企業法務

自社のポイントサービスを導入する時の資金決済法上の注意点

2020年9月24日

お問い合わせはこちら

法律問題にお悩みのすべての方へ。
弁護士法人浅野総合法律事務所まで、まずはお気軽にご相談くださいませ。
法律相談のご予約は、24時間受付しております。

03-6274-8370

お問い合わせ

ポイントサービス資金決済法前払式支払手段

ウェブサービス、アプリサービスを開始、運営するにあたり、そのサービス内で利用することができるポイントを付与することが増えています。

ウェブサービス、アプリサービス内で利用できるポイントサービスは、現金を直接やり取りする手間を省いてユーザーの利便性を向上させるとともに、サービス自体を継続的に利用してもらうことができ、利用者の囲い込みに役立つというメリットがあります。

しかし、そのようにサービス提供側である企業側にとって大きな利点がある反面、ユーザーにとっては、ポイントサービスがサービス利用を加熱しすぎてしまったり、不必要で高価なサービスを購入してしまったりといった被害につながるおそれがあるため、ポイントサービスは法律による規制を守って運用しなければなりません。

ポイントサービスを規制する主な法律には資金決済法と景品表示法(景表法)があります。このうち、特に、そのポイントサービスが資金決済法で定められる「前払式支払手段」にあたる場合、さまざまな制約を受けます。

そこで今回は、ウェブサービス、アプリサービス内でポイントサービスを運用するとき問題となる、資金決済法の「前払式支払手段」の制約の規制について弁護士が解説します。合わせて、景品表示法(景表法)による規制についても触れます。

浅野総合法律事務所のアドバイス

スタートアップ企業、中小・ベンチャー企業にとって、新規性の高いビジネスを行うことが重要となりますが、先行例の存在しないビジネスには、法的リスクがつきものです。法的リスクを事前に検討することなくサービスを開始してしまうと、後に違法性があることが発覚した場合、投下資本を回収できなくなるおそれがあります。

当事務所では、ウェブサービスやアプリをローンチするにあたり重要となるリーガルサービスを提供しています。

ビジネスの適法性チェックから、利用規約・プライバシーポリシー・特商法の記載事項などの重要書類の作成、運営開始後の注意点に至るまで、顧問弁護士として一括してサポートすることができます。

「ポイントサービス」弁護士解説まとめ

資金決済法の「前払式支払手段」とは

ポイントサービス資金決済法前払式支払手段

ウェブサービス、アプリサービス内に導入したポイントサービスが、資金決済法の「前払式支払手段」にあたると数多くの制約を受けるため、まずはこの前払式支払手段がどのようなものかを解説します。

前払式支払手段は、法律上、次の要件を満たす場合であると規定されています(資金決済法3条1項)。

前払式支払手段の要件

  • 金額等の財産的価値が記録されていること(価値の保存)
  • 金額・数量に応じた対価を得て発行されていること(対価発行)
  • 代価の弁済のために使用できること(権利行使)

資金決済法の前払式支払手段にあたるポイントサービスを開始しようとすると、さまざまな制約を検討せざるをえませんから、まずはご自身の開始するポイントサービスが、前払式支払手段にあたるのかどうかを慎重に検討する必要があります。以下では、要件ごとに詳しく解説します。

資金決済法上の前払式支払手段は、さらに「自家型前払式支払手段」と「第三者型前払式支払手段」の2種類にわけられます。

「自家型前払式支払手段」は、ポイントの発行者のサービス内、アプリ内などでのみ使用することができるポイントサービスのことです。自社の運営するサービス内でのみ利用できるポイントを発行、付与する場合、これにあたります。ウェブサービス、アプリ内のポイントサービスは通常こちらの「自家型」です。

「第三者型前払式支払手段」は、発行者以外の第三者に対しても利用可能なものです。例えば、スイカ(Suica)やパスモ(PASMO)のように、幅広く流通しているポイントサービスがは「第三者型」です。

「自家型」が、未使用残高が1000万円を超えたときに内閣総理大臣への届出が必要となるのに対し、「第三者型」は発効前に内閣総理大臣の登録が必要であるという点で、広く流通することとなる「第三者型」のほうがより厳しい制約が課されています。

今回は、ウェブサービス、アプリサービスにおいてポイントサービスを導入する際に検討しなければならない「自家型」を中心に解説します。

【要件1】財産的価値の記録

1つ目の要件である「金額等の財産的価値が記録されている」とは、例えば、「1000ポイント」というように、一定の数値で財産的価値があらわされていることをいいます。実際に紙に印刷されているような場合でなく、ウェブサービスやアプリサービス内で電磁的方法により記録されている場合も、この要件を満たすものとされています。

