既婚者なのに、女性の気持ちをもてあそび、性的関係をもつ不届きな男性がいます。
「結婚しようとした彼氏が、実は既婚者だった」という女性からの法律相談は多いもの。
真剣交際を裏切られたら、さぞ辛いことでしょう。
マッチングアプリや出会い系だけでなく、結婚相談所ですら、軽い気持ちで女性がだまされる被害は少なくありません。
彼氏にだまされたと発覚したら、慰謝料の請求を検討しましょう。
彼氏が既婚者にもかかわらず、わざと隠して肉体関係(性交渉)をもったときには、女性の性的自由を侵害していますから、慰謝料を請求できる不法行為(民法709条)にあたります。
しかし、注意して対応しなければ、彼氏にだまされたにもかかわらず、逆に、彼氏の奥さんから「不貞行為だ」といって慰謝料を請求されるおそれすらあります。
今回は、「彼氏が既婚者だった」と発覚して心の傷を負った女性に向け、慰謝料の相場や請求方法などを解説します。
- 彼氏が既婚者だったとき、だまされて性的関係を持ったことについて慰謝料請求できる
- 彼氏が既婚者だと判明したら、すぐに交際をストップする
- 脅迫といわれたり、逆に彼氏の奥さんから慰謝料請求されないよう、弁護士に依頼して請求する
彼氏に既婚者の疑いがある場合の対処法
まず、彼氏に慰謝料請求できるか知るために、前提として「彼氏が既婚者かどうか」を確認する必要があります。
「彼氏が既婚者ではないか?」と不安に思うケースで、次のような事情があるときには、既婚者かもしれないと疑うべきケースだといえるでしょう。
付き合っている人が既婚者な気がするとき、ぜひチェックしてください。
- 左手薬指に指輪をしていた
- 子どもの写真を待ち受けにしていた
- SNSに妻子が写っていた
- 携帯やLINEをロックし、まったく見せてくれない
- 交際期間が長いのに、宿泊デートがまったくない
- 本名や住所、職場などの個人情報を教えてくれない
- 年齢をいつわっていた
- 家を教えてくれない
- 夜になると連絡がとれなくなる
- 突然の電話を拒否する
彼氏が既婚者なのでは、という疑惑があるとき、正面きって問いただしたい気持ちはよく理解できます。
これまで仲良くしていたとき、できれば別れたくないことでしょう。
しかし、既婚者なのを隠して性的関係をもつような男が彼氏だと、どれほど問い詰めても、「実は結婚しているんだ」などと真っ正直に白状してくれるわけもありません。
弁護士であれば、本名と住所がわかれば、職務上請求という方法で住民票や戸籍を取り寄せられます。
そのため、結婚しているかどうか、公的書類で確認できます。
本名や住所が不明なときも、弁護士会照会を利用すれば携帯番号などから調査できます(とはいえ、本名や住所すら教えてくれない時点で、だまされていると強く疑うべきなのですが…)。
上記で解説した弁護士の権限は、慰謝料請求をする際に利用できる、特別な方法です。
交際相手が既婚者の疑いがあるとき、「慰謝料を請求したいけど確かな証拠がない」というケースでは、まずは弁護士に相談し、調査が可能かどうか、相談するのがおすすめです。
彼氏が既婚者だったとき、慰謝料請求できる要件
真剣交際だと思っていた彼氏が、実は既婚者だと明らかになったとき、大きな精神的ダメージとなるでしょう。
あなたが、重要な権利を侵害され精神的苦痛を負ったときには、不法行為による慰謝料を請求できます。
慰謝料とは、不法行為(民法709条)の要件を満たすとき、精神的損害について請求できる損害賠償のことです。
だまして交際した彼氏の言動が「不法行為」だといえるためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
以下では、3つの要件について、わかりやすく解説します。
故意または過失があること
不法行為の慰謝料を請求するためには、加害者が、故意または過失をもって違法行為をしたことが必要です。
わかりやすく言うと、「故意」とはわざと違法行為をすること、「過失」とは不注意に違法行為をすることです。
日本では、2人以上の異性と結婚することは「重婚」として禁止されます(民法732条、刑法184条)。
