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うつ病で休職後、復職できる?退職させられたときの対応

体調を崩したり、精神に不調を来した場合、会社から休職命令を受けることがあります。

現代は「ストレス社会」と言われ、うつ病や適応障害、パニック障害など、精神疾患(メンタルヘルス)を抱える方が増えています。中には、私生活では問題なく過ごせても、職場に行くと体調が悪くなる「新型うつ」のケースも見られます。

休職命令を受けると、休職期間中は出社できず、働くことができません。そして、休職期間が満了した時点で、復職できる状態に回復していないとき、就業規則に基づいて退職を命じられたり、解雇になってしまったりします。

「一日も早く復職したい」「会社を辞めたくない」と焦る気持ちも分かりますが、うつ病治療には期間を要し、まずは心身の負担を減らし、日常生活を取り戻すのが大切です。そのためには、休職に関する法的な仕組みを正しく理解しなければなりません。

今回は、うつ病で休職を命じられ、「復職できるのだろうか」と不安を抱く方に向けて、復職の基準や、退職を命じられた場合の対処法について弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 休職制度は、労働者の貢献に配慮し、解雇を留保する意味合いがある
  • うつ病休職から復職できるかどうかは、医学・法律の両面から検討すべき
  • うつ病休職後に退職を命じられたとき、業務が原因なら労災を主張する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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うつ病による休職と復職

はじめに、うつ病などの精神疾患による「休職」と「復職」の基本を解説します。

私傷病(プライベートな病気やケガ)によって就労が困難になった場合、まずは有給休暇を利用し、一定期間の欠勤を経て、会社から休職命令が下されると休職期間が始まります。そして、休職期間が満了した時点で、労働が可能な状態に回復していれば「復職」、そうでない場合は就業規則に基づき「自然退職」または「解雇」となります。

うつ病の症状とリスク

うつ病は誰にでも起こり得る病気です。

業務が合わない、人間関係が悪化している、過度な業務量など、ストレスが積み重なると、精神的に不調を来し、うつ病や適応障害などの精神疾患(メンタルヘルス)になることがあります。

以下の兆候が見られる場合は、うつ病の可能性を疑った方がよいでしょう。

  • 寝つけない、熟睡できない、途中で何度も目が覚める。
  • 小さなことでイライラする。
  • 気分が落ち込み、常に不安を感じる。
  • 胃の不快感、吐き気、腹痛、下痢、便秘などの症状が続く。
  • めまいや頭痛、耳鳴り、立ちくらみがある。
  • 食欲が著しく減退または過度に増す。
  • 生きる気力が湧かない。
  • 突然「死にたい」と感じる(希死念慮)。

精神疾患の特徴として、自覚するのが難しいという点があります。

特に、責任感が強く真面目な方ほど、「もっと仕事を頑張りたいのに」と焦って無理をしがちで、症状に気づかないこともあります。心配なときは、家族や周囲の人に相談し、早めに専門家である医師の診断を受けるようにしてください。

うつ病からの復職は誰しも不安

うつ病や適応障害などで休職すると、労働者は心身に大きなダメージを受けます。そのため、たとえ休職期間を経て回復したように見えても、復職には多くの不安を伴います。

  • 長期間休んでいたことで、職場にうまくなじめるか。
  • 「うつ病で休んでいた人」として距離を置かれるのではないか。
  • 休職中に自分の居場所がなくなっているのでは。
  • 回復しても、同じ職場に戻ることで再発しないか。

このような不安から、改善してきた体調が再び悪化する危険もあります。人は誰しも、マイナスな記憶の方が強く残りやすく、悪いイメージに支配されがちです。深刻な場合、自殺を考えてしまうケースもあります。

心身の健康を取り戻すには、生活リズムを整えることが不可欠です。しかし、休職によって出社しなくなり、乱れてしまった生活リズムを正常化するのは相当な努力を要します。

休職制度は解雇の留保

休職制度は、私傷病によって働けなくなったときに、すぐに解雇するのではなく、一定期間、解雇を留保して回復を待つための制度です。

本来、労働者は、健康に働けることを労働契約で約束しています。そのため、病気やケガで就労不能になれば、契約解消(解雇)されても仕方ないのが理屈です。しかし、会社に長年貢献した労働者を、少し働けなかったからといって即座に解雇するのは酷であり、一定の配慮として設けられるのが休職制度の意味です。

