
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
交通事故で後遺障害が残った場合、慰謝料を請求することができます。
後遺障害慰謝料がいくら受け取れるかについて、後遺障害等級(第1級〜第14級)に応じた相場があり、重度の障害が残るほど慰謝料額が高くなります。また、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)のうち、どの算定基準を用いるかによっても異なります。交通事故の被害者が適正な賠償を受けるには、弁護士基準(裁判基準)に基づく請求を行う必要があります。
今回は、後遺障害慰謝料の相場について等級別に解説するとともに、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の違い、慰謝料の計算方法、増額のポイントを解説します。
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
\ 動画解説(約4分) /

はじめに、後遺障害慰謝料とはどのようなものか、基本的な意味について解説します。
交通事故によって後遺障害が残った場合、被害者は加害者に対し、後遺障害慰謝料を請求することができます。後遺障害慰謝料は、事故によって後遺障害が残り、日常生活や仕事に支障が生じることによる精神的苦痛に対して支払われる損害賠償を意味します。
後遺障害とは、交通事故によるケガについて、治療を続けても症状が改善せず、症状固定後も身体に障害が残ることをいい、これによる精神的苦痛を補償するのが後遺障害慰謝料です。
交通事故の慰謝料には、損害の種類に応じて「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」があります。入通院慰謝料は、治療のための入院・通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛を、後遺障害慰謝料は後遺障害による生活や仕事への影響による精神的苦痛を、死亡慰謝料は死亡による精神的苦痛をそれぞれ補填する意味合いがあります。
そのため、後遺障害が認定された場合、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できます。なお、後遺障害慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級(第1級~第14級)や、採用される算定基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)によって異なります。
次に、後遺障害慰謝料が支払われる条件について解説します。
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残った場合の精神的苦痛の補填であるため、全ての交通事故で認められるわけではありません。具体的には、次の2つの条件を満たす必要があります。
後遺障害とは、症状固定時点に残存する障害のことを指します。
症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めない状態のことです。症状固定と判断されると、原則として治療は終了となり、その時点で残った障害について、後遺障害等級認定の申請を行って被害回復を図ることとなります。
症状固定前に示談を進めると、後遺障害に対する適正な賠償を得られないおそれがあります。医師の指示に従って治療を継続し、症状固定と言われてから賠償請求を行うのが実務です。
なお、症状固定の時期は、医師による医学的な判断に従うべきであり、被害者や加害者、保険会社が自由に決められるものではありません。事故から一定期間経過すると、保険会社から「治療費を打ち切る」といった打診をされることがありますが、これはあくまで任意保険会社による一括支払いの終了を意味するに過ぎず、治療を終了しなければならないわけではありません。
「治療費の打ち切りへの対応」の解説

後遺障害慰謝料を請求するには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法に基づく後遺障害の基準であり、第1級から第14級まで定められています。数字が小さいほど障害の程度が重く、生活や仕事への影響が大きいことを意味します。その分、請求できる後遺障害慰謝料や逸失利益の金額も増額されます。
したがって、等級の程度が、損害賠償額に直結するため、適切な等級認定を受けることが重要です。等級認定は、提出された診断書や画像診断の結果などをもとに審査されるため、医師に正確な症状を伝え、後遺障害診断書を作成してもらうことが適正な認定につながります。