そのため、既婚者なのに、あなたに「結婚しよう」と告げて性的関係をもった彼氏の行為は、「故意」による違法行為なのが明らかです。
既婚者にもかかわらず婚活アプリ、婚活パーティ、お見合いなど、「結婚を前提とする交際の場」で知り合い、交際をスタートすることは、違法なことを知りながらだます悪質な行為といえるからです。
明確に「結婚していない」と否定したケースだけでなく、普段はしている結婚指輪をわざわざ外したり、「今日もひとりきりで寂しい」と誘惑したりなど、独身だと誤解させる言動もまた、だます故意があると評価されます。
違法性(権利もしくは法的利益の侵害)
不法行為による慰謝料請求をするには、あなたの権利が、彼氏によって侵害されていることが必要です。
人はみな、誰と性的関係をもつか(もしくは、もたないか)を自由に決められる権利があります。
この権利が、「貞操権」です。
つまり、貞操権は「誰と性的関係を結ぶか、もしくは、結ばないかを決定する性的自由」。
彼氏が独身だと信じ、「結婚前提のお付き合いだから」と肉体関係(性交渉)を許したケースで、実は既婚者だったと発覚したとき、「既婚者だと知っていれば肉体関係(性交渉)は持たなかったのに…」と後悔するなら、自由な選択権が侵害されたことを意味します。
既婚者の彼氏にだまされ、真実を知っていればしなかった性的関係を進めてしまった点が、重要な貞操権の侵害を意味し、不法行為となるわけです。
貞操権侵害の慰謝料の相場や、請求方法、必要な証拠などについては、下記解説をご参照ください。
損害、因果関係があること
不法行為の慰謝料を請求するには、違法行為によって損害を受けたことが必要です。
そして、その違法行為と損害の間には、因果関係がなければなりません。
性的関係を持った後で「彼氏が既婚者だった」という真実を知ったとき、精神的苦痛を受けるのは必然。
そのため、だましてした性交渉と、あなたの負った精神的苦痛という損害の間に、因果関係があるのは明らかです。
慰謝料請求では、精神的損害を立証しなければなりませんが、精神的損害とは「心のキズ」で、目に見えません。
そのため、損害の大きさを主張するためには、心療内科、精神科などへの通院歴、精神疾患の診断書などを証拠として準備しておくのが重要なポイントです。
また、交際中にDV・モラハラを受けたり、妊娠し、中絶していたりすると、損害はさらに拡大します。
彼氏が既婚者だった場合、すぐにすべきこと
次に、彼氏が既婚者だったと発覚したとき、即座にすべき2つのことを解説します。
残念ながら彼氏が既婚者だと判明してしまったときは、すぐに交際を中止し、証拠収集の準備をしてください。
これらの対応をすぐにせず、惰性で交際を続けてしまうと、慰謝料を請求できないか、もしくは、請求できる慰謝料額が低額となってしまうおそれがあります。
すぐに彼氏との交際を中止する
調査の結果、彼氏が既婚者だと判明したときには、すぐに交際を中止する必要があります。
既婚者だと知ってからも交際を継続していたとき、次の2つのデメリットが生じるためです。
- 既婚者だと知って交際したあなたにも非があるとして、慰謝料請求が認められない(もしくは、減額される)
- 不貞行為として、彼氏の妻から慰謝料請求を受けてしまう
既婚者だと知ってすぐに交際をストップすれば、「既婚だと知ってたら交際したり性交渉したりしなかったのに」と、胸を張って主張できます。
一方で、真実を知った後も交際を続けてしまっては、「仮にだまされていなくても、交際していたのだろう」という反論を受けかねません。
これまで真剣交際と思っていたのですから、辛いでしょうし、別れたくない気持ちはよく理解できます。
しかし、代償を払ってまで続けたい関係かどうか、よく自問してください。
不倫の関係になってしまったことについて、被害者側にも非があると評価されるとは、慰謝料額を相場より低くしてしまうことにもつながります。
だまされたという証拠を収集する
だまされたことが判明したとき、慰謝料を請求するためには証拠収集が重要です。
