ご相談予約をお待ちしております。

自賠責保険の支払基準の改正!最新の基準を弁護士が解説【2020年4月〜】

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

自賠責保険の支払基準が改正され、支払われる保険金が増額されることとなりました。

改正民法(2020年4月施行)との関連で行われた改正が最新の支払基準であり、改正民法と同様、2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用されます。

自賠責保険は、法律で加入が義務付けられた、交通事故被害を救済するための最低限の保障です。そのため、任意保険に加入していない加害者からの交通事故被害にあってしまったときなど、被害回復のために特に重要なものです。

今回の解説では、

  • 自賠責保険の支払基準が改正された理由
  • 自賠責保険の支払基準の変更点【2020年4月〜】
  • より高額の損害賠償請求をするための注意点

といった、自賠責保険の最新の支払基準に関する法律知識について、弁護士が解説します。

あわせて読みたい
交通事故の後遺症で、後遺障害慰謝料を請求するための全知識 交通事故でケガをすると後遺障害が残ることがあります。法律の専門用語では「後遺障害」と言いますが、一般的には「後遺症」ということもあります。 交通事故でケガを負...
目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

\相談ご予約受付中です/

自賠責保険の支払基準とは

自賠責保険とは、交通事故に関する損害保険のうち、自動車損害賠償保障法(自賠法)によって加入が義務付けられた、被害者救済のための最低限度となる保険のことです。

交通事故の被害者が請求できる保険金には、自賠責保険、任意保険の2種類があります。そのうち、被害者保護の観点から法律で加入が義務付けられるているのが自賠責保険です(自賠法5条)。

資力がないなどの理由で任意保険に加入しない人もいますが、自賠責保険には必ず加入することとなります。そして、交通事故の被害者は、加害者の加入する自賠責保険から、その人的損害(人損)について、死亡、傷害や後遺症の程度に応じて、治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料などの支払を受けることができます。

自賠責保険から支払われる保険金は、金融庁・国土交通省の告示である支払基準によって定められています(自賠法16条の3)。この支払基準は都度改正されていますが、最新の改正が2020年4月1日より施行されました。

2020年4月1日より自賠責保険の支払基準が変更された理由

2020年4月1日より、令和元年12月12日金融庁告示・国土交通省告示第3号によって「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」が改正されました。

新しく自賠責保険の支払基準が変更された理由は、主に次の2点です。

なお、新しい自賠責保険の支払基準は、2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用されます。

交通事故の発生日を基準としますので、交通事故が2020年3月31日以前に発生しているときには、損害賠償請求が2020年4月1日以降に行われたとしても、改正前の支払基準が適用されることとなります。

民法改正により法定利息が変更されたため

自賠責保険の支払基準が変更された1つ目の理由は、民法改正(2020年4月1日施行)により法定利息が変更されたことです。改正民法では、法定利息は年5%から年3%(ただし将来変動する可能性あり)に変更されました。

このことは、交通事故における後遺障害の逸失利益の計算に大きく影響することとなりました。

後遺障害の逸失利益は、交通事故による後遺症で将来の労働能力を喪失してしまったとき、収入が減少してしまった分についての請求であり、次のように請求額を算出できます。

後遺障害の逸失利益 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 中間利息控除

後遺障害の逸失利益の計算では、将来収入を現在価値に直すため「ライプニッツ係数」を用いた「中間利息の控除」という処理をを行うところ、改正民法で法定利息が従来の年5%から年3%に変更されたことにともない、ライプニッツ係数が変更されることとなりました。

経済状況などの変化を反映させるため

自賠責保険の支払基準が変更された2つ目の理由は、平均余命、物価・賃金水準、保険金の支払実態など、経済情勢などの変化を支払基準に反映させる必要があったことです。

自賠責保険の支払基準は、経済情勢の変化にあわせて定期的に見直されており、過去にも改正されています。この度の改正以前に直近で変更されたのが、2010年4月1日施行で、既に10年間の月日が経過し、支払基準は実態にそぐわないものとなっていました。

