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交通事故の治療費を打ち切られたときの対応と、通院を継続する方法

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

治療費打ち切り

交通事故で負ったケガで入院・通院しているとき、交通事故から2,3ヶ月すると、加害者側の保険会社から

  • 「そろそろ治療が終了するのではないか」
  • 「治療費の立替払いを打ち切りにしたい」

という通告を受けることがあります。大抵の場合、このような連絡を受けたときでもまだ首や腰に痛み、シビレが残っており、通院を継続したいことが多いでしょう。

治療費を打ち切るという通告を受けると、従わなければならないのかと不安を覚え、治療を止めてしまう方もいますが、通院を止めてしまうと、後に加害者に請求できる金額が下がってしまうという損を被ることとなります。

本来、治療の必要性は医学的な判断であり、医師が行うものです。保険会社の上記のような通告は、あくまでも「治療費の立替払いが終了する」という意味であり、損害賠償請求による十分な被害回復を得たいのであれば、通院を止めてしまってはいけません。

今回の解説では、

  • 治療費の支払いをできるだけ継続してもらう方法
  • 治療費を打ち切られたときの適切な対応方法
  • 治療費を打ち切られても通院を継続すべき理由

といった交通事故に関する法律知識について、弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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治療費の打ち切りとは

交通事故被害から数ヶ月すると、保険会社が「治療費を打ち切る」と通告してくることがあります。事故態様や症状にもよりますが、よくあるむちうちだと2,3ヶ月程度で連絡がくることが多いです。

重要なのは、治療費の打ち切りの意味は、あくまでも保険会社による治療費の立替払いが終了することを意味するだけで、治療を止めなければならないという意味ではないという点です。

そのため、まだ治療を要するときは通院を継続してよく、かかった治療費についても後から請求することができます。また、被害者側にとっては、通院を継続するほうが、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などの増額が見込めるといった点でも有利にはたらきます。

治療費の支払いをできるだけ継続してもらう方法

治療費打ち切り

治療費の打ち切りの通告を受けても治療を継続できるとはいえ、治療費の支払いを打ち切られて自費となってしまうと、直近の負担がかさんでしまいます。

そのため、まずは保険会社に対して、できるだけ治療費の立替払いを継続してもらえるよう交渉するための方法について解説します。

医師に意見書を書いてもらう

加害者側の保険会社は、事故態様や症状などから想定される通院期間をすぎると、治療費の打ち切りを通告してきます。しかし、これは通常想定される期間に基づいた判断であり、あなたの具体的な症状を考慮したものではありません。

あなたが今後も通院を継続する必要があるかどうかは、医師による医学的判断を尊重して行うべきです。そのため、治療費の打ち切りを通告されたとき、まずは医師と面談し、治療の見通しを聞き、治療を要するとの指示を受けたときは診断書・意見書を作成してもらい、保険会社に提出して交渉するようにします。

主治医があなたの症状に耳を貸さないときや、治療の必要性をどうしても認めてくれない場合、交通事故被害者の治療に不慣れな場合などには、治療の必要性について他の医師にセカンドオピニオンを求めることもできます。

なお、被害者側に有利な解決のためには、事故直後からの治療経過の継続性も大切となるため、担当医の変更には慎重になるべきです。

弁護士に代わりに交渉してもらう

保険会社から治療費の打ち切りの通告を受けたとしても、治療の必要性があるときは通院を止めてはなりません。特に、他覚所見のないむちうちの場合、画像診断にも症状が表れないことから、通院を継続している事実が重要な証拠となります。

保険会社の圧力に負けず、できるだけ治療費の立替払いを延長してもらうために、弁護士に窓口となって代わりに交渉してもらう方法が有効です。弁護士が交渉することにより、立替払いの延長を認めてもらえる例も少なくありません。

交通事故トラブルが裁判に発展したときは、医学的な知見だけでなく法律知識が重要です。最終的な解決は、医学的知見を参考にして、裁判官が法律的な観点から行うからです。

治療費を打ち切られづらい通院方法を知る

治療費の打ち切りの通告は、保険会社が多くの交通事故対応の経験をもとに行っています。そのため、事故態様と比較して不適切な通院方法だと、打ち切られやすくなってしまうおそれがあります。

次のような通院方法は、治療費を打ち切る判断をされやすいため注意が必要です。

  • 事故態様に対し、被害者が訴える症状が重すぎる
  • 通院頻度・通院回数が少なすぎる
  • 医師の診断内容と被害者の訴える症状が大きく異なる

治療費の打ち切りを通告されづらくするためには、医師の指示にしたがった適切な通院頻度を確保することが大切です。治療内容についても、湿布や塗り薬など簡易な施術だけでなく、医師の指示にしたがい、電気治療など交通事故被害に効果を示す治療方法や、整骨院などを併用するようにします。

医師が正しい判断をするためにも、自覚症状をわかりやすく医師に伝えて診療を受けることが、治療費の支払いを継続してもらうためのポイントです。

治療費を打ち切られたときの適切な対応

次に、治療費の打ち切りの通告を受けてしまったときの適切な対応について解説します。

通院を継続する

保険会社から治療費の支払いを打ち切られてしまったときでも、症状が残存し、症状固定に至っていなければ治療を継続すべきです。

症状固定しているかは、医師による医学的な判断によるべきであり、医師が治療の必要性を認めてくれるのであれば、保険会社がなんといおうと治療による改善が可能であり、症状固定とはいえません。そのため、保険会社から治療費の打ち切りの通告を受けてもなお通院を継続すべきであり、治療を中止する必要はありません。