相手は、だまして付き合っていたような彼氏ですから、話し合いでは解決困難なこともあります。
交渉での解決が不可能なとき、訴訟に進むこととなりますが、裁判所の審理では証拠が重要視されるうえ、重要な事実は、慰謝料を請求するあなた側で証明しなければなりません。
証拠が十分に手元にないときや、そもそも相手の居所がわからないとき、探偵、調査会社を利用して調査した費用もまた、請求すべき損害に加算します。
慰謝料請求するときに集めておくべき重要な証拠は、次のものです。
交際相手が既婚者だったことの証拠
住民票、戸籍、妻とのLINEなど。
自分では集められないとき、弁護士に依頼し、職務上請求、弁護士会照会などの方法を検討してください。
嘘をついてだましたことの証拠
独身だと嘘をつき、だましていた証拠。
LINE・メールで独身であることや将来の結婚をにおわせるようなやりとり、マッチングアプリで「未婚」と掲載していたこと、お見合いや結婚相談所など結婚を前提とした出会いであったことなど。
損害の大きさを証明する証拠
精神的な損害が大きいことを示す証拠として、医学的な証拠が有用。
精神疾患の診断書、治療歴、カルテ、その他、だまされて交際したことで妊娠・中絶したなどの損害があるときは、堕胎手術をしたことを示す証拠など。
彼氏が既婚者だった場合に慰謝料を請求する方法
既婚男性にだまされた女性が、慰謝料を請求する方法と、その後の流れについて解説します。
だましてきた悪い彼氏への慰謝料の請求は、まずは協議の方法で進めます。
しかし、交渉による話し合いで解決できないときは、訴訟への移行を考えてください。
家庭のある既婚者男性は、妻への発覚をおそれているケースが多いです。
強いプレッシャーをかければ、話し合いで解決できるケースもあります。
しかし、既婚なことを隠して女遊びする男のなかには、事態を軽く見て、満足のいく慰謝料を払わない者もいます。
交渉による慰謝料請求をする
まず、内容証明で、交際相手である彼氏に通知書を送り、交渉による慰謝料請求をします。
内容証明であれば、送付日や送付した文書の内容を、郵便局で証拠化できます。
弁護士名義で通知書を送ってもらえば、「払わなければ訴訟に移行する」という強いプレッシャーを与えられます。
彼氏への慰謝料請求について、弁護士に依頼すれば、法律知識、交渉テクニックにより、できるだけ高額の慰謝料を獲得できるようサポートを受けられます。
交渉の結果、慰謝料について合意が成立したときは、合意書(示談書・和解書)を作成します。
支払いがなされないおそれがあるとき、合意書を公正証書化しておくことで、払われなかったときに強制執行(財産の差押え)をできるようにし、支払いを確実なものにできます。
慰謝料請求訴訟を起こす
交渉による解決が難しいときは、慰謝料請求訴訟を起こすこととなります。
彼氏にだまされたとき、慰謝料請求こそ、法的に許される最大の「仕返し」。
交渉では、たとえだまされていたとしても、まだ相手の妻には知られていない可能性もあり、直接出向いたり通知書を送ったりして相手の妻にもばれてしまうことが、逆効果となるおそれも。
彼氏の妻にばれてしまった後は、彼氏が開き直って支払いを拒否してきたり、彼氏が妻と結託して、不倫だといって慰謝料請求をさせたりするリスクもあるからです。
相手が慰謝料支払いを拒否し訴訟になると、裁判は公開の法廷で行われ、訴状は住所に送達されます。
そのため、相手の家庭にも慰謝料請求の事実が知られることとなる可能性が高まり、強いプレッシャーになります。
このことが相手にとって大きなプレッシャーとなり、慰謝料請求訴訟することで解決を早める効果が期待できます。
彼氏が既婚者だった場合の慰謝料の相場は50万円〜200万円
既婚者の彼氏に、「独身だ」とだまされて交際し、性的関係をもってしまったとき、慰謝料の相場は、50万円〜200万円程度が目安です。
ただし、慰謝料の相場は、あくまでも「目安」です。
悪質性の程度、精神的苦痛の大きさなどの事情によってケースバイケースであり、この相場よりも増額されたり減額されたりすることもあります。
