痴漢などの性犯罪では、「家族にバレずに解決したい」というご相談を受けることがよくあります。
痴漢してしまったとき、家族に知られることとなってしまえば、嫌な思いをするというだけにとどまらず、妻に知られて離婚となる危険もあります。そのため「家族に知られず解決する」ことの優先度は、家庭持ちの方には特に高いことでしょう。
軽微な痴漢行為では、適切な弁護活動を行うことで、逮捕も起訴もされず、家族にも全くバレずに解決できます。しかし、痴漢行為の態様が悪質だったり、弁護活動をまったくせずに放置したりすると、警察が家にやってきて痴漢で後日逮捕されてしまうケース、逮捕・勾留などの身柄拘束を受けたりといった事情をきっかけに家族にバレるおそれがあります。
今回は、痴漢事件が家族にバレるケースと、家族に知られず解決する方法を、刑事事件にくわしい弁護士が解説します。
- 逮捕や、捜索・差押えを受けたり、起訴されたりすると家族にバレるおそれあり
- 痴漢事件を家族にバレずに解決するには、早期釈放と示談を進めるのがおすすめ
- 痴漢冤罪の被害にあってしまったケースなど、家族の協力を得たほうがよい場合あり
痴漢事件が家族にバレるケースとは
はじめに、痴漢事件が家族にバレるタイミングについて解説していきます。
痴漢をしてしまったとき、家族には知られたくないと考える方がほとんどです。痴漢という性犯罪は、他の犯罪に比べてもイメージが悪く、家族にバレてしまうと離婚されるリスクはとても高いといわざるをえません。
逮捕されたとき
痴漢の多くは、現場で取り押さえられ、現行犯逮捕されます。
痴漢で逮捕されると、少なくとも3日間(逮捕から72時間)は家に帰れないため、家族にバレる可能性が高いです。逮捕に引き続いて勾留されると、更に最大で20日間の身柄拘束を受けるため、まず間違いなく家族には知られることとなります。
痴漢を疑われたがその場から逃げ去ったときなど、現行犯逮捕を回避できたとしても、後日逮捕されてしまうケースもあります。このようなとき、家に警察がやってきて逮捕されてしまったり、警察から取調べのため出頭するよう連絡がきたりするため、その時点で家族にバレてしまいます。
自宅の捜索・差押えを受けたとき
捜査機関(警察・検察)が、刑事事件の捜査活動で、強制的に行う行為のうち、ある場所から証拠物を探す行為を「捜索」、見つかった証拠物を押収する行為を「差押え」といいます。
痴漢事件で逮捕されなくても、自宅の捜索・差押えを受けてしまえば、結果的に家族にバレてしまいます。捜索・差押えが大々的に行われると、家族だけでなく近所にも知れわたるおそれもあります。
痴漢のケースでは、あなたの性癖や痴漢の常習性を証明するため、自宅のパソコンやスマホのデータ、所持するDVDなどの捜索・差押えが実効されることがあります。このようなことを防ぐため、痴漢したことを認めているのであれば、取調べに応じて素直に自白し、捜査に全面的に協力するのが重要なポイントです。
起訴されたとき
逮捕されなかったときや、逮捕されても早期釈放されて家族にバレずに済んだとき、次に家族に知られる可能性の高いタイミングが、起訴されたときです。幸いにして早期に家に帰れて、家族にバレなかったとしても、それで終わりではない点に注意が必要です。
身柄拘束をされず、在宅で捜査が進み起訴されることを「在宅事件扱い」といいます。
このとき、正式起訴されたときに届く起訴状、略式命令などの重要書類が自宅に郵送されてくるため、裁判所からの封筒が届いたことが家族に知られれば、説明を求められることは必至です。また、正式起訴されると、公判のため裁判所に出廷しなければなりませんが、公判期日は平日10時〜17時の間で指定されるため、会社を休んだり不自然な時間に外出したりしたりしたことで家族にバレてしまうことがあります。
なお、裁判は公開が原則ですので、誰でも傍聴できます。傍聴人に友人・知人がいるとき、こっそり進めていた痴漢の裁判の内容がバレてしまうおそれがあります。特に事件数の少ない地方でこのようなことが起こりやすいです。
実名報道されたとき
痴漢行為が悪質なときや前科前歴があるとき、逮捕や起訴されたことがニュースで実名報道されてしまう場合があります。
特に、最近ではニュースの報道内容はネット上に掲載されるため、コピーされて広く拡散されてしまうおそれがあります。
痴漢事件を家族に知られず解決する方法
痴漢事件の内容が軽微なときは、すぐに弁護活動をスタートすれば、家族にバレず解決できるケースも多いです。そこで、家族にバレないために行うべき弁護活動の進め方を解説します。
なお、適切な弁護活動をすみやかに開始しても、最終的に家族に知られてしまうかどうかは残念ながら運の要素もあります。「バレない可能性を少しでも広げるための方法」と理解してください。
痴漢を疑われたらすぐに弁護士を呼ぶ
痴漢事件で、家族にバレないうちに解決できるかどうかは、初動がとても重要です。
例えば、冤罪のケースで、痴漢現場で疑いを晴らし、その証拠を確実に収集しておけば、その場で解決することができ後から不安に思うこともありません。ごく軽微な痴漢のケースでは、その場で示談が成立し、被害届や告訴がされず事件化されずに済むこともあります。
