労働問題

「法定時間内残業」と「法定時間外残業」の違いと、残業代の計算方法

2021年7月1日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野英之(第一東京弁護士会所属)です。当事務所は「労働問題」に注力し、豊富な実績を有しています。労働は人の生活に密接に関わる重要な法律問題です。

一人で会社と戦うのが難しいとき、法律の専門知識を活用することで速やかに解決できることがあります。ぜひ一度当事務所へご相談ください。

法定時間内残業法定時間外残業違い残業代計算方法

残業代を正しく計算するために知っておくべき「法定時間内残業」、「法定時間外残業」という専門用語について弁護士が解説します。

残業代のことを「時間外割増賃金」と呼ぶことがありますが、このときの「時間」には、「法定労働時間」と「所定労働時間」という異なった考え方があります。わかりやすくいうと「法定労働時間」は法律が定める労働すべき時間、「所定労働時間」は会社が定める労働すべき時間です。

残業代は、原則として「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間を超えて働いたときに発生しますが、例外的に、これを超えて働かなかったとしても残業代請求できることがあります。それが今回解説する「法定時間内残業」の考え方です。

専門的で難しいですが、きちんと理解をしておかなければ、本来なら残業代請求すべきだった時間を見逃してしまうおそれがあります。

今回の解説では、

  • 「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い
  • 「法定時間内残業」と「法定時間外残業」の違い
  • 所定労働時間を超えて働いたときに残業代請求する方法

といった残業代請求の基礎知識について、労働問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

まとめ解説
未払い残業代を請求する労働者側が理解すべき全知識【弁護士解説】

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「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い

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残業代の計算方法をするとき理解しておきたい「労働時間」の考え方には、「法定労働時間」と「所定労働時間」の2つがあります。

この2つの労働時間を区別することで、残業代が「どの時間に対して」、「いくら払われるのか」を正確に算出することができます。

なお、労働基準法の「労働時間」は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を意味し、これには実際に仕事をした時間だけでなく、その前後の時間が含まれることがあります。「どのような時間が労働時間にあたるか」は次の解説も参考にしてください。

参考解説

法定労働時間とは

法定労働時間とは、その名のとおり「法律で定められた労働時間」という意味です。このときの「法律」とは、労働基準法のことです。

労働基準法には、次のとおり、労働時間に関する規制が定められています。

労働基準法32条(労働時間)

1. 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2. 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

上記のとおり、労働基準法32条では「1日8時間、1週40時間」を超えて働かせてはならないことが定められており、この時間を「法定労働時間」と呼びます。

つまり、労働基準法の労働時間規制では、原則として「法定労働時間」を超えて労働させることはできません。例外的に、労働基準法36条に定められた労使協定(36協定)を締結してはじめて、法定労働時間を超える残業を命じることができるのです。

なお、変形労働時間制が適用されるときは、例外的に、1週間の法定労働時間を44時間とすることができます。

労働基準法は、労働者保護のために最低限の労働条件の基準を定める法律です。そのため、労働基準法に違反した労働契約(雇用契約)は違法となります。

したがって、「法定労働時間」は労働者を残業代なしに働かせることのできる最長の時間であり、残業代を支払わずに「1日9時間」、「1週60時間」などの時間働かせることは違法です。

所定労働時間とは

所定労働時間とは、会社ごとに定められた労働者が働くことを義務付けられている時間です。つまり、会社が定めた始業時刻から終業時刻までの間(休憩時間を控除する)が、所定労働時間です。

例えば、始業時刻を午前9時30分、終業時刻を午後6時(うち1時間休憩)とするとき、所定労働時間は7時間30分です。

残業代を正確に計算するためには所定労働時間を知ることが必要ですが、所定労働時間は会社ごとに異なるため、これを知るためには会社に情報開示をしてもらう必要があります。具体的には、会社の定める就業規則、労働条件通知書、労働契約(雇用契約)を確認することで、所定労働時間を知ることができます。

同じ会社で働いていても、役職や部署ごとに所定労働時間が異なることもあります。

会社は、労働者を雇用するときに労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条、労働基準法施行規則5条)。そのため、所定労働時間を知ることができないとすれば、それ自体が違法なことです。

所定労働時間は、法定労働時間より長くはできない

「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間は、労働基準法に定められた、労働条件の最低限度です。

そのため、会社が定める所定労働時間が、法定労働時間よりも長くなることは許されていません。

法定労働時間よりも長い所定労働時間を定めたときには、就業規則・労働契約書(雇用契約書)などええ定めた所定労働時間は違法、無効となり、法定労働時間が適用されます。その結果、結局は「所定労働時間=法定労働時間」となります。

例えば、労働契約書(雇用契約書)で所定労働時間を「1日9時間」と定めたとしても、法定労働時間を超える違法、無効な定めとなりますので、所定労働時間は「1日8時間」となり、これを超える労働については未払い残業代が発生します。

所定労働時間が、法定労働時間より短いときの残業代請求

法定労働時間が最低基準であることから、その範囲内であれば、会社ごとに自由に所定労働時間を定めることは違法ではありません。

そのため、所定労働時間は、法定労働時間よりも短い分には何時間としてもよく、実際に、所定労働時間のほうが法定労働時間よりも短くなっている会社があります。会社が定める所定労働時間と、労働基準法が定める法定労働時間は、必ずしも一致するとは限らないわけです。

