
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
債権譲渡は、同一性を保ったまま第三者に債権を譲渡することを指します。
企業間の取引では、売掛金や貸付金といった債権を第三者に譲渡することがあります。債権譲渡を活用すれば、資金調達や債権回収を円滑に進められる一方、適切な手続きを踏まなければ、債務者や第三者に対して債権を譲渡したことを主張できなくなるおそれがあります。
特に重要なのが、債権譲渡の「対抗要件」を備えることです。債務者への通知や承諾、確定日付のある証書など、相手によって必要となる対応が異なるため、正しい理解が欠かせません。対抗要件の具備を怠ると、二重譲渡などのトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
今回は、債権譲渡の基本的な仕組みや手続きの流れ、対抗要件の備え方、債権譲渡を行う際の注意点について、弁護士が解説します。

はじめに、債権譲渡とはどのようなものか、基本的な知識を解説します。
債権譲渡とは、ある者が、他人に対して保有する債権を、第三者に移転することです。譲渡の対象となった債権の内容はそのまま維持され、債務者は、譲渡後は譲受人に対して履行義務を負います。つまり、債務者の負う債務の内容は変わらないまま、「誰に支払うか」が変わります。例えば、A社がB社に有する100万円の売掛金債権を、C社へ譲渡するのが典型例です。
債権は原則として譲渡できます。現行民法では、当事者間で債権譲渡を禁止・制限する合意がされても、原則として債権譲渡の効力は妨げられません。債権譲渡は、債権回収の相手が変わるだけでなく、売掛を早期に現金化したり、事業譲渡に伴って取引先へ債権を移転したりといったように、ビジネスの様々な場面で活用されます。
債権譲渡には、譲渡人・譲受人・債務者の三者が関係します。
例えば、A社がB社に対する売掛金債権をC社へ譲渡した場合、A社が譲渡人、C社が譲受人、B社が債務者となります。
債権譲渡契約の当事者は、譲渡人と譲受人です。債務者は債権譲渡契約の当事者ではないため、債務者の承諾がなくても債権を譲渡することは可能です。ただし、債務者に対して譲渡を主張するには、通知または承諾などによって債務者対抗要件を備える必要があります。
また、債権譲渡の効力を第三者に主張するには、確定日付のある証書などの「第三者対抗要件」を備える必要があります。これらのルールは、債権譲渡の取引の安全を守るためのものです。
債権譲渡は、企業活動の様々な場面で利用されます。主に、資金繰りや債権の整理、債権回収の効率化などに活用されますが、代表的なのは次のようなケースです。
売掛金などの債権を第三者に譲渡することで、支払期日前に資金化するため、債権譲渡を利用することがあります。通常、売掛金は支払期日にならなければ回収できませんが、債権を第三者に譲渡して対価を受け取れば、早期に資金を確保できます。
売掛金などの債権をファクタリング会社へ譲渡して資金に変換することを「ファクタリング」と呼び、資金繰りを改善する手段の一つとして利用されます。ファクタリングは、債権譲渡を利用して債権を現金化する資金調達の方法であり、借入れとは異なります。
債権譲渡は、債権回収の一環としても利用されます。例えば、滞納されている債権を自社で保有し続けるのではなく、第三者へ譲渡することで処分する方法です。債権回収会社(サービサー)に譲渡するケースもあります。ただし、債権額より低価格でしか譲渡できないのが通常であり、債権管理回収業に関する法規制を遵守する必要があります。
事業譲渡やM&Aに伴い、その事業に関連する売掛金や貸付金などを買い手へ譲渡することがあります。例えば、特定の事業部門を別会社へ譲渡する場合、その事業に属する契約や資産だけでなく、取引先に対する債権も移転が必要になることがあります。
借入や融資を受ける際に、保有する債権を担保として提供することを「債権譲渡担保」と呼びます。万が一借入金を返済できない場合は、譲渡先である金融機関が、その債権から優先的に弁済を受けることができます。
債権譲渡には、譲渡人・譲受人の双方にメリットがある一方、一定のリスクもあります。
