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eスポーツ選手契約の法的性質と、契約時の注意点

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

eスポーツをプレイし、大会に参加して賞金を得たり、スポンサーからの出資を受けたり、広告・プロモーション活動の依頼を受けたりする人のことを、eスポーツ選手といいます。

eスポーツ自体が新しい事業分野であるためプロとアマの境界は曖昧になっていますが、eスポーツから得られた収入だけで生活をすることができる人をプロeスポーツ選手と呼びます。プロeスポーツ選手は、ゲームメーカー会社から広告収入を得たり、プロチームに所属したりしますが、その際には契約が必要となります。

eスポーツビジネス自体が新規性の高い事業分野であり、契約関係がきちんと整備されていないことが多い反面、特に、タレント性を有する有名選手の場合、権利関係に十分な配慮が必要となることが多くあります。

今回の解説では、

  • eスポーツ選手契約の法的性質
  • プロeスポーツ選手と、これに出資するゲームメーカーやプロチームなどとの間で締結する契約の注意点
  • eスポーツ選手契約の書式・ひな形

といったeスポーツに関わる法律面の注意点を、企業法務に詳しい弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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eスポーツ選手契約とは

eスポーツ選手契約とは、eスポーツのプレイや啓蒙活動などによって収入を得ているプロeスポーツ選手との間で、ゲームメーカーやスポンサー、ゲームチームなどが結ぶ契約です。単に「選手契約」と呼んだり、eスポーツ選手のマネジメント契約と呼ばれることもあります。

この契約は、芸能人・タレントと所属事務所の関係に似ており、eスポーツ選手のタレント性を生かして、契約に基づいてゲームプレイや大会参加などをはじめとした業務を行ってもらうためのルールを定めるものです。

企業が選手に対して業務を依頼し、その対価が発生する以上、将来のトラブルを防止するため、契約書を交わしておくことは非常に重要です。

eスポーツ選手契約の法的性質

契約によって、eスポーツ選手に対して業務を依頼するとき、考えられる契約の法的性質には「雇用契約」と「委任契約(準委任契約)・請負契約」があります。

  • 雇用契約とは
    雇用契約は、労働者が使用者の指揮命令に従い、賃金の対価として労務を提供する契約です。労働者が使用者よりも弱い立場にあることから、不当解雇の規制残業代請求など、労働基準法をはじめとした労働者保護の法制度が適用されます。
  • 委任契約(準委任契約)・請負契約とは
    委任契約(準委任契約)・請負契約は、業務について逐一細かい指示をするのではなく、自分の判断で行動して契約の目的を達成するものであり、契約当事者は対等の関係です。

プロeスポーツ選手の契約では、業務について逐一の指揮命令を受けることはなく、ゲームプレイについてプロフェッショナルとしての能力を提供することを内容とする契約だと考えられます。したがって、プロeスポーツ選手に関する契約は「委任契約(準委任契約)」と解するのが相当です。

eスポーツ選手契約の書式

eスポーツ選手契約では、「契約自由の原則」が働くことから、基本的には、企業と選手の双方が合意していれば、ある程度柔軟に契約条項を定めることができます。

とはいえ、eスポーツという新しい分野において、将来起こる可能性のある問題を予想し、リスク回避のために最適な契約書を作成するには、重要な条項については持ち込んでおく必要があります。そこで、eスポーツ選手契約の書式を示しておきます。

プロeスポーツ選手契約書

株式会社XXXX(以下「甲」という。)と、YYYY(以下「乙」という。)とは、甲が乙に対し、プロeスポーツ選手として活動する業務を委託することにあたり、以下の通り契約を締結した。

第1条(業務委託の範囲) ※詳しくは次章で解説
甲は乙に対し、以下の業務(以下「本件委託業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
① 甲の指定するeスポーツ大会へ出場すること
② 甲に所属するプロeスポーツ選手としてメディアへ出演すること
③ 甲の広告、宣伝活動
④ その他、上記各号に付随する業務

