
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
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贈与契約とは、自分の財産を無償で相手に与えることを内容とする契約です。
親から子への金銭や不動産の贈与、友人間の贈与など、身近な関係で利用されるほか、相続対策の一環として活用されることもあります。一方で、契約の方法や内容によっては、後から「贈与した・していない」といったトラブルになります。
贈与契約は口頭でも成立しますが、将来の紛争を予防するため、対象となる財産や条件を明確にした贈与契約書を作成することが重要です。無償であるがゆえ、贈与契約は軽視されがちですが、契約書に不備があると紛争に発展するケースも少なくありません。なお、2020年4月施行の民法改正では、贈与契約にも一定の変更が行われています。
今回は、贈与契約の基本的な仕組みや成立要件、贈与契約書の作成方法や締結時の注意点などについて、民法のルールも踏まえ、弁護士が解説します。
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贈与契約とは、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することで成立する契約です。贈与する側を「贈与者」、贈与を受ける側を「受贈者」と呼びます。
民法549条は、贈与契約について次のように定めています。
民法549条(贈与)
当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって、その効力を生ずる。
民法(e-Gov法令検索)
贈与契約の基本について、以下の通り解説します。
贈与契約は、贈与者が財産を無償で与える意思を示し、受贈者が受諾することで成立します。
つまり、贈与者が一方的に「財産をあげる」と考えるだけでは成立せず、受贈者が受け取ることに同意する必要がある点で、当事者双方の意思表示の合致が必要となる「諾成契約」です。
贈与の対象となる「財産」は、現金や自動車などの動産、土地・建物などの不動産のほか、債権や知的財産権といった権利も含まれます。
贈与契約の特徴は、無償で与える点にあります。無償契約なので、受贈者は金銭その他の対価を支払う義務はないのが原則です。一方で、贈与者には財産を移転させる義務が生じます。そのため、通常の贈与契約は、基本的に贈与者のみが給付義務を負う「片務契約」となります。
ただし、受贈者が何らかの義務を負う場合でも、それが贈与される財産の対価ではなければ、「負担付贈与」として贈与契約が成立します。一方で、受贈者の給付が財産を受け取る対価と評価される場合、贈与ではなく売買や交換などに該当します。
贈与契約の成立に、原則として契約書の作成は必要ありません。
贈与契約は、贈与者と受贈者の意思表示の合致により成立する「諾成契約」とされており、口頭の合意でも成立させることができます。ただし、書面によらない贈与は、履行の終わった部分を除き、各当事者が解除することができます(民法550条)。
例えば、口頭で「来月100万円を贈与する」「受け取る」と約束すれば贈与契約は成立するものの、まだ金銭を渡していない場合、いずれの当事者からも解除が可能です。一方で、既に100万円の授受が終了した後では、解除することはできません。
これに対し、書面による贈与は、一方的に解除することができません。したがって、贈与契約は口頭でも成立しますが、後になって贈与の有無や対象財産、条件などについて争いが生じるおそれがあるため、紛争予防の観点から、贈与契約書を作成しておくことが重要です。
贈与契約には、通常の贈与のほか、他人物贈与、定期贈与、負担付贈与、死因贈与などの種類があります。それぞれ契約の内容や効力が異なるため、違いを理解しておくことが大切です。
通常の贈与とは、贈与者が自己の財産を無償で受贈者に与える一般的な贈与です。例えば、祖父から孫へ現金100万円を無償で与えるケースなどが該当します。前述の通り、当事者間で贈与と受諾の意思表示が合致すれば、贈与契約が成立します。
他人物贈与とは、契約時点では贈与者が所有していない財産を目的とする贈与です。
