
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
少年犯罪の被害者やその家族は、他の刑事事件にも増して不安を感じるでしょう。
「加害者が未成年だと慰謝料を請求できないのでは」と心配になったり、犯人が「少年」であることで手厚い保護を受け、「被害者側の権利が不当に害されている」と感じる人も多いです。当事務所にも、次のような相談がよく寄せられています。
こうした少年犯罪の被害に遭ったとき、相手が「少年」であっても、慰謝料をはじめとした損害賠償を請求することができます。また、示談で解決を図るべきケースも少なくありません。確かに、法制度上は少年の保護が整備されています。しかし、被害者側の権利をしっかり主張することは、少年による犯罪被害においても非常に重要なことです。
今回は、少年犯罪の被害者が取るべき権利保護の手続きと、示談や損害賠償請求のポイントについて弁護士が解説します。
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まず、少年事件(少年犯罪)における被害者の扱いについて、基本を解説します。
少年を被疑者とする刑事事件を、「少年事件(少年犯罪)」といいます。「少年」とは20歳未満の者のことですが、18歳以上の少年は、民法の成年年齢の引き下げなどに伴い、17歳未満の少年とは区別して扱われます。少年事件(少年犯罪)のルールは「少年法」に基づきます。
少年事件(少年犯罪)に適用される少年法の根底には、「保護優先主義」という特別な考え方があります。少年は未成熟であり、発展途上なので、更生の機会を与えることでやり直しできる可能性が高いと考え、犯罪に対しても刑罰より更生や教育の措置を優先するという考え方です。
この保護優先主義の考え方から、少年事件(少年犯罪)には次の特徴があります。
このような扱いにより、少年への保護という側面がある一方で、被害者側で取りうる対応が通常の成年犯罪よりも限定されてしまうことがあります。その結果、「少年が保護されすぎている」「少年犯罪の犠牲になった」といった反発が生まれるのです。
受けた犯罪被害は、加害者が少年だからといって決して軽くはなりません。
少年事件(少年犯罪)だからという理由だけで、被害者の権利が害されるのは妥当ではありません。加害者が少年でも、慰謝料請求などの被害者の権利は守られるべきです。少年の保護が必要だとしても、犯罪により精神的、身体的な苦痛を受けた被害者こそ、真っ先に保護されるべきです。
したがって、いかに少年の保護が大切だとしても、被害者側の権利は通常の事件と同様に行使することができます。少年事件(少年犯罪)の特殊性を理解しながら、一方で被害者として取り得る適切な手段を選択して、被害回復を図ることが重要です。
少年事件(少年犯罪)でも、慰謝料を請求することができます。
少年事件(少年犯罪)といえど、被害を受ける人にとっては成年による犯罪と変わりません。そのため、少年の処遇が大切だとしても、受けた被害は回復すべきです。犯罪被害者側の被害回復は、慰謝料その他の損害賠償請求が主な手段となります。
慰謝料請求が認められるには、少年事件(少年犯罪)による加害が不法行為(民法709条)に該当し、これによって被害者が精神的な苦痛を受けたことが必要となります。
例えば、慰謝料請求の対象となるような少年事件(少年犯罪)は、次の通りです。
少年事件(少年犯罪)でも、慰謝料などの損害賠償を請求するには、一般の不法行為の要件を満たさなければなりません。つまり、①故意または過失、②権利または法律上保護される利益の侵害、③損害の発生、④因果関係という4つの要件です。

慰謝料を請求するには、被害の実態を裏付ける証拠の収集が不可欠です。例えば、以下の証拠が役に立ちます。
慰謝料請求は、訴訟を通じて行う場合と示談交渉によって解決できる場合があります。示談交渉で終わらせるときは、主張を明確にして、適正な慰謝料額を請求することが重要です。相手から提示された額が相場より安いときは、和解に安易に応じないよう注意してください。
一方で、少年事件(少年犯罪)では、責任能力が問題となり得ます。
「未成年だから」「少年だから」という理由だけで罪がなくなるわけではないものの、加害者の年齢や判断能力によっては、「責任能力がない」と評価される可能性があります。
民法712条では、自己の行為の責任を弁識できないときは、その行為についての賠償責任を負わないことが定められています。そのため、加害者となった少年が、非行事実を認識し、判断することのできない年齢や知能の場合には責任能力がなく、賠償責任が認められません。