第2条(受託者の義務) ※詳しくは次章で解説
1. 乙は、本件委託業務を、善良なる管理者の注意をもって遂行するものとする。
2. 乙は、甲からの求めがある場合には、本件委託業務の進行状況について、書面にて遅滞なく甲に報告するものとする。
3. 乙は、本件委託業務を遂行するにあたり、甲の製品である「XXXX」、「XXXX」を他社製品に優先して使用しなければならない。

第3条(業務委託報酬等) ※詳しくは次章で解説
1. 本件委託業務の対価(以下「業務委託報酬」という。)は、月額○○○円(税込)とする。
2. 甲は乙に対して、前項に定める業務委託報酬を、毎月○日までに、乙が別途指定する金融機関口座に振込送金する方法により支払う(なお、振込手数料は甲の負担とする)。
3. 甲は、乙のプロeスポーツ選手としての活動についてスポンサー契約を取得した場合には、そのスポンサー契約に基づいて甲が得る報酬のうち○%を乙に支払うものとする。支払方法等は前項と同様とする。

第4条(賞金の分配) ※詳しくは次章で解説
甲が、本件委託業務の遂行としてeスポーツ大会に出場し、賞金を得た場合には、その3分の1を甲が、その3分の2を乙が取得するものとする。

第5条(経費分担) ※詳しくは次章で解説
乙が、本件委託業務を遂行するにあたってかかる経費は、原則として乙の負担とする。ただし、甲製品に限り、ゲーム機器やゲームソフトの購入費用は甲の負担とする。

第6条(肖像権及びパブリシティ権) ※詳しくは次章で解説
乙は、甲が本件契約期間中に取得した乙の写真、動画その他の制作物について、甲が無償で使用することを許諾し、肖像権、パブリシティ権等の行使をしないものとする。

第7条(配信について) ※詳しくは次章で解説
甲がYoutubeその他の媒体において行う配信活動は自由とし、その収益はすべて甲に帰属するものとする。

第8条(ゲームアカウントについて) ※詳しくは次章で解説
本件契約が終了するとき、甲は乙に対し、ゲームアカウント(XXXX:XXXX)に対して乙の負担で課金した金額について、直ちに支払うものとする。

以上の通り甲乙が合意した証として、本書面2通を作成し、甲乙が署名押印した上、各1通を保管する。

20XX年XX月XX日

【甲】 株式会社XXXX(印)

【乙】 YYYY (印) 

なお、プロスポーツの中には、プロ野球のように統一契約書(「統一契約書様式」日本プロ野球選手会)が存在するケースもあります。統一契約書があると、選手保護が画一的に図れるというメリットがある反面、統一契約書において保護されていない権利については選手の意思にかかわらず一方的に奪われてしまうというデメリットがあります。

上記の書式例は、あくまでも参考であり、eスポーツ選手に依頼される業務の内容・種類などに応じて、適宜修正が必要となることがあります。

契約書の作成もしくは契約書チェックの段階から、弁護士に依頼することによって、個別の事情を踏まえ、企業側にとっても選手側にとっても、穴のない契約書とすることができます。

eスポーツ選手契約の契約上の注意点

プロeスポーツ選手と契約する際には、契約書を作成することが必要です。契約書を作成することで、契約の存在とその契約条件を証拠化し、客観的に明らかにすることができるからです。

eスポーツが新しい分野であることから、選手契約書が存在していなかったり、不十分かつ簡易な契約書でしかなかったりすることが多く、契約内容の明確化やトラブル回避といった契約書の本来の目的が果たせていないことがあります。

そこで、プロeスポーツ選手の契約書について、書式・文例を示しながら、各条項ごとのその注意点やポイントについて弁護士が解説します。

契約書の前文について

契約書の前文とは、その契約の趣旨や目的を定めるものです。契約書の前文自体には権利義務を定めるような機能はないものの、契約書全体の解釈の指針となる機能を果たすため、とても重要な役割をもっています。

eスポーツ選手のプロ契約の場合には、その契約の趣旨が、プロeスポーツ選手として活動するにあたり、チームに所属する際の条件などを契約内容とするものであることを明文化しておくことが重要です。