どうしても別れたくないという気持ちがあるときも、相場を知り、できるだけ多くの慰謝料をもらうことで、思いをはらしてください。
彼氏が既婚者だったときの慰謝料を増額する事情
できるだけ相場以上の慰謝料を勝ちとりたいときは、慰謝料を増額する事情を知っておくようにしてください。
増額できる事情について、次の6つに分けて解説します。
そして、このような、慰謝料を相場よりも増額するための事情について、証拠で証明する準備をしましょう。
被害者となった女性の年齢
だまされた女性の年齢が若く、判断能力が低いこと、結婚適齢期だったことといった事情は、損害を大きくする事情として考慮され、相場よりも慰謝料を増額させられます。
加害者となった男性の年齢
加害者となった男性が、成熟し、違法行為を行うべきでないなどの事情は、慰謝料を増額する要素となります。
一方、加害者となった男性側がある程度の年齢に達しており、「一般的には結婚している男性だろうと気づくべきだった」というケースのように、女性にも一定の非が認められる場合、慰謝料が減額されるおそれがあります。
交際期間が長いか、真剣交際であったかどうか
交際期間が長く、結婚を前提とした真剣交際であるほど、だまされたことの損害が大きく、慰謝料が増額される傾向にあります。
だます行為の悪質性
既婚かどうか確認されたのにあえて否定したなど、だます行為の悪質性が高いほど、慰謝料が増額される流れにあります。
交際終了時の対応
だました男性側が、交際終了時に反省・謝罪するなど誠意を見せたとき、慰謝料を減額する事情として考慮されます。
一方、女性側で、彼氏が既婚者だと判明した後も付き合いを続けたなどの非があるとき、慰謝料が減額されます。
女性側に落ち度がなかったか
長期間付き合ったのに家に行くことを拒否されるなど疑わしい事情があるのに確認しなかったなど、女性側の落ち度が大きいときには、慰謝料が減額されます。
既婚者である彼氏への慰謝料請求を認めた裁判例
既婚者である彼氏への慰謝料について、相場の目安とご紹介した50万円〜200万円の金額を、損せずに獲得するためには、慰謝料請求に成功した裁判例の事例を、よく理解しておくことが大切なポイントです。
弁護士に依頼いただいて慰謝料請求するときも、過去の裁判例でとりあげられた事情を参考にし、慰謝料の増額の根拠となった事実関係で参考になるものがないかどうか、弁護士が徹底して調査をするからです。
慰謝料30万円を認めた裁判例(東京地裁令和3年8月30日判決)
本裁判例では、最初に性交渉をもったときには、妻があることを知らず、その後妻があることを知って性交渉をした際にも、離婚が決まっているなどと嘘をついて騙したといった事案で、30万円の慰謝料支払いを命じました。
だまされた女性は男性経験が少なく、まだ若かったこと(当初は未成年であったこと)、妻が妊娠中なのに、既に離婚が決まっているなどとあえて嘘をついてだましたことなどの事情から、慰謝料を認めました。
あわせて、だまされた女性が、彼氏の妻に支払った慰謝料についても、85%を彼氏の負担とし、114万円強の支払いもあわせて認めました。
慰謝料100万円を含む442万円の支払いを命じた裁判例(東京地裁令和2年6月25日判決)
本裁判例では、銀座のホステスである女性が、性交渉をともなう交渉をつづけ、求婚をされるなど将来は結婚できると信じて高額な贈り物をしたなどの後、実は結婚していたことを知ってだまされていたという事案です。
だまされて貞操権を侵害された点や、だました男性の悪質性などから、100万円の慰謝料を認め、あわせて、贈り物として贈与された時計代の約400万円については、だまされていなければ贈らなかっただろうと認められ、支払いが命じられました。
慰謝料100万円を認めた裁判例(東京地裁令和元年12月23日判決)
本裁判例では、一貫して彼氏が独身であると信じて、約4年半も交際した後で、実は結婚していたことを知ったという事案で、慰謝料100万円を認めました。