このような点で、家族にバレずに早期解決を図るにあたり最も重要なのが、痴漢を疑われた時点で即座に弁護士を呼ぶことです。早めに相談しておけば、弁護士から家族にバレないためのアドバイスを受けることもできます。
被害届を取り下げてもらう
逮捕された直後に弁護士を依頼し、被害者に嘆願することによって被害届を取り下げてもらうことができれば、家族に発覚する前に痴漢事件を解決することができます。
被害届を取り下げてもらえれば、よほど悪質な痴漢のケースでない限り捜査機関はそれ以上の捜査を行わず、刑事事件化すること自体を防ぐことができます。特に、軽微な痴漢で、処罰感情がそれほど強くない場合、できるだけ速やかに被害者への謝罪を行うようにしてください。
早期釈放してもらう
逮捕をされ、身柄拘束を受けてしまったとき、家族にバレないためにはできるだけ早く家に帰ることが大切です。2,3日なら、多少不自然でも言い訳がきくかもしれませんが、勾留されて最大20日間の身柄拘束となれば、家族に不信感をもたれないような理由付けするのは不可能でしょう。
早期釈放してもらうためには、逮捕の要件である嫌疑の相当性(犯罪を行ったと疑わしいこと)、逮捕の必要性(逃亡のおそれ、もしくは、証拠隠滅のおそれがあること)といった逮捕の要件が存在しないことを、捜査機関(警察・検察)に説得的にはたらきかけるのが大切です。
逮捕の必要性を下げる事情としては、次のようなものがあります。
- 罪の内容を認めていること
- 示談が成立したこと
- 被害弁償をしたこと
- 被害者が厳罰を求めていないこと
- 弁護士の意見書
- 定職につき、収入が安定していること
- 家族などの監督状況が整っていること
逮捕直後に弁護士を依頼して弁護活動を行い、その結果、勾留されなければ3日で家に帰れることとなります(検察に対し、勾留請求をしないように働きかける、裁判官に対して勾留請求を却下するよう働きかけるという弁護活動を行います)。
逮捕に関する弁護活動をするにあたって、家族などの監督状況が整っていることを、身元引受書を提出して証明できれば、早期釈放につながる反面、家族にはバレてしまうことになります。そのため、ケースによって、家族にバレてでも早期釈放を目指すほうがよいのかどうか、弁護士のアドバイスも踏まえた検討が必要です。
示談する
痴漢事件の弁護活動のうち、被害者との示談は最も重要です。被害者と早期に示談できれば、刑事事件化を防ぐことができるほか、逮捕されてしまっても早期の身柄釈放を実現でき、最終的には不起訴処分となって、家族にバレないうちに解決できる可能性が高まります。
示談の際には、被害者から「厳罰を求めない」という内容のいわゆる「宥恕文言」を記載した示談書を取得することによって、被疑者(ないし被告人)にとって非常に有利な情状として考慮してもらうことができます。
自首する
痴漢をしたけれど、現行犯逮捕されずにその場から逃げることに成功したケースでも、後日逮捕されてしまうと、より家族にバレやすくなってしまいます。一旦は逃げたことから、逃亡のおそれが高いと考えられ、身柄拘束が長期間継続する可能性が高いからです。
痴漢の発覚をおそれて不安を抱えている方は、いち早く自首し、罪を告白することにより、身柄拘束を防ぐことができます。また、自首することは刑の減軽につながる可能性もあります。
不起訴処分もしくは略式命令にしてもらう
正式起訴されて公判期日に出廷しなければならないと、その手続きには手間がかかることから、家族にバレるきっかけとなりやすいです。このような事態を避けるため、不起訴処分を目指し、悪くとも略式命令で罰金としてもらうための弁護活動を進めます。
検察官が正式起訴・略式起訴・不起訴のいずれの処分とするかは、前述した示談の有無が大きく影響します。痴漢の態様が軽微で、前科のない初犯であれば、示談が成立すれば不起訴となる可能性が高いです。
なお、在宅事件のとき、不起訴処分通知書は必ずしも受け取らなくてもよく、不起訴となったかどうかは弁護士に確認してもらうことができますから、この場合には、書類が家に届くことによって家族にバレることはありません。
家族の協力を求めたほうが良い場合
次に、知られてしまうリスクをおかしてでも家族の協力を求めたほうが良い場合について解説します。
痴漢事件は、その性質上、家族にバレてしまうと家庭崩壊に繋がる危険が大きいため、「家族にバレないこと」の優先度は相当高いのが通常です。しかし、痴漢冤罪のケースのように、家族に相談することで得られるメリットもあります。
冤罪の場合
痴漢冤罪のとき、やってもいない痴漢を認め自白すべきではありません。痴漢はその性質上冤罪が生まれやすい状況にあり、早く釈放されたいために嘘の自白をし、その結果冤罪の被害を受けてしまうケースが少なくありません。
しかし、痴漢の事実を否認し続けると、逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれが高いと判断され、身柄拘束が長引いてしまうことも確かです。