譲渡人にとって、売掛金などを支払期日前に譲渡して早期に資金化できることが大きなメリットです。資金繰りの改善につながるほか、回収に不安のある債権を処分したり、保有する債権を債務の弁済に活用したりすることもできます。一方、額面より低い金額で譲渡すれば受取額が減るほか、取引先に債権譲渡を知られることで、資金繰りに懸念を持たれるリスクもあります。
譲受人にとっては、債権を取得して債務者から直接弁済を受けられるほか、売掛債権などを担保として活用することで、取引先に対する債権回収の確実性を高められる場合があります。ただし、譲り受けた債権が必ず回収できるとは限りません。債務者の経営悪化や倒産、債権の不存在、二重譲渡などで損失が生じるリスクは否定できません。
そのため、債権譲渡を行う際には、両当事者とも、メリットだけでなくリスクも踏まえ、対象債権の存在や内容、債務者の信用状況などを事前に十分確認することが重要です。
債権譲渡を行うにあたり、原則として債務者の承諾を得る必要はありません。
債権は財産的な価値を持つ権利であり、民法466条1項では、債権を原則として自由に譲渡できることが定められています(債権譲渡自由の原則)。したがって、譲渡人と譲受人の間で債権譲渡について合意すれば、債務者が同意していなくても債権譲渡を行うことができます。
ただし、承諾は不要ですが、債務者に対して債権譲渡を主張するには、譲渡人から債務者への通知または債務者の承諾により、対抗要件を備える必要があります。また、債権に譲渡制限特約が付されている場合や債権の性質により、譲渡が認められない場合もあります。
前述の通り、債権者は、原則として自由に債権を譲渡できます。自由な譲渡が認められることで、売掛債権を資金化したり、取引の一環として他社へ移転したりすることが可能になります。
一方、債務者にとっては知らないうちに債権者が変わるリスクがあります。そのため民法では、債権譲渡を自由とする一方で、債務者に譲渡の効果を主張するには「対抗要件」を具備する必要があるというルールを設けています。
当事者が債権の譲渡を禁止・制限することを、譲渡制限特約といいます。
当事者が債権に譲渡制限特約を付していても、債権譲渡の効力は妨げられません。つまり、譲渡制限特約のある債権も、譲渡そのものは原則として有効です(民法466条2項)。
これは、2020年4月施行の民法改正で変更された重要なルールです。改正前は、譲渡禁止特約に反する債権譲渡は無効とされていましたが、改正後は債権の流動性や資金調達への活用を重視し、譲渡を有効とする仕組みに改められました。
ただし、譲渡制限特約があることを知り、または重大な過失によって知らなかった譲受人や第三者に対しては、債務者は履行を拒むことができ、譲渡人への弁済によって債務を消滅させることもできます(民法466条3項)。
債権の性質が譲渡を許さない場合、債権譲渡はできません(民法466条1項但書)。
典型的なのは、債権者本人に給付することに重要な意味がある債権です。例えば、扶養請求権は民法881条で処分が禁止されており、一身専属的な性質を持つ債権の典型例です。こうした債権を自由に譲渡できると、債務者が当初予定していなかった相手に履行をしなければならなかったり、契約の目的や債務の性質に反したりする結果となってしまうためです。
したがって、債権譲渡を検討するときは、単に譲渡制限特約があるかどうかだけではなく、そもそも対象となる債権が性質上譲渡可能かどうかも確認する必要があります。

前述の通り、債権譲渡は、譲渡人と譲受人の合意で成立しますが、それだけでは債務者や第三者に効果を主張できません。債権譲渡の効果を主張することを「対抗」と呼び、そのためには、民法の定める「対抗要件」が必要です。対抗要件には債務者に対するものと第三者に対するものがあります。
対抗要件が必要とされるのは、債権譲渡をめぐる関係者の混乱や不利益を防ぐためです。対抗要件の目的は、主に次のような点にあります。
例えば、A社がB社に対する売掛金債権をC社へ譲渡しても、B社がその事実を知らなければ、従来の債権者(A社)に支払うおそれがあります。また、A社が同じ債権をD社に「二重譲渡」したり、債権者の他の債権者が差し押さえたりといったトラブルも起こり得ます。このような場合に、誰が優先的に権利を主張できるかを判断するためにも、対抗要件が重要となります。
譲受人が債務者に対して債権譲渡の事実を主張するには、債務者に対する対抗要件が必要です。債務者対抗要件となるのは、次のいずれかです(民法467条1項)。