民法712条(責任能力)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
民法(e-Gov法令検索)
したがって、加害者となった少年が、事件当時、どの程度の判断能力を有していたかによって不法行為の責任の程度は変わり、損害額が増減することとなります。また、責任能力が欠けると判断されれば賠償請求は認められません。
仮に責任能力があっても、未成年者の多くは十分な資力がありません。
まだ学生で親に養ってもらっていたり、仕事をしていても収入が少なかったりすることもあります。そのため、損害賠償は現実的に難しく、被害者の保護が不十分となるおそれがあります。
賠償請求によって被害回復を実現するには、加害者である少年本人への請求と合わせて、保護者である両親への請求も検討してください。民法714条では、加害者である少年が責任無能力者のとき、両親が監督義務を負うことが定められています。また、監督懈怠の程度が深刻なケースでは、両親自体の不法行為責任を認めた例も存在します。
民法714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
1. 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2. 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。
民法(e-Gov法令検索)

次に、少年事件(少年犯罪)の示談について解説します。
示談とは、裁判に持ち込まず、被害者と加害者の間で話し合いで解決することです。示談では、一定の示談金を支払う代わりに犯罪被害について許し、処罰を求めないことを約束します。成年の刑事事件と同じく、加害者となった少年側から示談を提案するケースがあります。示談をすればスムーズに解決できる反面、少年事件(少年犯罪)の特殊性を理解しておかなければなりません。
少年事件(少年犯罪)の示談は、次のように進めてください。
大切なのは、感情的にならず、事実に基づいて情報を整理し、証拠を集めておくことです。事件の状況を客観的に明らかにできれば、示談交渉の進め方や示談金の相場などについて弁護士のアドバイスを受け、戦略的に進めることができます。
加害者の少年やその弁護人から提案されることで示談交渉がスタートします。
重大事件では、まずは相手からの接触を待つのがよいでしょう。被害者側から示談の提案をしたいときは、捜査機関(警察や検察)に問い合わせ、連絡先を教えてもらう必要があります。再発防止や精神的ストレスの軽減のため、被害者側では弁護士を窓口にして示談交渉を任せるのがおすすめです。
成年の刑事事件では、示談すれば不起訴の可能性が高まりますが、少年事件(少年犯罪)は家庭裁判所に全件送致されるのが原則です。とはいえ、反省しているか、更生可能かといった判断において、示談の成否は重要な考慮要素となります。
初回の交渉では、事件や被害の状況を確認してください。
加害者となった少年が罪を認める場合、謝罪を受けるのが適切です。その上で、被害者が希望する慰謝料額やその他の条件(守秘義務・接近禁止など)を伝えましょう。
不利な条件に安易に同意しないためにも、証拠を示して被害を証明するとともに、相手が提示してきた条件や金額が相場に照らして妥当かどうかをよく吟味してください。一人で判断するのが難しいときは、弁護士のアドバイスを受けてください。
双方が合意に至ったときは、その内容を示談書にまとめます。
示談書を作成して証拠化しておくことで、後の紛争を防止できます。被害回復に十分な程度の示談金が提示されればよいですが、少年や親の状況によっては提案に納得がいかないこともあるでしょう。示談交渉が決裂すれば、その後は被害者から損害賠償請求の裁判を起こすことで被害回復を図ります。
示談するか、それとも訴訟に進むかは、非常に難しい決断を迫られます。
示談交渉は、迅速に解決できる良い手段ですが、相手の対応によっては納得のいく解決にならないことがあります。特に、加害者となった少年に反省の色が見られなかったり、十分な資力がなく被害回復が難しかったりといったケースでは、示談に応じないことを選択する手もあります。
以下のような示談のメリット・デメリットを比較して検討してください。
【示談のメリット】
【示談のデメリット】
