
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
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痴漢を疑われてしまったとき、「実際にはやってない」という「冤罪」なら特に、どのような資料が痴漢の証拠として役立つかを知っておくことが非常に重要です。
痴漢の容疑で逮捕されたり、起訴して処罰されたりするとき、捜査機関(警察や検察)は証拠を準備しているのが通常で、十分な証拠なく逮捕や起訴が進むことはありません。弁護人に「痴漢をやっていない」「冤罪である」ということを証明してもらうためにも、証拠が重要です。
裁判で執行猶予などの軽い刑や、無罪を求めるなら、裁判所が十分に価値を認めてくれるような証拠を集める努力をすべきです。
今回は、痴漢の証拠の基本と、どのような資料が重要な証拠となるかについて、弁護士が解説します。
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痴漢は、不同意わいせつ罪(刑法176条)や迷惑防止条例違反となる重大な犯罪行為です。
そのため、十分な証拠があれば、逮捕や勾留、起訴され、前科が付くなどの不利益を受けます。一方で、痴漢の容疑をかけられても、「疑わしきは被告人の利益に」(無罪推定の原則)というルールがあるため、処罰を求める捜査機関側が痴漢行為があったことを証明する必要があります。決して、弁護側が痴漢をやっていないこと、すなわち「無罪」を証明する必要はありません。
被疑者が、痴漢が「冤罪」であることを主張しているとき、有罪か無罪かの最終判断は、裁判所における判決で決まります。この際、裁判所の審理においては証拠が重視されます。
痴漢の証拠となるものには、大きく分けて、物的証拠と供述証拠があります。
通常は、物的証拠の方が重視され、物的証拠と矛盾する供述証拠の価値は低いものと評価されます。ただし、痴漢をはじめとした性犯罪は隠れてこっそり行われることが多いため、物的証拠が残りづらく、実際には供述証拠も重要な役割を担います。
「痴漢は何罪?」の解説

痴漢の証拠のうち、重要な物的証拠には次のものがあります。
痴漢事件で、捜査機関は、故意による意図的な接触であることと、被疑者と犯人が同一人物であることについて立証しなければなりません。
微物検査とは、被疑者の手や指からテープで付着物を採取し、その種類・性状などを調べる捜査手法です。痴漢の疑いがかかって臨場した警察官によって行われるのが通常です。
被疑者の手指から、被害者の衣服と同種の繊維が検出されると、少なくとも「衣服に触れた」ことを示す重要な証拠となります。さらに、下着の繊維が検出されれば「下着にも触れた」ことを示し、痴漢行為があったことの裏付けとなります。
ただし、触れたら必ず繊維が付着するとは限らず、全く検出されなかったからといって「痴漢していないこと(無罪であること)」を意味するわけではない点に注意が必要です。このような物的証拠がないとき、被害者の証言や被疑者の供述などの信用性がますます重要となります。
逆に、繊維が検出されたとしても衣服のもののみで、電車の混み具合などからして不可抗力で触れた可能性があるとき、それだけで痴漢の十分な証拠があるとも言い切れません。
痴漢事件ではDNA鑑定が重要な証拠となります。DNAにより皮膚片や髪の毛などから個人を特定することができ、触っていたかどうかを調べることができるからです。
例えば、被疑者のDNAを含む皮膚片が被害者の下着に付着していたとき、下着に触る痴漢行為をしていた証拠になります。被害者が「下着に手を入れられ、膣内に指を挿入された」という被害を訴えたときは、被疑者の手指から被害者のDNAを含む体液が検出されるかが重要となります。
微物検査や繊維鑑定と同じく、DNAが検出されなかったからといって「痴漢していないこと(無罪であること)」の証拠になるとは限りません。ただし、先程の説明のように、「性器に指を入れた」ほどの被害ならば体液が付くのが通常であるなど、被害者の証言と整合するような資料が検出されるかどうかは重要なポイントとなります。
全く検出されなければ、痴漢で有罪とするには合理的な疑いが残るため、無罪推定の原則からして処罰されるべきではありません。
駅構内や路上には多くの防犯カメラが設置されています。
痴漢行為の瞬間が防犯カメラにはっきりと映っていれば、その映像は痴漢を裏付ける重要な証拠です。ただし、悪質な痴漢ほど、防犯カメラの死角を突いて犯行に及ぶため、映っていないからといって触っていないとは言い切れません。画質が粗く、重要な動作が見づらいこともあります。
また、被疑者が被害者に近づいたことは防犯カメラ映像から明らかでも、触ったかどうかまでは映像だけではわからないこともあります。被害者や目撃者の証言、被疑者の供述などのいずれが防犯カメラ映像と矛盾せず、自然で信用性があるかをチェックしていくこととなります。
交通系ICカードや定期券で改札を通過すれば、その記録が残ります。乗車記録は、被疑者が痴漢したと疑われ後でその場から逃げ去ったとき、重要な証拠となります。
痴漢の疑いが冤罪だったとしても、その場から逃げるのはおすすめできません。痴漢をやっていないからこそ、証拠収集(微物検査や繊維鑑定、DNA鑑定など)に誠実に協力し、有利な証拠を残すこと、できる限り逮捕を回避することといった対応が重要です。
痴漢の被疑者が現場から逃走した際に残した遺留品も、重要な物的証拠になり得ます。
例えば、逃げる途中で落とした身分証や携帯電話、カバンなどが現場に残されていれば、身元が判明するきっかけになります。これらの遺留品は、痴漢行為そのものを直接証明するものではありませんが、現場から逃走した人物と被疑者が同一であることを示す強力な証拠となります。

