★ ご相談予約をお待ちしております。

まとめサイト・キュレーションメディアの著作権と侵害の違法性について

まとめサイトやキュレーションメディアは、ネット上の多くの情報を編集・分類し、整理してわかりやすく知るのに役立ちます。

しかし一方で、まとめサイトやキュレーションメディアを新しく立ち上げたり、運営したりするとき、注意すべき法律問題が多くあります。特に重要なのは「他サイトのコンテンツを利用する点で著作権侵害の違法がないかどうか」という点です。著作権を侵害することは違法であり、著作権者から損害賠償請求や差止請求を受けるおそれがあります。

自社サイトがまとめサイト、キュレーションメディアである自覚がなくても、独自コンテンツが乏しく他サイトの紹介が主目的であるとき、同じく著作権法上の問題に留意すべきです。

今回は、まとめサイト・キュレーションメディアの運営者が知っておくべき、法的リスクと注意点について、著作権法を中心に解説します。

この解説のポイント
  • まとめサイトやキュレーションメディアが著作権を侵害することがある
  • 「引用」は著作権侵害ではないが、要件は厳格なので違法となることがある
  • 法的リスクのほか、炎上リスクにも注意しなければならない

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)
解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

\相談ご予約受付中です/

法律トラブルの相談は、弁護士が詳しくお聞きします。

ご相談の予約は、お気軽にお問い合わせください。

まとめサイト・キュレーションメディアの法的リスク

リスク

まとめサイトやキュレーションメディアは、インターネット上で、他サイトのコンテンツの情報を収集し、まとめるなどし、利用者にわかりやすく伝えるサイトです。「口コミ」を意味する言葉で「バイラルメディア」と呼ぶこともあります。

まとめサイトやキュレーションメディアのコンテンツの多くは、他サイトで人気があったり、バズったりした情報を集めています。他サイトで公開され、「面白い」「感動する」「楽しい」といった評価や共感を受けた情報のみ集めるので、まとめサイトやキュレーションメディア自体も注目を集め、閲覧数を増やすことができます。

2chまとめサイト、5ちゃんねるまとめサイト、NewspicksやTogetterが有名ですが、他にも大小様々なサイトが存在します(Naverまとめは2020年9月サービス終了)。

まとめサイトやキュレーションメディアを運営する際に、特に気を付けたい法的リスクが著作権の問題です。自社サイトで、コンテンツの盗用による著作権問題が発覚すると、コピー元から損害賠償請求や差止請求を受けるリスクがあります。更に、悪質なケースは、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という刑事罰を受けることもあります(複製権侵害の場合)。

法律問題にならなくても、炎上に発展し、企業の信用が低下するおそれもあります。炎上問題で運営を継続できなくなり、サイトを閉じたり記事を非公開にしたりといったメディアもあり、一時期話題になりました。

「ネット上の公開情報なので著作権はないのでは」「文句を言われたら消せば大丈夫」などと甘く考える人もいますが、ネット上で公開されていたからといって著作権が放棄されたわけではありません。ネット上の情報は、コピペが容易で手軽に複製できるため、著作権が軽視されがちですが、著作権法には損害賠償請求、差止請求という厳しい責任追及の手段が用意されているので、大きな法的リスクとなります。

まとめサイト・キュレーションメディアが著作権侵害となる場合

はてな

次に、まとめサイトやキュレーションメディアが著作権侵害に該当する場合について解説します。

まとめサイトやキュレーションメディアは、その特性上、他サイトのコンテンツを利用するので、著作権侵害となるおそれが常にあります。著作権法は、著作権者の許可なくコンテンツを複製したり、一部を改変してネット上にアップロードしたりといった行為を禁止しています。まとめサイトやキュレーションメディアは、大量の情報を収集、編集しているので、全ての著作権者の同意を得るのは現実的に不可能であることも多いです。

ウェブ上のコンテンツは著作物である

著作権とは、著作物を保護する財産的権利の集合体です。

著作権法では、「著作物」について「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)と定義されます。つまり、「創作性」のある表現が、著作物として保護の対象となります。

まとめサイトやキュレーションメディアが収集の対象とするニュース記事、ウェブ解説といったテキストが著作物に該当するのはもちろん、写真や画像、動画、音楽なども、「創作性」のある限り著作物であり、著作権法によって保護されます。

複製権侵害となるケース

「複製」とはいわゆる「コピー」のことで、著作権者の許諾なく他サイトのコンテンツをコピペしたりパクったりする行為は、複製権侵害(著作権法30条)となります。

他サイトの文章を丸々コピペしてパクる行為だけでなく、一定の改変を加えたり修正、追記したりしても、自サイトで加えた修正に創作性がないときは、複製権侵害です。なお、後述の通り、他サイトのコンテンツをキャッシュとしてコピーする行為は、著作権法侵害にはなりません。