交際期間中の女性の年齢は、39際から43歳であり、妊娠出産の適齢期という記帳な時期を棒に振ったこと、既婚者であることが発覚した後も、彼氏がその場しのぎの弁解をしたり、女性がカネ目当てだったかのような理不尽な反論をしたりするといった悪質性が、慰謝料を高額化させる事情として認定されています。
既婚者である彼氏の妻から慰謝料請求されたときの対応
だまされて交際したときでも、既婚者である彼氏と肉体関係(性交渉)をもてば、逆に仕返しとして、その配偶者(つまり「彼氏の妻」)から慰謝料請求をうけるリスクもあります。
結婚している夫婦は、他の異性と性的関係をもってはならないという「貞操義務」を負っており、この義務に反する浮気・不倫は「不貞行為」として慰謝料請求の対象となります。
そして、このときの慰謝料は、不貞した夫(つまり、あなたにとっての「彼氏」)だけでなく、不貞相手(つまり、あなた自身)にも請求されてしまいます。
ただし、既婚者である彼氏が「自分は独身だ」とだまして性的関係に及んだときには、だまされてしまったあなたには責任はなく、慰謝料を払う必要はなし。
このとき、単に「(彼氏が既婚者だとは)知らなかった」というだけでなく、「過失なく知らなかった」と反論しなければなりません。
そのためにも、次のポイントを検討してください。
- 結婚する予定があるなど真剣交際であったことを示す証拠があるか
- 疑わしい事情はなかったか
- 既婚者であるかどうかを確認し、相手が否定してだましてきた証拠があるどうか
わかりやすくいうと、「なぜ独身だと信じて交際してしまったのか」、原因を検討して、「過失なく信じた」といえる事情があるならば、あなたは彼氏の奥さんに慰謝料を払う必要はなく、十分な反論が可能だということになるのです。
既婚者である彼氏にだまされて不倫関係にまきこまれ、慰謝料を請求されたときの対応と注意点は、次の解説を参考にしてください。
彼氏が既婚者だったと判明し、慰謝料を請求する際の注意点
最後に、既婚者と判明した彼氏に、だましたことについての慰謝料を請求するにあたり、注意したいポイントを解説します。
より高額な慰謝料を勝ちとるには、個別の事情に応じて、相手からの反論や感情も踏まえて、うまく交渉を進める必要があります。
脅迫にあたらないよう注意する
既婚者である彼氏にだまされた女性のなかには、怒りのあまり、しつこく電話したりLINEで暴言・罵倒したりして、「恐喝」、「脅迫」だといわれてしまう方もいます。
真剣な思いをもてあそばれ、許せない気持ちは理解できます。
しかし、常識はずれな請求をすれば、連絡をブロックされて交渉がうまくいかないなど、逆に不利になるリスクも。
そして、まだ相手の妻に浮気・不倫がバレていないときは、さらに慎重な対応を要します。
不倫の事実を相手の家庭にばらしてしまう方法は、相手の配偶者からのプレッシャーが慰謝料支払いを促進してくれるというメリットがある反面、あなたが逆に不貞の慰謝料請求を受けてしまったり、家庭にばれることでますます慰謝料を支払いづらくなってしまったりといったデメリットもあります。
既婚とは知らず、だまされて交際してしまったとしても、「よく注意すれば気づけた」といえるケースや「既婚と知った後も関係を続けた」というケースでは、彼氏の奥さんからの慰謝料請求が認められるおそれも十分あります。
被害者だからといって、仕返しや報復を目的に過激な行動に出ることは、リスクある行為のためおすすめできません。
法律で認められた「正攻法」である慰謝料請求訴訟により、確実に被害回復してください。
示談書を作成する
男女問題がトラブルに発展した結果、慰謝料をはじめ金銭の授受があるとき、必ず書面を作成した上で行うべきです。
このとき交わすのは、示談書、もしくは、合意書といった書面になります。
書面化し、金銭の支払いの事実や、なぜ支払ったのかという理由を証拠に残しておかなければ、問題を終局的に解決できなくなってしまいます。
後から、「脅してお金をとられた」といわれのない責任追及を受けたり、不貞の慰謝料請求をされたとき「だまされていたのだ」と反論できなくなったりするリスクもあります。
