人事労務

私生活上の非行を理由に懲戒解雇することはできる?不当解雇?

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労働者を雇用しているとき、会社にいない時間、すなわち、私生活(プライベート)で問題行為を起こしてしまった社員に対して、どのような取扱いをしたらよいか悩むことがあります。

会社と労働者との間の雇用関係は、あくまでも雇用契約書に定められた始業時刻から終業時刻までの間拘束できるに過ぎません。しかし、私生活(プライベート)で大きな問題行為を起こしてしまったとき、その社員の非行が、会社の業務、会社の名誉、信用にも事実上大きな影響を与えることがあります。

労働者が、私生活において犯罪行為を行ったとき、特に、痴漢、公然わいせつ罪などの性犯罪や、飲酒運転などの社会的に問題視される犯罪で逮捕されたとき、その事実が明らかになったら、会社の信用を大きく傷つけます。懲戒解雇をし、すぐにでも会社から追い出したいと思うことでしょう。

そこで今回は、労働者が私生活(プライベート)で起こした非行を理由に、懲戒解雇をすることができるかどうか、不当解雇とならないための方法などについて、弁護士が解説します。

「人事労務」弁護士解説まとめ

懲戒処分とは

懲戒処分とは、社員の企業秩序違反行為に対して、会社が行う制裁の意味を持つ不利益処分です。

社員が非違行為を行ったとき、会社は懲戒処分を行うことで、その社員が二度と同様の行為をしないよう注意指導し、合わせて、非違行為を行ったら懲戒処分となることを示すことにより、他の社員もまた同様の行為を行わないよう戒める効果を生みます。

懲戒処分の種類

懲戒処分には、その処分の対象となる企業秩序違反行為の重さによって、軽度なものから重度なものまであり、就業規則などに定められています。重い順に、会社を退職することを前提とする懲戒処分である懲戒解雇、諭旨解雇、諭旨退職、中程度の出勤停止、減給、降格、軽度の譴責、戒告、訓戒といった処分があります。

  • 譴責、戒告、訓戒
    :譴責、戒告、訓戒は、労働者の非違行為に対して将来を戒める処分です。譴責処分では、合わせて始末書の提出を命じることとされているのが一般的です。
  • 減給
    :減給は、企業秩序違反に対する制裁として賃金額から一定額を差し引くことをいいます。減給について、労働基準法91条で「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とされています。
  • 出勤停止
    :出勤停止は、服務規律違反に対する制裁として、労働者の就労を一定期間禁止する処分です。出勤停止期間中は賃金が支給されず、禁足年数にも通算されないのが通常です。
  • 降格
    :降格は、人事制度における地位、役職を下げることをいいます。
  • 諭旨解雇、諭旨退職
    :諭旨解雇、諭旨退職は、懲戒解雇の一歩手前の懲戒処分であり、自主的な退職を勧奨した上で、退職しない場合には解雇とするといった処分のことです。
  • 懲戒解雇
    :懲戒解雇は最も厳しい懲戒処分であり、解雇予告手当の支払がなく、退職金の減額、不支給などの処分と合わせてなされることが多い解雇処分です。

つまり、就業規則を作成するとき、懲戒処分の制度を会社に設けるのであれば、就業規則にその旨を定めておかなければならないということです。就業規則に定めるべきことは、懲戒処分の要件(どのようなときに、懲戒処分を行うことができるか)と、懲戒処分の効果(どのような懲戒処分を選択することができるか)についてです。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、労働基準法89条により就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければならず、その就業規則では、「表彰及び制裁」に関する事項が相対的必要的記載事項とされています。

就業規則の作成または変更を行うときには、会社は、労働者の過半数で組織された労働組合もしくは過半数代表者の意見を聞かなければなりません(意見を聞けば足り、同意を得る必要まではありません)。

また、作成、届出した就業規則は、労働者に周知させることが必要です。

懲戒処分の事由

懲戒処分の対象となる事由、すなわち、どのような場合に懲戒処分を課すことができるかは、就業規則に列挙されていることが通常です。そして、労働者保護の観点から、この就業規則における懲戒処分事由の列挙は、「限定列挙」であると解されています。

つまり、就業規則に列挙された事由にあてはまらなければ、懲戒処分にすることはできないという意味です。

また、就業規則に定めた懲戒処分の事由には「その他、社員としてふさわしくない行為」「その他、企業秩序違反と会社が認めた行為」などのように一般的かつ抽象的な条項が置かれることがありますが、このような包括的な表現をする条項は、限定解釈される傾向にあります。

