刑事事件

痴漢の時効は何年?刑事の時効(公訴時効)と民事の消滅時効の違い

2021年9月9日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

痴漢事件の多くは、現場で取り押さえられて現行犯逮捕され、刑事裁判となって処罰が決まります。しかし、現場から逃げてしまったとき、「いつまで逃げ切れば罪が許されるのだろうか」と不安に思うのではないでしょうか。

このように痴漢事件で現場から逃げ切り、しかも警察の捜査でも犯人の割り出しがなかなか進まないようなケースでは「痴漢の時効」が問題となります。

痴漢の時効として問題として知っておくべき法律知識には、刑事の時効である「公訴時効」と、民事の時効である「消滅時効」の2種類があります。なお、民事の時効を考えるにあたっては、2020年4月施行の改正民法にも注意が必要です。

今回の解説では、

  • 刑事の時効(公訴時効)と民事の時効(消滅時効)の違い
  • 痴漢事件における刑事の時効について
  • 痴漢事件における民事の時効について

といった痴漢の時効に関する法律知識について、弁護士が解説します。

痴漢の時効とは

時効とは、法的な責任を追及することができる期間のことをいいます。つまり、時効期間をすぎれば、その後は法的責任を追及することができなくなります。

痴漢の時効には、刑事の時効と民事の時効の2種類があります。

刑事の時効とは、「公訴時効」といって、検察官が起訴することができる期限を決めるものです。公訴時効の期間を過ぎると検察官が起訴できなくなる結果、警察に逮捕される可能性もなくなり、処罰されて前科がつくこともなくなります。(→「痴漢の公訴時効(刑事の時効)」

民事の時効とは、「消滅時効」といって、民事上の請求権を裁判によって認めてもらえる期限を決めるものです。消滅時効が経過すると、民事裁判における責任追及ができなくなります。(→「痴漢の消滅時効(民事の時効)」

そのほかに、判決で下された刑罰の執行期限である「刑の時効」があります。刑の時効は、言い渡された刑罰の重さにより決まりますが、通常、痴漢事件では刑罰はすぐに執行されるためあまり問題にはなりません。

痴漢の公訴時効(刑事の時効)

公訴時効とは

刑事事件では、検察が処罰を求めるために起訴をし、刑事裁判の判決で刑罰が決まります。

検察には、犯罪を起訴する権利(公訴権)がありますが、公訴時効はこの公訴権の期限を意味しています。そのため、かなり昔の痴漢などでいつまでも逮捕や起訴におびえていなければならないわけではありません。

痴漢の公訴時効は3年または7年

公訴時効は、法律に定められた刑罰の重さによって期間が定められています。痴漢の場合、軽微な痴漢である迷惑防止条例違反のケースでは公訴時効は3年(刑事訴訟法250条2項6号)、重度の痴漢である強制わいせつ罪のケースでは、公訴時効は7年(刑事訴訟法250条2項4号)です。

痴漢の公訴時効は、痴漢という犯罪行為が終了した時点から起算します。そのため、捜査を開始したのが痴漢からある程度経過した後であっても、痴漢の時点から3年ないし7年逃げ切れば、逮捕、起訴されることはありません。

なお、期間の初日(つまり、痴漢行為をした当日)は算入されるほか、国外にいる期間は時効の進行は停止します(刑事訴訟法255条)。

罪の種類による時効期間の違いに注意

公訴時効の期間が異なることから、迷惑防止条例違反にすぎないだろうと考えて3年で安心していたところへ、強制わいせつ罪として逮捕・起訴されてしまうおそれもあります。

公訴時効の違いがあるという点でも、痴漢が迷惑防止条例違反となるのか、強制わいせつ罪(刑法176条)となるのか、その違いが重要となります。電車内で着衣の上からからだに触れる、路上で脚や尻にさわるといった軽微な行為態様の場合には迷惑防止条例違反、着衣の中に手を入れたり、路上で胸をわしづかみにしたりといった重度の行為態様の場合には強制わいせつ罪となります。

