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他覚的所見(他覚症状)とは?後遺障害等級認定への影響についても解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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交通事故の被害に遭ったとき、他覚的所見(他覚症状)の有無が問題となることがあります。

交通事故における他覚的所見とは、医師による検査や画像診断などで、客観的に確認できる身体の異常を指します。交通事故によるケガ、特に「むちうち」では後遺障害等級認定で他覚的所見の有無が考慮され、慰謝料や逸失利益に影響します。当事務所でも、次のような相談例があります。

  • 「他覚的所見がないと後遺障害は認定されない?」
  • 「MRIやレントゲンで異常が見つからない場合はどうなる?」
  • 「保険会社から他覚症状がないから治療を止めるよう言われた」

むちうちには、痛みやしびれなどの自覚症状が、検査結果に現れにくい特徴があります。確かに、他覚的所見の有無によって後遺障害等級の認定が異なることがありますが、適切な証拠の集め方や裁判での争い方を知ることが、後遺障害慰謝料で不利益を被らないために重要です。

今回は、他覚的所見(他覚症状)の意味や自覚症状との違い、後遺障害等級認定における重要性、他覚的所見がない場合の認定のポイントについて、弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 他覚的所見がないと、治療費の打切りや後遺障害の不認定などのリスクがある
  • 他覚的所見のないむちうちでは、事故直後の検査が非常に重要となる
  • 他覚的所見のないむちうちで後遺障害認定を受けるには、医師の協力が必須

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目次(クリックで移動)

他覚的所見(他覚症状)とは

医療

はじめに、他覚的所見(他覚症状)について、交通事故における位置付けを解説します。

他覚的所見(他覚症状)とは、客観的に確認できる身体の異常のことです。医師の診察のほか、画像診断(レントゲン、MRI、CTなど)で明らかになる場合、「他覚的所見がある」といえます。一方、本人が痛みやしびれを訴えても、客観的に確認できないものを「自覚症状」と呼びます。

他覚的所見の有無は、交通事故におけるむちうちでよく問題となります。むちうちは、交通事故によって首や腰などに痛みが出る症状であり、診断名としては、首の場合は「頸椎捻挫」「頸椎挫傷」、腰の場合は「腰椎捻挫」「腰椎挫傷」などとなります。交通事故によって身体に不自然な力が加わり、ムチのようにしなることが症状の原因となることから「むちうち」と呼ばれます。

むちうちの症状は目に見えにくいため、他覚的所見がないとその損害が軽視される傾向にあります。この際に活用される他覚的所見としては、次のものがあります。

  • 客観性の高い所見
    レントゲン・MRI・CTといった画像検査は、被検査者の意思に関係なく結果が得られるため、客観性の高い所見として扱われます。
  • 客観性の低い所見
    神経根症状誘発テスト(ジャクソンテスト、スパーリングテスト)などは、被検査者の応答や協力が不可欠であり、本人の意思に左右されることがあります。そのため、他覚的所見ではあるものの、画像診断と比べて客観性が低いと評価されます。

他覚的所見の有無による後遺障害等級認定の基準

他覚的所見の有無は、後遺障害等級認定に大きく影響します。

前述のむちうちの後遺障害等級の認定では、他覚的所見の有無によって、次のように認定される等級が区別されるからです。このような等級認定の違いは、後遺障害慰謝料や逸失利益に影響し、最終的に受け取れる賠償額を大きく左右します。

  • 第12級13号
    「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、障害の存在が他覚的に証明できるものが12級13号に該当します。例えば、椎間板ヘルニアによる神経症状の場合、画像上の圧迫所見に加え、神経学的所見、受傷直後からの症状出現などの条件がそろうことで証明できます。
  • 第14級9号
    「局部に神経症状を残すもの」として、他覚的な証明は困難でも、症状の存在が医学的に説明可能なものが該当します。受傷部位にほとんど常時疼痛を残すことなどが要件となります。

したがって、交通事故でむちうちの症状があるとき、他覚的所見で証明できれば、より高い第12級13号の認定を受けることができ、賠償額を増額できます。

後遺障害等級について、自賠責の認定でも裁判所の判断でも、証拠の存在が重視されます。そのため、他覚的所見があることを示す検査結果や画像診断の結果などが重要となります。

ただし、他覚的所見の考え方について、自賠責と裁判の実務で判断が異なるケースがあります。自賠責では、画像上の異常がない限り「他覚的所見がない」と判断されて後遺障害非該当とされる傾向が強く、加害者やその保険会社からは被害者に不利な提案を受けることがあります。これに対し、裁判所では、画像検査の結果が認められなくても、病院の記録から症状が一定して継続していることなどを根拠にして、「医学的に説明可能」であるとして後遺障害を認定する場合があります(神戸地判平成11年5月26日など)。