以上の通り、期間の経過によって従来の支払基準が実態にそぐわないものとなったため、修正が必要となったということです。

自賠責保険の支払基準の変更点【2020年4月〜】

自賠責保険の新しい支払基準(2020年4月〜)について、従来の基準との変更点は次の5点です。

傷害による損害の保険金額の増額

変更された自賠責保険の支払基準では、傷害による損害の保険金額が増額されました。

傷害による損害とは、交通事故によってケガを負ったときに請求する、積極損害(治療費、入院費、看護料など)、休業損害、入通院慰謝料などの損害のことです。

支払われる保険金額の増額は、直近10年間の平均余命が長くなったことなど、経済情勢を反映したためです。

傷害による損害の保険金額について、従来の支払基準と、改正後の支払基準との違いは、次の通りです。

改正前の支払基準 改正後の支払基準
入通院慰謝料 4200円/日 4300円/日
休業損害 5700円/日 6100円/日
入院中の看護料 4100円/日 4200円/日
自宅看護料・通院看護料 2050円/日 2100円/日

なお、治療費については治療に要した必要かつ妥当な実費、通院交通費については通院に要した必要かつ妥当な実費が支払われることとなっており、この点は変更されていません。

傷害による損害の場合の保険金額は、被害者1名あたり120万円が上限となっており、この点についても変更はありません。

後遺障害慰謝料の増額

今回の変更で、後遺障害慰謝料として自賠責保険より払われる金額について、後遺障害等級のうち第1級から第12級の金額が増額されました。

後遺障害慰謝料とは、交通事故によって後遺症が残ったときに、残存した症状に応じて請求できる慰謝料のことです。後遺障害慰謝料は、後遺症の程度に応じて、第1級から第14級までの等級の認定がなされ、認定を受けた等級に応じて定められた保険金を受けとることができます。

<別表Ⅰ>

後遺障害等級 改正前の支払基準 改正後の支払基準 限度額(変更なし)
第1級 1600万円
(1800万円)
1650万円
(1850万円)
4000万円
第2級 1163万円
(1333万円)
1203万円
(1373万円)
3000万円

<別表Ⅱ>

後遺障害等級 従来の支払基準 改正後の支払基準 限度額(変更なし)
第1級 1100万円
(1300万円)
1150万円
(1350万円)
3000万円
第2級 958万円
(1128万円)
998万円
(1168万円)
2590万円
第3級 829万円
(973万円)
861万円
(1105万円)
2219万円
第4級 712万円 737万円 1889万円
第5級 599万円 618万円 1574万円
第6級 498万円 512万円 1296万円
第7級 409万円 419万円 1051万円
第8級 324万円 331万円 819万円
第9級 245万円 249万円 616万円
第10級 187万円 190万円 461万円
第11級 135万円 136万円 331万円
第12級 93万円 94万円 224万円
第13級 57万円 57万円 139万円
第14級 32万円 32万円 75万円

※()内は、被扶養者が存在する場合の金額です。

※後遺障害等級表には、別表Ⅰと別表Ⅱがあります。別表Ⅰは後遺障害によって日常的な介護を要する場合、別表Ⅱは日常的な介護までは不要な場合に適用されます。

なお、後遺障害による保険金には、各等級に応じて限度額が定められており、これは後遺障害慰謝料と後遺障害の逸失利益を合計した上限額とされています。

限度額については従来の支払基準から変更されていないため、実際には、後遺障害慰謝料が増額されたことにより、逸失利益相当分として支払われる金額が減少することを意味します。

死亡慰謝料の増額

死亡事故では、自賠責保険に死亡慰謝料と葬儀費用を請求することができますが、これらについても増額されています。

死亡慰謝料とは、交通事故により死亡したことによる精神的苦痛についての被害者本人の慰謝料のことです(なお、死亡慰謝料の請求権は相続人に相続され、実際には相続人が請求します)。

死亡慰謝料と葬儀費用について、従来の支払基準と、改正後の支払基準との違いは、次の通りです。

従来の支払基準 改正後の支払基準
被害者本人の死亡慰謝料 350万円 400万円
葬儀費用 60万円 100万円

なお、死亡による損害についても、傷害による損害と同様に上限額が設定されていますが、被害者1名あたり3000万円を上限額とする点について従来の支払基準から変更はありません。

この金額は、逸失利益、被害者及び遺族の慰謝料など全てを合計した、死亡による損害額全体の限度額です。

ライプニッツ係数の変更

前章で解説したとおり、2020年4月1日より施行された改正民法では、法定利息の利率(法定利率)が、これまでの年5%から年3%に引き下げとなりました。この法定利息に関する改正は、法定利息の利率(法定利率)と市場金利とが大きく乖離してしまっていたため、実態に合わせることを理由としています。