その他の著作権侵害にあたるケース

ネット上のコピーコンテンツの作成は、複製権侵害の他にも、公衆送信権、翻案権、同一性保持権、氏名表示権といった著作権法上の権利侵害となるおそれがあります。著作物にあたるコンテンツを、勝手にインターネット上に流すことは、公衆送信権の侵害にあたります(著作権法23条1項)。

また、わかりやすく再編集したり要約したり、リライトしたりするとき、元のコンテンツの「創作性」のある表現が残っていると、翻案権の侵害(著作権法27条)にあたります。翻案権を侵害するときには、同時に、同一性保持権の侵害(著作権法20条)にもなります。著作権者は、自身の著作物について勝手に改変されないという人格的権利を有するからです。

なお、他サイトのコンテンツを不適切に利用し、自身の著作物であるかように掲載すると、著作者の氏名表示権の侵害(著作権法19条)にあたります。

「引用」であれば著作権侵害ではない

案内する女性

著作権法には、著作権侵害の例外として「引用」のルールがあります。

著作権法の「引用」に該当する場合には、他サイトのコンテンツの利用などであっても、例外的に、著作権侵害にはなりません。

ただし、著作権法の「引用」には、厳格な要件があります。一般に「引用」と聞いて思い浮かべるようなコンテンツの利用は、単なるパクリであって法律上の要件を満たさないことが多いです。例外的に著作物をコピーすることが許される「引用」は、著作権者の利益を不当に侵害しないよう、厳格な要件のもとに限られた範囲で認められているものです。

「引用」の厳しい要件を満たすかどうかの事前検討なく、安易にまとめサイト(キュレーションメディア)の運用を進めれば、大きな法的リスクを負うこととなります。

引用について、著作権法には次のように定められています。

著作権法32条(引用)

1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

2. (略)

著作権法(e-Gov法令検索)

つまり、著作権法にいう「引用」として例外的に著作権侵害にあたらないためには、

  • 「公正な慣行」に合致していること
  • 「引用の目的上正当な範囲内」で行われること

という要件を満たす必要があります。そして、どのような態様が「公正な慣行」で、「引用の目的上正当な範囲内」と言えるかについて、裁判例は「明瞭区分性」「主従性」「出展の明示」という3つの基準を示しています。

なお、引用に該当するかどうかの基準に明確な境界はなく、最終的には、これらの要件を総合的に考慮して裁判所が決定します。そのため、まとめサイトやキュレーションメディアを始めるときは、事前にその適法性をチェックし、弁護士のアドバイスを受けるのがお勧めです。

以下では、各要件について解説します。

【要件1】明瞭区分性

「引用」の1つ目の要件は「明瞭区分性」です。

明瞭区分性とは、自分のコンテンツと他人のコンテンツとが明確に区別されていることが必要であるという意味です。明瞭に区分するための具体的な方法としては、鍵括弧(「」)やクオート("")で引用部分を囲う方法がよく用いられます。このような一般的な用例に従えば、引用であることをわかりやすく示すことができます。

まとめサイトやキュレーションメディアで、他サイトのコンテンツをまとめて引用する場合、「blockquote(ブロッククオート)」という引用を明確にするタグが使用されます。

【要件2】主従性

「引用」の2つ目の要件は「主従性」です。

主従性とは、自コンテンツが主(メイン)で、他人のコンテンツが従(サブ)であるという意味です。コンテンツの主従関係は、量と質の両面から判断されます。そのため、量的に独自コンテンツが多いのはもちろん、質的にも、自分のコンテンツの価値の方が高くなければなりません。

問題あるまとめサイトやキュレーションメディアでは、オリジナルコンテンツの量が多くてもオリジナリティが薄かったり価値が低かったりして、「引用」の要件を満たさないものが見受けられます。

【要件3】出典の明示

「引用」の3つ目の要件が「出典の明示」です。

出典の明示とは、上記2つの要件を満たした上で、他人のコンテンツをどこから引用しているかを明らかにする必要があるということです。

出典の明示は、著作権者を記載したり、著作物名(出版物の名称、ウェブサイト名)を記載したりするのが通例です。あわせて、リンク先のURLを明示するとよりわかりやすくなります。

その他の要件

以上の明瞭区分性、主従性、出典の明示の3つの要件を満たしてもなお、総合考慮の結果として「引用」にあたらず、著作権侵害であると判断されるケースがあります。

例えば、著作物の利用が著作権者に及ぼす影響が大きすぎる場合や、引用する側の利用目的、利用態様が悪質であると考えられる場合、たとえ形式的には「引用」の要件にあてはまったとしても、やはり著作権侵害となるおそれがあります。