民法549条は、贈与の対象を「ある財産」と規定しており、その財産が契約時点で贈与者の所有に属することは要件とされません。そのため、他人の財産について贈与契約を締結することも可能です。この場合、贈与者は、その物を取得し、受贈者に移転する義務を負います(なお、「取得できた場合には贈与する」という条件付きの契約とすることも可能で、この場合は取得できなかったとしても債務不履行責任を負わないこととなります)。
したがって、他人物贈与を行う場合、贈与者が目的財産を取得する義務を負うのか、取得できた場合にのみ贈与するのかを契約書で明確にしておくことが重要です。
定期贈与とは、一定の時期ごとに継続して財産を贈与する契約です(民法552条)。
例えば、「今後10年間、毎年100万円を贈与する」といった契約です。定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者が死亡したときは、その効力を失うと定められています。したがって、毎年一定額を贈与する契約を締結していても、期間中に贈与者または受贈者が死亡した場合、原則として、その後の定期贈与は行われません。
なお、毎年一定額を贈与する場合、贈与税との関係にも注意が必要です。税務上、1年間の贈与額が110万円以内に収まる場合には贈与税が非課税となりますが、当初から複数年にわたって贈与する予定である場合などは贈与総額が一括で評価され、課税対象とされるリスクがあります。
負担付贈与とは、受贈者に一定の義務を負担させることを条件に行う贈与です(民法553条)。
例えば、「自宅を贈与する代わりに、今後の介護をしてもらう」「土地を贈与する代わりに、一定の債務を引き受けてもらう」といったケースがあります。もっとも、受贈者が負う義務は、贈与する財産の「対価」ではありません(対価関係にある場合は売買や交換と評価されます)。
負担付贈与には、その性質に反しない限り、双務契約の規定が準用されます。また、民法551条2項により、贈与者は受贈者が負う負担の限度において、売主と同様の担保責任を負います。そのため、贈与された財産が契約内容に適合しない場合、負担の範囲内で、履行の追完や負担の減額、契約の解除、損害賠償といった請求が可能です(詳しくは「契約不適合責任」参照)。
また、受贈者が約束した負担を履行しない場合、贈与者がその履行を求めたり、契約を解除したりすることも考えられます。そのため、負担付贈与では、贈与契約書に、受贈者が負う義務の具体的な内容や履行時期などを明確に定めることが重要です。
死因贈与とは、贈与者が死亡したことによって効力が生じる贈与契約です(民法554条)。
例えば、「自分が死亡したら、この土地をあなたに贈与する」と贈与者と受贈者が合意するケースです。死因贈与には、その性質に反しない限り、遺贈の規定が準用されます。ただし、遺贈は遺言者の一方的な意思表示によって行う「単独行為」であるのに対し、死因贈与は当事者間の合意で成立する「契約」です。そのため、贈与の意思だけでなく、受諾の意思が必要です。また、遺言に求められる形式面の要件も、死因贈与には要求されません。
死因贈与は相続や遺留分などにも関係するため、特に不動産などの重要な財産を対象とする場合には、契約内容を明確にした書面を作成しておくことが重要です。

次に、贈与契約書に記載すべき事項や書き方を、テンプレートをもとに解説します。
贈与契約は口頭でも成立しますが、贈与契約書を作成しておくことには多くのメリットがあります。適切な贈与契約書を作れば、契約内容を明確にし、後日のトラブルを防ぎやすくなります。また、税務申告や不動産の名義変更などの場面でも、証拠として贈与契約書が役立ちます。
贈与契約書には、法律上決められた書式があるわけではありませんが、贈与の事実や契約内容を明確にするためには、次のような事項を記載しておくとよいでしょう。
贈与の対象となる財産を明確に特定するため、金銭であれば金額、不動産であれば登記事項に沿った所在や地番など、株式であれば会社名、株式の種類、株式数などを記載します。あわせて、贈与者・受贈者それぞれの氏名と住所を記載し、氏名の末尾に押印を行います。認印でも可能ですが、実印を押して印鑑証明を添付することで、証拠としての価値を上げることができます。
一般的な贈与契約書は、次のような形式で作成できます。以下では、よくある例として、個人間の金銭贈与、親子間の不動産贈与、株式贈与の3パターンを紹介します。
贈与契約書
贈与者◯◯◯◯(以下「甲」という)と、受贈者◯◯◯◯(以下「乙」という)は、以下の通り、贈与契約を締結した。
第1条(贈与の意思表示)
甲は乙に対し、金◯◯万円を無償で贈与することを約し、乙はこれを承諾した。
第2条(引渡し方法及び時期)