うつ病や適応障害などの精神疾患は、原因が私生活・業務のいずれにあるか不明確であることが多く、業務上の明確な原因(長時間労働やハラスメントなど)が認められない限り、私傷病として扱われるケースが少なくありません。

ただし、休職制度はあくまで私生活によるもので、原因が業務にある場合は「労災(業務災害)」として認定され、より強い保護が受けられます。労災の場合は、療養中の解雇が法律で制限されており、退職させることはできません。

復職できなければ自然退職もしくは解雇

復職可能と判断されたときは、原則として元の職場に復帰することになります。

しかし、復職が不能だと判断された場合は、自然退職や解雇となる可能性があります。また、明らかに復職不能でなくても、会社から退職勧奨を受けるおそれもあります。

休職期間の満了時には、主治医や産業医の診断結果、人事担当者との面談を踏まえ、「復職できるかどうか」を会社が判断します。判断が困難な場合は、「リハビリ出勤(試し出勤)」を実施し、その状況を考慮することもあります。

特に、精神疾患の場合は外見からは回復の程度がわかりづらく、復職の可否判断は非常に繊細であり、労使の意見が対立することも少なくありません。そのため、休職期間満了時の対応が非常に重要となります。

休職期間満了による退職」の解説

うつ病休職から復職できるかの判断基準

次に、うつ病休職から復職が可能かどうか、その判断基準を解説します。

休職期間が満了した時点で、休職の原因となった症状が改善し、労務提供が可能な状態に回復しているかどうかが、非常に重要となります。労働者にとって、「復職できない」という判断を下されると、会社を辞めなければならないことを意味し、今後の生活の糧を失うおそれがあります。

主に検討される判断基準は、次の3つです。

医師による「復職可能」の診断書

復職判断の1つ目の基準は、医師による「復職可能」と記載された診断書です。

うつ病や適応障害などの精神疾患は、外見で判断しづらく、本人の「復職したい」という意思だけでは健康状態を適切に判断できません。そのため、うつ病休職からの復職時には、医師の専門的な見解を示すため、診断書の提出が必須となります。

診断書だけでは十分に説明しきれないときは、補足的に意見書を作成してもらうことも考えられます。また、会社が主治医と面談し、復職可否について直接ヒアリングすることもあります(プライバシーに関わるため、本人の同意が原則です)。更に、会社で人事担当者と面談をして生活状況や体調を確認したり、産業医や指定医の診断を受けたりすることも判断材料とされます。

業務に耐えうる体力の有無

2つ目の基準が、復職後に業務に耐えうる体力・精神力が回復しているかどうかです。

主治医の診断書に「復職可能」と記載があっても、それだけで自動的に復職が認められるわけではありません。うつ病休職から復職できるかどうか、医学的な判断はあくまで参考で、最終的には実際の業務遂行能力をもとに会社が判断するものです。

そのため、休職中からリハビリ出勤(試し出勤)によって回復状況を調査することもあります。これは、勤務はしないものの、決まった時間に起床、通勤し、職場の環境に徐々に慣れていく訓練であり、うつ病からの復職が現実的に可能かどうかを確認する重要なプロセスです。

特に、うつ病や適応障害などの精神疾患の場合、通勤や生活リズムの維持が大きな課題となるため、このような確認が重要視されます。

ストレスへの対処力の有無

3つ目の基準として、業務で発生するストレスに対処する力が備わっていることが必要です。

仕事は決して楽しいことばかりではなく、辛いこともあります。業務遂行に必然的に伴うストレスに耐性がなければ、復職しても再発し、また休職してしまう危険があります。

労働者が自身のストレス要因を分析し、どう対処するか、どのようにストレスを解消するかを理解していることは、復職可否の判断基準としても重要です。また、休職の原因となった事由が消滅していなければ、安心して復職を進めることができません。

うつ病になって休職に追い込まれた原因が、長時間労働やパワハラ、セクハラなどの職場環境にある場合、その原因を取り除く義務は会社側にあります。

これらのケースで労働者に非はなく、職場環境の改善こそが優先されるべきです。また、多くの場合、労災(業務災害)として扱うべきです。したがって、復職を検討するにあたっては、再発防止のための環境調整が会社側にも求められることになります。