そのため、「引用」の該当性について、事前にある程度予測するためにも、過去の裁判例を参考にした専門的な判断を聞くために、弁護士のアドバイスを受けるのがお勧めです。

法的リスクを回避するための注意点

注意点

最後に、著作権法上の「引用」にあたる他人のコンテンツの利用のほかに、まとめサイト(キュレーションメディア)を運営する際に注意すべきポイントを解説します。

リンクであれば許されるか

まとめサイトやキュレーションメディアの中には、単に記事や解説、文章を引用するのではなく、サイト内にリンクを貼って他サイトのコンテンツを紹介する形式もあります(典型例は、2020年9月にサービス終了したNaverまとめ)。

自サイトに、他サイトのリンクを貼る行為によって、リンク先のウェブサイトのコンテンツ情報が直接ユーザーへ送信されることとなります。そのため、リンクを貼る行為自体が、リンク先のサイトの著作権を侵害することはありません。

ただし、リンクの貼り方が不適切だとスパム扱いされたり、リンク先のサイトに失礼であったりするおそれがあるので、注意が必要です。

キャッシュであれば許されるか

まとめサイトやキュレーションメディアには、他サイトから画像や動画などのコンテンツを一旦自社サーバーに保存し、編集・整理してから自社コンテンツとしてネット上に公開する例があります。

他人の著作物を一旦保存し、再度インターネット上に流す行為は、厳密には著作権侵害にあたります。しかし、著作権法47条の4第1項の例外規定があり、キャッシュサーバーに情報を蓄積することは著作権侵害とならないと定められています。

この点が一時期話題となったスマートニュース(Smartnews)でも、「情報アーキテクチャの改訂について」を発表し、次のように説明し、「キャッシュサーバーに情報を蓄積してユーザーに配信する」という、著作権法上の問題が生じない配信方式とすることを示しました。

ユーザーが、スマートニュースアプリを起動すると、スマートニュースサーバーは、ユーザーが予め指定したカテゴリに応じてスマートニュースロボットが収集したウェブページのURL、見出し、サイト名、サムネイルURLを、ユーザー端末に送信します。


それに続いて、ユーザー端末は、各ウェブページのURLへ逐次アクセスを行い、HTMLコンテンツを取得します。このとき、ウェブサイトへのアクセス不可を軽減し、効率的な通信を実現するため、プロキシサーバを利用します。

「情報取得アーキテクチャの改訂について」(Smartnews)

違法コンテンツのコピーに注意する

他サイトの違法コンテンツをコピーして利用すると、著作権侵害だけでなく、そのコンテンツの違法性についての責任を負うおそれがあります。

例えば、他サイトのリンクを貼ったり、拡散に協力したりといった行為を、違法性を認識しながら行っていたとき、それにより被害を受けた人から損害賠償を請求されたり、その行為が犯罪にあたるときには幇助犯としての刑事責任を負ったりするおそれがあります。

炎上リスクに注意する

ウェブサービスの運用に問題があると、厳密には違法でなくても、炎上するリスクがあります。

まとめサイトやキュレーションメディアは、インターネット上で収集した情報を分類、編集して付加価値を付与し、自社コンテンツとしての価値を出す点に特徴があります。しかし、既存のコンテンツの利用のしかたに誤りがあったり、誤解を受けるような編集を加えたりといったやり方が炎上のきっかけになり、企業の信用を低下させるおそれがあります。

このような不適切な掲載、編集はいずれも、法的に問題がなかったとしても、倫理的、道徳的に問題視され、社会的な批判の対象とならないかどうか、事前検討が必要です。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、まとめサイト、キュレーションメディアの運営者が注意すべき、著作権法をはじめとした法的なリスクについて解説しました。

まとめサイト、キュレーションメディアは社会的な注目を集め、資金調達や買収例も多く存在します。一方で、法的リスクが顕在化して、公開停止や閉鎖を余儀なくされたサイトもあります。

ウェブやアプリのサービスを新規に展開するときは、事前の適法性チェックが不可欠です。まとめサイト、キュレーションメディアといった事業も甘く見ることなく、著作権法をはじめとした法令の遵守を徹底しなければ、投下した資本の回収が困難となるおそれがあります。

ビジネスの適法性チェックをはじめ、企業法務に悩んでいる企業は、ぜひ一度弁護士に相談してください。企業法務に精通する弁護士に相談すれば、ビジネスごとの法的なリスクを指摘し、対策についてのアドバイスを得ることができます。

この解説のポイント
  • まとめサイトやキュレーションメディアが著作権を侵害することがある
  • 「引用」は著作権侵害ではないが、要件は厳格なので違法となることがある
  • 法的リスクのほか、炎上リスクにも注意しなければならない

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)