また、企業側の立場では、前章で解説したとおり、「雇用」と評価されて労働者保護が適用されてしまわないよう、「業務委託」であることを明記しておくようにします。

プロeスポーツ選手契約書

株式会社XXXX(以下「甲」という。)と、YYYY(以下「乙」という。)とは、甲が乙に対し、プロeスポーツ選手として活動する業務を委託することにあたり、以下の通り契約を締結した。

委託業務に関する条項

プロeスポーツ選手と所属チームないし所属企業との関係は「委任契約(準委任契約)」であることから、チームが選手に対してどのような業務を委託するのか、その委託業務の内容を定めておく必要があります。

委託業務の内容を具体的に定めておかないと、所属チーム側としてはやってもらいたかった業務を依頼することができないといったデメリットが生ずるおそれがあり、プロ選手側からしても、約束されていなかったはずの業務までその報酬の範囲内で依頼されてしまうといったデメリットが生ずるおそれがあります。

第1条(業務委託の範囲)

甲は乙に対し、以下の業務(以下「本件委託業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。

① 甲の指定するeスポーツ大会へ出場すること
② 甲に所属するプロeスポーツ選手としてメディアへ出演すること
③ 甲の広告、宣伝活動
④ その他、上記各号に付随する業務

委託業務の遂行に伴う義務

プロeスポーツ選手として活動するにあたり、プロ選手として守るべき一定の義務を選手側に課すことが必要となる場合があります。

業務委託契約で通常定められる善管注意義務(善良なる管理者の注意をもって業務を遂行する義務)や報告義務は一般的ですが、これに加えて、eスポーツ選手契約に特有の問題として、自社のロゴをユニフォームに入れて活動することを求めたり、自社メーカーの製品を使用して活動することを求めたりする場合があります。

特に、ゲームメーカーなどの企業がプロeスポーツ選手と契約をする目的として、企業のイメージアップや製品の認知度の向上などがある場合には、このような義務を選手に課すことを契約書に定めておく必要があります。

第2条(受託者の義務)

1. 乙は、本件委託業務を、善良なる管理者の注意をもって遂行するものとする。
2. 乙は、甲からの求めがある場合には、本件委託業務の進行状況について、書面にて遅滞なく甲に報告するものとする。
3. 乙は、本件委託業務を遂行するにあたり、甲の製品である「XXXX」、「XXXX」を他社製品に優先して使用しなければならない。

報酬などの収入に関する条項

プロeスポーツ選手といっても、プロ野球選手のような高額の年俸が得られるケースは少ないです。多くの場合は、チームから定額の報酬がもらえるとしてもごく少額にとどまるか、もしくは、報酬はなく場所や環境を整えてもらうといった内容であることも多くあります。

報酬を定める際には、その金額とともに、支払時期、支払方法を定める必要があります。

また、eスポーツ選手として活動するときには、報酬以外にも次のような収入が得られる可能性があり、所属チームと選手との間で配分を取り決めておく必要があります。

  • eスポーツ大会の賞金
  • スポンサーからの協賛金
  • ゲーム配信や動画の使用許諾によって得られる収入
  • Youtuber活動で得られる広告収入
  • ファンからの投げ銭

金銭面に関することは、契約内容の中でも特にもめやすい点であることから、できるだけ詳しく契約条項に定めておく必要があります。

第3条(業務委託報酬等)

1. 本件委託業務の対価(以下「業務委託報酬」という。)は、月額○○○円(税込)とする。
2. 甲は乙に対して、前項に定める業務委託報酬を、毎月○日までに、乙が別途指定する金融機関口座に振込送金する方法により支払う(なお、振込手数料は甲の負担とする)。
3. 甲は、乙のプロeスポーツ選手としての活動についてスポンサー契約を取得した場合には、そのスポンサー契約に基づいて甲が得る報酬のうち○%を乙に支払うものとする。支払方法等は前項と同様とする。

賞金の分配に関する条項

プロeスポーツの所属契約の中で定めておくべき金銭面の取り決めのうち、特に重要となるのが賞金の分配に関する条項です。

特に、近年ではeスポーツ大会における賞金も高額化している傾向があり、活躍している選手ほど、チームと選手とで獲得した賞金をどのように分配するかが重要な問題となります。

賞金の分配について明確なルールはなく、活動費用や大会参加費などの支出をどちらが負担するかといった点を踏まえ、企業と選手との話し合いによって決めるようにしてください。