通常、ウェブサービス、アプリサービス内で利用されるポイントは、「ポイント」「ゴールド」といった単位が設定され、数値によって算出されますから、この要件を満たします。

【要件2】対価を得て発行

2つ目の要件である「金額・数量に応じた対価を得て発行されている」とは、一定量のポイントを獲得するために現金やクレジットカードでポイント購入を行う必要があることをいいます。

これに対して、いわば「おまけ」として、対価を得ずに無償でポイントが付与される場合、そのポイントが現金の代わりに使われたり、割引や値引きの対象となったり、商品や景品があたることとなっていたりしても、前払式決済手段にはあたりません。つまり、無償で付与されるポイントの場合には、資金決済法の制約は受けません。

2つ目の要件との関連で、無償ポイントのみを発行する場合には前払式支払手段にあたらず資金決済法の適用はないももの、有料のポイントと無料のポイントの両方を発行している場合には注意が必要です。

有料のポイントと無料のポイントを発行し、これらがウェブサービス、アプリサービス内で区別されずに運用されている場合には、有料のポイントだけでなく、無料のポイントも合わせて資金決済法の制約を受けることとなっているからです。この場合、後述する「供託義務」について、無料ポイント分も合わせて、その未使用残高の2分の1以上を供託する義務が生じてしまいます。

このような事態を回避するためには、ウェブサービス、アプリサービス内で、有料のポイントと無料のポイントを分けて表示することで、有料のポイントのみを資金決済法の適用対象とすることができます。

【要件3】代価の弁済に使用可能

3つ目の要件である「代価の弁済に使用できる」とは、何かの支払が必要となるときに、そのポイントによって支払に代えることができるということです。

ウェブサービス、アプリサービス内で利用することのできるポイントは、そのポイントによって、本来であれば現金やクレジットカードで決済することが必要なアイテム購入、商品購入、サービス内容の拡充などに利用されるため、この要件を満たしています。

前払式支払手段にあたるポイントサービスが守るべき義務

ポイントサービス資金決済法前払式支払手段

次に、ウェブサービス、アプリサービスで導入するポイントサービスが、資金決済法に定められる前払式支払手段にあたるとき、どのような制約が生じるのかについて解説します。

表示義務

前払式支払手段にあたるポイントサービスを開始する場合、ポイントを発行するときに、資金決済法に定められた次の事項について、ウェブサイト内に表示しなければならない義務が生じます(資金決済法13条)。

資金決済法に定められたポイント発行者に関する一定の事項を利用者に明らかにさせ、責任の所在を明らかにすることで、利用者を保護するための制約です。

  • ポイント発行者の氏名、商号または名称
  • 前払式支払手段の支払可能金額
  • (期間・期限が設けられている場合には)使用期間、使用期限
  • 利用者からの苦情、相談に応じる問い合わせ窓口

供託義務

前払式支払手段にあたるポイントサービスでは、ポイントの未使用残高が1000万円を超えるときには、未使用残高の2分の1以上の金額を、営業所の最寄りの法務局などの供託所に供託しなければならない義務が生じます(資金決済法14条)。これを「発行保証金の供託」といいます。

ポイントの未使用残高とは、ポイントの総発行額から総回収額を引いた分のことをいいます。

供託期限は、未使用残高が1000万円を超えた日から2か月以内です。

つまり、1000万円の2分の1、すなわち500万円以上の現金を一度に供託しなければなりません。このことは、手元のキャッシュに余裕のないスタートアップ、ベンチャー企業にとっては、ポイントサービスを導入する大きな障壁となります。

発行保証金の供託義務は、LINEなどの大企業でもこれが行われていなかったことが問題となったこともある通り、非常に難しい法律問題です。スタートアップ、べんちゃー 企業にとって、供託義務を回避したいと検討することが多いです。

一方で、資金決済法上、信託会社などの金融機関との間で発行保証金信託契約を締結し、財務局長の証人を受けることにより、発行保証金信託契約に基づいて信託された財産額について、発行保証金の供託を行わないことが可能です。

払戻しの原則禁止と、サービス終了時の払戻義務

前払式支払手段は、原則として払戻しが禁止されており(資金決済法20条2項)、ユーザー保護の観点から、以下の事情による払い戻しだけが例外的に許可されています。

  • 基準期間(4月1日から9月30日まで、10月1日から3月31日までの期間)の払戻金額の総額が、直前の基準期間の発行額の20%を超えないこと
  • 基準期間の払戻金額の総額が、直前の基準日未使用残高の5%を超えないこと
  • 保有者のやむを得ない事情により前払式支払手段の利用が著しく困難となったこと

