労働問題

管理職でも残業代請求できる!「名ばかり管理職」とは?

2020年7月14日

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管理職残業代請求名ばかり管理職

労働基準法に定められた「法定労働時間」を超えて労働を命じられたときには、その時間外労働に対して残業代(割増賃金)を請求することができます。このことは、全ての労働者に共通するルールです。

しかし、「管理職だから、残業代請求をすることができない」と会社に言われることがあります。責任感が強く、真面目な人ほど、会社で出世するにつれて「管理職だから、残業代を請求すべきではない」と思い込んでいる方が多くいます。

労働法の専門用語では、いわゆる管理職のことを「管理監督者」といいます。労働基準法に定められている「管理監督者」にあたる場合には残業代のルールが適用されず未払残業代の請求はできません。ただ、「管理監督者」の要件はとても厳しく、会社がいう「管理職」の中にも、「管理監督者」には該当しない人が多くいます。

そこで今回は、このように会社から管理職扱いされてサービス残業を強要されているものの、実際には残業代を請求すべきである、いわゆる「名ばかり管理職」について弁護士が解説します。

「労働問題」弁護士解説まとめ

労働基準法上の「管理監督者」と、会社の「管理職」は違う!

管理職残業代請求名ばかり管理職

「管理職だから、残業代は支払われない」と会社から言われて悩む方も多いのではないでしょうか。というのも、そのような悩み、不安の相談をする方は、管理職といえるほどの好待遇を会社から受けておらず、安月給でこき使われ、「管理職」を口実にサービス残業を強制されていることが多いからです。

確かに、労働基準法の「管理監督者」に該当すれば、労働基準法の労働時間に関する規制について適用除外となるため、時間外割増賃金や休日割増賃金といった、いわゆる残業代の支払はありません。労働基準法41条の定めは、次のとおりです。

労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

会社側の言い分は、このことを曲解、悪用し、会社側で管理職に任命した社員に対して残業代を支払う義務がないという理屈ですが、労働法の理解が不足した考え方です。

というのも、労働基準法上の管理監督者は、残業代が支払われない代わりに、厳格な要件で判断されており、少なくとも、会社が自由に決められるものではありません。労使間に「管理監督者であるかどうか」について争いがあるとき、その最終判断権は裁判所にあります。

そして、労働基準法上の「管理監督者」に該当しないにもかかわらず会社から「管理職」に任命され、不当な取り扱いを受けている労働者のことを「名ばかり管理職」と呼びます。

労働基準法上の「管理監督者」の判断基準

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管理職として雇用された社員であっても、労働基準法上の管理監督者と認められるかどうかは、最終的には裁判所が判断することとなります。

少なくとも、ブラック企業が「残業代を支払いたくない」という不当な動機で任命する管理職ほど、労働基準法上の管理監督者の要件は甘くはなく、このような考え方で管理職にされたとすれば、実際には管理監督者と判断される可能性は極めて低いです。

最終的には裁判をしてみないとわからないという面があるのは当然ながら、会社側にとっては大きなリスクであり、逆に、労働者側にとっては、戦わないことは自身の権利を放棄しているに等しいこととなります。

そこで次に、労働基準法上の「管理監督者」の判断の判断基準を弁護士が解説します。

行政通達における「管理監督者」の考え方

労働基準法において、労働時間に関する規制の適用除外となる「管理監督者」がどのような社員を指すのかについて定めた重要な行政通達(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)があります。

この行政通達によれば、労働基準法41号2号にいう「監督もしくは管理の地位にある者」とは、「経営者と一体的な立場にある者」を意味しており、相当高度な権限がある社員であることが予定されています。

労働時間に関する規制が適用除外となる趣旨は、決して「残業代を払わなくてもよい」といった軽いものではなく、管理監督者の場合には労働時間、休憩、休日などの規制の枠を超えて活動することが要請される重要な職務であることを理由としています。つまり、実際にも、重要な職務、地位にあることから時間的な規制になじまないような立場にある場合にはじめて、管理監督者と認められるというわけです。

以上の職務内容、責任と権限、勤務態様、時間的拘束といった面に加えて、管理監督者にふさわしい待遇を備えていることもまた、行政通達において、重要な考慮要素とされています。

地位にふさわしい基本給や役付手当が存在することに加え、賞与などについても一般の労働者に対して優遇措置が講じられているかが検討されます。少なくとも、残業代が支払われないわけですから、残業代を足した平社員の給与に負けてしまうような低賃金では、到底、管理監督者にはならないといってよいでしょう。

