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eスポーツ大会における知的財産権(著作権・商標権等)の注意点

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

eスポーツは、アーケードゲーム、家庭用ゲーム機、PCゲーム、スマホゲームなどのビデオゲームを用いて勝敗を争うという性質上、著作権、商標権などの知的財産権についての配慮を欠くことができません。ビデオゲームそれ自体が、知的財産権のかたまりだからです。

この点が、野球やサッカーなど、誰でも自由にそのルールを利用し、大会を開催することのできる従来のスポーツ大会との大きな差です。

特に、eスポーツ大会を開催する場合には、その大会で使用するゲームについて、著作権、商標権などの知的財産権の問題を解消しておかなければ、法違反となってしまうおそれがあります。

今回の解説では、eスポーツ大会に関連する法律問題のうち、

  • eスポーツ大会と著作権の問題
  • eスポーツ大会と商標権の問題

といった、eスポーツ大会の主催者が注意しておくべき知的財産権(著作権・商標権など)の注意点について、弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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eスポーツ大会と著作権の問題

eスポーツの大会は、オンライン開催の場合とオフライン開催の場合がありますが、いずれの場合にも、著作物であるビデオゲームをプレイしている様子を観客に見せたり、オンライン配信したりすることが通常です。

ゲームは、著作権法上の「著作物」となるため、著作権法上の権利処理を適切にしておかなければ、著作権侵害となってしまいます。このことは、オフラインで大画面スクリーンに映し出すなどの方法でも、インターネットで配信する方法でも同様です。

ゲームが著作物となる理由

著作権法は、著作物についてその種類に応じてどのようなものが著作物になるかを例示しています。そのうち、eスポーツにおけるゲームが該当すると考えられるのが「映画の著作物」(著作権法10条1項7号)と「プログラムの著作物」(著作権法10条1項9号)です。

ゲームソフトに利用されるプログラムが「プログラムの著作物」にあたることは、改造ゲームの違法性などが争いとなったときめきメモリアル事件(最高裁平成13年2月13日判決)、三國志Ⅲ事件(東京高裁平成11年3月18日判決)でも認められた結論です。

「映画の著作物」とは、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む」(著作権法2条3項)と定められており、ビデオゲームの映像はこれに該当します。そのため、eスポーツ大会を開催する際にも、著作権者であるゲームメーカーから著作権に関する許諾を受ける必要があります。

eスポーツ大会をオフラインで開催しプレイ画像をスクリーンで鑑賞する場合だけでなく、ネット配信する場合やその録画を二次配信したりアーカイブしたりする場合にも、著作権侵害の問題が生じ得ます。

無許可でゲームを利用してeスポーツ大会を開催した結果、著作権侵害となってしまったとき、民事責任として差止請求、損害賠償請求、不当利得返還請求、名誉回復措置を命じられるおそれがあり、刑事責任として「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」またはその双方を併科されるおそれがあります。

なお、どの著作物にあたっても、eスポーツ大会での利用が著作権侵害にあたり得るのですが、どの著作物にあたるかによって認められる権利の範囲が異なる点に注意が必要です。

特に、映画の著作物であると認められる場合には「頒布権」(著作権法26条)が認められます。「上映権」(著作権法22条の2)は全ての著作物に認められています。

eスポーツ大会を開催するには、著作権の利用許諾が必要

著作権を有するゲームメーカーが開催する場合などには、著作権法上の権利処理は必要ありませんが、それ以外の第三者がeスポーツ大会を開催する場合には、著作権の利用許諾が必要となります。

ゲームの著作権の利用許諾において、大会主催者と著作権者との間で、次のような条件が合意されることがあります。後からトラブルにならないよう、必ず契約書を作成しておくことが大切です。

  • 著作物であるゲームの利用方法・配信方法
  • 著作物の使用料
  • 著作物の二次使用に関する方法
  • 大会から利益が出た場合の利益分配
  • 大会のプロモーションを行う際の広告素材の利用方法
  • 大会の配信方法
  • 録画映像の利用態様

こうした著作権利用に関する許諾について、合意形成に向けた交渉には時間と労力を要することが通常です。また、ゲームメーカー側としては、著作権の許諾を通じてeスポーツ大会の開催や内容について一定のコントロール力を得ることとなります。

著作権の処理を煩雑化させず、中小規模のeスポーツ大会を活性化させることは、ゲームメーカー側のメリットになるため、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」(任天堂)のように著作権利用に関するガイドラインを定め、これに従う限り権利処理の手間を軽減するという工夫をしている企業もあります。

「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」(総務省、2018年)では、統一的なガイドラインを作って権利処理を簡略化する方法のほか、JASRAC(ジャスラック)のような著作権の許諾代行を行う団体を作る解決策も示唆されています。

eスポーツ大会と商標権の問題

eスポーツにおいて、ゲーム名やゲームメーカー名、ロゴマークなどは、商標登録されており、ゲームメーカーである企業が商標権を有していることが通常です。

商標とは、商品やサービスを他のものと区別するためのマークのことを意味しており、商標法にそのルールが定められています。商標登録をされている場合には、商標権者はその権利侵害に対して損害賠償請求、差止請求といった責任追及をすることができます。

eスポーツ大会を開催する場合、大会名にはゲームタイトルが含まれることが当然ですし、広告宣伝や大会の告知などの際にも、これらの商標を利用する必要が生じてきます。

そのため、eスポーツ大会を開催するためには必要不可欠と考えられるゲーム名、ゲームメーカー名やそのロゴマークなどを利用するためには、商標を使用することとなり、商標権に関する権利処理が必要となります。

企業法務は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、eスポーツ大会を開催する際に問題となる、知的財産権(著作権・商標権等)の問題について弁護士が解説しました。

eスポーツは、海外で盛り上がりを見せ、日本でも徐々に人気を拡大していますが、新規事業分野であるため、法律の整備が追い付いていない部分があります。

とはいえ、新しい分野であるからといって既存の法規制を無視してよいわけではなく、著作権法、商標法などの法律は、eスポーツに限らず適用されるものであり、新規事業分野に進出、事業拡大をする際にも、当然注意をしておかなければならない重要な法律です。

著作権・商標権には財産的な価値があることから、最悪のケースでは損害賠償請求、差止請求を受けて投下資本の回収ができなかったり、刑事罰による制裁を受けてしまったりするおそれがあるため、十分な準備が不可欠です。

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