払戻しが例外的に許される「やむを得ない事情」には、地域限定のポイントサービスを利用していたところ、転居などによりその利用が困難となってしまったといった例があげられます。

一方で、前払式支払手段にあたるポイントサービスを、発行者が事業場の都合で前払式支払手段の発行業務を廃止する場合には、前払式支払手段の払戻が義務付けられています(資金決済法20条1項)。

そのため、ポイントを利用できるウェブサービスやアプリが終了する場合には、利用できなくなってしまうポイントの払戻が必要です。この払戻義務は、一度でも基準日未使用残高が1000万円を超えて届出を行った場合には、直近の基準日未使用残高が1000万円を下回っても負うこととなります。

加えて、ポイント保有者の利用機会を確保するため、利用終了を周知する期間を置いてからサービスを終了することが望ましいとされています。つまり、ポイントを期限までに使い切るよう、ユーザーに働きかけておくことが必要です。そして、サービス終了によりポイントが利用できなくなった時点で、遅滞なく廃止の届出を行わなければなりません(資金決済法33条1項1号)。

払戻をすることと、払戻を希望する場合には一定期間(60日以上)に申出をすべきこと、申出をしない場合にはユーザーは払戻手続を行えないことを公告し、資金決済法に基づく情報提供と同様の方法で刑事をし、公告後直ちに届出を行い、払戻手続を完了します。

行政への報告義務

前払式支払手段にあたるポイントサービスでは、ポイントの未使用残高が、3月末あるいは9月末の時点において1000万円を超えたときには、内閣総理大臣への届出が必要となります。

届出の際には、以下の事項について根拠となる書類を添付して届け出なければならず、届出事項に変更が生じた場合にも必ず届出を行わなければなりません。

  • ポイント発行者の氏名、商号又は名称及び住所
  • 前払式支払手段の支払可能金額
  • (期間・期限が設けられている場合には)使用期間、使用期限
  • (ポイント発行者が法人の場合)資本金又は出資の額
  • ポイント発行業務を行う営業所、事務所の名称及び所在地
  • (ポイント発行者が法人の場合)代表者又は管理人の氏名
  • 基準日における基準日未使用残高
  • 前払式支払手段の種類、名称及び支払可能金額等
  • 前払式支払手段の発行の業務の内容及び方法
  • 利用者からの苦情、相談に応じる問い合わせ窓口

合わせて、行政へ定期的に報告書を提出し、行政の監督を受けることとなります(資金決済法23条)。報告書に記載すべき内容は、主に次のような事項です。

ポイントを発行する事業者が、安定した財産的基盤を有し、健全な経営を行っているのでなければ、ポイントを購入し、利用するユーザーを害することとなるためです。

  • 基準日を含む基準期間において発行したポイントの発行額
  • ポイントの基準日未使用残高
  • 基準日未使用残高に係る発行保証金の額

ポイントサービスが資金決済法の規制を受けないための方法・対策

ポイントサービス資金決済法前払式支払手段

ウェブサービス、アプリサービス内に導入するポイントサービスが資金決済法の規制を受けると、さまざまな義務が生じることを解説しました。

そのため、資金決済法の前払式支払手段に該当しないようなサービスにすることが、特にスタートアップ企業や中小企業、ベンチャー企業においては重要となります。しかし、ベンチャー、スタートアップのように小規模で機動力のある会社ほど、新規サービスの立上げの際、顧客の利便性や囲い込みの武器とするためポイントサービスを導入したいと考えることが多いです。

資金決済法では、次のようなポイントサービスなどについては、資金決済法の適用を受けないこととされています。

  • 乗車券、入場券
  • 発行の日から6か月以内に限って使用できる前払式支払手段
  • 国又は地方公共団体や、これに準ずる法人が発行する前払式支払手段
  • 専ら発行者の従業員に対して発行される自家型前払式支払手段
  • 割賦販売法等に基づき前受金の保全のための措置が講じられている取引に係る前払式支払手段
  • その利用者のために商行為となる取引においてのみ使用される前払式支払手段

このうち、ウェブサービス、アプリサービス内に導入するポイントサービスが資金決済法の適用を回避しようとするとき、最も重要なのが「発行の日から6か月以内に限って使用できるもの」という適用除外規定です。

つまり、前払式支払手段にあたるポイントサービスであっても、そのポイントの有効期限を6か月以内にすれば、資金決済法の適用を受けないということです。有効期限を発行から6か月としているポイントは、そのような意図で期限が付されているのです。

したがって、ポイントサービスを導入するときは、まずはじめに、有効期限を6か月に設定しても、ポイントサービスを導入する顧客満足などのメリットを達成することができるかを検討してください。そして、有効期限をより長期にしないとメリットが薄いと考える場合には、資金決済法の規制を守ってでもそのポイントサービスを導入するメリットがあるのかを改めて検討しなければなりません。