交通事故の後遺障害慰謝料の相場は、等級ごとに決められた基準額が参考にされます。
重度の後遺障害が残るほど高い等級が認定され、高額の慰謝料が認められます。交通事故の損害賠償には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つの目安がありますが、裁判で獲得できる弁護士基準(裁判基準)こそが最も妥当であり、被害者が目指すべき解決となります。保険会社から、自賠責基準や任意保険基準といった低額の慰謝料しか提案されないときは、弁護士に依頼したり、裁判を提起したりして争うべきです。
自賠責保険は、全ての車両が加入する法的義務のある強制保険です。
被害者救済のための最低限の補償であり、慰謝料額は低額に抑えられているので、補償しきれない損害は加害者本人やその任意保険会社へ請求する必要があります。自賠責基準は、自動車損害賠償保障法(自賠責法)に次のように上限が定められています(なお、以下の表における上限は、後遺障害慰謝料と逸失利益の合計額です)。
<別表Ⅰ>
| 等級 | 支払基準 | 限度額 |
|---|---|---|
| 第1級 | 1,650万円 (1,850万円) | 4,000万円 |
| 第2級 | 1,203万円 (1,373万円) | 3,000万円 |
<別表Ⅱ>
| 等級 | 支払基準 | 限度額 |
|---|---|---|
| 第1級 | 1,150万円 (1,350万円) | 3,000万円 |
| 第2級 | 998万円 (1,168万円) | 2,590万円 |
| 第3級 | 861万円 (1,105万円) | 2,219万円 |
| 第4級 | 737万円 | 1,889万円 |
| 第5級 | 618万円 | 1,574万円 |
| 第6級 | 512万円 | 1,296万円 |
| 第7級 | 419万円 | 1,051万円 |
| 第8級 | 331万円 | 819万円 |
| 第9級 | 249万円 | 616万円 |
| 第10級 | 190万円 | 461万円 |
| 第11級 | 136万円 | 331万円 |
| 第12級 | 94万円 | 224万円 |
| 第13級 | 57万円 | 139万円 |
| 第14級 | 32万円 | 75万円 |
任意保険基準は、加害者が加入する任意保険会社から支払われる慰謝料の基準です。
自賠責保険が強制加入であるのに対し、任意保険への加入は「任意」です。自賠責が最低限の補償であるため、これを補うために任意保険に加入するのが通常です。
ただ、多くのケースで、任意保険基準でも、弁護士基準(裁判基準)より低額となるため、保険会社の提案する示談金を安易に受け入れてはいけません。低額の提案しか受けられないときは、以下の弁護士基準(裁判基準)によって算出した適正額を支払うよう請求すべきです。事故態様に争いがあるなどのケースでは、交渉が決裂した場合、訴訟提起に進んでください。
弁護士基準(裁判基準)とは、裁判で請求した場合に認容される金額です。
交通事故の訴訟は過去に数多く起こっているため、その判決を参考にした一定の相場が形成されています。弁護士基準(裁判基準)は、いわゆる「赤い本」に、次の通り整理されています。
| 等級 | 支払基準 |
|---|---|
| 第1級 | 2,800万円 |
| 第2級 | 2,370万円 |
| 第3級 | 1,990万円 |
| 第4級 | 1,670万円 |
| 第5級 | 1,400万円 |
| 第6級 | 1,180万円 |
| 第7級 | 1,000万円 |
| 第8級 | 830万円 |
| 第9級 | 690万円 |
| 第10級 | 550万円 |
| 第11級 | 420万円 |
| 第12級 | 290万円 |
| 第13級 | 180万円 |
| 第14級 | 110万円 |
交通事故でよく見られる症状をもとに、後遺障害等級と慰謝料の目安を紹介します。
例えば、追突事故などで多く生じる「むちうち」の場合、画像診断などで客観的に異常が確認できれば第12級13号、自覚症状のみであっても医学的に説明可能なら第14級に認定されます。この場合、弁護士基準(裁判基準)では、12級の相場が290万円、14級が110万円となり、他覚的所見の有無によって請求できる慰謝料額に差が生じます。
「他覚的所見(他覚症状)」の解説

