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まとめサイト・キュレーションメディアの法律問題(著作権法など)

まとめサイトは、ネット上にあふれる多くの情報を、編集・分類し、整理してわかりやすく解説するという点でとても役立つため、新しいサイトが増加しています。まとめサイトは「キュレーションメディア」と呼ばれることもあります。

しかし、まとめサイト(キュレーションメディア)を新しく立ち上げたり、運営したりするとき、注意しておきたい法律問題が多くあります。特に重要なのが、「他サイトのコンテンツを利用すると著作権法違反にならないかどうか」という点です。著作権法違反になると、著作権者から損害賠償請求や差止請求を受けるおそれがあります。

なお、自社サイトがまとめサイト(キュレーションメディア)だという自覚がなくても、独自コンテンツが乏しく他サイトの紹介が主となっているとき、同じく著作権法上の問題に留意しなければなりません。

今回は、まとめサイト・キュレーションメディアの運営者が知っておくべき、法的リスクと注意点を、著作権法を中心に解説します。

この解説でわかること
  • まとめサイト・キュレーションメディアが著作権を侵害することがある
  • 引用であれば著作権侵害ではないが、要件は厳格
  • 法的リスクのほか、炎上リスクにも注意が必要
目次(クリックで移動)
解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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まとめサイト(キュレーションメディア)の法的リスク

リスク

まとめサイト(キュレーションメディア)とは、インターネット上で、他サイトのコンテンツの情報を収集し、まとめるなどして、利用者にわかりやすく伝えるサイトのことです。「口コミ」を意味する言葉で「バイラルメディア」といわれることもあります。

まとめサイト(キュレーションメディア)のコンテンツの多くは、他サイトで人気があったり、バズったりした情報を集めたものです。他サイトで公開され、「面白い」、「感動する」、「楽しい」といった評価を受けた情報のみ集めるわけですから、まとめサイト(キュレーションメディア)自体も注目を集め、閲覧数を増やすことができます。

例えば、2chまとめサイト、5ちゃんねるまとめサイト、Newspicks,Togetterなどが有名です(なお、Naverまとめも有名でしたが、2020年9月にサービス終了となりました)。このほかにも、大小様々なサイトが存在します。

まとめサイト(キュレーションメディア)を運営するにあたって、特に気を付けたい法的リスクが著作権の問題です。

自分のサイトで、コンテンツの盗用による著作権問題が発生してしまうと、コピー元のサイトから損害賠償請求を受けてしまったり、差止請求を受けてしまったりといった法律問題が発生します。さらに、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という刑事罰を受けることもあります(複製権侵害の場合)。

著作権侵害の法的リスク(刑事と民事)
著作権侵害の法的リスク(刑事と民事)

法律問題にならなくても、炎上してしまい、企業の信用が低下してしまうおそれがあります。炎上問題で運営を継続できなくなり、サイトを閉じたり記事を非公開にしたりといったメディアもあり、一時期話題になりました。

  • 「ネット上の公開情報を集めただけだから、著作権法違反にはならないのではないか」
  • 「文句を言われたときに消せば大丈夫」

などと甘く見ている人もいますがが、ネット上で公開されていたからといって著作権が放棄されたわけではありません。

ネット上の情報は、コピペが容易で手軽に複製できるため、著作権が軽視されがちですが、著作権法には損害賠償請求、差止請求という厳しい責任追及の手段が用意されているため、大きな法的リスクとなります。

まとめサイト(キュレーションメディア)が著作権侵害にあたるケース

はてな

まとめサイトの特性上、他サイトのコンテンツを利用することとなるため、著作権侵害となるおそれがあります。

著作権法では、著作権者の許可なくコンテンツを複製したり、一部を改変したりしてインターネット上に情報を流すといった行為を禁止しているからです。まとめサイト(キュレーションメディア)には大量の情報が収集、編集されるため、すべての著作権者の同意を得るのは現実的に不可能であり、著作権法の問題は避けては通れません。

そこで次に、まとめサイト(キュレーションメディア)が著作権侵害にあたるのはどのようなケースかについて解説します。

ウェブ上のコンテンツは著作物である

著作権とは、著作物を保護する財産的権利の集合体です。

著作権法では、「著作物」について「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)と定義されます。つまり、「創作性」のある表現であれば、著作物として保護の対象となるということです。

まとめサイト(キュレーションメディア)が収集の対象としているニュース記事、ウェブ解説といったテキストが著作物にあたることはもちろん、写真、画像、動画、音楽なども「創作性」のあるものであるかぎり著作物であり、著作権法によって保護されます。

複製権侵害にあたるケース

「複製」とはいわゆるコピーのことであり、著作権者の許諾なく他サイトのコンテンツをコピーする行為は、複製権侵害(著作権法30条)にあたります。

他サイトの文章を丸々コピペしてパクる行為だけでなく、一定の改変を加えたり修正、追記したりしても、自サイトで加えた修正に創作性がないときは、複製権侵害といえます。

なお、後述するとおり、他サイトのコンテンツをキャッシュとしてコピーする行為は、著作権法侵害にはなりません。

その他の著作権侵害にあたるケース

ネット上のコピーコンテンツの作成は、複製権侵害にあたる以外にも、公衆送信権、翻案権、同一性保持権、氏名表示権といった著作権法上の権利の侵害にあたるおそれがあります。