示談のデメリットが大きいときは安易に応じず、決裂させて訴訟にすべきです。訴訟であれば、裁判所による公平で中立な判断が得られるため、納得感が高いでしょう。強引な示談を押し付けられるリスクもなく、法的な立場から公正な判断を下してもらえます。
最終的には、被害者が受けた被害の程度、証拠の有無、今後の生活への影響などを総合的に考慮して決めるべきであり、弁護士のアドバイスを参考にしてください。

最後に、少年事件(少年犯罪)の被害者が理解しておくべき適切な対応を解説します。
少年の保護や更生に焦点が当たりがちである一方、被害者を支援する制度や手続きも整備されているため、少年事件(少年犯罪)に精通した経験豊富な弁護士への相談が役立ちます。被害者側でも弁護士を代理人とすれば、少年審判の傍聴や意見陳述の手続きにも同席してもらえます。
少年事件(少年犯罪)の被害者や遺族となったとき、「事件の内容を詳しく知りたい」という要望があるでしょう。少年のプライバシーへの配慮を要するとはいえ、被害者やその遺族は、少年審判の開始決定があったときには、事件記録を閲覧・謄写することができます。少年法では、以下の者には、少年事件の記録を閲覧・謄写する権限があることが定められています(少年法5条の2第1項)。
なお、少年事件(少年犯罪)では、事件記録は「法律記録」と「社会記録」に分けられます。
少年保護の観点から、閲覧・謄写の対象は「法律記録」のみとされ、「社会記録」の閲覧・謄写は認められていません。
少年事件(少年犯罪)の被害者が希望するときは、家庭裁判所で行われる少年審判で心情や意見を述べる機会を得ることができます。心情・意見の陳述は、少年審判の期日でもできますし、期日外で裁判官や家庭裁判所調査官に伝えることも可能です。
そして、被害者が希望する場合、家庭裁判所は原則としてその意見を聴取しなければなりません。被害者の述べることができる心情・意見は「被害に関する心情その他の事件に関する意見」(少年法9条の2)というように幅広く認められています。
意見陳述を有効活用すべきケースは、例えば以下の通りです。
心情・意見の陳述をすることに被害者側のデメリットはないため、手続きへの参加を希望するときには積極的に検討するようにしてください。
少年審判は原則非公開ですが、事件の種類によって被害者や遺族であれば傍聴することができます。少年審判の傍聴は、被害者や遺族の申出により「少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるとき」に認められます(少年法22条の4第1項)。
傍聴が認められる対象事件は、次の通りです。
傍聴を申し出るとき、あわせて被害者代理人の付添を求めることで、弁護士の同席が認められます。ただし、少年への影響に配慮が必要なときは、遮蔽措置が講じられることがあります。
少年事件(少年犯罪)の被害者や遺族は、少年審判の状況について説明を受けたり、少年審判の結果の通知を受けたりすることができます。
審判状況や結果の通知は、被害者や遺族の申出により、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときに、家庭裁判所から説明が行われます。ただし、申出は少年事件の終局決定が確定してから3年以内にする必要があるので、できるだけ早めに対応するのが重要です。
あわせて、少年審判において少年が保護処分を受けたときは、少年院における処遇状況、保護観察中の処遇状況について、説明・通知をしてもらうことができます。

今回は、少年事件(少年犯罪)の被害者側の対応、特に、慰謝料請求や示談について解説しました。加害者が少年でも、刑事事件で被害回復をする必要性は成年の犯罪と変わりません。
被害者が行うべき示談や損害賠償請求は、弁護士に任せることができます。弁護士を窓口とすれば、加害者となった少年やその家族と直接やり取りをする必要はなく、安心して進められます。また、少年事件に特有の法的な手続きを利用したり、裁判例における相場に基づいて解決したりといったポイントを押さえることで、不利益のない解決を図ることができます。
少年への配慮と保護が重視される少年事件(少年犯罪)こそ、被害者側でも適切に対応し、十分な被害回復を図らなければなりません。
加害者が少年だったからといって、被害者側が我慢をする必要はありません。納得行く解決を実現するために、ぜひ一度弁護士に相談してください。
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