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ブラック企業の特徴10つと、ブラック企業を見抜く方法【弁護士解説】

ブラック企業が社会問題になって久しいですが、現在もなお、ブラック企業による長時間労働、過労死、未払い残業代、不当解雇といった労働問題はなくなりません。

ブラック企業問題は、大企業や有名な会社でも起こっています。ワタミや電通、ゼンショーなど、誰もが知っている会社でも労働問題が起き、「ブラック企業」との評価を受けてしまっています。一度はブラック企業といわれても、現在もなお経営をつづけている会社は多くあります。

まずはブラック企業を知り、入社しないのが重要ですが、ブラック企業に入社してしまったときには、未払い残業代請求や不当解雇の撤回要求など労働者の権利を守るさまざまな手法を駆使して、身を守らなければなりません

今回は、ブラック企業の特徴をお伝えし、ブラック企業に入社してしまうのを未然に防止するとともに、万が一ブラック企業に入社してしまったときに、どう対処したらよいか、労働問題にくわしい弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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ブラック企業によくある労働問題

悩む男性

ブラック企業とは、労働法違反が常態化している会社のことをいいます。法律上の定義はありませんが、コンプライアンス意識が乏しく、長時間労働、未払い残業代、ハラスメントや不当解雇といった問題を起こし、労働者を使い捨てる会社は、ブラック企業の典型例です。

ブラック企業で発生している労働問題には、次のものがあります。いずれも、企業の利益を重視し、労働者の権利をかえりみず、労働法を守る気がないことを端的にあらわしています。

ブラック企業で起こる労働問題の典型例は、主に次のものです。

長時間労働(安全配慮義務違反)

ブラック企業の1つ目の労働問題は、長時間労働です。

極端な長時間労働があり、労働者が心身の健康を崩してしまうとき、その会社はブラック企業です。労働基準法では残業代の支払いが定められていますが、残業代を支払ったからといっていくらでも働かせて良いわけではなく、36協定で、残業の上限時間を定め、これを守らなければなりません。

労働者の健康や安全に配慮せず、長時間労働を横行させることは、安全配慮義務(労働契約法5条)に違反する行為です。月80時間以上の残業を「過労死ライン」と呼び、過労死ラインを超える状況が続いたことで労働者が過労死、過労自殺や精神疾患(メンタルヘルス)にり患したときは、労災となります。

安全配慮義務とは
安全配慮義務とは

長時間労働や過剰なノルマにより、労働者が死亡したり自殺したりしたとき、過労死・過労自殺と認定されることがあります。長時間労働を強要したときはもちろん、明示の指示がなくても、精神論・根性論によって黙示のプレッシャーをかけ、ストレスを与え続けたときにも、業務を原因とした死亡と判断されることがあります。

未払い残業代

ブラック企業の1つ目の労働問題は、長時間労働です。

極端な長時間労働があり、労働者が心身の健康を崩してしまうとき、その会社はブラック企業です。労働基準法では残業代の支払いが定められていますが、残業代を払ったからといっていくらでも働かせてよいわけではなく、36協定で、残業の上限時間を定め、これを守らなければなりません。

労働者の健康や安全に配慮せず、長時間労働を横行させることは、安全配慮義務(労働契約法5条)に違反する行為です。月80時間以上の残業を「過労死ライン」と呼び、過労死ラインを超える状況が続いたことで労働者が過労死、過労自殺や精神疾患(メンタルヘルス)にり患したときは、労災となります。

長時間労働や過剰なノルマにより、労働者が死亡したり自殺したりしたとき、過労死・過労自殺と認定されることがあります。長時間労働を強要したときはもちろん、明示の指示がなくても、精神論・根性論によって黙示のプレッシャーをかけ、ストレスを与え続けたときにも、業務を原因とした死亡と判断されることがあります。

未払い残業代

ブラック企業の労働問題の2つ目として、働いた時間に対する適正な残業代を支払わないことが挙げられます。時間外労働、休日労働、深夜労働をさせたのに残業代を払わないことは、労働基準法37条違反となる違法行為です。

「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働かせたときや、休日労働、深夜労働をさせたとき、会社は労働基準法にしたがって割増賃金(残業代)を払う義務を負います(労働基準法37条)。