甲は、前条の現金を20XX年XX月XX日までに、乙の指定する金融機関口座へ振込送金するものとする(振込手数料は甲負担)。
以上、本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲・乙各自が記名押印の上、各1通を保有する。
【作成日・署名押印】
贈与契約書
贈与者◯◯◯◯(以下「甲」という)と、受贈者◯◯◯◯(以下「乙」という)は、下記不動産(以下「本件不動産」という)の贈与について、以下の通り合意した。
第1条(贈与の意思表示)
甲は乙に対し、本件不動産を無償で贈与することを約し、乙はこれを承諾した。
【本件不動産】
(1)土地
所在:東京都□□区□□町□□丁目□□番□□号
地目:宅地/地積:◯◯◯.◯㎡
(2)建物
所在:同上
種類:居宅/構造:木造、2階建/床面積:◯◯◯.◯㎡
第2条(引渡し及び登記手続き)
甲は、20XX年XX月XX日までに、本件不動産の現状引渡し及び所有権移転登記手続きを完了するものとする。
第3条(費用負担)
登録免許税、司法書士報酬、その他本件不動産に関する登記手続き費用は、原則として乙の負担とする。
第4条(税金その他)
固定資産税その他公租公課は、引渡し日を基準に日割りで精算し、引渡し日前の分は甲、以降の分は乙が負担する。
以上、本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲・乙各自が記名押印の上、各1通を保有する。
【作成日・署名押印】
固定資産税等の税金の負担についても明記してください。通常は、引渡日を境に分割することが多いです。不動産贈与契約書では、物件の詳細な記載が不可欠なので、登記事項証明書の内容に基づき、土地や建物の情報について正確に転記してください。
引渡し日と所有権移転登記の期限を明確に定めることは、後の登記手続きでもトラブルを防ぐことにつながります。
贈与契約書
贈与者◯◯(以下「甲」という)と、受贈者◯◯(以下「乙」という)は、下記株式(以下「本件株式」という)の贈与について、以下の通り合意した。
第1条(贈与の意思表示)
甲は乙に対し、株式会社◯◯の普通株式◯◯株を無償で贈与する。
第2条(本件株式の内容)
本件株式は、当該会社の定款に基づく普通株式であり、株券発行の有無にかかわらず、当該会社の議決権、配当請求権その他株主としての一切の権利が付随するものとする。なお、発行済株式総数、株主名簿記載事項等の詳細は、別紙「株式明細書」に記載する。
第3条(株式の移転方法及び手続き)
甲は、乙に対し、本件株式の贈与に伴う株式名義書換手続を速やかに実施し、完了証明書又は登記事項証明書を交付するものとする。株式の名義書換に必要な書類、手数料その他一切の費用は、原則として乙の負担とする。
第4条(表明保証)
甲は、本件株式が第三者の権利行使の対象となっていないこと、及び、株式譲渡について法令及び定款の制限が存在しないこと、本件株式の譲渡に必要な内部承認その他の手続きを完了していることを表明する。
以上、本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲・乙各自が記名押印の上、各1通を保有する。
【作成日・署名押印】
なお、株式会社は株主に関する所定の事項を株主名簿に記録する制度となっています。 また、譲渡制限株式の場合、会社の承認が必要となるため、対象会社の定款や株式の内容をあらかじめ確認することが重要です。株券発行会社や振替株式などでは必要な手続も異なるため、実際の契約書は対象株式の性質に応じて調整してください。
贈与契約書を作成する際には、贈与する財産を明確に特定することが最重要です。
曖昧な記載では、後から対象財産をめぐって争いになります。特に、不動産などの高額の財産の贈与であったり、相続に関連する問題があったりすると、深刻なトラブルになります。また、不動産を贈与する場合は、契約書の作成だけでなく、所有権移転登記の手続きも必要です。登記に必要な書類や費用についても事前に確認しておきましょう。
さらに、親から子などへの贈与は、将来の相続にも影響する可能性があります。特定の相続人に対する贈与が特別受益に該当したり、一定の贈与が遺留分の計算に影響したりする場合があるため、相続人間の公平や将来の相続トラブルにも配慮して契約内容を検討することが大切です。