そのため、「所定労働時間≠法定労働時間」のとき、「法定労働時間以内ではあるものの、所定労働時間を超える時間」についてどのように取り扱うかが問題となります。

労働者が受け取っている給与は、所定労働時間の対価であるため、これを超えると残業代が発生しそうですが、その一方で、労働基準法が残業代の支払いを義務付けているのは法定労働時間を超える労働に対してだからです。

「法定時間内残業」と「法定時間外残業」の違い

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次に、同じ「残業」でも、「法定時間内残業」「法定時間外残業」の2種類を区別して理解しなければなりません。

「法定時間内残業」、「法定時間外残業」は、略して「法内残業」、「法外残業」と呼ばれることもあります。

法定労働時間を超えた時間について残業代が発生するのは当然ですが、前章でも解説したとおり「法定労働時間よりも所定労働時間が短い」という会社では、必ずしも法定労働時間を超えて労働しなくても、残業代請求できることがあります。

法定時間外残業とは

法定時間外残業の残業代請求とは、労働基準法に定める法定労働時間を超える残業時間について発生する残業代のことです。

つまり「1日8時間、1週40時間」を超える労働に対して支払われる残業代の問題が、法定時間外残業です。

この法定時間外残業は、労働基準法に定められた最低基準となるため、法定時間外残業があるときには、会社が労働時間についてどのように定めていたとしても残業代を請求することができます。

法定時間内残業とは

法定時間内残業の残業代請求とは、労働基準法に定める法定労働時間を越えてはいないけど、会社の定めた所定労働時間は超えている労働時間について発生する残業代のことです。

したがって、法定時間内残業の問題は、「法定労働時間=所定労働時間」のときにはそもそも発生せず、「法定労働時間>所定労働時間」のときに、はじめて発生します。

例えば、始業時刻が午前9時30分、終業時刻が午後6時(うち1時間休憩)の会社を想定しましょう。

このとき、法定労働時間は1日8時間ですが、所定労働時間は7時間30分となり、所定労働時間のほうが短いこととなります。

このとき、終業時刻後に2時間残業をしたときには、そのうち30分が法定時間内残業、残りの1時間30分が法定時間外残業となります。

法定時間内残業、法定時間外残業の計算方法

法定時間内残業、法定時間外残業の区別を理解しておかなければならないのは、それぞれに適用される割増率が異なることがあるからです。最後に、それぞれの時間の残業代の計算方法を解説します。

なお、残業代の詳しい計算方法については、次の解説も参考にしてください。

参考解説

法定時間外残業の計算

法定時間外残業は、「1日8時間、1週40時間」を超える労働時間を合計した上で、「残業代の基礎単価×割増率×残業時間」で算出されます。

残業代=基礎単価×割増率×残業時間

法定時間外残業の割増率は、労働基準法において、以下の率を超えるよう定めなければならないこととなっています。労働基準法は、労働条件の最低限度を定める法律ですから、この割合より低い割増率で計算することは違法です。

残業代労働の種類割増率
時間外労働法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える労働25%
(月60時間を超える場合50%)
深夜労働午後10時以降、午前5時までの労働25%
休日労働法定休日(1週1日)の労働35%

法定時間内残業の計算

これに対して、法定時間内残業の計算は、労働基準法で一定以上の割増率を乗じて支払わなければならないという決まりはありません。

つまり、所定労働時間を超えて労働しても、法定労働時間を超えてさえいなければ「1.25倍」をかけた残業代を請求することはできません。ただし、給与はあくまでも所定労働時間の対価であるため、所定労働時間を超えてはたらいた分の賃金を追加で受け取ることができます。

この法定時間内残業について、どれだけの割増率をかけるのかについては、会社が自由に定めることができます。

そのため、法定時間内残業に適用される割増率を知り、残業代を正確に計算するためには、就業規則、労働契約書(雇用契約書)、労働条件通知書などを調べる必要があります。

このように、法定時間内残業と法定時間外残業では、残業代の計算方法において割増率に関するルールが異なることを理解しておかなければなりません。

なお、1週間のうちで、法定時間内残業しか生じておらず、法定時間外残業が発生していなかったとしても、休日労働を行ったなどの事情によって「1週40時間」を超える労働が発生していた場合には、その時間に対しては「1.25」倍の割増率を乗じた残業代を請求することができます。

また、法定休日に労働した場合には、「1.35」倍の割増率を乗じた残業代を請求できます。

「労働問題」は浅野総合法律事務所にお任せください!

法定時間内残業法定時間外残業違い残業代計算方法

今回は、残業代の計算を正確に行うために必要な知識として、「法定時間外残業」と「法定時間内残業」の違いと、残業代請求のポイントを解説しました。

「法定時間外残業」と「法定時間内残業」を分けて理解しなければならない理由は、かける割増率が異なることがあるからです。会社の定める残業代計算のルールによっては、正しく計算しないと、割増率分だけ損をしてしまい、本来なら請求できたはずの残業代をとり損ねてしまいます。

固定残業代制度や事業場外労働のみなし労働時間制、裁量労働制など、残業代が減額される可能性のある制度を会社が導入していると、更に計算が複雑になります。

残業代請求をはじめ、労働問題についてお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼くださいませ。

まとめ解説
未払い残業代を請求する労働者側が理解すべき全知識【弁護士解説】

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解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

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