やってもいない痴漢なのであれば家族に後ろめたい気持ちを持つこともありませんから、このようなときには、家族一丸となって無罪を目指して戦うためにも、弁護士を通じて家族に相談しながら進めるのがよいでしょう。
身元引受書を書いてもらう場合
痴漢をしてしまい、逮捕されてしまうとき、逮捕の要件である逃亡のおそれがあるかどうかの判断では、「監督をしてくれる同居の家族がいるかどうか」という点が重要な考慮要素となっています。
そのため、痴漢を認めているとき、同居の家族が痴漢したことを知っていて、「今後二度と再犯を行わないよう監督する」と誓ってくれていれば、逮捕・勾留による長期の身柄拘束を回避することができます。このことを捜査機関に伝えるために、弁護活動の一貫として行うのが身元引受書の作成です。
当然ながら、身元引受書を書いてもらうということは、これを作ってもらう家族にはバレてしまうことを意味します。ただ、身元引受書を提出することによって釈放を少しでも早められるメリットがあるため、家庭の状況に応じてどちらが得かを検討する必要があります。
会社にどうしてもバレたくない場合
痴漢事件を起こしたとき、家族よりは会社のほうが、何日か出社しなくても病気などの理由付けができ、バレる可能性は低いです。
しかし、勾留されて最大20日間も身柄拘束されたり、平日の昼間から裁判のために休みをとらなければならなかったりすれば会社に知られる可能性は高まります。会社にバレると、性犯罪である痴漢事件はとてもイメージが悪く、重い懲戒処分や、最悪の場合は懲戒解雇されるおそれがあります。
社会的な不利益を避けるために、家族にバレるのはあきらめ、家族の協力を得ることで、会社には隠し通すという方針をとることがあります。家族から会社に連絡をとってもらい、病気などを理由に欠勤したり、有給申請したりすれば、会社にはバレずに解決でき、円滑な社会復帰に役立ちます。
社会的地位が高いときや、あなたが家族の大黒柱のとき、家族も完全に許すというわけではないものの、会社にバレないようにする協力はしてくれることも多いです。
前科がある場合
前科がある場合や、執行猶予中の犯行の場合には、身柄拘束は最大の23日間続き、かつ、起訴処分となることが容易に予想されます。また、実刑となって収監される可能性も相当高いものとなります。
痴漢の処罰は、東京都迷惑防止条例違反では「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」、不同意わいせつ罪では「6月以上10年以下の懲役」とされますが、常習のときは刑罰が2倍となり、より厳しく罰せられます。
そのため、前科があるときは家族にバレずに解決することはもはや不可能と考えられるため、早めに家族に知らせておくほうが結果的に良い方向となると考えられます。家族にあきれられてこれ以上の協力が得られないおそれがあるとき、早く家族に知らせて反省の姿勢を見せなければ、もはや今後は家族のサポートが得られず、縁を切られる危険があります。
まとめ
今回は、痴漢行為をしてしまった方が不安に思うことの多い、「家族にバレるのか」、「家族に知られてしまう前に解決することができるのか」という点について弁護士が解説しました。
軽微な痴漢であれば、直後から速やかに弁護活動を行うことによって、家族にバレてしまう前に解決することが可能なケースもあります。しかし、示談をはじめとした重要な弁護活動をスピーディに行い、身柄拘束から早期に釈放されることが前提であり、放置しておいては家族にバレる可能性が高まります。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、痴漢をはじめ、性犯罪についての刑事弁護に豊富な経験を有しています。
家族にバレずに解決するためには、早めに弁護士を呼ぶことが最重要です。ぜひ一度当事務所へご相談ください。
刑事弁護のよくある質問
- 痴漢事件を起こしてしまったことは家族にバレますか?
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痴漢事件を起こしてしまって、逮捕や起訴されてしまうと、大事となって家族にバレてしまう可能性が高まります。悪質な痴漢で、実名報道されてしまったり、身柄拘束が長引いてしまったりすれば、隠し通すことはできません。もっと詳しく知りたい方は「痴漢事件が家族にバレるケースとは」をご覧ください。
- 痴漢事件を、家族にバレないように解決する方法はありますか?
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家族にバレないうちに痴漢事件を解決しようとするなら、できるだけ早めに弁護活動をスタートするのが大切です。弁護活動が功を奏し、逮捕されなかったり、身柄拘束から早期釈放されたり、示談が成立して不起訴となれば、これ以上バレる可能性はなくなります。詳しくは「痴漢事件を家族に知られず解決する方法」をご覧ください。