「管理監督者」性を否定した裁判例(日本マクドナルド事件)

会社が管理職に任命した労働者の「管理監督者」性を否定し、「名ばかり管理職」の判断をしたことで有名な裁判例に、日本マクドナルド事件(東京地裁平成20年1月28日判決)があります。

この裁判例では、マクドナルド店長の職務内容や権限、責任、労働時間管理、待遇について次のように判断をした上で、マクドナルド店長は労働基準法上の「管理監督者」にはあたらないと判断しました。

  • 職務内容・権限・責任
    :店舗の責任者として、アルバイト従業員の採用、従業員の勤務シフトの決定などの権限を有し、営業方針や営業戦略に即した店舗運営を遂行すべき立場にあり、店舗運営において重要な職責を負っていることは明らかであるものの、店長の職務、権限が店舗内の事項に限られるものであり、経営者と一体的な立場にあり労働基準法の労働時間の枠を超えて事業活動することを要請されるというほどの重要な職務と権限はないと判断されました。
  • 労働時間管理
    :自らスケジュールを決定し、早退や遅刻について上司の許可を得る必要がないなどの裁量があるものの、実際には、店長としての固有の業務を遂行するたけで相応の時間がかかること、自らシフトマネージャーとして勤務することにより法定労働時間を超える長時間の時間外労働を余儀なくされることなどから、時間的裁量はないと判断されました。
  • 待遇
    :評価が低い場合には平均年収が下位の職種よりも低額になり、評価が高い場合であっても残業時間を加味すると管理監督者に対する待遇として十分であるとは言い難いものと判断されました。

役職名と「管理監督者」の関係

会社が「管理職」に任命しても、労働基準法にいう「管理監督者」となるとは限らないことと同様、会社が定める部長、課長、係長、店長といった役職名についても、管理監督者と認められるかと同一ではありません。

役職名は会社が自由に決めることができる一方で、労働基準法上の管理監督者は「経営者と一体的な立場にある者」といった実態的な要件によって決められるものだからです。

労働基準法では、管理職であっても働いた時間に応じた賃金を支払う義務があり、法定労働時間を超えて労働をすれば残業代を払わなければなりません。管理監督者は、時間的な規制にそぐわない働き方をしているため、例外的にこの時間的規制が排除されているに過ぎません。

管理監督者の実態は、労働者でありながら、経営者と一体ともいえるほどの地位、役職、責任が伴う必要があり、相当高いハードルです。

管理職が残業代請求する方法

管理職残業代請求名ばかり管理職

以上のとおり、労働基準法上の「管理監督者」にはあたらない管理職であれば、通常の労働者と何ら変わらず、労働時間規制の対象となります。その結果、次の残業代を請求することができます。

残業代 労働の種類 割増率
時間外労働 法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える労働 25%
(月60時間を超える場合50%)
深夜労働 午後10時以降、午前5時までの労働 25%
休日労働 法定休日(1週1日)の労働 35%

会社から管理職に任命されたからといって、実際には労働基準法上の「管理監督者」ではないのに残業代請求をあきらめている方は、サービス残業によって会社の不当な人件費抑制に加担し、ブラック企業の蔓延に、結果的に一役かっていることとなってしまいます。

古いタイプの人の中には、「会社のために」「文句を言わずサービス残業をするのが美徳」という根性論を押し付けてくる人もいるかもしれませんが、残業代請求をすることは、きちんと働いた労働者の権利です。

そこで最後に、会社から管理職に任命され、「管理職だから、残業代は支払わない」と言われたときの適切な対応として、管理職が残業代請求する方法を弁護士が解説します。

管理職の残業代の計算方法

残業代の計算方法は、一般社員でも管理職でも変わらず、「残業代の基礎単価(いわゆる「時給相当額」)×割増率×残業時間」で算出されます。しかし、管理職の場合には、一般社員と比べて、特有の問題点があります。

残業代 = 基礎単価 × 割増率 × 残業時間

会社で管理職として取り扱われて残業代を受け取っていなかったとき、会社は「残業代は不要だ」と考え、労働時間すら記録していないことがあります。本来であれば、管理職でも、その健康状態を会社が把握し、配慮するため、始業時刻・終業時刻を把握する義務がありますが、厳密な時間管理を会社が怠っていることが多いからです。