後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級の基準額が目安となりますが、事故の状況や被害者の状態など、個別の事情によって増額・減額されるケースがあります。
交通事故で複数のケガを負い、別々の部位に後遺障害が残った場合は「併合」というルールが適用されます。この場合、複数の後遺障害等級が認定されても、全ての等級を単純に合算するわけではなく、最も重い症状を基準に、そこから1級〜3級ほど繰上げられる仕組みとなっています。
基本的なルールは、次のようにまとめることができます。
このような後遺障害の併合が起こると、単独の症状のみのケースに比べ、後遺障害慰謝料を増額することができます。
交通事故について被害者側にも過失がある場合、その分だけ賠償が減額されます。
例えば、被害者側に前方不注意の過失がある場合などが典型例です。このような過失割合に応じた減額のことを「過失相殺」と呼び、後遺障害慰謝料もその対象となります。
例えば、慰謝料の基準額が290万円であっても、被害者に2割の過失があれば受け取れる金額が目減りします。また、被害者が元々持っていた持病や既往症が後遺症の悪化に影響したと判断された場合、「素因減額」として賠償金が差し引かれることがあります。
なお、交通事故の裁判例を類型化し、事故状況ごとに過失割合をまとめた「別冊 判例タイムズ」が、実務では参考にされています。
次に、後遺障害等級認定の仕組みについて解説します。
交通事故の被害者が、より高額の後遺障害慰謝料を得るには、後遺障害の程度に合った適切な等級認定を受けることが重要です。その具体的な方法と争い方を理解してください。
後遺障害等級認定の申請手順は、次の流れで進めます。有利な認定を得るのに重要なのは、主治医の指示に従い、症状固定となるまで適切な回数・頻度で治療を継続することです。
後遺障害等級認定の申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
手間を惜しまないなら、慰謝料増額のためには、被害者請求をする方がおすすめです。弁護士に依頼して代わりに進めてもらうことで、スムーズに行うことができます。
後遺障害申請の結果に不服がある場合、異議申し立てが可能です。等級認定(もしくは不認定)に不服があるとき、異議申立ての方法は次の3つです。
なお、それぞれの方法について、詳しくは「後遺障害認定に異議申し立てを行う方法」の解説を参照してください。
後遺障害慰謝料の請求方法は、交通事故における損害賠償請求の流れに従います。症状固定後、後遺障害等級の認定を得たら、他の損害とともに計算して請求を行いましょう。
交通事故の損害賠償請求で最も重要なのは、適切な証拠をそろえることです。
事故直後から記録に残しながら治療を進めるようにし、医師による診断書や意見書、各種の検査や画像診断の結果、入通院の記録や処方薬の詳細などの資料を収集してください。なお、「交通事故で医療記録を入手する方法」の解説もご参照ください。
請求書を送付したら、保険会社との示談交渉が始まります。
示談交渉では、証拠に基づく具体的な後遺障害等級と、それに対応する慰謝料額を提示し、納得のいくまで話し合いましょう。「交通事故の後遺障害慰謝料の相場」の通り、保険会社の提案が相場より低いときは、安易に応じてはいけません。
後遺障害の慰謝料請求は、交通事故の専門的な法律知識を要するため、弁護士のアドバイスを受けるのが有用です。特に、等級認定の結果に疑問があるときや、保険会社の提示額が低く交渉が難航する場合は、必ず弁護士に相談してください。
保険会社との示談交渉が難航する場合は、裁判に移行するケースもあります。裁判では、証拠に基づいて妥当な後遺障害慰謝料の金額を決定してもらうことができます。
裁判で請求する際は、後遺障害慰謝料以外にも、治療費や休業損害、逸失利益といった損害賠償について漏れなく請求しましょう。
最後に、後遺障害慰謝料以外の請求についても解説しておきます。後遺障害が残る交通事故のケースでは、後遺障害による逸失利益、入通院慰謝料の請求も忘れてはなりません。
後遺障害が残ったことで労働能力が低下し、将来にわたって得られるはずだった収入が減少した場合、その損失分を逸失利益として請求できます。逸失利益の金額は、交通事故に遭う前の基礎収入をベースにして、後遺障害等級ごとに定められた労働能力喪失率と、将来の利息分をあらかじめ差し引くライプニッツ係数を掛け合わせて算出します。
交通事故の慰謝料には、後遺障害慰謝料のほかにケガの治療に対する入通院慰謝料(傷害慰謝料)があります。入通院慰謝料は、ケガをして入院や通院での治療を強いられたこと自体に対する精神的苦痛を補償するもので、症状固定までの入通院の日数に応じて算出され、後遺障害慰謝料とは別に請求することができます。

今回は、交通事故の後遺障害慰謝料について詳しく解説しました。
交通事故の後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級や算定基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)によって金額が大きく異なります。保険会社から提示された慰謝料額が必ずしも適正とは限らず、弁護士基準で算定すれば増額が見込めるケースも少なくありません。
また、適正な慰謝料を受け取るには、等級認定を正確に受けることが重要です。後遺障害診断書をはじめ、適切な医学的根拠を示すことが重要なポイントとなります。
後遺障害慰謝料の金額に疑問がある場合や、保険会社との示談交渉に不安がある場合、交通事故トラブルに詳しい弁護士へ早めに相談するのがおすすめです。適正な賠償を受けるためにも、自身のケースに応じたアドバイスを受けて手続きを進めるべきです。
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/