就業規則によく定められる懲戒処分の事由には、次のものがあります。

  • 経歴詐称
    :採用時に経歴を詐称し、かつ、詐称がなければ採用しなかったであろうといえるほどの重大な詐称である場合には、懲戒処分の事由となります。
  • 職務懈怠
    :職務を適切に行わないことは、懲戒処分の事由となります。例えば、勤務態度が不良であったり、早退、遅刻、無断欠勤を繰り返すような勤怠不良であったりといった事情です。
  • 業務命令違反
    :会社は、労働契約に基づき、社員に対して業務命令を行う権限があり、社員はこれに従う義務があります。そのため、業務命令に違反することは、懲戒処分の事由となります。
  • 業務妨害
    :会社の業務を妨害したり、会社に損失を被らせるような行為、会社の利益と相反する行為をすることは、懲戒処分の事由となります。
  • 職場規律違反
    :職場環境の安全、快適を保つことは会社の義務です。そのため、会社は施設管理権に基づき、職場の規律を定めます。そのため、職場規律に違反することは、懲戒処分の事由となります。

私生活上の非行と懲戒処分

会社が雇用契約を締結し、給与を支払うことによって拘束できるのは、あくまでも業務時間に限ります。そのため、会社による業務命令権限といえども、社員の私生活上の行為には及びません。そして、懲戒権についても、社員の私生活上の言動には及ばないことが原則です。

しかし一方で、社員の私生活上の言動といえども、企業の社会的評価を傷つけるなど、企業秩序維持のためには懲戒処分の対象とすることが必要な場合があります。

そこで、会社側の立場で、どのような私生活上の非行であれば懲戒解雇をはじめとした懲戒処分の対象とすることができるのか、その判断基準について弁護士が解説します。

裁判例における判断基準

そのため、社員の私生活上の言動のすべてが懲戒処分の対象となるわけではないですが、企業秩序の維持に影響する言動については、懲戒処分の対象とすることができます。このことは、次のように裁判例でも示されています。

関西電力事件(最高裁昭和58年9月8日判決)

労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るために、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種の制裁罰である懲戒を課することができるものであるところ、右企業秩序は、通常、労働者の職場内又は職場遂行に関係のある行為を規制することにより維持し得るのであるが、職場外でされた職務遂行に関係のない労働者の行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係を有するものもあるのであるから、使用者は、企業秩序の維持確保のために、そのような行為をも規制の対象とし、これを理由として労働者に懲戒を課することも許されるのであり、右のような場合を除き、労働者は、その職場外における職務遂行に関係のない行為について、使用者による規制を受けるべきいわれはないものと解するのが相当である。

そして、私生活上の言動のうち、どの程度のものが懲戒処分の対象となるかは、その言動の程度や企業秩序への影響の大きさによって決定されます。

具体的な業務阻外、取引上の不利益が発生する場合には企業秩序への悪影響が明らかですが、企業の信用低下などは必ずしも目に見えてわかるものばかりではありません。裁判所における判断基準は、主に次のような点を要件としています。

  • 当該行為の性質、情状
  • 会社の事業の種類、態様、規模
  • 会社の経済会に占める地位、経営方針
  • その従業員の会社における地位、職種

日本鋼管事件(最高裁昭和49年3月15日判決

従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく怪我したというためには、必ずしも具体的な業務阻外の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類、態様、規模、会社の経済会に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない。

【ケース1】飲酒運転を理由とする懲戒解雇

飲酒運転は社会的非難が強くなって、厳罰化が進んでいます。飲酒運転は、スピード違反や無免許運転、ひき逃げなど、その他の重大な交通ルール違反にもつながりかねません。

そのため、社員が、私生活上といえども、飲酒運転をしたことが発覚すれば、企業の名誉や信用を失墜させる結果、顧客や取引関係に悪影響を与えるおそれのとても強いといえます。したがって、懲戒事由にあたるケースもあると考えられます。

加えて、バス会社、タクシー会社の運転手など、運転を必須とする職種の場合、特に、会社の名誉、信用を失墜させる程度が大きく、懲戒解雇など重大な処分を検討することとなります。

【ケース2】私用メールを理由とする懲戒解雇

労働者の公私が入り混じった労働問題が、業務時間中の私用メールの問題です。就業時間中は、労働者は会社の職務に専念する義務がありますが、一方で、生活に必要な程度の私用メール、私用電話など、一定の私的行為まで禁止することはできません。

そのため、業務時間中の私用メールを問題視して懲戒処分とするとしても、あまりに程度がひどい場合に、譴責、戒告などの軽度な懲戒処分に限定して行われるべきものです。

ただし、単なる私用メールの程度を超えて、取引先に対して会社を誹謗中傷するメールを送付するなど、労働者の誠実義務の観点から問題ある行為を行った場合には、これに対して減給、降格などより強度の懲戒処分を検討することとなります。

【ケース3】犯罪行為を理由とする懲戒解雇

犯罪行為を行った社員を雇用しているということは、たとえそれが社員の私生活上の行為であるといえども、会社の名誉、信用を著しく傷つけることは明らかです。特に、重大な犯罪であったり、ニュース報道で勤務する会社名が報道されたりといった場合には影響が顕著です。