第4条(賞金の分配)

甲が、本件委託業務の遂行としてeスポーツ大会に出場し、賞金を得た場合には、その3分の1を甲が、その3分の2を乙が取得するものとする。

経費に関する条項

プロeスポーツ選手として活動するためには、様々な経費がかかります。

必ずかかる経費として、ゲーム機器やゲームソフトの購入費用、ゲーム内での課金費用などがありますが、これに限らず、大会の際の交通費、遠征費、海外渡航費なども経費となります。

プロeスポーツ選手と所属チームとの契約の法的性質が「委任契約(準委任契約)」のときには、選手は個人事業主であり、経費は自身で負担することが基本です。

ただし、選手として活躍するための経費が多くかかる一方で、海外大会などに参加すれば十分な活躍が見込めるような場合に、その一定割合について所属チームの負担とすることを契約書に定める場合があります。メーカーとスポンサー契約を結ぶとき、製品を無償提供することを定める例があります。

第5条(経費分担)

乙が、本件委託業務を遂行するにあたってかかる経費は、原則として乙の負担とする。ただし、甲製品に限り、ゲーム機器やゲームソフトの購入費用は甲の負担とする。

肖像権・パブリシティ権に関する条項

eスポーツでは、選手のゲームのプレイだけでなく、選手が有名になればなるほど、その選手自体にも経済的価値が生まれます。選手自体に価値が生じるとき、選手の写真や名前を利用したり、グッズを作ったりすることで経済的効果を生むケースがあります。

このようなとき、肖像権、パブリシティ権についても契約書で定めておくことが必要です。

広報活動の必要性などから、所属するプロeスポーツ選手の肖像権を一括管理することを求める場合企業が多いですが、一方で、全く選手の利益がないと無効となるおそれもあります。

この点、ゲームやカードにおけるプロ野球選手の肖像権を、球団が一括管理することの不当性を争った訴訟(最高裁平成22年6月15日判決)では、統一契約書による肖像権の一括管理を認める判断が下されましたが、その前提として、球団が選手に適切な配分を行っている点が考慮されました。

第6条(肖像権及びパブリシティ権)

乙は、甲が本件契約期間中に取得した乙の写真、動画その他の制作物について、甲が無償で使用することを許諾し、肖像権、パブリシティ権等の行使をしないものとする。

配信に関する条項

eスポーツでは、大会のプレイ動画がネットを通じて全世界に配信されることがあります。また、選手の中には、Youtuberとして活動し、プレイ動画を公開することで収入を得る人もいます。

そのため、配信による収入を誰が得るか(もしくは、どのように分配するか)を、契約書に明記しておくことが重要です。特に、知名度がある人気選手にとっては、配信に関する収益分配をどのように定めるかによって金銭面の条件が大きくことなるため、注意が必要です。

配信についての収益の決め方には、次のように様々なパターンがあります。

  • 個人としての配信活動を一切認めず、チームとしての配信活動は収益配分をする方法
第7条(配信について)

1. 甲は、本件契約期間中、Youtubeその他の媒体において配信活動を行わないものとする。
2. 甲が、乙の運営するYoutubeチャンネル「XXXX」に出演したときは、1本につきXXX円の出演料を支払う。

  • 個人としての配信活動を認めるが、チームに一定の収益を分配する方法
第7条(配信について)

甲が、本件契約期間中、Youtubeその他の媒体において配信活動を行ったときは、これにより生じた収入(広告収入ないし投げ銭収入)のうちn分の1を乙に支払うものとする。

  • 個人としての配信活動は自由とし、その収益も個人に帰属することとする方法
第7条(配信について)

甲がYoutubeその他の媒体において行う配信活動は自由とし、その収益はすべて甲に帰属するものとする。

なお、eスポーツ大会の映像は、大会主催者との間でも権利の調整が必要となります。大会映像についての権利は、大会に参加する際の規約や出演契約書などで、権利配分が決められていることが多いです。