うつ病休職で退職を命じられた場合の対処法

診断

次に、うつ病などの精神疾患で休職となり、休職期間の満了を理由に会社から退職を命じられた場合に、労働者がとるべき適切な対処法を解説します。

うつ病や適応障害、パニック障害などの精神疾患(メンタルヘルス)は、症状が目に見えにくく、復職が可否についての判断が難しいため、労使の対立が起きやすい局面です。しかし、退職を命じられてもあきらめず、自身に有利な法的主張を理解し、方針を決めることが大切です。

労災(業務災害)の主張をする

会社には、労働者の安全と健康を守る法的義務があります(安全配慮義務)。

業務によって労働者が精神的・身体的に不調を来し、病気やケガを負った場合、その原因が職場にあると認められれば、「労災(業務災害)」として扱われます。

労災と認定される場合、私傷病による休職とは異なり、療養期間中の解雇は原則として制限されます。そのため、うつ病に至った原因が長時間労働、パワハラ、セクハラなど、職場環境にあると考えられる場合は、労災(業務災害)であると主張して退職を回避することができます。

この場合には、労働基準監督署に対して労災申請を行い、適切な補償と労働者としての地位の確保を求め、会社と争うことが必要となります。

地位確認請求(労働審判・訴訟)をする

労災の主張をするにせよ、労災認定の手続きには一定の期間を要します。

労災の認定を待つ間に休職期間が満了し、自然退職や解雇として扱われてしまう危険があります。そこで、労災申請と並行して、会社に対して労働者の地位が存在することの確認請求(地位確認請求)を行うべきです。つまり、休職期間の満了を理由とした退職扱いが不当であると主張して争う方法です。

地位確認請求の争いは、まずは会社との交渉を通じて、退職の撤回や復職の合意を目指します。しかし、話し合いで解決しないケースも多いので、労働審判や訴訟といった法的手続きを通じて権利を主張することも検討してください。

うつ病休職から復職するためのプロセス

ジャンプ

次に、うつ病休職から職場復帰するための一連のプロセスについて解説します。

うつ病の治療には一定の時間を要しますが、適切な手順を踏むことで、円滑に、かつ再発のリスクを抑えながら復職できる可能性が高まります。ただ単に「職場に早く戻ること」だけを目的とするのではなく、再休職を防ぎ、安定した就労を継続することは労使双方にとって重要です。そのために、労働者側でも、復職に向けた流れを理解しておかなければなりません。

以下では、復職までの一般的なステップをご紹介します。

STEP

復職の意思表示

まずは、労働者本人が「復職したい」という明確な意思を表示することです。

復職は、休職者自身の意欲が前提となるため、本人に復帰する意思がなければ、復職の手続きは進みません。復職の可否は、休職満了時に判断されますので、復職の意思は休職期間の満了よりも前に表示しなければなりません。

主治医と相談し、「復職可能」と記載された診断書を取得する準備を進めましょう。

STEP

復職可否の判断基準の確認

労働者から復職の意思が示されると、会社は復職の可否を判断します。

その際に考慮されるのが、主治医の診断書の内容、主治医と会社の担当者との面談、産業医による診察結果、更にはリハビリ出勤(試し出勤)の実績などです。これらを総合的に判断し、復職が可能かどうかを会社が決定します。

STEP

リハビリ出勤(試し出勤)

精神疾患からの回復は見た目では判断しづらく、体調が良く見えても、ストレスや環境の変化によって再発するリスクがあります。

そのため、休職期間中に「リハビリ出勤(試し出勤)」を行うことがあります。これは、実際に始業時間に通勤できるか、職場の環境に適応できるかを確認するための「訓練」です。業務には就かず、通勤だけを実施することもあります。

このリハビリ出勤の実績も、復職判断の重要な材料となります。

STEP

職場復帰と配慮措置

以上のプロセスで「復職可能」と判断されると、休職期間の満了日翌日から職場に復帰することとなります。ただし、復職直後は、すぐにうつ病が再発してしまわないよう、以下のような配慮措置が講じられるべきです。

  • 業務内容の軽減
  • 残業や出張の制限
  • 時短勤務の導入
  • 定期的な産業医との面談

これらは、復職後に無理をさせず、継続的な就労を支えるための重要な支援です。

なお、復職の意思がありながらも、あと一歩の回復が間に合わない場合は、休職期間の延長が検討されることもあります。会社の就業規則や判断にもよりますが、延長されれば、再度回復の機会を得ることができます。

