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ポイントサービスの運営者が注意すべき法律問題(資金決済法・景品表示法・終了時の注意など)

Webサービスやアプリなどの新規サービスを立ち上げるとき、ユーザーの利便性向上を目的としてポイントサービスを導入することがあります。むしろ現在は、Webサービスやアプリでは現金のやりとりは少なく、サービス内で使用できる独自のポイントを購入して商品やサービスの支払いに充ててもらうのがほとんどでしょう。

しかし、ポイントサービスは、うまく運用すればユーザーに喜ばれる一方、悪質な事業者がこれを悪用すればユーザーの利益を侵害し、不当な不利益を負わせるおそれがあり、法律による規制が定められています。

今回は、ポイントサービスを導入し、運営する際に事業者が知っておきたい法律問題について、資金決済法・景品表示法・消費者契約法の3つの観点から解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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ポイントサービスを規制する3つの法律

本

ポイントサービスを導入するにあたり、事業者は、次の3つの法律における法的規制を知っておかなければなりません。

資金決済法は、技術革新によって普及が進む多様な決済手段からユーザーを保護するための法律であり、ポイントサービスとの関連では、資金決済法の「前払式支払手段」にあたるポイントに対し、供託義務などの厳しい制約が課されています。

景品表示法は、不当な景品や表示によって顧客を誘惑し、自由な判断を妨げることを禁止する法律であり、ポイントサービスとの関連では、おまけとして付与される無償ポイントが景品表示法の「景品類」にあたるとき、総額や上限額に制限があります。

消費者契約法は、悪質な詐欺的取引などから消費者を保護する法律であり、ポイントサービスの設計にあたりユーザーを害する態様となっていないか注意が必要となります。

資金決済法の法的規制

資金決済法は、資金決済に関するサービスにおけるユーザー保護を定めていますが、ポイントが有償で付与されたり、お金の代わりとして商品・サービスの購入に充てられたりするとき、ポイントもまた決済手段の1つといえます。

ポイントサービスの運用を開始時に注意すべき資金決済法の法的規制は、次のとおりです。

なお、ポイントサービスと資金決済法の法的規制について、詳しくは次の解説もご参照ください。

前払式支払手段とは

資金決済法では、次の3要件を満たすポイントサービスについて、前払式支払手段として法的規制の対象となることを定めています。

この3要件を満たすポイントサービスに法的規制があるのは、金銭と同等に扱われるポイントであるため、ユーザーを不当に害しないよう、ポイント発行者の財産的基盤の確保などを行政が監督する必要があるからです。

有償のポイントを付与していた事業者が、万が一破産したり、サービス終了してしまったりしたときでも、ユーザーの財産を守るための規制です。

前払式支払手段について事業者が負う義務

資金決済法の前払式支払手段となるポイントの発行では、ユーザー保護の観点から、責任の所在を明らかにし、財産的基盤を確保するために、次のような義務を負います。

特に重要とされるのが「供託義務」であり、基準日において未使用残高が1000万円を超えると、その2分の1以上の金額を、発行保証金として供託しなければなりません。そのため、少なくとも500万円以上のまとまったお金が必要となるため、十分な検討が必要です。

発行保証金の供託義務

一方で、資金決済法の法的規制は、前払式支払手段の要件を満たさないようなサービス設計とすることにより回避できます。実務上よく用いられる方法は、無償ポイントを付与する方法や、ポイントの利用期限を6ヶ月以内にするといった対策です。

法的規制が適用されないような設計とするのか、あるいは、法的規制をきちんと遵守して運用するのかは、ポイントサービスを導入する事業者側のメリット・デメリットを考慮した上での経営判断となります。

景品表示法の法的規制

景品表示法は、不当な景品、表示により顧客を誘引することを防止し、消費者の自主的で合理的な選択を守るといった消費者保護のための法律です。

景品や表示による不当な誘惑は、消費者が本来であれば不要な商品・サービスを購入してしまうことにつながるおそれがあります。過大な景品、不当な表示によるだましあいの競争を規制し、商品・サービスの価値自体による勝負をしてもらうために、法的に規制されているわけです。

景品表示法とは
景品表示法とは

なお、ポイントサービスの景品表示法による法的規制については、次の解説もご参照ください。

景品類とは

景品表示法には、「景品」と「表示」の法的規制が定められていますが、ポイントサービスに関連するのは「景品」の規制です。過大な景品によって消費者が誘惑されて商品やサービスの価値自体による冷静な判断をできなくなるおそれがあるため、ポイントのつけすぎは景品表示法に違反するおそれがあります。

Webサービスやアプリ内でポイントサービスを導入するとき、そのポイントが景品表示法の「景品類」にあたり、法的規制を受ける可能性がある点が問題となります。景品表示法の「景品類」の要件は次のとおりです。

  1. 顧客誘引の手段となること
  2. 取引に付随して提供されること
  3. 経済上の利益があること

なお、この3つを満たしているときでも、「内閣総理大臣が指定するもの」である必要があり、この点で、告示などで示された例外規定にあてはまるときは「景品類」には該当しません。

上記の3要件を満たすポイントは、景品表示法の景品類として、付与することのできる額などに制限が加えられています。

ただし、例外的に、「値引き」の意味をもつときには景品類にはあたりません。つまり、Webサービスやアプリ内で付与される無償のポイント、「1ポイント=1円」のようにサービス利用の値引きとして利用できるポイントは景品表示法の規制を受けません。