(参考)景品表示法(景表法)による制約

景品表示法(景表法)は、不当な景品、表示により顧客を誘引することを防止し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限、禁止して、消費者を保護することを目的とする法律です。

景品表示法(景表法)によって禁止されるような、過大な景品がつけられたり、実際の商品・サービスとは異なる表示がなされたりすると、消費者は不当な景品、表示に誘惑され、その商品やサービスの価値そのものを見て冷静な選択をできなくなってしまうおそれがあるからです。

景品や表示により消費者を不当に誘引すると、消費者は、本来であれば不要であったのに、その景品欲しさにその商品、サービスを購入してしまうおそれがあります。そのため、過大な景品、不当な表示を規制しなければ、事業者は商品・サービスの価値そのもので勝負をするのではなく、不当な景品、表示による消費者のだまし合いの競争になってしまうため、法律で規制する必要があります。

ウェブサービスやアプリサービス内でポイントサービスを開始するとき、このポイントの付与が、景品表示法(景表法)で規制される「景品類」にあたり、同法の制約を受けるのではないか、という点が問題になります。景品表示法(景表法)の「景品類」とは、次の要件を満たすものです。

「景品類」の要件

  • 顧客誘引の手段であること
  • 取引に付随して提供するものであること
  • 経済上の利益があること

「景品類」にあたる場合には、それが不当な顧客誘引とならないよう、一般懸賞・共同懸賞・総付景品という種類ごとに、提供できる景品類の金額に上限規制があります。

ただし、「景品類」であるためには、「内閣総理大臣が指定するもの」である必要があり、「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公取委告示第3号)(いわゆる「定義告示」)によれば、ポイントサービスが「値引」の意味しか持たないのであれば、そのポイントは「景品類」に該当しないこととされています。

そのため、ウェブサービスやアプリの利用状況に応じて無償で付与されるポイントや、「1ポイント=1円」のようにして次のサービス利用の値引きとして利用できるポイントは「景品類」には該当せず、景品表示法(景表法)の規制を受けることはありません。

なお、自社のウェブサービス、アプリサービス内で利用できるポイントでも、くじ・抽選などの懸賞で発行する場合や、使途を制限する場合、同一の企画において景品類の提供を併せて行う場合には、「景品類」にあたり景品表示法(景表法)の制約を検討する必要があるため、注意が必要です。

ポイントサービスと、景品表示法(景表法)の規制については下記にて詳細に解説しております。

参 考
ポイントサービスに関する景品表示法の規制と、ポイント付与の上限

ウェブサービス、アプリに自社独自のポイントサービスを導入しようとするとき、法律問題にも注意をしておかなければなりません。というのも、ポイントサービスには、顧客の購買意欲を向上させ、継続的な利用を促すと ...

続きを見る

「企業法務」は浅野総合法律事務所にお任せください!

ポイントサービス資金決済法前払式支払手段

今回は、自社のウェブサービスやアプリ内で、ポイントサービスを開始したいときに、事業者が注意しておくべき法律上の問題点について、資金決済法、景品表示法(景表法)の観点から解説しました。

ベンチャー企業、中小・スタートアップ企業が、ウェブサービスやアプリをあらたにローンチするとき、ポイントサービスによってユーザーの囲い込みを図ろうとすることがよくあります。しかし、そのポイントが資金決済法上の前払式支払手段にあたるとき、思わぬ厳しい制約を受けてしまうことがあります。

新しいサービスを開始する際には、サービス開始後に行き詰ってしまわないよう、適法性に関するリーガルチェックが必要となります。お悩みの場合は、ぜひ一度当事務所へ法律相談をご依頼ください。

利用規約やプライバシーポリシーの作成から、ウェブサービスやアプリの運用開始後の見直し、ユーザー対応などを日常的かつこまやかにサポートするためには、顧問弁護士契約もお勧めです。

「ポイントサービス」弁護士解説まとめ

お問い合わせはこちら

法律問題にお悩みのすべての方へ。
弁護士法人浅野総合法律事務所まで、まずはお気軽にご相談くださいませ。
法律相談のご予約は、24時間受付しております。

03-6274-8370

お問い合わせ

お問い合わせ

法律問題にお悩みのすべての方へ。

弁護士法人浅野総合法律事務所まで、
まずはお気軽にご相談くださいませ。

法律相談のご予約は、
24時間受付しております。

03-6274-8370

お問い合わせ

-企業法務
-, , ,

法律相談のご予約は、
 24時間お受付しております。 

03-6274-8370

お問い合わせ

© 2020 弁護士法人浅野総合法律事務所