そのため、管理職が残業代を請求しようとするときには、残業時間の始まりと終わりについて、概算でもよいので労働者側で証拠収集を徹底して進めておくべきです。

タイムカードなど、一般社員の労働時間を記録するツールが管理職には用意されていない場合でも、次のような資料を収集することで、残業時間を一定程度証明することができます。

  • セキュリティカード・スマートロックなどの入退室の記録
  • 業務用パソコンのログイン履歴
  • チャットツールのログイン履歴、チャット履歴
  • 業務報告や退勤のメール
  • 会社内の監視カメラの映像

労働基準法上の「管理監督者」にあたる場合、時間規制は適用されないものの、深夜労働割増賃金の支払は依然として必要となります。

そのため、労働基準法上の「管理監督者」にあたる場合であっても、午後10時以降、午前5時までの間に就労していた場合には、その時間数分の深夜労働割増賃金(割増率25%)を請求することができます。

残業代は管理職手当として支給済といわれた場合

会社で管理職に任命されると、管理職手当、役付手当など、一般社員とは異なる手当が追加で受け取れることがあります。このような場合、管理職ではあるけれども労働基準法上の「管理監督者」には当たらない場合、基本給だけでなく手当も「残業代の基礎単価」に加算することができるため、より高額な残業代請求となります。

これに対して、「残業代は、管理職手当として支給済である」と主張する会社があります。未払残業代を請求されるリスクに備えて、あらかじめ見込まれる残業時間数を見込んで、管理職手当に含んで支給する方法をとっているということです。

このような方法を、一般に「固定残業代」「みなし残業手当」と呼ぶことがあります。

しかし、「管理職には残業代の支払義務はない」と主張するにもかかわらず、残業代相当分を手当として支払っているというのはおかしな話です。

また、残業代に相当する支払と認められるためには、雇用契約書や給与明細に、時間外手当に相当する額を明確に区分して記載し、実際の残業時間がこれを超過した場合には差額を支払う必要があります。「管理職には残業代の支払義務はない」と考えていた会社が、このような厳しいルールを遵守し、有効な残業代の支払方法をとっていることは少ないといえるでしょう。

労働基準法上の「管理監督者」にあたる場合であっても、深夜労働割増賃金の支払が必要です。そのため、始業・終業時刻の把握はもちろんのこと、深夜労働の有無とその労働時間についても、会社は把握、管理する必要があります。

そのため、管理職手当、役付手当などを深夜労働割増賃金に充当するために支払っているケースがありますが、この場合にも、雇用契約書、就業規則、給与明細などでその旨の明示が必要です。

取締役を兼務している場合

会社内で重要な地位に出世した人について、管理職扱いとするのではなく、取締役に就任させる会社があります。取締役は、原則として、「雇用」されている社員ではなく、「業務委託」関係にあるものとされます。

労働基準法が適用されるのは、労働基準法上の「労働者」です。そのため、取締役とする場合には、残業代を支払う義務がないことはもちろん、賃金ではなく報酬を支払うこととなり、最低賃金などの制限もありません。その代わり、管理職よりも更に時間的拘束にはなじみません。

この点を悪用して、残業代を支払わずにこき使うために、あえて取締役に就任させ、労働時間規制を回避しようとする会社があります。

しかし、取締役に就任した場合でも、具体的な担当職務の内容や遂行状況、勤務時間、時間的拘束の有無、他の労働者との働き方の違いなどを考慮して、取締役であっても労働基準法上の「労働者」と判断されることがあります。この場合には、たとえ取締役であっても、労働基準法上の「管理監督者」の要件を満たさない限り残業代の支払が当然に必要となります。

「労働問題」は浅野総合法律事務所にお任せください!

管理職残業代請求名ばかり管理職

今回は、会社が管理職に任命した社員であっても、労働基準法上の「管理監督者」にあたらない場合には残業代請求ができるという、いわゆる「名ばかり管理職」問題について、弁護士が解説しました。

会社から「残業代は支払われない」と言われている場合の多くは、実際には、法律上は残業代を支払ってもらうことができるケースが多くあります。そのため、「なぜ残業代が支払われないのか」について、納得するまで会社側に説明を求めるべきです。

そして、その理由が今回解説したように「管理職だから」「管理職手当を支払っているから」「課長以上は残業代が出ないルールだから」という、会社が決めたルールに従ったものである場合、法律と裁判所の定めるっルールの下では残業代請求が可能です。

未払残業代の問題についてお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

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