その後の治療については、症状固定に至ったとき(つまり、医師の判断として、これ以上の治療をしても改善が見込めないとされたとき)まで通院を継続し、その後に後遺症が残るときは後遺障害等級認定の手続きに進む流れとなります。

実際、保険会社から治療費の打ち切りを通告された後も通院を継続し、後遺障害等級の認定を勝ちとったケースは多くあります。

健康保険に切り替える

治療費の打ち切りを通告されてしまった後に通院を継続するのであれば、一旦は治療費を自費で支払うこととなります(事後に加害者に請求することは可能です)。この際には、健康保険に切り替えることができます。

健康保険に切り替えるのは、事後に加害者に請求するとしても、現時点で支払う医療費を低く抑え、負担を減らすためです。

交通事故被害に関する治療でも、「第三者行為による傷病届」を健康保険に提出することで健康保険を利用して治療を受けることができます。

打切り後の治療費も請求する

加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを宣言され、治療を終了するよう予告されたときでも、通院を止めるべきではありません。その後に継続して治療を受けたときに、治療の必要性が認められるのであれば、打ち切り後の治療費についても事故と因果関係のある損害として加害者に請求することができます。

治療費の打ち切りは、あくまでも保険会社の判断に過ぎないため、その後も治療を継続した場合に、その治療費が交通事故による損害に含まれるかどうかは、最終的には裁判所による法的判断で決まります。

そのため、治療費の打ち切りが争いとなるケースでは、治療の必要性を証明できるよう、診断書、カルテ、医師の意見書などの医療記録を収集しておくことが大切です。

治療費を打ち切られても通院を継続すべき理由

治療費の打ち切りの通告を受けても通院を継続すべき理由は、通院を止めてしまうと、被害者にとって不利な解決につながってしまうおそれがあるからです。

そこで、治療費の打ち切りの通告後も、治療を継続すべき理由について弁護士が解説します。

早期に「症状固定」と判断されてしまう

通院を止めてしまった場合、その時点で症状固定になったと判断されるおそれがあります。症状固定とは、「これ以上治療を継続しても改善しない状態」のことであり、交通事故被害の賠償には、症状固定時を基準として計算されるものが多くあります。

症状固定となるまでの治療費は、加害者に請求できます。これに対し、症状固定後は、治療費は請求できない代わりに、症状固定日を基準として計算した後遺障害慰謝料、後遺障害の逸失利益といった損害を加害者に請求できます。

治療費が打ち切られた時点で通院を止めてしまうと、本来より早く症状固定に至ったと評価されることで、次のような不利益につながるおそれがあります。

治療費・休業損害が請求できなくなる

保険会社から治療費の打ち切りの通告を受けたとしても、あくまでも立替払いを終了することを意味するに過ぎません。そのため、治療の必要性があって通院を継続したときには、その後にかかった治療費や休業損害は、後に加害者に請求することができます。

しかし、通院を止め、症状固定時が早められてしまうと、本来であれば請求できたはずの治療費や休業損害を請求できなくなってしまいます。

これは、症状固定時より以前、すなわち、治療中は、加害者に対して治療費、休業損害を請求できますが、症状固定後は、後遺症が残れば後遺障害に関する請求ができるが、治療費や休業損害は請求できないからです。

入通院慰謝料が低額となる

入通院慰謝料は、交通事故によって入院・通院を要したことによる精神的苦痛に対する慰謝料であり、入通院に要した期間が長いほど高額になります。

この点で、治療費の打ち切りの通告を受けたことで通院を止めてしまった場合、通院期間が短くなってしまい、入通院慰謝料が低額になってしまいます。

なお、通院頻度がまばらな場合、通院期間ではなく「通院日数の3倍」の日数を参考に入通院慰謝料を算出すると考えるのが実務であり、この点からも、継続的な通院を止めてしまうと、得られる被害回復の金額が下がってしまいます。

後遺障害等級の認定が受けられなくなる

症状固定後に後遺症が残るときは、後遺障害等級認定を受けることができると、その等級に応じた後遺障害慰謝料、後遺障害の逸失利益を請求できます。

この等級認定の手続きでは、継続的に、かつ、長期間通院を続けているほど、より高い等級の認定を得やすく、請求する慰謝料、逸失利益を増額することができます。

特に他覚所見のないむちうちで症状の残存を認めてもらうためには継続的な通院が必須です。むちうちは第14級9号「局部に神経症状を残すもの」、第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の認定が検討されますが、第12級の評価を勝ちとるためには、事故当初から一貫した症状を訴え、適切な頻度で治療を継続したことが重要な考慮要素となります。

損害賠償請求をするためには交通事故とケガの症状との間に因果関係が必要となりますが、継続的な通院がされないとき、この因果関係すら認められないおそれもあります。

交通事故被害は浅野総合法律事務所にお任せください!

治療費打ち切り

今回は、加害者側の保険会社から、治療費の打ち切りを通告されてしまったときの適切な対応について弁護士が解説しました。あわせて、治療費の支払いをできるだけ継続してもらうためのポイントについても説明しました。

治療費の打ち切りを通告されたとしても、それはあくまでも保険会社の判断であり、従わなければならないわけではありませんし、通院を止めるのはむしろ不利になり、おすすめできません。治療の必要性があるときは、医師の判断にしたがって治療を続け、事後に交渉や訴訟にて治療費を加害者に請求することができます。

治療費の打ち切りの通告を受けたときは、今後の裁判などにおける見通しを踏まえて対応を決めなければなりません。

交通事故被害にお困りの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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