痴漢の証拠のうち、重要な供述証拠には次のものがあります。
被害者の証言は、供述証拠の中でも特に重要です。
電車内での痴漢では、被害者の証言しか有力な証拠がないことも少なくありません。それでも、被害者の証言だけで有罪となる例はあります。
被害者の証言しか証拠がないときは、虚偽供述の動機があるかが非常に重要です。痴漢の被害に遭って冷静でなかったり、あなたが犯人だと思い込んでいたりすると、あえて嘘を付こうとしなくても虚偽供述となってしまうケースもあります。
被害者の証言の信用性は、次の事情を考慮して慎重に検討する必要があります。
痴漢事件では、被疑者と被害者に面識がなく、人間関係や怨恨からおとしめようとして虚偽供述をする動機は少ないと考えられます。他に目撃者がいない場合、なおさら被害者の証言が重要視されますが、それだけに頼りすぎると冤罪が生まれやすくなります。痴漢冤罪の理由となる被害者の証言には、次のような問題点があります。
痴漢の現場を目撃していた人がいるとき、目撃者の証言も重要な証拠となります。
目撃者は、痴漢の「当事者」ではないため、嘘を付く動機がない点で信用性が高いと判断されます。目撃者の証言が信用できるかどうかは、具体性・迫真性・合理性といった被害者の証言の信用性と同じ要素に加え、次の事情を考慮して判断されます。
嘘をつく動機がないとしても、電車内が混み合っているなど、位置関係によっては痴漢があったかどうかをはっきりと見ることができないケースもあります。被害者の友人などの場合、被害者の証言に引きずられてしまっている場合もあります。
犯人自身の供述もまた、重要な証拠となります。
捜査段階では、警察や検察による被疑者の取り調べが行われ、その調書が証拠となります。裁判になった場合も、被告人の尋問が行われ、その供述が証拠となります。
犯人自身が罪の内容を認めることを「自白」といい、非常に強力な証拠とされます。その重要性から、捜査機関は自白を引き出そうとしますが、痴漢をしていないなら否認し続けるべきです。やっていない痴漢を自白したり、事実と異なる調書にサインしたりすると、後から裁判で信用性を争うハードルは高いと考えるべきです。冤罪であれば、自白強要に屈してはなりません。
なお、自白を過大視すると自白強要のおそれがあるため、自白しか証拠がないとき、それだけで有罪にすることはできないとするのが法律上のルールです(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)。そのため、自白があっても、これを補強する証拠が他に必要となります。
痴漢事件における証拠の取り扱いについて、法律上のルールを理解しておく必要があります。誤った対応をすれば、刑事手続きにおいて不利になるおそれがあります。
加害者と被害者のどちらの立場でも、証拠を意図的に隠滅したり、捏造したりする行為は絶対に許されません。証拠物を破壊することや、目撃者に接触して証言を変えるよう迫る行為は、証拠隠滅罪や証人威迫罪の責任を問われるおそれがあります。
被害者側であっても、実際には被害を受けていないのに嘘の申告をしたり、他人に虚偽の証言を依頼したりすれば、虚偽告訴罪などの罪に問われる可能性があります。
痴漢の重要な証拠は捜査機関が収集し、保管していることが多いです。
警察は「逮捕するかどうか」、検察は「勾留請求するか」「起訴するか」の判断のために証拠を利用しますが、一方で、弁護側では、起訴されて裁判になるまで、痴漢の証拠としてどのようなものがあるかを見せてもらうことができません。また、被害者の証言も聞けないのが通常です。
被疑者が無罪を主張する「痴漢冤罪」では特に、被疑者自身の言い分を信じるしかなく、他に証拠がないまま弁護活動を進めざるを得ません。「やっていない痴漢なのに身柄拘束されるのか」「証拠はあるのか」と憤る気持ちは理解できますが、証拠が示されるのは裁判になってからです。
そのため、痴漢を疑われた人は、弁護士に対し、記憶している事実や警察・検察からの取調べの内容について、できる限り具体的かつ詳細に伝えることが大切です。無罪を主張するケースでは、被疑者から捜査機関に無用な情報を与えてしまわないよう、黙秘をアドバイスするのが通常です。
「起訴前弁護」の解説

