ポイントを導入したものの、購買意欲の促進、ユーザー囲い込みなど、期待した効果が出なかったり、一時的なプレゼントキャンペーンの目標を達成したりといったとき、ポイントサービスを終了することがあります。
採算の悪化や新規サービスへの移行などを理由に終了することがありますが、この場合も、サービス内でのみ利用できるポイントは終了せざるを得ません。ポイントに有効期限を付けるサービス設計もあり得ます。
いずれの場合も、ポイントサービスの終了や失効、有効期限は、サービス提供をする事業者側の都合であり、ユーザーに不利益を与えれば法的トラブルが生じます。
今回は、ポイントの終了と失効の法的規制、有効期限を付ける際の注意点について、弁護士が解説します。
- ポイントの有効期限は原則自由だが、消費者保護のための規制あり
- ポイントの有効期限が6ヶ月以内なら、資金決済法の規制を回避できる
- ポイントサービスを終了するときユーザーに不利益を与えない配慮が必要
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
ポイントの有効期限とサービスの終了

はじめに、ポイントの有効期限、廃止・終了についてどのようなサービス設計にすべきか、法的な側面から解説します。
契約自由の原則
ポイントサービスの有効期限や終了について、法律に決まったルールはありません。
そのため「ポイントサービスの有効期限をどの程度の期間とするか」「サービス自体を終了する際のポイントの扱いはどうするか」といった点について、そのサービスを提供する事業者が自由に定めることができるのが原則です。つまり、ポイントの有効期限を何か月でも「法的には」問題ありませんし、ポイントやサービス自体を廃止するのも自由です。ポイントの有効期限を付けない(無期限とする)ことも可能です。
「契約自由」の考え方からして、ポイントサービスを定める契約書や利用規約の定めにより、「誰と、どのような内容の契約を締結するか」は、ユーザーと事業者間の合意で決めるべきだからです。
消費者契約法による法的規制
しかし、「契約の自由」が例外的に制限されるケースがあります。それは、「ユーザーを不当に害してはならない」というユーザー保護の観点からの法的規制です。
あまりに短い有効期限、突然のサービス終了、ポイントの廃止によって、顧客のポイント利用を不当に阻害する場合、消費者契約法によって無効とされるおそれがあります。事業者側の経営メリットのみを考慮して、一方的な都合でユーザーに不利益を与えるようなサービスから、消費者を保護する必要があるからです。
消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する契約内容は無効となることを定めます。
消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
消費者契約法(e-Gov法令検索)
また、利用規約で「サービス内容や有効期限は、事業者側が変更することできる」と定めることが多いですが、事前予告なくポイントサービスを廃止したり、ポイントを失効させたりすることもまた、ユーザーの不利益が過大であり、無効となるおそれがあります。
「ポイントサービスの法律問題」の解説

ポイントに有効期限を付ける時の注意点

次に、ポイントに有効期限を付けるとき、サービス提供者の注意点を解説します。
ポイントの有効期限に法的な規制はありません。「有効期限を何か月とするか」「期限を付けるか、無期限か」は、契約自由の原則のもと、サービス提供者が自由に決められます。しかし、ユーザー側が過大な不利益を負わないよう消費者契約法による規制が適用される可能性があるので、あまりに非常識、不当な有効期限の定めはしない方がよいでしょう。
有効期限を短くしすぎない
注意点の1つ目は、ポイントの有効期限を短くしすぎないことです。
Webサービスやアプリ内の自社独自のポイントについて、サービスの利用実態に比して短すぎる有効期限を設定すると、実際にはユーザーに「ポイントは利用するな」と言っているのと同じことです。そのため、少なくとも、平均的なユーザーが次に利用するときポイントを使えないほど有効期限を短くするのは避けなければなりません。
短すぎる有効期限は、消費者契約法違反で無効となるリスクがありますし、法違反とならない場合でも「悪質なポイントサービスを運営する企業」というイメージから炎上を招き、企業の信用低下に繋がるおそれがあります。
なお、「どの程度の有効期限が妥当か」に一律の相場はなく、サービスの内容やユーザーのポイント利用状況、利用の頻度などを考慮し、ケースバイケースで検討する必要があります。
資金決済法の法的規制を回避できる(有効期限を6か月以内とする方法)
注意点の2つ目は、ポイントの有効期限によって資金決済法上の法的規制を回避できることです。
具体的には、有効期限を6か月以内とすると、資金決済法の「前払式支払手段」に該当するポイントサービスでも、資金決済法の適用除外となります。
資金決済法の法的規制を受けると、ポイント発行者の財政的基盤を確実なものとするため、未使用残高の2分の1以上を供託する義務が生じ、事業者の財源を大きく圧迫します(供託義務は、未使用残高が1,000万円を超えると発生するため、結果として500万円以上の供託を行うことが必要)。
そのため、資金決済法の法的規制を回避するために、有効期限を6ヶ月以内にしても、ユーザー囲い込みなどポイントサービスを導入するメリットがあるかを検討する必要があります。
「ポイントサービスと資金決済法」の解説

