間中であれ「解雇」をする場合には、労働者保護のため解雇を制限する「解雇権濫用法理」の制限を受けます。つまり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用した「不当解雇」として、違法、無効となるというわけです(労働契約法15条)。

そして、社会通念上解雇が相当といえるためには、「解雇されても仕方ない」といえる必要があり、そのためには「社員としての能力・適性を欠く」というだけでは足りず、「改善が不能である」といえる必要があります。

更に、試用期間中の解雇の場合には、試用期間の間はその職務能力、従業員適性の判断のために使うことが予定されており、場合によっては試用期間の延長すら可能です。そのため、試用期間分の期間を改善のために使い、注意指導、教育を徹底したとしてもやはり解雇に値する、といえない限り、解雇が無効と判断されるリスクが高いといえます。

試用期間満了時の本採用拒否は違法?

試用期間解雇本採用拒否

次に、留保解約権の行使の2つ目の場面である、「試用期間満了時の本採用拒否」のケースについて弁護士が解説します。

「試用期間満了時の本採用拒否」の場合には、試用期間中の十分な指導教育の結果を踏まえてもなお、職務能力が不足し、従業員としての適格性を欠くときは、「試用期間中の解雇」よりは広く解雇が認められることとなります。しかし、それでもなお、不当な理由に基づく本採用拒否は無効となります。

解雇権濫用法理とは

解雇権濫用法理とは、長期雇用の慣行が根強く残る日本において、会社の一方的な意思によって雇用契約を解約し、会社から追い出す「解雇」を制限するための考え方です。

解雇権濫用法理は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は権利濫用として無効とする考え方で、労働者保護の裁判例の積み重ねによってつくられ、法律に定められました。解雇権濫用法理を定める労働契約法の条文は、次のとおりです。

労働契約法15条(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

試用期間の趣旨・目的に合わない本採用拒否は違法

試用期間とは、採用選考だけでは見極めることのできない能力や適性を判断するため、解約権の留保された期間です。そのため、通常の解雇と同程度の厳しい規制がされてしまっては、試用期間を設ける意味がなくなってしまいます。

そのため、試用期間満了時の本採用拒否は、解雇と同様に解雇権濫用法理の制限がなされるとしても、通常の解雇よりは広い範囲で解雇の自由が認められています。

ただし、その留保解約権の行使(本採用拒否)が許されるためには、解約権留保の趣旨・目的に照らした解雇でなければならないものとされています。

具体的には、試用期間が設けられる趣旨・目的は通常、採用段階では判断できない労働者の資質・性格・能力といったものの調査や観察、判断のためです。そのため、採用段階でもあらかじめ判明していた事項や、従業員としての適格性にまったく関わらない事情(社長の気に入らないなど)で行う本採用拒否は違法、無効です。

採用選考時に行っていなかった身元調査を試用期間中に行い、判明した事情に基づいて解雇・本採用拒否を行うということも、不当解雇となる可能性の高い行為です。

具体的な事情を示さない本採用拒否は違法

試用期間満了時に本採用拒否する際には、会社は、労働者に対して、従業員としての適格性が欠如していると評価した具体的な事情を示す必要があります。

試用期間満了時の本採用拒否は、試用期間経過後、本採用されてからなされる解雇よりはゆるやかに認められるものの、客観的な理由が必要であり、抽象的な理由しかなかったり、理由がそもそもなく会社の勝手な都合であったりといった本採用拒否は、違法、無効です。

労働者側において、十分な理由が示されないときは、会社に対して本採用拒否の具体的な事情を「文書で」示すよう強く求めます。文書で明示させることにより、勤務成績の不良や勤務態度など、考え得る本採用拒否の理由を無暗に拡大されてしまうことを防ぐ効果があり、のちの労働審判や訴訟などでも証拠として役立ちます。

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試用期間解雇本採用拒否

今回は、試用期間中や試用期間満了時の解雇・本採用拒否について弁護士が解説しました。試用期間だからといってどのような理由に基づく解雇も認められるわけではありません。

労働者側が強く求めても、客観的、具体的な事情を明らかにしてもらうことができない解雇・本採用拒否は、不当なものである可能性が高いです。

試用期間を巡る解雇・本採用拒否の争いは、試用期間について就業規則にどのように定められているかを必ず確認しておかなければなりません。試用期間自体は、企業運営の円滑化のためにも設定されることが一般的なものですが、不当な本採用拒否、不当解雇の対象となったときには、会社と戦う必要があります。

試用期間と解雇・本採用拒否に関する労働トラブルにお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談ください。

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