他覚的所見がない場合の損害賠償への影響

注意点

次に、他覚的所見がない場合、交通事故の損害賠償にどのような影響があるかを解説します。

交通事故の実務では、他覚的所見が欠ける場合、前述した後遺障害等級認定だけでなく、治療期間の相当性や入通院慰謝料にも大きな差をもたらします。

治療費の必要性・相当性が否定される

交通事故による治療期間には、必要性・相当性がなければなりません。

相当因果関係のある治療であれば、その期間の治療費については加害者に請求できます。また、治療期間が長くなるほど、次章のように入通院慰謝料を増額したり、症状の深刻さを示して後遺障害等級の認定を受けやすくなったりといった事実上の影響もあります。

他覚的所見がないと、被害者に自覚症状があっても、加害者やその保険会社から軽視され、治療の必要性・相当性を否定されるおそれがあります。

加害者の責任が明確なら、その保険会社が治療費を立替え払いするのが通常です。しかし、他覚的所見が認められないと症状の継続を証明しにくく、その後に裁判で争って責任が認められる場合であっても、早期に治療費の立替え払いが打ち切られてしまうケースも少なくありません。

入通院慰謝料が減額される

他覚的所見がないことは、入通院慰謝料の減額にもつながります。

入通院慰謝料は、交通事故による傷害で入院・通院を要したことによる精神的苦痛の補填であり、「傷害慰謝料」とも呼びます。その算定基準は、いわゆる「赤い本」の表で定められています。

他覚的所見のないむちうちでは、通常の傷害に適用される「別表Ⅰ」ではなく、通常の入通院慰謝料の算定基準の3分の2程度を基準とした「別表Ⅱ」が用いられることがあります。さらに、前述の通り、症状が客観的に確認しにくいため治療の必要性・相当性が否定され、入院期間や通勤回数が短縮されることで、慰謝料の算定額そのものが低くなるという影響もあります。

後遺障害慰謝料や逸失利益が減額される

他覚的所見の有無による後遺障害等級認定の基準」の通り、他覚的所見のないむちうちは、後遺障害等級が「局部に頑固な神経症状を残すもの」(第12級13号)ではなく、「局部に神経症状を残すもの」(第14級9号)にとどまります。また、等級の認定がされないこともあります。

後遺障害は、等級が高いほど慰謝料や逸失利益が増額される仕組みになっているため、低い等級しか認定されないと、結果として後遺障害慰謝料や逸失利益も低額に抑えられます。

また、他覚的所見のないむちうちでは、時間の経過とともに症状に慣れることが想定されており、実務上、労働能力が低下する期間の上限が約5年と限定されます。そのため、逸失利益の全期間分を求めることが困難となり、この点でも賠償額の減額につながります。

後遺障害慰謝料の請求方法」の解説

受傷そのものが否定される

事故態様が軽微で、他覚的所見もない場合、受傷そのものが否定されるおそれもあります。

加害者やその保険会社から、受傷していない、つまり「詐病」であると疑われれば、人身損害(人損)について金銭を支払う内容の提案を受けることができず、交渉での解決は困難です。また、裁判を提起しても、裁判所から受傷そのものを否認する判断を示されることもあります。

他覚的所見がない場合の被害者側の注意点

ポイント

次に、他覚的所見がない場合に、被害者側が注意すべきポイントを解説します。

他覚的所見がなくても被害回復を実現するには、事前準備が欠かせません。客観的に症状が明らかでないむちうちなどは軽視されやすいですが、痛みやしびれなどの自覚症状に基づいて治療を継続することで、後遺障害等級認定を得れば、請求金額を増やすことができます。

医師の指導に基づいて治療を継続する

まず、医師の指導に基づいて、適切な治療を継続することが重要です。

医学的な問題について自己判断は危険であり、医師の指導に従うべきです。通院頻度を勝手に減らしたり、治療を中断したりすると、他覚的所見がないため「自覚症状もなくなったのではないか」と疑われ、治療の必要性・相当性が否定され、後遺障害等級認定も得にくくなります。

重要なのは、保険会社から治療費の立替払いを打ち切られたとしても、医師が治療の必要性・相当性を認めてくれる限りは治療を継続することです。医師が必要と判断する治療をしていたのであれば、たとえ保険会社がそれを認めなくても、裁判で争うことで入通院慰謝料を増やしたり、後遺障害等級の認定を得たりして、将来獲得できる賠償額を増やすことができます。立替払いされなかった治療費も、加害者の責任が裁判で認められれば、支払ってもらうことが可能です。