法定利息が引き下げられたことで、自賠責保険の支払基準に影響するのが、中間利息控除の計算で用いられる「ライプニッツ係数」の変更です。

変更後のライプニッツ係数は、次のとおりです。

期間(年) 法定利息5%の場合 法定利息3%の場合
1 0.952 0.971
2 1.859 1.913
3 2.723 2.829
4 3.546 3.717
5 4.329 4.580
6 5.076 5.417
7 5.786 6.230
8 6.463 7.020
9 7.108 7.786
10 7.722 8.530

中間利息控除というのは、後遺障害の逸失利益、死亡逸失利益などのように、「将来得られるはずの収入」を加害者に請求するにあたって、将来価値を現在の価値に評価しなおす作業のことをいいます。

それぞれ、次のような計算式で算出され、ライプニッツ係数が利用されています。

  • 後遺障害逸失利益
    =基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
  • 死亡逸失利益
    =基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

上記の計算式からもわかるとおり、法定利息が引き下げられるとライプニッツ係数が引き上げられるため、逸失利益を請求する側(被害者)からすれば、ライプニッツ係数の変更は有利にはたらく(現在もらえる金額が増額される)ことを意味します。

交通事故事案で利用される「就労可能年数とライプニッツ係数表」、「平均余命年数とライプニッツ係数表」については次の表を参考にしてください。

平均給与額の変更

休業損害などの計算で用いられる平均給与額についても、賃金の支払実態といった経済情勢の変化にあわせて、変更されました。

従来の平均給与額は、平成12年賃金センサスに基づいて作成されていましたが、改正後の新しい平均給与額は、平成30年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)に基づいて作成されています。

必ずしも、全ての性別・年齢で増額されているわけではなく、減額されている項目もあります。新しい平均給与額の表は、次の通りです。

より高額の損害賠償請求をするための注意点

自賠責保険は、あくまでも、交通事故の被害者を保護するための、最低限度の補償にすぎません。

そのため、自賠責の支払基準が、改正によって、経済情勢などにあわせて一定の増額がなされたものの、やはり交通事故被害者の救済としては、自賠責保険だけでは十分とはいえません。

自賠責保険には、被害救済として不十分となる次のような理由があります。

  • 自賠責保険は人損のみを対象とし、物損についての支払いはされない
  • 自賠責保険の保険金には限度額がある
  • 裁判で争ったときに支払いを受けることのできる弁護士基準(裁判基準)に遠く及ばない

自賠責保険だけではカバーできない損害について、加害者の加入する任意保険に請求できます。

しかし、任意保険会社が、被害者のすべての損害を認めてくれなかったり、そもそも事故態様について被害者と加害者とで争いがあったりする場合、被害者側が請求する損害の賠償を十分には受けられないおそれがあります。

迅速に、かつ、より多くの損害賠償を獲得するためには、交通事故に精通した弁護士に依頼することが有益です。弁護士に依頼することによって、裁判を起こせば獲得できるであろう損害額をもとに、保険会社と交渉し、慰謝料をはじめとした損害賠償額を増額することができます。

交通事故被害は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、2020年4月1日より施行された、自賠責保険の支払基準の改正について弁護士が解説しました。

自賠責保険の最新の支払基準は、社会状況や経済情勢の変化を反映して、過去の支払基準よりも増額傾向にあります。改正後の支払基準は、2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用されます。

自賠責保険は、被害者の最低限の保障としてとても重要な保険です。しかし、被害者が十分な賠償を得るためには、保険会社との交渉を有利に進め、自賠責保険の支払基準を超えて、慰謝料などの増額を勝ちとる必要があり、このとき、弁護士基準(裁判基準)によって損害額を算出することが重要です。

お一人で解決できない交通事故問題にお悩みの方は、ぜひ一度、当事務所の弁護士にご相談ください。

あわせて読みたい
交通事故の後遺症で、後遺障害慰謝料を請求するための全知識 交通事故でケガをすると後遺障害が残ることがあります。法律の専門用語では「後遺障害」と言いますが、一般的には「後遺症」ということもあります。 交通事故でケガを負...
目次(クリックで移動)
閉じる