2つの犯罪の違いは、類型的には上記のとおりですが、具体的には、個別の痴漢行為の態様をみて判断する必要があり、この際、強制わいせつ罪の「暴行」、「脅迫」といえるような、被害者の意思に反した行動となっているかどうかが分かれ目となります。詳しくは、下記解説もご参照ください。

参考解説

痴漢の消滅時効(民事の時効)

消滅時効とは

刑事事件が、犯罪に対する処罰であるのに対して、民事事件は、私人間の責任の問題です。民事事件の解決は金銭によってなされることが通常です。

痴漢は、犯罪であるとともに、民法上の不法行為(民法709条)にあたるため、慰謝料請求をはじめとした損害賠償請求をすることができます。この点で、消滅時効を過ぎてしまうと損害賠償請求をすることができなくなります。

痴漢の消滅時効は3年または5年

不法行為の消滅時効は、損害及び加害者を知った時から3年間とされています(民法724条)。また、不法行為のときから20年間経過したときにも、損害賠償請求権は行使できなくなります。

ただし、2020年4月施行の改正民法により「人の生命又は身体を害する不法行為」による損害賠償請求権の消滅時効は5年間に延長されました(民法724条の2)。強制わいせつ罪となる痴漢の場合には、暴行、脅迫をともなうことから、少なくとも被害者の身体を害する不法行為と考えられるケースが多く、民事の時効(消滅時効)は5年となる場合も多いと考えられます。

民事の時効は、「損害及び加害者を知った時」から起算されるのであって、刑事の時効が痴漢行為の時点から進行するのとは異なるため注意が必要です。

「損害及び加害者を知った時」といえるためには、加害者に対して賠償請求が可能な程度の情報を知っている必要があります。

そのため、単にある痴漢について被害届を出したが犯人がわからないという時点では、まだ民事の時効は起算しません。

消滅時効の完成後でも示談・被害弁償できる

消滅時効が経過した後でも、加害者が被害者に対して任意に被害弁償することは差し支えありません。特に、刑事の時効はまだ経過しておらず逮捕・起訴されるおそれがあるとき、民事の時効は経過していたとしても示談金を支払うことで早期釈放や不起訴を目指すことが有益です。

この点、強制わいせつ罪になる痴漢のケースでは、刑事の時効は7年のため、民事の時効3年のほうが先にくる可能性がありますが、逮捕や重い処罰を免れるため、示談交渉を勧めることが有効な弁護活動といえます。

時効の経過を待つことにはリスクがある

ここまで解説してきたとおり、刑事の時効(公訴時効)を経過すれば検察が公訴権を失うため逮捕・起訴されるおそれはなくなり、民事の時効(消滅時効)を経過すれば被害者から損害賠償請求を受けることはありません。

しかし、だからといって「時効待ち」をして逃げ切ろうとする方針はおすすめできません。その期間中にできる弁護活動を行わずただ漫然と時間経過を待つことは、被害者が被害届提出、告訴などの努力をしていたとき、より大きなリスクを負うおそれがあるからです。

特に、被害者の処罰感情の高い痴漢では、被害者があきらめてくれたり、捜査が開始されなかったりといったことがあまり期待できません。早急に示談交渉を開始したり、自首したりすることは、一見して不利な行為に見えますが、実際には逮捕や起訴のリスクを減らすことができます。

被害者と示談すれば、検察に不起訴処分という判断をしてもらいやすくなります。万が一起訴されたときにも、執行猶予を含めた軽い刑にしてもらいやすくなります。自首もまた、刑を減軽してもらえる可能性があります。

参考解説

刑事弁護は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、痴漢のケースにおける時効について、刑事・民事の両面から解説しました。痴漢を犯してしまったとしても、いつまでも逮捕・起訴の恐怖におびえつづけなければならないわけではなく、一定期間を経過した後は処罰されることはありません。

ただし、ただ時効期間の経過を待つのではなく、その間にできる努力として、示談交渉を進めたり、自首したりといった弁護活動を行うほうが、万が一逮捕されたり起訴されたりしたときのリスクが少なくて済みます。

痴漢をはじめ、刑事事件にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご来所ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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