ただし、私生活上の犯罪行為であってもなお、懲戒解雇に相当するといえるためには、重い刑事罰を受けたなど、事案が重大である必要があります。

この点において、深夜に他人の住居に新融資、住居侵入罪に問われて罰金刑を受けた社員に対して行った懲戒解雇を無効と判断した裁判例に、横浜ゴム事件(最高裁昭和45年7月28日判決)があります。

横浜ゴム事件(最高裁昭和45年7月28日判決)

右賞罰規則の規定の趣旨とするところに照らして考えるに、問題となるXの右行為は、会社の組織、業務等に関係のないいわば私生活の範囲内で行われたものであること、Xの受けた刑罰が罰金2500円の程度に止まったこと、Y会社におけるXの職務上の地位も蒸熱作業担当の工員ということで指導的なものでないことなど原判示の諸事情を勘案すれば、Xの右行為が、Y会社の体面を著しく怪我したとまで評価するのは、当たらないというのほかはない。

私生活上の非行に対し、懲戒処分とするための手順

以上のとおり、私生活上の非行に対して、懲戒処分の対象とできる可能性はあるものの、きちんとした準備のもとに行わなければ、労働者側から不当であると争われ、会社側が敗訴してしまうおそれがあります。

私生活上の非行に対して行った懲戒解雇が、解雇権を濫用した不当解雇であると判断されると、その解雇は違法、無効となり、問題社員と評価した社員が復職して戻ってきてしまうだけでなく、解雇期間中の賃金(バックペイ)の支払義務を負うこととなります。

そこで最後に、私生活上の非行に対して、適切に懲戒処分を課すための手順について弁護士が解説します。

就業規則を整備する

懲戒権が認められるためには、大前提として、懲戒処分に関して定めた就業規則を整備しておかなければなりません。

そのため、私生活上の非行という懲戒処分の対象としたい行為が起こるよりも前に、適切な就業規則を作成しておくことが必要です。問題としたい行為の時点でふさわしい就業規則の規定が存在しない場合には、後から整備したとしても、遡って適用することはできないので、注意が必要です。

懲戒処分に関する規定には、懲戒処分の対象となる事由を網羅的に列挙します。

懲戒権の濫用とならないよう証拠収集を行う

就業規則に定めがあるときには、実際に起こった私生活上の非行が、その就業規則の文言に該当するかどうか、そして、どの懲戒処分を選択するかを判断します。

このとき、会社の選択した懲戒処分が、懲戒処分にかかる労働者の行為の性質、態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、懲戒権を濫用した不当な処分であるとして懲戒処分が無効となります(労働契約法15条)。

特に、懲戒解雇の場合、退職金が支給されなかったり、失業保険の関係で自己都合退職とされたり、再就職が困難となったりといった労働者側に大きな不利益を与えるため、厳格に判断される傾向にあります。

労働者から労働審判や訴訟を提起され、後に処分が無効となってしまわないよう、特に懲戒解雇処分は慎重に行うべきです。

社員自身の弁明を聴取する

会社側で十分に調査をし、懲戒解雇をはじめとした懲戒処分とすることが相当であると判断した場合であっても、社員自身の弁明を加味せずに決定をすると、後に争いの火種となるおそれがあります。

そこで、懲戒処分に処する前に、社員自身の弁明を聴取する機会を設ける必要があります。

たとえ懲戒処分に値する場合といえども、適正な手続きにのっとって行わなければならないからです。

弁明の機会の付与は、期日を指定して対面で行う方法や、期限を指定して書面の提出を求める方法がありますが、懲戒解雇などの強度の懲戒処分に処する場合には、懲戒委員会の開催などを始めとして、対面による丁寧な手続きを行うことが重要です。

退職金を支給するか検討する

最後に、懲戒解雇により退職をする場合には、退職金を不支給としたり、退職金の一部を減額したりすることができると退職金規程に定めている会社が多くあります。

しかし、裁判例では、退職金の功労報償的な性格から、退職金の不支給が認められるのは、その社員の永年の勤続の功を抹消、減殺するほどの著しく信義に反する行為があるときに限られるものと判断されています。

そのため、懲戒事由が存在する場合でも、退職金をいくら支給するかは、別途検討する必要があります。

「人事労務」は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、従業員の私生活上の非行に対して、懲戒処分に処することができるかどうか、また、懲戒処分による制裁を与える際の方法や注意点について弁護士が解説しました。

私生活上の言動といえども、企業秩序への影響が大きい場合には懲戒処分の対象となり、飲酒運転、痴漢や暴行、窃盗などの犯罪行為、名誉棄損、誹謗中傷行為など、企業の負う損失が甚大な場合には、懲戒解雇など厳しい処分を行う必要があるケースもあります。

しかし一方で、客観的に合理的な理由であると認められなかったり、懲戒処分の程度が社会的に相当な程度を超えていると判断されたりすると、これが無効となるという会社にとって痛手を負うおそれもあります。

社員への懲戒処分をはじめとして、人事労務にお悩みの会社は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

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