景品類の上限規制

ポイントが、景品表示法の景品類にあたるときには、不当な顧客誘引とならないよう、一般懸賞・共同懸賞・総付景品といった景品の与え方によって、提供できる金額の上限規制があります。

消費者契約法の法的規制

消費者契約法は、消費者を保護するための基本的な法律であり、悪質な取引から消費者を保護するための規制を定めています。消費者契約法に違反する取引は、消費者に一方的な不利益を与えるため、無効となります。

ポイントサービスを導入するとき、そのサービス設計がユーザーに対して一方的な不利益を与えるようなとき、消費者契約法に違反して無効となってしまうおそれがあります。

特にサービス設計で注意しなければユーザーの権利を侵害しがちなのが、有効期限と、サービスの廃止・終了時の問題です。

有効期限についての具体的な法的規制はないため、どのような設定をするかはサービス提供者に任されていますが、不当に短かったり、ユーザーに不意打ち的な有効期限を設定したりすることは、消費者契約法違反のおそれがあります。

また、終了・廃止についても、突然予告なく終了し、ポイントの利用期間を奪うような行為は控えなければなりません。なお、資金決済法の前払式支払手段にあたるポイントのときは、サービス終了時に払戻義務があります。

ポイントサービスの導入・運営の法律問題を、弁護士に相談するメリット

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

ポイントサービスを導入、運営するときに、事業者側が弁護士に相談するメリットを解説していきます。

なお、サービス開始後に法的規制に反しているなどの問題点が明らかになってしまわないよう、法律問題に関する検討は、ポイントサービスを導入する前に、事前に行っておくのがおすすめです。

法的規制に反しないサービス設計となる

ポイントサービスに適用される法的規制はとても複雑です。特に重要なものは、有償ポイントの場合には資金決済法、無償ポイントの場合には景品表示法です。

資金決済法の前払式支払手段にあたるとき、発行保証金の供託義務は、特にベンチャー、中小・スタートアップ企業などの小規模な事業者の場合、かなり重い負担となることがあります。この点で、サービス設計を変更することで法的規制を回避できるときにいは、法律上の要件を熟知した弁護士によるアドバイスを受けることが有用です。

ポイントサービスの導入では、単に法律に違反しないというだけの形式的な検討ではなく、そのポイントサービスを導入、運営するビジネス面でのメリットを失わないよう、法律とビジネスの両面から総合的に検討する必要があり、企業法務を多く取り扱う弁護士に相談するのがおすすめです。

利用規約、行政への提出書類の作成をサポートしてもらえる

ポイントサービスを導入するときは、そのサービスの内容について利用規約を作成し、ユーザーに周知することが重要です。利用規約は、ユーザーがサービスを利用しやすくするだけでなく、企業側にとってもリスク回避に役立つため、必ず作成しなければなりません。

利用規約を作成するときにも、法律の規制を守った内容とする必要があり、弁護士に作成を依頼することが有効です。また、サービス内容によっては、特商法上の記載、プライバシーポリシーなども必須の準備書類となります。

あわせて、資金決済法の前払式支払手段にあたるとき、行政への届出と報告が必要となります。これらの手間のかかる書類の作成についても、弁護士に作成をお任せいただくことができます。

顧問弁護士のサポートを受けられる

弁護士浅野英之

ポイントサービスの導入時から弁護士に相談しておけば、いざ法的トラブルが生じてしまったとき、すぐに相談することができます。利用規約などを弁護士が作成していれば、速やかに事態を把握し、対処してもらうことができます。

ポイントサービスの運営では、顧客からのクレーム、行政からの法違反の指摘といった法的トラブルが発生しやすく、正しく対応しなければサービスを円滑に運営することができません。

なお、サービス開始時のスポットでのリーガルチェックだけでなく、顧問弁護士として継続的な関係をもつことによって、ビジネス内容をより詳細に把握してもらい、企業の実情にあわせたサポートを受けることが期待できます。

まとめ

今回は、ポイントサービスを導入する事業者が注意しておくべき、ポイントサービスの法律問題について解説しました。

ポイントサービスを導入している企業はとても多く、それが当たり前のようになっている現在、ポイントサービスの導入、運営はとても容易だと思われているかもしれません。しかし、ポイントサービスには法律問題があることを理解し、資金決済法、景品表示法、消費者契約法など、関連する法的規制を遵守しなければなりません。

ユーザーを侵害するような態様になってしまっていると、法律違反となることはもちろん、悪いサービスだとの評判を招き、炎上してしまうリスクもあります。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、企業法務に注力し、ポイントサービスについても多数の企業のサービス設計のご相談をお聞きしております。

ポイントサービスをはじめ、ビジネスの問題であっても、あわせて法律問題も検討しなければならないことを理解していただき、弁護士にリーガルチェックのご相談をいただくのがおすすめです。

ポイントサービスのよくある質問

ポイントサービスを導入するとき、気をつけておくべき法律には何がありますか?

ポイントサービスには法的規制があります。具体的には、資金決済法、景品表示法、消費者契約法の規制を受ける可能性があるため、サービス内容に応じて検討が必要です。もっと詳しく知りたい方は「ポイントサービスを規制する3つの法律」をご覧ください。

ポイントサービスの設計を弁護士に任せるときのポイントは?

ポイントサービスの設計が法違反でないかどうかは、サービス導入時にあらかじめリーガルチェックしておくことが重要です。顧問弁護士として継続的に、顧客からのクレーム、行政からの法違反の指摘に対応してもらうこともできます。

ポイントサービスの全解説

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