捜査機関が証拠を集める際は、法律で定められた適正な手続きを厳守する必要があります。
例えば、裁判所の令状がないまま住居内を捜索したり、強制的にDNAを採取したりする行為は、違法な捜査とみなされます。また、逮捕状がないのに不当に長時間の取り調べを行ったり、自白を強要したりすることも違法です。
こうした不適切な方法で集められた証拠や自白があった場合、裁判で証拠としての能力を否定され、有罪を証明するための材料として使用できなくなる可能性があります。

最後に、証拠収集が大切な理由について、弁護士が解説します。
痴漢を疑われたとき、証拠収集が特に重要です。証拠の重要性は、実際に痴漢をした人にとっても、痴漢をしていない冤罪の人にとっても共通します。
痴漢をしてしまった場合、まずは逮捕を回避することが最優先となります。
その上で、被害者との示談交渉を進め、不起訴処分を目指す、もしくは、仮に起訴されても執行猶予などの軽い刑罰で済むように弁護活動を行うのが最適な方針です。
証拠によって痴漢の行為態様を明確にすることは、示談交渉を誠実に進める前提として重要です。また、痴漢そのものは認めるにしても、衣服の上から触ったのか下着の中に手を入れたのかなど、痴漢の程度や態様によって刑罰の重さが変わります。したがって、捜査機関と認識が異なる点があるなら、証拠をもとに反論しなければなりません。
「痴漢の示談金の相場」の解説

痴漢の冤罪に遭ったら、無実を証明するには証拠が決定的に重要です。
捜査機関は、被疑者の処罰のために証拠を集めるのが仕事なので、無罪の証明を目的とはしません。そのため、冤罪を争う場合、被疑者や弁護人が積極的に証拠を集める必要があります。冤罪を晴らすには、次のような証拠収集が有効です。
「痴漢を疑われた場合」の解説

痴漢をはじめとする性犯罪は、人目を避けて行われることが多いため、証拠が残りづらい特徴があります。そのため、被害者の証言が唯一の証拠となるケースも珍しくありません。
このような痴漢事件の多くは、被害者の証言の信用性が裁判での争点となります。被害者の証言が信用できると判断されれば、それだけで有罪となってしまう例は少なくありません。一方で、被害者の証言に矛盾や不自然な点があれば、無罪となる可能性が高まります。
自白だけでは有罪にすることができないという原則(補強法則)がありますが、被害者の証言には補強証拠は不要であり、証言だけで有罪となるおそれがあります。「証拠がないから大丈夫だ」と甘く見ることなく、逮捕や処罰の可能性があるときは弁護士にご相談ください。

今回は、痴漢の疑いをかけられた際の弁護活動で重要な「証拠の役割」を解説しました。
一時の出来心で痴漢をしてしまった場合や、不可抗力で触れてしまっただけなのに痴漢の容疑をかけられた場合、逮捕や起訴を防ぎ、前科を回避するためにも速やかに弁護活動を開始すべきです。
痴漢冤罪をはじめ、刑事事件にお悩みの方、家族が逮捕されてお困りの方は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。
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