うつ病になった労働者が弁護士に依頼するメリット

最後に、うつ病などの精神疾患になった労働者が、弁護士に依頼するメリットを解説します。

労使関係では、一般に労働者の方が立場が弱く、不利な状況に置かれやすい傾向があります。うつ病や適応障害などの精神疾患になると、気持ちが弱り、冷静に会社と交渉することは困難です。このような場面こそ、弁護士の力を借りて自身の権利を適切に守るべきです。

退職に追い込まれないための交渉が可能

うつ病や適応障害などの精神疾患を抱える社員に対し、会社が「できれば辞めてほしい」と感じるのは残念ながら珍しいことではありません。精神疾患は再発のリスクもあり、会社としては扱いづらいと考えてしまうためです。

そのため、退職の働きかけをする会社に対して、退職を拒否し、スムーズに復職できるよう交渉しなければなりません。復職できるかの判断は、医学的な判断を参考としますが、最終的には法的な判断が必要であり、労働問題に精通した弁護士に相談するのが賢明です。

労働者が十分に回復しており、復職が可能であるにもかかわらず、会社が一方的に退職を促すような対応を取ることは、不当な扱いとなる可能性があります。

弁護士に依頼すれば、主治医の診断書や本人の回復状況をもとに、復職の正当性を主張し、会社との間で復職交渉を代理して行うことが可能です。ケースによっては、休職の原因が私傷病でなく、職場に起因する「労災(業務災害)」であると主張し、会社の責任を問う方針も検討すべきです。

損害賠償請求のサポートを受けられる

うつ病の発症や休職、退職の過程で、労働者が不当な扱いを受けることは少なくありません。たとえば、以下のケースが考えられます。

  • 明らかに業務が原因のうつ病なのに、私傷病休職扱いとなった。
  • 十分に回復して復職可能なのに、退職に追い込まれた。
  • 復職後に不当な配置転換やハラスメントを受けた。

これらの不当な扱いに対しては、慰謝料や損害賠償を請求できる可能性があります。もっとも、会社側が非を認め、任意に支払いに応じるケースは稀であり、多くの場合、労働審判や訴訟などの法的手続きが必要となります。

弁護士に依頼すれば、損害賠償請求に関する法的続きを適切に進めることができます。証拠収集や主張の組み立てなど、専門的な観点から全面的にサポートを受けられます。

退職強要と慰謝料の相場」の解説

退職を選ぶ場合も有利な条件を交渉できる

うつ病を理由に退職せざるを得ない場合でも、弁護士を依頼するメリットがあります。

弁護士に交渉を任せれば、有利な退職条件を引き出せる可能性があります。うつ病だからといって退職しなければならないわけではなく、会社を辞めるならせめて、有利な条件を要求しましょう。

例えば、以下の交渉が考えられます。

  • 退職時に「解決金」や「上乗せ退職金」を支払わせる。
  • 退職理由を「会社都合退職」として処理してもらう。
  • 未消化の有給休暇を買い取ってもらう。

また、復職を前提とした「地位確認請求」を労働審判や訴訟で争う姿勢を示せば、会社としても妥協や譲歩を考えやすいものです。そのため、弁護士を付ける方が、交渉も有利に進みます。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、うつ病などにより休職を余儀なくされた場合の対処法を解説しました。

精神疾患によって休職せざるを得なくなった場合、休職の意味、復職の可否を判断する基準や、万が一退職を求められた場合の対応方法をよく理解しておかなければなりません。うつ病休職となった場合でも、復職に至るまでのプロセスを知り、焦らずに療養に専念することが何より重要です。しっかりと治療に取り組むことが、結果的に回復への近道となります。

ただ、中には、精神的な不調を抱える社員を冷遇し、休職制度を利用して退職に追い込もうとするブラック企業も存在します。うつ病で休職したことを理由に、退職勧奨や退職の強要、ハラスメントの被害を受けるおそれもあります。

休職・復職に関する正確な法律知識を身につけ、不当な扱いに冷静に対処するには、労働問題に精通した弁護士によるサポートが役立ちます。

この解説のポイント
  • 休職制度は、労働者の貢献に配慮し、解雇を留保する意味合いがある
  • うつ病休職から復職できるかどうかは、医学・法律の両面から検討すべき
  • うつ病休職後に退職を命じられたとき、業務が原因なら労災を主張する

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参考解説

退職強要は、自主的な退職の形をとりながらも、実質的には不当な圧力によって辞めさせられます。違法な扱いには、冷静に法的対処をすることが不可欠です。

退職強要についての解説によって、自身の権利を守るための正しい知識を身に着けてください。

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