なお、医学的な判断は医師(整形外科など)の専門領域とされ、症状の緩和を目的とした整骨院とは区別すべきです。他覚的所見のないむちうちで整骨院に通うケースは少なくありませんが、継続的に治療していたことを示すため、医師の意見を踏まえて行う必要があります。

事故直後からの症状の連続性を示す

次に、事故直後から一貫して、連続性のある症状を主張し続けることが重要です。

他覚的所見がない場合でも、被害者の自覚症状も、後遺障害等級認定の判断材料とされます。しかし、痛みやしびれがあるという自覚症状だけで信用してもらうには、事故直後から治療が継続して行われており、症状が矛盾なく連続していることが重要な基準とされます。

このことを立証するため、医師に正確な症状を伝え、医療記録に残す必要があります。一時的に痛みが軽減したり、突然再発したり、事故態様と整合しない不自然な箇所に痛みが生じたりといった主張は信用されにくく、後遺障害等級の認定を得られないリスクがあります。

むちうちに適した検査手法を活用する

次に、むちうちの特性に合った検査方法を活用することです。

他覚的所見を示す検査は、レントゲン・MRI・CTなどの画像診断が代表例です。しかし、他覚的所見がない場合、画像では異常がなくても痛みやしびれが消えないことも少なくありません。こうしたケースでは、他の検査手法も活用することで、被害を証明することができます。

  • 神経根症状誘発テスト(ジャクソンテスト、スパーリングテスト)
    医師の指示に従って患部の動きを確認することで、痛みやしびれの有無を評価する検査手法です。被害者の主観を完全に排除することはできないものの、他の証拠と組み合わせることで一定の証明力が認められます。
  • 筋萎縮テスト
    患部周辺の筋肉の萎縮の程度を比較することで、むちうちの症状の有無を調べる検査手法です。痛みやしびれを避けるために不自然な動きをすると周辺の筋肉が萎縮するため、自覚症状のある箇所と他の箇所の筋萎縮を比較し、症状の有無を検査できます。

これらの手法はいずれも、被害者の主観を完全に排除することはできないものの、裁判所でも一定の証明力が認められます。

事故の衝撃の大きさを証明する

最後に、事故の衝撃が大きかったことを証明することです。

事故の衝撃が大きければ、むちうちをはじめ人身損害(人損)が生じるのは当然です。逆に、軽微な事故だと、ケガを負うのは不自然であると疑われるおそれもあります。したがって、他覚的所見のない場合ほど、事故態様と整合した症状があることが、後遺障害等級の認定につながります。

むちうちになるのが当然といえるほど甚大な事故であり、かつ、損傷の部位や程度と整合性の取れた事故であることを証明するために、事故態様についても証拠を残しておくべきです。

他覚的所見がない場合に弁護士へ相談・依頼すべき理由

弁護士法人浅野総合法律事務所

交通事故では、他覚的所見がない場合ほど弁護士に相談・依頼するメリットが大きいです。

他覚的所見がない場合の後遺障害等級認定では、自覚症状の一貫性や通院状況、診療記録、検査資料などをどのように整理し、立証していくかが認定結果を左右します。また、加害者やその保険会社との示談交渉でも、症状や後遺障害の伝え方が重要となります。

そのため、他覚的所見がない場合ほど、交通事故案件に詳しい弁護士へ早めに相談し、適切な証拠収集や認定手続き、示談交渉についてサポートを受けることをおすすめします。

当事務所では、他覚的所見が乏しい事案であっても、後遺障害等級認定を獲得した実績が多数あります。他覚的所見がないことを理由にあきらめる前に、お気軽にご相談ください。

【まとめ】他覚的所見について

今回は、交通事故における他覚的所見(他覚症状)について解説しました。

他覚的所見は、医師の診察やMRI・CT・レントゲンなどの検査で客観的に確認できる異常であり、交通事故の実務では、後遺障害等級認定では重要な判断材料の一つとなります。一方で、他覚的所見が十分でなくても、自覚症状の一貫性や治療経過、事故態様との整合性、各種検査などを総合して証明することができれば、後遺障害等級が認定される可能性があります。

そのため、交通事故で自覚症状がある場合、速やかに検査を受けるとともに、症状を継続的に医師へ伝え、診療記録や検査結果を残し続けることが重要です。後遺障害等級認定の結果は、慰謝料や逸失利益などの賠償額に大きく影響するため、慎重に進めなければなりません。

他覚的所見がないという理由で後遺障害認定がされなかったり、加害者や保険会社から不利な提案を受けたりした場合、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

この解説のポイント
  • 他覚的所見がないと、治療費の打切りや後遺障害の不認定などのリスクがある
  • 他覚的所見のないむちうちでは、事故直後の検査が非常に重要となる
  • 他覚的所見のないむちうちで後遺障害認定を受けるには、医師の協力が必須

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