残業代の対象となる時間
残業代の対象となる時間

ブラック企業は、長時間労働をさせながら、これに見合った賃金を支払わず、低賃金で労働者を働かせます。これが「サービス残業」の問題です。残業代の正しい計算方法はとても難しく、労使ともに気づかぬうちに、未払い残業代が発生していることもあります。

ハラスメント(セクハラ・パワハラなど)

ブラック企業の労働問題の3つ目は、ハラスメントが横行していることです。

会社で起こるハラスメントには、セクハラ、パワハラ、モラハラ、マタハラなど、さまざまな種類があります。ハラスメントが起こると労働環境が劣悪となり、精神的、身体的に健康を保てなくなります。それでもなお、ブラック企業は、ハラスメントを事前に予防する努力をせず、ハラスメントが実際に怒っても苦しむ被害者を救おうとしません。

ハラスメントは、民法上の不法行為(民法709条)にあたり慰謝料請求することができます。これによって被害者が負った精神的苦痛は、ハラスメントの加害者に対してはもちろん、これを予防、対策をしなかった会社に対しても慰謝料として請求できます。

不当解雇・退職強要

ブラック企業の労働問題の4つ目は、不当解雇で労働者を使い捨てることです。

ブラック企業は、労働者を大量採用し、使えないと判断した者から順に解雇します。解雇しないまでも、自分から退職するようプレッシャーをかけ、退職強要する行為もまた、ブラック企業のよく行う違法行為です。

日本の労働法では、解雇権濫用法理(労働契約法16条)により解雇は制限され「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」解雇は、権利濫用により違法、無効です。そのため、不当解雇は労働契約法16条違反となります。

解雇権濫用法理とは
解雇権濫用法理とは

本来であれば必要な指導、教育をすべき労働者を、会社の利益を優先して使い捨てるブラック企業に対しては、解雇の撤回を要求し、地位確認請求をするのが有効です。

ブラック企業の10つの特徴

本

次に、ブラック企業によくある特徴を、わかりやすく解説していきます。

できることなら、入社前にブラック企業であると気づき、入社を避けられれば、労働問題の被害者にならなくて済みます。ブラック企業など、労働問題を抱える会社を外から見抜くのが困難なことがありますが、ブラック企業の特徴を知ることで、誤って入社してしまうのを回避できます。

給与水準が低すぎる

給与水準が明らかに低い会社は、労働者を大切にしておらず、ブラック企業の可能性が高いです。成果報酬制、歩合給、インセンティブ制などを採用していても、かなりきついノルマをこなさないかぎり低賃金になってしまう会社も同じく、ブラック企業です。

「国税庁民間給与実態統計調査」などで業種ごとの平均年収を調査し、比較しておくことがおすすめです。初任給が低賃金なだけでなく、努力に見合った昇給がされなかったり、賞与が支給されなかったりするブラック企業もあるため注意が必要です。

雇用契約書、就業規則がない

ブラック企業では、労働法違反を社員に気づかれないよう、基本的な労務管理に不備があることがあります。

例えば、入社時には労働条件通知書によって労働条件を説明したり、雇用契約書を締結したりする必要があります。また、常時10人以上を使用する事業場では就業規則を労基署へ届け出ることが義務となっています。

雇用契約書や就業規則など、重要な書面のない会社は、ブラック企業の可能性が高いです。また、加入義務のある社会保険、労働保険に加入していない会社も、ブラック企業の可能性があります。

求人時の情報と異なる労働条件

ブラック企業では、求人時に示されたのと実際の労働条件が異なることがあります。人手を確保するため高年収を期待させたり、実際にはない福利厚生を与えると嘘をついたりして求人を集める行為は、「求人詐欺」と呼ばれる違法行為です。

求人詐欺が多発していることから、ハローワークでは、青少年雇用促進法に基づき、法令違反を繰り返す企業からの求人票を受け付けないという運用が行われています。

離職率が高い

未払い残業代、ハラスメントなどのコンプライアンス違反が多く存在するブラック企業は、労働者の権利が守られておらず働きづらいため、早期離職が多く、離職率が高まります。特に、入社初期(1年目〜3年目)の離職率が際立って高いときブラック企業の可能性が高いです。