有効期限内に利用するよう告知する
注意点の3つ目は、有効期限内にポイントを利用するようユーザーに注意喚起することです。
ポイントに有効期限をつける場合、期限がユーザーにわかりやすいよう、すぐ見られる場所に明記しなければなりません。また、ユーザーがわかりやすい簡潔な説明書きを心掛けてください。そして、有効期限内にポイントを利用するよう、ユーザーに告知し、注意喚起してください。有効期限の1か月前など、余裕をもって事前告知するのが適切です。
有効期限を知らせないまま、「気付いたらポイントが使えなくなっていた」というのでは、不当なユーザーいじめを行う悪質な企業だと批判されても仕方ありません。有料ポイントであるのにユーザーへのサービス提供を不当に怠ると、課金分の損害賠償請求を受けるおそれもあります。
ポイントサービスを終了するときの注意点

ポイントサービスの廃止・終了についても法的な制限はなく、サービス提供を行う事業者側の判断で、自由に決められます。
Webサービスやアプリをリリースしたが、採算性が悪かったり、新規サービスに移行したりといった理由で、サービス自体を終了する場合があります。特に、スタートアップ企業、中小・ベンチャー企業では「新規性の高いサービスを実験的に提供し、期待した成果が出なければピボットする」ということはよくあります。
一方で、ユーザーを軽視して、事業者の判断で勝手にサービスを終了すると、訴えられて法的紛争に発展するリスクがあります。
開始当初からサービス終了を見据えて設計する
注意点の1つ目は、開始当初からサービス終了を見据えたサービス設計をすることです。
開始当初から「終了」を考えるのは、失敗を予想するようで気が進まないでしょう。しかし、採算が合わない、売上が上がらないといった消極的な理由のサービス終了はもちろん、新規サービスへの移行など、積極的な理由で終了することもあります。
Webサービスやアプリの利用規約に「事業者の判断によりサービスを終了することがあります」という記載が多いです。その際にはあわせて、以下をルール化してください。
- 終了時の予告期間
- 解約告知の方法
- 終了時のポイントの払戻方法
Webサービスやアプリをリリースし、その中で利用できるポイントサービスを開始するときには、開始当初から、終了することを見据え、その際にも顧客が不利益を被らないよう「ユーザーファースト」なサービス設計を心がける必要があります。
資金決済法の払戻義務
注意点の2つ目は、資金決済法の払戻義務を遵守することです。
ポイントサービスが資金決済法の「前払式支払手段」となるとき、サービス継続中は原則として払戻をしてはならず、かつ、サービス終了時には未使用残高を払戻しなければなりません。無償のポイント、有効期間が6か月以内のポイントは資金決済法の適用を受けないため、この払戻義務は有料のポイントの場合に知っておくべき注意点です。
予告期間を設けて解約告知をする
注意点の3つ目は、予告期間を設けて解約告知をすることです。
Webサービスやアプリサービスは継続利用が予定された「継続的契約」のため、事業者側の都合で終了させるためには、相当の予告期間を設けて事前に解約告知を行うことが重要です。
特に配慮が必要なのは、有償のポイントを発行するケースです。有償のポイントを購入すると、無償のポイントをプレゼントしてもらっているのとは違い、当然に商品やサービスの購入に利用することを予定していたはずです。
有償ポイントを発行したにもかかわらずユーザーに不利な時期にサービスを終了すると、課金額について返金請求、損害賠償請求を起こされるおそれもあるので、慎重な判断が必要です。
まとめ

今回は、ポイントサービスを正しく運用する際に重要となる、有効期限の付け方、終了と失効に関する問題などについて解説しました。
ポイントサービスの導入は、顧客離れの防止、囲い込みなどの販促効果を生む有用な方法の一つです。「契約自由の原則」があるので、事業目的を達成できるよう、様々なサービス設計について知恵を絞り、企業努力をすることは良いことです。
しかし、事業者のメリットを優先するあまり、ユーザーに不利益の大きい有効期限の設定、事業者の一方的な都合によるサービスの終了やポイントの失効は、結果的に大きな法的リスクを伴います。また、炎上すれば、企業の信用を損なう原因ともなりかねません。
ポイントサービスの開始、運用はもちろん、企業法務についてお悩みの会社は、ぜひ一度弁護士に相談してください。
- ポイントの有効期限は原則自由だが、消費者保護のための規制あり
- ポイントの有効期限が6ヶ月以内なら、資金決済法の規制を回避できる
- ポイントサービスを終了するときユーザーに不利益を与えない配慮が必要
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/