債務者は、これらの対抗要件を備える前は、譲渡人への弁済によって債務を消滅させることができますが、対抗要件を備えた後は譲受人に弁済する必要があります(なお、債権者が不明確な場合、供託によって対応することも考えられます)。
債権譲渡の通知は、譲渡人から債務者に対して行う必要があります。譲受人が一方的に「債権を譲り受けた」と通知しても、債務者対抗要件を備えることはできません(なお、譲受人が譲渡人の代理人ないし使者として通知する方法は可能です)。
上記のように、優劣関係が到達時期によって決まるため、実務では、通知した事実や到達時期を後から証明できるよう、内容証明を利用するのが通常です。
債務者が債権譲渡を承諾する方法でも対抗要件を備えることができます。「承諾」とは、債権譲渡を許可するという意味ではなく、債権が譲渡された事実を認識し、そのことを表明することを指します(前述の通り、債権譲渡そのものは債務者の承諾なく成立します)。
債権譲渡について債務者以外の第三者に権利を主張するには、さらに厳格な要件が必要です。債権譲渡を第三者に対抗するための要件として、次のいずれかが必要となります(民法467条2項)。
つまり、債務者対抗要件である通知・承諾が、確定日付のある証書によって行われれば、債務者以外の第三者にも対抗できます。確定日付とは、その証書が特定の日に存在していたことを公的に証明できる日付をいいます。
実務では、通知の場合、内容証明郵便(郵便局が付与する通信日付が確定日付となります)を利用するのが一般的です。一方、承諾の場合、作成した承諾書を公証役場に持ち込み、確定日付の付与(確定日付印の押捺)を受ける方法がよく利用されます。
第三者対抗要件について確定日付が要求されているのは、二重譲渡や差押えとの競合の場面において、その優先関係を明らかにするためです。したがって、第三者との競合が予想されるケースでは、債権譲渡を受けたら、できる限り早く、譲渡人に対し、内容証明によって債務者に通知するよう求める必要があります。
一定の債権譲渡については、債権譲渡登記で第三者対抗要件を備えることも可能です。
債権譲渡登記制度は、法人が行う金銭債権の譲渡について利用できる制度であり、法務局で登記手続きを行うことで、債務者以外の第三者との関係では、民法上の確定日付のある証書による通知がなされたものとみなされ、第三者対抗要件を具備することができます。
登記事項のうち、譲渡人・譲受人の商号や登記の存否といった概要は、「登記事項概要証明書」で誰でも確認できます。一方、債務者や債権額などの詳細な内容を記載した「登記事項証明書」は、当事者(譲渡人・譲受人)やその承継人、または当該登記に利害関係を有する者に限り、交付を請求することができます(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律11条)。
債権譲渡登記であれば、債務者に通知しなくても第三者対抗要件を備えられ、譲渡人の信用不安を招かないというメリットがあり、企業のファクタリングや資産流動化など、多数の売掛債権を一括譲渡する場面で、各債務者にそれぞれ通知する手間が大きいケースで利用されます。
ただし、債権譲渡登記をしただけでは、債務者に対して債権譲渡を主張することはできません。債務者対抗要件を備えるには、登記後、登記事項証明書を添えて、債務者に通知し、または承諾を得るといった手続きを踏む必要があります。
なお、通常の債権譲渡の通知は譲渡人からしか行えませんが、債権譲渡登記を利用し、登記事項証明書を添えた通知に限り、譲受人からも行うことができます(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律4条2項)。
譲渡人が複数の譲受人に債権を譲渡する「二重譲渡」は、よく起こるトラブルの一つです。
債権について二重譲渡が起こった場合、対抗要件を先に備えた譲受人が優先します。重要なポイントは、譲渡契約の先後ではなく、確定日付のある証書による通知・承諾という対抗要件を備えた時期の先後で決まる点です。つまり、債務者による承諾日、または通知の到達日が基準とされます。二重譲渡だけでなく、第三者(譲渡人の他の債権者など)による差押えとの競合でも同様です。