アカウント所有権に関する条項

eスポーツ特有の問題として、ゲームアカウントの所有権の問題があります。

家庭用ゲーム機、PCゲームやスマホゲームなど、最近のゲームではアカウント制となっており、そのアカウントごとにゲーム内のキャラクターと紐づけられ、課金をしてアイテムを買ったり経験値を貯めたりして、そのアカウントのキャラクターを育てていく仕組みとなっています。

このような場合、「経費」の項目で解説したとおり、大会に勝つためのゲームプレイに必要となる費用をチーム側が負担していたとき、課金によって育ったゲームアカウントが誰のものかについて、争いが生じる可能性が高いです。例えば、お金をかけてアカウントを育てても、選手の移籍とともに失われてしまうというリスクがチーム側にはあります。

そのため、ゲームアカウントの所有権の問題について、将来の紛争を回避するため、契約書で明記しておくことがおすすめです。

  • チームを移籍する際にはアカウントに関する一切の権限を譲渡すると定める方法
第8条(ゲームアカウントについて)

1. ゲームアカウント(XXXX:XXXX)についての一切の権利は乙が有するものとする。
2. 本件契約が終了するとき、甲は乙に対し、前項のゲームアカウントの引き継ぎを行うため、アカウントID・パスワードその他の必要な情報を提供するものとする。

  • アカウントにかかった費用の一部を求償すると定める方法(アカウント引継ぎが難しい場合など)
第8条(ゲームアカウントについて)

本件契約が終了するとき、甲は乙に対し、ゲームアカウント(XXXX:XXXX)に対して乙の負担で課金した金額について、直ちに支払うものとする。

専属・移籍に関する条項

eスポーツでは、プロ野球のように移籍に関するルールが定められているわけではなく、新しい事業分野であるため、より優れたプレイヤーを求めて、選手の移籍は頻繁に行われています。選手側も、より良い条件を求めてチームを移籍します。

しかし、所属チームとしては、これまで費用と手間をかけて育ててきた選手が、大会で結果を残したり知名度が上がったりしたところで他のチームに移籍してしまうと、投下資本の回収が困難となってしまいます。

そのため、移籍については一定の制限をかける必要性が出てきます。移籍を一切許さない契約を「専属契約」と呼ぶことがあります。

ただし、スポーツの分野における移籍制限については、「(令和元年6月17日)スポーツ事業分野における移籍制限ルールに関する独占禁止法上の考え方について」(公正取引委員会)において、移籍制限が独占禁止法に違反する可能性を示唆し、移籍制限により達成しようとする目的の合理性と、達成のための手段の相当性の確保が求められることが示されています。

そのため、移籍制限を課すとしても、移籍金や移籍の条件を設定しておくなど、あらかじめ移籍の際のルールをチームと選手の間で合意し、契約書に定めておくことが重要です。

未成年者と契約するときの注意点

eスポーツでは、反射神経や動体視力といった能力が求められることから、プロeスポーツ選手は若年層が中心となります。その中には、未成年者の選手も多く存在します。

民法では、未成年者が法律行為を行うには法定代理人の同意が必要とされ(民法5条1項本文)、法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は取り消すことができるとされています(民法5条2項)。なお、民法改正により「未成年」は、2022年3月31日までは満20歳未満、2022年4月1日以降は満18歳未満を指します。

したがって、プロeスポーツ選手契約において、契約の当事者が未成年であるときは、親の同意を得ていることを契約書上に明記しておく必要があります。

企業法務は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、プロeスポーツ選手と所属チームとの契約時に作成すべき契約書(選手契約・マネジメント契約)について、その内容や注意点を弁護士が解説しました。

eスポーツはまだまだ未開の分野であり、契約書についても、参考となる例(書式・ひな形)が十分にあるわけではなく、また、その契約書について争われた裁判例は更に少ない状況です。しかし、ビジネスとして、その他の経済活動と密接にかかわる以上、eスポーツといえども十分に法的論点を詰め、契約書を締結しておくことが重要です。

野球やサッカーなど、他のプロスポーツで議論されている論点を応用して検討することができるものもあります。

プロeスポーツ選手契約の作成においては、チーム側の投下資本を守るとともに、選手側の権利を不当に侵害しないことが重要であり、弁護士による適切なサポートを受けることが有益です。

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