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裁判で仮眠時間の労働時間性が認められるとともに、固定残業代制度が無効と判断された事案

担当弁護士

水野博文

  • 相談者
    男性・30代後半・夜間警備員
  • 事案の概要
    仮眠の労働時間性と固定残業代制の有効性が争点になった事案です。相談当初から既に退職を決めていたため、残業代について徹底的に争いたいという意向がありました。十分な資料があり、当初から争点は明らかであったものの、交渉段階で会社が支払いに応じない姿勢を見せていたため、労働審判へ移行し、その後訴訟で控訴審まで争い、850万円の残業代を勝ち取りました。

ご依頼時の状況

依頼者の方は、警備員として夜勤を含む勤務に従事していました。

長時間の拘束が常態化していたものの、勤務中の「仮眠時間」は労働時間として扱われておらず、給与明細を確認しても残業代の計算根拠が不明確であることに疑問を抱いていました。

勤務を続ける中、「実際には十分に休息できる状況でなかったにもかかわらず、仮眠・休憩として処理されるのはおかしいのではないか」「残業代は正しく支払われているのか」と感じるようになりました。しかし、在職中は会社との関係悪化を懸念し、積極的に指摘できずにいました。

その後、退職を決意したことを契機に、自身の残業代の支払いが適切になされているかを確認したいと考え、当事務所に相談しました。タイムカードや勤務表、給与明細などの資料をしっかりと保管しており、未払いがあるなら請求したいという強い意向をお持ちでした。

本件における主な争点

弁護士による対応と解決結果

弁護士による対応

交渉段階で、会社としては支払いを拒絶する意向が明白でした。

労働審判でも解決しないことが予想されたため、訴訟への移行を見据えた補充書面を提出し、合意が難しい場合は速やかに終結できるよう準備を進めました。訴訟では、より詳細な審理がなされ、裁判官が重要と考えている点についての証拠の補充を行いました。

合計6種類もの手当が支払われていたことから、固定残業代の有効要件である「明確区分性」について賃金規程、給与明細、会社が証拠提出した内規などを1つずつ確認した上で、有利な主張を慎重に検討する必要がありました。

休憩時間についての裁判例を前提に、依頼者から聞き取った労働実態を詳細に主張しました。退職済であることから証拠収集が十分でない面があったため、会社に積極的に証拠提出を求め、示された証拠の信用性を吟味しながら主張を組み立てました。

使用者の指揮命令下に置かれている場合には労働基準法上の「労働時間」になるという裁判例の原則に基づいて、他の従業員からの通話記録を分析し、各時間帯ごとに「労働からの解放が保障されていないこと」を説得的に説明しました。

特に、内規が存在するにもかかわらず、実態としては形骸化している点が、裁判所に伝わりやすいように心掛けながら弁護活動を行いました。

解決結果

労働審判では、和解的な意味合いで、200万円の支払いを命じる審判が下されました。

会社が異議申立てを行いましたが、訴訟の第一審でも、各争点について原告の請求が認められ、約700万円の認容判決となりました。被告(会社)が控訴しましたが、控訴審でも第一審を維持する心証が示されました。

最終的には、控訴審で850万円の支払いを前提とする和解が成立しました。

担当弁護士のコメント

労働時間かどうかについて、裁判例の基準はあるものの、それだけでは解決できません。

実際の争いの中では、その基準にどのような事実を当てはめるべきか、証拠を精査しながら検討した上で主張を組み立てることが重要です。一般的な基準は参考にはなるものの、個別のケースでは全ての要素が存在するとは限らないことに注意しなければなりません。

本件のように「仮眠」や「休憩」が労働時間であったと主張する場合、証拠を吟味して労働実態をイメージし、労働者側にとって有利な事情を抽出していく作業が欠かせません。時間はかかりますが、この点を丁寧に行うことが結果につながります。特に、近年の裁判例では、「ワンオペ」の事実が重視される傾向にあると感じています。

固定残業代が争いになるケースは多く、本件のように手当の種類が多い場合は、各手当の性質ごとの分析が必要です。不明な点がある場合は、積極的に会社に説明を求めた上で、手当の名称、金額、支給条件などから、裁判例に照らして対価性を検討することが重要です。