したがって、債権譲渡が行われたら、譲受人の立場としては、できる限り早く対抗要件を備えられるよう、譲渡人に対して債務者に通知するよう依頼するか、債務者の承諾を得る必要があります。対抗要件の具備が遅れると、最悪の場合、譲受人は債権の回収ができなくなるおそれがあります。
債権譲渡は、譲渡人と譲受人が債権譲渡契約を締結し、譲渡後に対抗要件を備え、債権を回収するという流れで進みます。また、譲渡の準備として、対象となる債権の内容や譲渡制限の有無を確認した上で進める必要があります。以下では、それぞれの手続きの流れについて解説します。
まず、譲渡の対象となる債権について、その内容を確認しましょう。
具体的には、契約書や請求書、発注書、納品書といった債権の内容を示す資料を確認して、主に次のような事項を整理してください。
譲受人にとっては、譲渡後に実際に回収できる債権かどうかが非常に重要です。そのため、本当に債権が存在するかとともに、債務者の支払状況や資力、付随する抗弁や相殺の可能性などについても、事前に確認しておくべきです。
「異議をとどめない承諾による抗弁の切断制度の廃止」で後述の通り、債権譲渡によって抗弁権は切断されないこととなったため、債務者が譲渡人に対して有する抗弁は、債権譲渡後、譲受人に対しても主張されることが予想されます。
次に、債権に関する契約書で、譲渡制限特約の有無を確認しましょう。
前述の通り、現在の民法では、当事者間で債権譲渡を禁止・制限する合意をしても、債権譲渡そのものは有効です。しかし、譲受人が譲渡制限について悪意・重過失である場合、債務者は譲受人への履行を拒むことができます。契約書の調査などで容易に確認できるのにそれを怠った場合、「重過失」と判断されるおそれがあります。
あわせて、債権の性質上そもそも譲渡できないものではないか、特別法による譲渡制限のある債権ではないかといった点も確認しておきましょう。
以上の確認が済んだら、債権譲渡契約を締結しましょう。
債権譲渡契約は、譲渡人と譲受人の合意で成立しますが、後に契約内容について争いが生じないよう、債権譲渡契約書を作成しておくことが重要です。債権譲渡契約書には、主に次のような事項を定めます。
特に、対象債権の特定が不十分だと、どの債権が移転したかをめぐって紛争になりやすいです。継続的な取引から発生する債権や将来債権を譲渡する場合は特に、対象となる債権の範囲を特定できるよう、契約書に具体的に記載する必要があります。
債権譲渡を受けたら、対抗要件を具備する必要があります。
「債権譲渡の対抗要件」で前述の通り、債務者に対する通知または承諾が債務者対抗要件となり、それを確定日付のある証書で行うことが第三者対抗要件となります。実務上よく利用されるのは、譲渡人から債務者に対し、内容証明で通知する方法です。
通知書の例文は、例えば次のようなものです。
通知書
この度、当社が貴社に対して有する下記債権を、下記の譲受人◯◯に譲渡しましたので、その旨通知を差し上げます。
【譲渡対象債権】
契約日:20XX年XX月XX日
契約名:売買契約
債務者:◯◯株式会社
債務額:金1,000万円
支払い期日:20XX年XX月XX日
したがって、今後の支払いは譲受人へ行うようお願いいたします。
【日付・署名】
通知の際にも、対象債権が明確に特定できるように記載してください。また、債務者が譲渡を承諾した場合にも対抗要件が成立しますが、この承諾についても書面で行うのが望ましく、内容証明などで証拠に残しておくことが重要です。
対抗要件を備えた後は、譲受人が新たな債権者として債権を管理・回収します。
譲受人は、支払期日や債権残高を管理するとともに、債務者に対して振込先を案内するなどして、適切に支払いを受けられるようにする必要があります。支払期日を過ぎても弁済がない場合は督促を行い、それでも支払われなければ、内容証明による請求、支払督促、訴訟といった法的手続きを検討します。
債権回収を成功させるには、債権譲渡前から、回収可能性がどの程度ある債権かを慎重に見極めた上で譲渡を受ける必要があります。
債権譲渡通知書が届いた債務者側の対処法も解説しておきます。
見知らぬ会社から請求書が届いた場合は、安易に支払いに応じるのではなく、まずは通知内容と債権譲渡の事実を確認することが重要です。特に、対象債権に覚えがあるかを確認してください。身に覚えがない場合、架空請求や詐欺の可能性もあります。通知書に記載された連絡先だけを信用せず、元の債権者に確認するなどして、本当に債権が譲渡されたかどうかを確かめましょう。