そのため、離職率を調べれば、かなりの確率でブラック企業を見抜くことができます。また、社員の自発的な退職だけでなく、ブラック企業側も労働者を使い捨てる意識をもっており、不要と判断した社員に退職強要をしたり解雇をしたりします。社員の年次ごとの在籍率を調べておくことで予防できます。

辞めたくても辞められない

ブラック企業では、不要な人材を使い捨てる一方で、こき使える従順な人はなかなか辞めさせてくれません。労働者は、会社を退職する自由がありますが、ブラック企業は次のような様々な手で労働者を引き止め、退職させません。

  • 退職届を受け取ってもらえない
  • 退職をすると損害賠償請求すると脅される
  • 退職をするなら、その前に懲戒解雇すると脅される
  • 退職後、同業界に転職できないよう噂を流す

好待遇を与えて退職させないのはよいですが、ブラック企業に特徴的なのは、これらの引き止めの手法がいずれも、会社のメリットにしかなっておらず労働者側にはデメリットしかない点です。

是正勧告・書類送検を受けた

労働基準監督所(労基署)による調査の結果、労働基準法、労働安全衛生法などの法律違反が発見されると、是正勧告が出され、見直しを求められます。これらの法律違反が重大なときは、会社やその代表者が書類送検され、刑事罰を科されます。

書類送検に至るような重大な労働法違反は、ニュース報道されることが多く、ネット上の情報でも調査することができます。一旦生じた労働問題が是正されていればよいですが、残念ながら十分な是正がされずに放置されている会社は、ブラック企業といえます。

精神論・根性論の社風がある

企業ごとに社風、風土があり、これがその会社の雰囲気を作っています。ブラック企業では、精神論・根性論を全面に押し出した社風や、これを反映した理念・ビジョン・社訓をかかげていることがよくあります。

体育会系の社風、ベンチャースピリットなどと美化して隠しても、行き過ぎた精神論・根性論で労働者の過剰な努力をあおる会社はブラック企業です。もちろん一定の努力は大切な要素ですが、無理なノルマにつながったり、残業代を払わずに働くことを強制したりといったことにつながるからです。

同じ理由で、カリスマ的な経営者がいるときにも、労働者が心酔して長時間労働をし、結果的にブラック企業となることがあります。ベンチャー企業や成長企業にこのような傾向が多く見られます。好成績で、イメージのよい会社でも、労働者に利益が還元されなければ結果的にブラック企業となってしまいます。

上司が美談・美学を語る

上司が美談・美学を語る会社は、これによって労働者の権利を主張させないようにしようとする傾向にあり、ブラック企業の可能性があります。例えば、「過酷な労働環境でハードワークして成功をつかんだ」といったものです。

経営者や上司がたまたま歩んだ成功体験を一般化して押し付けることはできません。仕事における努力は自分でするものであり、人から強要されるものではありません。美談・美学の強要は、行き過ぎると、職場いじめやパワハラにも発展しうる行為です。

ブラック企業の中には、社員を家族に例える会社もあります。家族に例えるほど愛情を示していればよいですが、家族に例えることで愛社精神を生ませ、逆に搾取の対象としてこき使うブラック企業もあります。長期雇用の慣行が崩れつつある現代では転職も一般化しており、会社を家族に例えることには無理があります。

求める成果が高すぎる

ブラック企業では、過剰なノルマが課されたり実現不可能な目標が立てられたりなど、求める成果が高すぎることがあります。厳しい労務管理をし、労働者をボロ雑巾のように使い込みます。そもそも評価基準が労働者には明示されないこともあります。

そして、高い成果が上げられないと、解雇、退職強要につながります。

企業の成長意欲が強すぎるとき、例えば「今年中に売上を2倍にする」、「毎年○店舗ずつ出店する」といったスローガンを掲げているとき、これにより労働者に多大なストレスを与えるブラック企業の疑いがあります。

本来のポテンシャルを超えて無理な成長をしようとするとき、労働者に違法な負担を与えることが多いため、このような理念やビジョンに洗脳されてしまわず、ブラック企業を見抜くようにしてください。

ブラック企業になりやすい業種

ブラック企業は、業種や規模に関係なく存在しますが、ブラック企業の発生しやすい業界があります。特に、単純作業の多いビジネスでは「人件費を押さえて利益を上げる」というブラック企業的な発想が生まれやすくなります。