著作権とは
著作権とは

著作物にあたる他サイトのコンテンツを、勝手にインターネット上に流すことは、公衆送信権の侵害にあたります(著作権法23条1項)。

また、わかりやすく再編集したり要約したり、リライトしたりするとき、元のコンテンツの「総作成」のある表現が残っているときは、翻案権の侵害(著作権法27条)にあたります。翻案権を侵害するときには、同時に、同一性保持権の侵害(著作権法20条)にもあたります。著作権者は、自身の著作物について勝手に改変されないという人格的権利を有するからです。

なお、他サイトのコンテンツを不適切に利用し、自身の著作物であるかように掲載すると、著作者の氏名表示権の侵害(著作権法19条)にあたります。

「引用」であれば著作権侵害ではない

案内する女性

著作権法には、著作権侵害の例外として「引用」についてのルールがあります。つまり、著作権法の「引用」にあたるのであれば、他サイトのコンテンツの利用などであっても、例外的に、著作権侵害にはあたらないということです。

ただし、著作権法の「引用」は法律用語であるため、一般に「引用」と聞いて思い浮かべるイメージとは異なるおそれがあります。というのも、例外的に著作物をコピーすることが許される「引用」は、著作権者の利益を不当に侵害しないよう、厳しい要件が法律上定められているからです。

「引用」の厳しい要件を満たすかどうかの事前検討なく、安易にまとめサイト(キュレーションメディア)の運用を進めることは、大きな法的リスクを負うこととなります。

引用について、著作権法には次のような定めがあります。

著作権法32条(引用)

1. 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2. (略)

著作権法(e-Gov法令検索)

つまり、著作権法にいう「引用」として例外的に著作権侵害にあたらないためには、

  1. 「公正な慣行」に合致していること
  2. 「引用の目的上正当な範囲内」で行われること

という要件を満たさなければなりません。そして、どのような態様であれば「公正な慣行」であり、「引用の目的上正当な範囲内」なのかについては、裁判例に示された次の3つの要件を充足することが必要となります。

なお、引用に該当するかどうかの基準には、明確な境界はなく、最終的には、これらの要件を総合的に考慮の上で、裁判所が決定することとなります。そのため、まとめサイト(キュレーションメディア)となるウェブサービスをはじめるときは、事前にその適法性をチェックするため、弁護士のアドバイスを受けることがおすすめです。

以下では、各要件について解説します。

【要件1】明瞭区分性

1つ目の要件は「明瞭区分性」です。これは、自分のコンテンツと他人のコンテンツとが明確に区別されていることが必要だという意味です。

明瞭区分性とは

明瞭に区分するための具体的な方法としては、鍵括弧(「」)やクオート("")で、引用部分を囲う方法がよく用いられます。このような一般的な用例にしたがっていれば、引用であることをわかりやすく示すことができます。

特に、まとめサイト(キュレーションメディア)などで、他サイトのコンテンツをまとめて引用する場合には、「blockquote(ブロッククオート)」というコンテンツが引用であることを明確にするタグが使用されます。

【要件2】主従性

2つ目の要件は「主従性」です。これは、自分のコンテンツが主(メイン)で、他人のコンテンツが従(サブ)である必要があるということです。

そして、コンテンツの主従関係は、量的な側面、質的な側面の双方から判断されます。そのため、量的に自分の独自のコンテンツが多いことはもちろんのこと、質的にも自分のコンテンツのほうが価値が高くなければなりません。

主従性とは
主従性とは

まとめサイト(キュレーションメディア)において、オリジナルのコンテンツのほうが量が多くても、オリジナリティが薄かったり、価値が低かったりすれば、「引用」の要件を満たさず著作権侵害となるおそれがあります。

【要件3】出典の明示

3つ目の要件が「出典の明示」です。つまり、上記2つの要件を満たした上で、その区別された他人のコンテンツをどこから引用しているか、出典を明示する必要があります。

出典の明示は、著作権者を記載したり、著作物名(出版物の名称、ウェブサイト名)を記載したりすることが一般的です。あわせて、リンク先のURLを明示するとよりわかりやすくなります。

その他の要件

以上の明瞭区分姓、主従性、出典の明示の3つの要件を満たすとしても、なお総合考慮の結果として「引用」にあたらず、著作権侵害であると判断されるケースがあります。

例えば、著作物の利用が著作権者に及ぼす影響が大きすぎる場合や、引用する側の利用目的、利用態様などが悪質だと考えられる場合には、たとえ形式的には「引用」の要件にあてはまったとしても、やはり著作権侵害となるおそれがあります。

そのため、「引用」の該当性について、事前にある程度予測しておくためには、過去の判例、裁判例を参考にした専門的な判断が必要となりますから、弁護士のアドバイスを受けることがおすすめです。

