交通事故

後遺障害逸失利益の定期金賠償を認めた最高裁判例(最判令和2年7月9日)について

2021年4月7日

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2020年(令和2年)7月9日の最高裁判決において、交通事故の被害者が後遺障害逸失利益について定期金賠償を求めていたケースについて、最高裁が初めて、逸失利益が定期金賠償の対象となることを認めました。

定期金賠償とは、損害賠償額について定期的に支払いを受ける形式のことをいいます。交通事故のケースにおいて、後遺障害逸失利益について定期金賠償が認められたのは、この最高裁判例が初となります。

今回は、この最高裁判例の事案と判断、そして、交通事故の被害に遭ってしまったときに、定期金賠償を求めるメリット、デメリットなどについて弁護士が解説します。

「交通事故」弁護士解説まとめ

後遺障害逸失利益の定期金賠償に関する最高裁判例(最判令和2年7月9日)について

まず初めに、交通事故の被害者が後遺障害逸失利益について定期金賠償を求めているケースで、最高裁が、逸失利益が定期金賠償の対象となることを初めて示した裁判例(最判令和2年7月9日)について解説します。

事案の概要

最判令和2年7月9日の事案は、事故当時4歳であった交通事故の被害者が、第3級3号の後遺障害等級に該当する高次脳機能障害を負ったとして、大型貨物自動車を運転していた加害者らに対して民法709条及び自賠法3条に基づく損害賠償を求めるとともに、任意保険の保険会社に対しても、保険契約に基づく損害賠償額と同額の支払を求めて提訴したケースです。

この事案において被害者側は、後遺障害逸失利益について定期金による賠償を求めたことから、「後遺障害逸失利益が、定期金賠償の対象となるかどうか」という点が争点となりました。

被害者側が、後遺障害逸失利益について定期金賠償による支払を求めたことに対して、加害者と保険会社は、一時金による支払とするべきであると主張して争いました。

将来介護費用の金額には争いがあったものの、第一審、控訴審ともに後遺症逸失利益について定期金賠償の方式による支払を命じ、上告審もまだ、原審を維持して同様の判断をしました。

判決の内容

最判令和2年7月9日において、最高裁は、次のように判示し、後遺障害逸失利益について、定期金賠償の方式による支払を命じました。

最判令和2年7月9日

「交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において、不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるときは、同逸失利益は、定期金による賠償の対象となる。」

「交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たっては、事故の時点で、被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、就労可能期間の周期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを要しない。」

判決のポイント

従来の実務では、交通事故被害の損害賠償は、基本的には、一括賠償が原則とされていました。例外的に、介護を必要とするような重度の後遺症が残った場合に、終身の定期金賠償を認める裁判例がありました。

これに対して、後遺症が残った場合の逸失利益(将来得られるはずであった収入)については、67歳もしくは平均余命の半分までの一括賠償しか認められてきませんでした。このように考えると、一定以上の長生きをすると損をしてしまうおそれがありました。

定期金賠償であれば、長生きをすれば生きた分だけ、もらえる賠償額が増額されるため、上記のような「延命リスク」の不安は解消されます。

今回の判決では、被害者が4歳の幼児であること、高次脳機能障害という後遺障害のために労働能力を全部喪失し、逸失利益の現実化が将来の長期間にわたる可能性が高いことといった事情を考慮して、逸失利益についても定期金賠償が認められる余地があることを示しました。

この判決は、後遺障害逸失利益について定期金賠償が認められることを最高裁がはじめて判断したという点で、意義の大きい画期的な判決です。

しかし、上記の判断によっても、後遺障害逸失利益であればすべて定期金賠償の対象となることを認めているわけではありません。そのため、今後も、どのような事情があれば後遺障害逸失利益の定期金賠償が認められるのかについては、各事案ごとに個別に判断されることとなります。

その際には、後遺障害の態様や程度、逸失利益の発生が予想される期間などが考慮要素となるものと考えられます。

定期金賠償とは

定期金賠償とは、請求権が、将来時間が経過していくにつれて具体化していくような性質の損害について、実態に即した賠償を実現するために行われる支払方法で、賠償額を一定期間ごとに定期的に支払う方法のことです。

交通事故被害の場合には、人身損害における逸失利益、後遺症についての治療費・看護費用などがこのような性質の損害であると考えられています。従前から、将来介護費用の定期金賠償は認められると考えられており、認容された裁判例もありましたが、後遺障害逸失利益については本判決が初めてとなります。

定期金賠償のメリット

定期金賠償には、一時金賠償に比べて、次のようなメリットがあります。

  • 損害の公平な分担を図ることができる。
  • 中間利息控除をされない。
  • 被害者に対する生活保障機能がある。
  • 加害者に対する懲罰的機能がある。

一時金賠償の場合には、現実には将来にわたって損害が発生し続けるのであるけれども、将来発生し得る不確定な損害が、不法行為時点にすべて発生したというフィクションによって損害額を決めることとなります。

そのため、そのフィクションの前提として設定された一定の余命、収入、社会情勢などが予想外に大きく変化をした場合に、一時金賠償として決めた金額が、損害の公平な分担とはいえなくなってしまうおそれがあります。

これに対して、定期金賠償であれば、将来に発生し続けるという損害の実態に即して、損害が発生するごとに賠償が行われることとなるため、フィクションの結果生じる不公平を回避することができます。そして、定期金賠償として決めた金額が、急速なインフレなどにより実態と合わなくなってしまうような事態に備え、民事訴訟法では、定期金賠償の確定判決を変更する制度(民事訴訟法117条)を創設しています。

これに加えて、定期金賠償の場合、定期的な支払いがなされるため、被害者側にとって浪費や運用リスクを回避でき、生活保障的機能があります。逆に、加害者側にとっては将来も定期的に支払わなければならないことを命じられることで、懲罰的に機能するという点もメリットとして挙げられます。

定期金賠償のデメリット

一方で、定期金賠償にもデメリットがあります。最も大きなデメリットとして挙げられるのが、履行確保の問題です。

つまり、将来定期的に支払うことを命じる判決の場合に、支払義務を負う保険会社が破産してしまったり、加害者の資力がなくなってしまった場合には、賠償を支払わなくなってしまうリスクを被害者側が負うこととなってしまうということです。

また、将来定期的に支払われる場合、その請求や管理が煩雑で、かえって被害者側の負担が増してしまうこともデメリットとして挙げられます。

「交通事故」は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回解説した最高裁判例(最判令和2年7月9日)では、最高裁が、後遺障害逸失利益についての定期金賠償を正面から認めました。

このことは、今後、交通事故被害者にとっての賠償を受ける方法の選択を増やし、より納得感のある救済を受けることができる点で、非常に意義のある画期的判決と評価できます。将来変更の可能性の高い症状を追ってしまった場合などには、積極的に定期金賠償を求める主張をしていくことができるようになりました。

しかし一方で、どのような交通事故ケースでも定期金賠償を求めることができるとまでは判断されておらず、かつ、定期金賠償にもデメリットがあることにも注意が必要です。万が一交通事故被害に遭い、重い後遺症を負ってしまったような場合には、一括賠償か定期金賠償か、いずれが有利かをよく検討して頂く必要があります。

交通事故の被害に遭い、重い後遺症を負ってしまった方は、ぜひ一度、当事務所の法律相談をお受けください。

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