例えば、飲食や介護など労務集約的なビジネス、ベンチャ企業のように成長性の高い会社が、ブラック企業になりやすい傾向にあります。

ベンチャー企業では、企業の成長にコンプライアンスが追いついておらず、違法状態を解消する努力が足りていないことがあります。売上、利益を伸ばすことに注力するあまり、組織の整備が後回しになってしまうからです。ハードワークを、ベンチャースピリット、当事者意識、根性といった精神論でカバーし、社員に我慢させはじめると、ブラック企業化していきます。

ブラック企業に入社してしまったときの対処法

本

以上の特徴をもとに、自分の入社した会社が残念ながらブラック企業であったと理解した方に向けて、最後に、ブラック企業への対処法について弁護士が解説します。

ブラック企業は、労働者が我慢をしたり会社に貢献したりすればますます増長してしまうことから、泣き寝入りせず、法律にしたがった正しい対応をするのが大切です。

すみやかに退職する

ブラック企業で我慢して働き続けると、心身に不調をきたし、最悪のケースでは死(過労死・過労自殺)に至ることがあります。きついノルマを課され、崇高な理念のもとに努力を強要されているとき、労働者自身も自分の限界に気づけていないケースもあります。

このような場合、一刻も早く退職することで、ブラック企業から離脱しなければなりません。

ブラック企業の特徴として解説したとおり、ブラック企業では辞めたくても辞めさせてもらえなかったり、脅されたりすることがありますが、労働者には退職の自由があります。不安なときは、弁護士に退職代行を依頼することで、迅速に退職することができます。

ブラック企業を訴える

ブラック企業の労働法違反の責任を追及するため、ブラック企業を訴えることで、被害回復を図ることができます。ブラック企業を訴えることは、退職後であっても当然に可能です。

ブラック企業からはいち早く退職して被害を抑えることが重要ですが、ただ退職するだけでは、違法行為によって負ってしまった被害を回復できません。ブラック企業の労働法違反について訴えられるケースは、未払い残業代の請求、不当解雇の撤回要求(地位確認請求)、ハラスメントや長時間労働についての安全配慮義務違反の損害賠償請求といったものがあります。

いずれの責任追及も、まずは交渉によって行いますが、ブラック企業が責任を否定するときには、労働審判、訴訟といった法的手続きで争います。このとき、労働法に精通した弁護士による法律面のサポートを受けることが有効です。

まとめ

今回は、ブラック企業で起こる労働問題と、ブラック企によくある特徴について弁護士が解説しました。ブラック企業に入社してしまわないために、事前にチェックしておくようにしてください。

ブラック企業と一言でいってもさまざまな種類があり、会社ぐるみで悪意をもって労働法に平然と違反する会社もあれば、経営者の頑張りすぎによって結果的にブラック企業になってしまっている会社もあります。

業界、業種、規模などを問わず、ブラック企業は数多く存在しています。ブラック企業に誤って入社してしまったとき、労働者としては自分の身を守るため、積極的に権利主張をするのが重要なポイントです。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
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弁護士法人浅野総合法律事務所では、労働問題に注力しており、ブラック企業に対して立ち向かう労働者のサポートをさせていただいています。

労働問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

労働問題のよくある質問

ブラック企業とは、どんな会社のことですか?

ブラック企業とは、法律上の定義はありませんが、一般的に、社内で労働問題が多く起こり、コンプライアンス意識の低い会社をさしていう言葉です。ブラック企業は、労働者のことを捨て駒としか思っていないため、入社してしまうと、労働問題の被害にあってしまいます。もっと詳しく知りたい方は「ブラック企業の10つの特徴」をご覧ください。

自分の会社がブラック企業だとわかったとき、どう対応したらよいですか?

ブラック企業に対して泣き寝入りしてしまうと、ますます犠牲者が増えることとなりますが、ブラック企業相手に、一人で立ち向かうことが困難なケースもあります。まずはすみやかに退職して精神的負担を減らすとともに、労働審判、訴訟など法的手続きで争うのがおすすめです。詳しくは「ブラック企業に入社してしまったときの対処法」をご覧ください。

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