法的リスクを回避するための注意点

注意点

最後に、著作権法上の「引用」にあたるような他人のコンテンツの利用のほかに、まとめサイト(キュレーションメディア)を運営するとき注意しておきたいポイントを解説します。

リンクであれば許されるか

まとめサイト(キュレーションメディア)の中には、単に記事や解説、文章を引用するのではなく、サイト内にリンクを貼ることによって他サイトのコンテンツを紹介しているものがあります。その典型例は、2020年9月にサービス終了したNaverまとめです。

自サイトに、他サイトのリンクを貼る行為によって、リンク先のウェブサイトのコンテンツ情報が、直接ユーザーへ送信されることとなります。そのため、リンクを貼る行為自体が、リンク先のサイトの著作権を侵害することはありません。

ただし、リンクの貼り方が不適切だと、スパム扱いされてしまったり、リンク先のサイトに失礼であったりするおそれがありますので、注意が必要です。

キャッシュであれば許されるか

まとめサイト(キュレーションメディア)の中には、他のサイトから、画像や動画などのコンテンツを一旦自社サーバーに保存し、編集・整理してから自社コンテンツとしてネット上に公開しているものがあります。

他人の著作物を一旦保存し、再度インターネット上に流すという行為は、厳密には著作権侵害にあたります。しかし、著作権法47条の4第1項の例外規定があり、キャッシュサーバーに情報を蓄積することは著作権侵害とならないことが定められています。

この点が一時期話題となったスマートニュース(Smartnews)でも、「情報アーキテクチャの改訂について」という発表で、次のように説明し、「キャッシュサーバーに情報を蓄積してユーザーに配信する」という、著作権法上の問題が生じない配信方式とすることを示しました。

ユーザーが、スマートニュースアプリを起動すると、スマートニュースサーバーは、ユーザーが予め指定したカテゴリに応じてスマートニュースロボットが収集したウェブページのURL、見出し、サイト名、サムネイルURLを、ユーザー端末に送信します。


それに続いて、ユーザー端末は、各ウェブページのURLへ逐次アクセスを行い、HTMLコンテンツを取得します。このとき、ウェブサイトへのアクセス不可を軽減し、効率的な通信を実現するため、プロキシサーバを利用します。

「情報取得アーキテクチャの改訂について」(Smartnews)

違法コンテンツのコピーに注意

まとめサイト(キュレーションメディア)において、他サイトの違法なコンテンツをコピーして利用してしまったとき、著作権侵害だけでなく、そのコンテンツの違法性についての責任を負うおそれがあります。

例えば、他サイトのリンクを貼ったり、拡散に協力したりしたとき、その違法性を認識しながら行っていたとき、それにより被害を受けた人から損害賠償請求を受けてしまったり、その行為が犯罪にあたるときには幇助犯としての刑事責任を負ったりする可能性があります。

炎上するリスクに注意

ウェブサービスの運用のしかたに問題があると、法的には違法でなくても炎上するリスクがあります。

まとめサイト(キュレーションメディア)は、インターネット上で収集した情報を分類、編集して付加価値を付与し、自社コンテンツとしての価値を出すことに特徴があります。しかし、既存のコンテンツの利用のしかたに誤りがあったり、誤解を受けるような編集を加えたりといったやり方が、炎上のきっかけを作り、企業の信用低下につながるおそれがあります。

このような不適切な掲載、編集は、いずれも、法的には問題がない場合であったとしても、倫理的、道徳的に問題がある場合があるため、社会的な批判の対象となってしまわないかどうか、事前検討が必要です。

まとめ

今回は、まとめサイト、キュレーションメディアの運営者が注意しておきたい、著作権法をはじめとする法的なリスクについて、弁護士が解説しました。

まとめサイト、キュレーションメディアは社会的な注目を集め、資金調達や買収例も多く存在します。その一方で、法的リスクが顕在化してしまい、公開停止や閉鎖を余儀なくされてしまったサイトも多くあります。

ウェブサービス、アプリサービスなどを新規に展開しようとするときは、事前の適法性チェックが不可欠です。まとめサイト、キュレーションメディアといった事業でも、著作権法をはじめとした適法性チェックを行わなければ、投下した資本の回収が困難となってしまうおそれもあります。

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企業法務のよくある質問

まとめサイトでも著作権侵害にあたってしまうことがありますか?

ウェブ上に公開されたコンテンツには著作権があり、コピペして自分のコンテンツとして発表すると著作権侵害となるおそれがあります。もっと詳しく知りたい方は「まとめサイト(キュレーションメディア)が著作権侵害にあたるケース」をご覧ください。

まとめサイトでも、引用であれば著作権侵害にあたりませんか?

まとめサイトに他人のコンテンツを載せるとき、引用であれば著作権侵害にあたりませんが、明瞭区分性・主従性・出典の明示という引用の要件を満たす必要があります。詳しく知りたい方は「『引用』であれば著作権侵害ではない」をご覧ください。

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