なお、上記のテンプレートは一般的な例にすぎないため、負担付贈与や死因贈与、高額な不動産・非上場株式の贈与などの複雑なケースでは、個別の事情に応じた条項が必要となります。重要な財産を贈与する場合ほど、弁護士などの専門家に契約内容を確認してもらうべきです。

2020年4月施行の民法改正では、贈与契約に関連する規定にも見直しがありました。以下では、改正のポイントと、実務上の影響について解説します。
なお、改正の全体像は「民法改正(2020年4月施行)」を参照してください。
民法549条では、贈与の対象について、改正前は「自己の財産」とされていた点が、法改正により「ある財産」へと表現が変更されました。改正前も、実務上は他人物贈与が許容されていたため、誤解が生じないようにすることが改正の目的で、運用面に大きな変更はありません。
書面によらない贈与は、履行の終了まで、各当事者は自由に解除できます。このことを定めた民法550条は、改正前は「撤回」と定めていましたが、法改正により「解除」に統一されました。書面での贈与契約は、原則として一方的な解除が認められないため、口頭契約の解除権について明確なルールが示され、贈与者・受贈者の権利義務が把握しやすくなりました。
無償の贈与は、「贈与の目的として特定した時の状態」で引き渡せば足りるとされています。贈与は無償であるため、目的物に瑕疵があっても贈与者が責任を負うことはありません。ただし、負担付贈与の場合、その負担の限度で担保責任が生じます。
2020年4月施行の民法改正では、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められました。これにより、負担付贈与の贈与者の責任も、贈与契約の内容に適合しているかどうかが判断基準とされ、契約書の作成がますます重要となります。
最後に、贈与契約についてのよくある質問に回答しておきます。
贈与契約書のうち、不動産の贈与以外については印紙税がかかりません。一方、不動産の贈与の場合、一律200円の収入印紙が必要となります。なお、ローンを引き受けるなどの負担付贈与の場合には、その金額に応じた印紙代が必要となります。
未成年者の法律行為には原則として法定代理人の同意が必要です。
ただし、通常の贈与を受けることは、未成年者にとって「単に権利を得る法律行為」に該当するため、法定代理人の同意がなくても未成年者が単独で受諾でき、後から取り消されることはありません(民法5条1項但書)。
これに対し、負担付贈与の場合、受贈者が義務を負うことになるため、未成年者の場合には法定代理人の同意が必要です。また、不動産の登記手続きや銀行口座の開設など、贈与に伴う各種手続きでは親権者の関与が事実上必要となることが多いです。
実務的には、祖父母から未成年の孫への贈与などでも、親権者などの法定代理人が契約に関与し、贈与契約書にも法定代理人として署名押印しておくことが望ましいです。
贈与契約に基づいて財産を受け取った受贈者には、贈与税が課されます。
贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、それ以下の額の贈与であれば、非課税となります。具体的には、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた額に対して、贈与税が課税されます(国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」)
なお、同一の当事者間で定期的に同額の贈与を繰り返すと、贈与総額が一括して評価されて課税されるおそれがあるので注意を要します。

今回は、贈与契約について詳しく解説しました。
贈与契約は、贈与者が自己の財産を無償で相手に与える意思を示し、受贈者がこれを受け入れることで成立します。口頭でも成立しますが、贈与の事実や内容を明確にし、トラブルを防ぐには、贈与契約書を作成しておくことが望ましいです。書面がない贈与契約は容易に解除されるリスクがあるため、相続対策などの重要な贈与ほど、書面化しておく必要があります。
贈与契約書を作成する際は、贈与する財産、引渡しの時期や方法などを具体的に記載することが重要です。また、不動産をはじめとした高額な財産を贈与する場合、登記手続や贈与税など、契約書以外の手続きについても注意が必要となります。
贈与契約について疑問があるときは、弁護士や税理士などの専門家に相談するのが適切です。特に、贈与の対象となる財産が高額であるほど、慎重に対応してください。
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