また、借入金などを長期間返済していない場合、既に消滅時効が完成している可能性もあります。現行民法では、債権が第三者に譲渡されても抗弁権は切断されないため、それまで進行していた時効期間は継続します。不用意に支払いや債務の承認をすると、時効期間がリセットされて振り出しに戻ったり(時効の完成。民法152条)、既に時効が完成していても信義則上援用できなかったりといった悪影響が生じてしまうおそれがあります。
突然債権の請求を受けたり、債権譲渡を通知されたりすると、冷静な対応は難しいでしょう。一人で判断せずに、弁護士などの専門家に相談するのが適切です。

最後に、2020年の民法改正による債権譲渡に関する変更点を解説しておきます。
民法改正では債権譲渡に関する条文に変更があり、企業実務に与える影響も大きいものです。債権譲渡の自由を維持しつつ、債務者の保護を強化した点が特徴です。なお、改正の全体像は、「民法改正(2020年4月施行)」の解説をご覧ください。
改正点の一つ目が、譲渡制限特約に関する効果の変更です。
改正前の民法は、譲渡制限特約に違反した債権譲渡は、譲受人が特約の存在を知り、または重過失により知らなかった場合は無効となる旨を定めていました。これに対し、改正後の民法は、債権譲渡そのものは有効であり、悪意・重過失の譲受人や第三者に対しては、債務者は債務の履行を拒むことができるという仕組みに変更されました。
なお、「譲渡制限特約付債権の譲渡の効力」で詳しく解説しています。
改正点の2つ目は、将来債権の譲渡に関する規定が新設されたことです。
改正前の民法には、将来債権の譲渡について明文の規定はありませんでしたが、裁判例(最高裁平成19年2月15日判決)はその有効性を認めており、改正後は民法466条の6が新設されました。将来債権の譲渡は、将来の売掛金を包括的に譲渡するなどの場面で活用されます。
改正後の将来債権の譲渡に関するルールは、次のように整理できます。
したがって、契約時点で存在しない債権も有効に譲渡でき、契約時点に既に処分の効力が生じ、その後債権が発生した時点で、譲受人が当然に取得することとなります(民法466条の6第2項)。なお、争いを避けるため、譲渡対象の範囲や時期、債権の発生根拠などを契約で明確に特定しておく必要があります。
改正点の3つ目は、異議をとどめない承諾に関するルールの変更です。
改正前の民法では、債務者が債権譲渡について「異議をとどめない承諾」をした場合、譲渡人に対して有する抗弁(契約無効・履行遅滞・相殺などの請求に対する反論のこと)を譲受人には主張できなくなるというルールが定められていました。これを「抗弁の切断」と呼びます。
しかし、抗弁の切断の制度は、債務者の不利益が大きく、安易に債権譲渡を承諾したことで不利な状況に追い込まれる債務者に酷であるという指摘がありました。そのため、2020年民法改正で、このルールは廃止されました。
改正後の民法では、債務者が債権譲渡を承諾しても、譲渡人に対して有する抗弁は維持され、譲受人にも主張できます。そして、債務者が抗弁を放棄するには、その旨の明示の意思表示が必要です。したがって、譲受人の立場では、債権譲渡に伴って債務者に抗弁を放棄させたいと考えるなら、その旨の合意書などを取り交わし、明示的に条項を設ける必要があります。

今回は、債権譲渡の法律知識について、詳しく解説しました。
債権譲渡は、売掛金や貸付金といった債権を、同一性を保ったまま第三者へ移転する仕組みです。資金調達や債権回収の手段として非常に有用ですが、適切な手続きを踏まなければ大きなトラブルに発展しかねません。債権を譲り受けただけでは債務者や第三者に権利を主張できないため、債務者への通知や承諾、確定日付のある証書などにより「対抗要件」を備えることが重要です。
また、債権譲渡を行う際には、譲渡制限特約の有無や二重譲渡のリスク、債権の存否や内容も十分確認しておく必要があります。そして、将来の紛争を回避するには、債権譲渡契約書を作成し、証拠に残しながら進めるのが適切です。
債権譲渡を安全かつ円滑に進めるには、民法上のルールを踏まえ、契約書や通知方法などを適切に整えることが大切です。2020年4月施行の民法改正で、債権譲渡についても変更が加えられたため、判断に迷う場合は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。