示談書ないし合意書には、「彼氏が、既婚者なのを隠して、だまして交際していた」ということを認めて謝罪する文言を記載しておくとともに、慰謝料の支払いを定め、かつ、お互いに将来的な債権債務はなしにするという「清算条項」をつけるようにしてください。
また、彼氏・彼女のお互いの状況によっては、第三者に口外しないという「守秘義務条項」も有効です。
婚活パーティやマッチングアプリの出会いは、慰謝料請求の根拠になる
真剣な婚活パーティは、独身女性をだます既婚者がまぎれないよう「独身男女限定」をうたいます。
運営母体がきちんとしたパーティは、「独身証明書」など公的証明を要求し、参加者が独身であると確認します。
まして、結婚相談所でするお見合いは「結婚に向けた交際」が当然の前提で、独身女性をだます既婚男性の責任はさらに重いです。
結婚前提なのが当然とされる場所に、既婚者でありながら参加し、女性と交際を求めるのなぜでしょう。
既婚者なのにマッチングアプリなどをやっているのは、やはり「体目的」など不順な動機と考えざるを得ません。
それだけで、だましたことは明らかで、慰謝料請求する根拠になります。
したがって、婚活パーティやお見合いで知り合った男性と交際・性交渉した後、「実は既婚者であった」、「結婚する気はまったくなかった」というケースでは、慰謝料請求をご検討ください。
「もうすぐ離婚する」とだまされた場合も、慰謝料を請求できる
男性の年齢が高いとき、「常識的に考えれば、既婚者なのでは」という女性の不安を解消するため、「独身」といつわるのではなく「バツイチだ」といってだましたり、「結婚しているが妻とうまくいっていない」、「もうすぐ離婚する」などとだます手口もあります。
このような言い訳をされても、結局「離婚したら君と結婚したい」といつわりながら、実際には離婚することもなく、交際関係をつづけ、肉体関係を持ちつづけたとき、だまされたあなたの側が精神的なダメージを負うのは当然です。
交際を解消するときには、のちに慰謝料請求をするときスムーズに進むよう、相手方男性の連絡先(電話番号、住所、本名)を特定しておくようにしてください。
まとめ
既婚者の男性に「独身だ」とだまされ、彼氏・彼女の関係で真剣交際してしまい、性的関係をもってからはじめて嘘に気づいた女性は、慰謝料を請求して、少しでも被害回復を図ることができます。
今回は、慰謝料請求をする方法と注意点について解説しました。
「将来は結婚したい」と信じた彼氏が既婚者だったと知れば、大きな精神的苦痛を受けるでしょう。
悪質な行為を野放しにし、泣き寝入りしないよう、慰謝料を請求しておくのが有効です。
結婚の準備をする女性にとって適齢期は長くはありません。
「独身だ」と嘘をつき、大切な時間を台無しにした既婚者である彼氏には、つぐなってもらう必要があります。
当事務所のサポート
弁護士法人浅野総合法律事務所では、男女問題のトラブルを多くお取り扱いしています。
交際している彼氏の嘘に気づき、慰謝料の請求を検討する方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
男女トラブルでよくある質問
- 彼氏が既婚者だったとき、慰謝料を請求できますか?
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彼氏が、既婚者なのを隠して交際をつづけ、性交渉をしてしまったときは、民法上の不法行為(民法709条)にあたり、慰謝料を請求できます。もっと詳しく知りたい方は「彼氏が既婚者だったとき、慰謝料請求できる要件」をご覧ください。
- 既婚者にだまされたけど、慰謝料を払ってもらえないときどうしたらよいですか?
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彼氏が既婚者で、だまされてしまったにもかかわらず慰謝料を払ってもらえないとき、「脅迫」だといわれないよう無理な手はとらないでください。証拠をしっかり集め、内容証明を送り、その後に慰謝料請求訴訟を起こしましょう。詳しくは「彼氏が既婚者だった場合に慰謝料を請求する方法」をご覧ください。