
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
ポイントサービスは、顧客の囲い込みや販売促進の手段として多くの企業で活用されます。
一方、ポイント制度を運営する事業者にとって注意すべき点が、ポイントの有効期限や失効など、サービス終了時のルールです。当事務所にも、次のような相談が寄せられています。
採算の悪化や新規サービスへの移行など、事業者の都合を優先しすぎると、顧客やユーザーに不利益を与え、法的トラブルに発展しかねません。ポイントの内容や仕組みによっては、資金決済法などの法令が関係するほか、利用規約の定め方や利用者への周知方法にも注意が必要です。
今回は、ポイントの有効期限や失効といった終了時の法的規制、事業者が制度を設計・変更する際の注意点について、弁護士が解説します。
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

はじめに、ポイントの有効期限、廃止・終了についてどのようなサービス設計にすべきか、法的な側面から解説します。
ポイントサービスの有効期限や終了について、法律に一律の基準はありません。
そのため、「ポイントサービスの有効期限をどの程度の期間とするか」「サービス自体を終了する際のポイントの扱いをどうするか」といった点について、そのサービスを提供する事業者が自由に定めることができるのが原則です。法的には、ポイント制度やサービス自体を廃止することも、有効期限を付けない無期限のポイントとすることも可能です。
契約自由の考え方から、ポイントサービスを定める契約書や利用規約の定めにより、「誰と、どのような内容の契約を締結するか」は、顧客やユーザーと事業者との合意で決められます。
しかし、契約の自由は、例外的に制限されるケースがあります。
それが、「ユーザーを不当に害してはならない」という観点からの法規制です。例えば、極端に短い有効期限、突然のサービス終了や失効、ポイントの廃止などによって、十分な利用期間を与えない場合などは、消費者契約法によって無効とされるおそれがあります。事業者側の一方的な都合でユーザーに不利益を与えないよう、消費者を保護する必要があります。
消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する契約内容は無効となることを定めます。
消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
消費者契約法(e-Gov法令検索)
また、利用規約で「サービス内容や有効期限は、事業者側が変更できる」と定める例が多いものの、事前予告なくポイントサービスを廃止したり、失効させたりすることは、ユーザーの不利益が過大であり、無効となるおそれがあります。

次に、ポイントに有効期限を付けるときの注意点を解説します。
ポイントの有効期限に法的な規制はありません。「有効期限を何ヶ月とするか」「期限を付けるか、無期限か」は、契約自由の原則のもと、サービス提供者が自由に決められます。しかし、顧客やユーザーが不利益を負わないよう、消費者契約法による規制が適用される可能性があるため、あまりに不当な有効期限の定めをすべきではありません。
注意点の1つ目は、ポイントの有効期限を短くしすぎないことです。
自社独自のポイントについて、サービスの利用実態に比して短すぎる有効期限を設定すると、実際にはユーザーに「ポイントは利用するな」と言っているのと同じことです。少なくとも、平均的なユーザーが次に利用するときポイントを使えないほど有効期限を短くするのは避けるべきです。
短すぎる有効期限は、消費者契約法違反として無効になるリスクがありますし、法違反とならない場合でも「悪質なポイントサービスを運営する企業」というイメージから炎上トラブルを招き、企業の社会的信用が低下するおそれがあります。
なお、「どの程度の有効期限が妥当か」に一律の相場はなく、サービスの内容やポイント利用の状況や頻度などを考慮し、ケースバイケースで検討する必要があります。
注意点の2つ目は、ポイントの有効期限によって資金決済法上の法的規制を回避できることです。
具体的には、発行日から6ヶ月以内に限って使用できる設計のポイントであれば、資金決済法の前払式支払手段に該当せず、同法の規制が適用されません。
資金決済法の規制を受けると、ポイント発行者の財政基盤を確かなものとするため、未使用残高の2分の1以上を供託する義務が生じ、事業者の財源を大きく圧迫するおそれがあります(供託義務は、未使用残高が1,000万円を超えると発生するため、500万円以上の供託が必要となります)。
そのため、資金決済法の規制を回避するため、有効期限を6ヶ月以内にしても、ユーザー囲い込みなどポイントサービスを導入するメリットがあるかを検討する必要があります。
「ポイントサービスと資金決済法」の解説

注意点の3つ目は、有効期限内にポイントを利用するよう注意喚起することです。
ポイントに有効期限をつける場合、その期限が顧客やユーザーに分かりやすいよう、すぐ見られる場所に明記すべきです。また、理解しやすく簡潔な説明を心掛けてください。そして、有効期限内にポイントを利用するように告知し、注意喚起を徹底してください。実務上は、直前ではなく、有効期限の1ヶ月前など、余裕を持って事前告知するのが望ましいです。
有効期限を知らせないまま、「気付いたらポイントが使えなくなっていた」というのでは、利用者を軽視する悪質な企業だと批判されても仕方ありません。有料ポイントであるのに、顧客やユーザーへのサービス提供を怠ると、課金分の損害賠償請求を受けるおそれもあります。
顧客やユーザー自身がいつでも有効期限や獲得履歴を確認できるシステムを提供するのが適切です。アプリのマイページや会員専用サイトなどを通じ、失効予定のポイント数やいつ失効するかを可視化できる専用の確認方法を用意しておきましょう。保有残高や利用可能な期間を正確に把握できるようにすることで、「期限を忘れて気づかないうちに失効した」といった不満を防ぎ、無用なクレームやトラブルを未然に回避できます。

ポイントサービスの廃止・終了についても法的な制限はなく、サービス提供を行う事業者側の判断で決めることができるのが原則です。
例えば、Webサービスやアプリをリリースしても、採算が悪かったり、新規サービスに移行したりといった理由で、サービス自体を終了する場合があります。特に、スタートアップ企業、中小・ベンチャー企業では「新規性の高いサービスを実験的に提供し、期待した成果が出なければピボットする」といった例はよくあります。
一方で、顧客やユーザーを軽視し、事業者の判断で勝手にサービスを終了すると、訴えられて法的紛争に発展するリスクがあります。
注意点の1つ目は、開始当初からサービス終了を見据えたサービス設計をすることです。
開始当初から「終了」を考えるのは、失敗を予想するようで気が進まないでしょう。しかし、採算が合わない、売上が上がらないなどの消極的なサービス終了はもちろん、新規サービスへの移行など、積極的な理由で終了するケースもあります。
Webサービスやアプリの利用規約に「事業者の判断によりサービスを終了することがあります」という記載が多いです。その際にはあわせて、以下をルール化してください。
サービスをリリースし、その中で利用できるポイントを導入したときは、開始当初から「終了」も見据え、顧客が不利益を被らないユーザーファーストな設計を心がけるべきです。
注意点の2つ目は、資金決済法の払戻義務を遵守することです。
ポイントサービスが資金決済法の前払式支払手段に該当するとき、サービス継続中は原則として払戻をしてはならず、サービス終了時には未使用残高を払戻さなければなりません。なお、無償のポイントや、有効期間が6ヶ月以内のポイントは資金決済法の適用を受けないため、この払戻義務は有料のポイントの場合に知っておくべき注意点です。
注意点の3つ目は、予告期間を設けて解約告知をすることです。
Webサービスやアプリは継続利用が予定される契約関係であるため、事業者側の都合で終了させるには、相当の予告期間を設けて事前に解約告知を行うことが重要です。特に配慮を要するのは、有償ポイントを発行するケースです。有償ポイントを購入する方は、無償ポイントをプレゼントされたのとは違い、商品やサービスでの購入に利用することを当然予定していたはずだからです。
有償ポイントを発行したのに、顧客やユーザーに不利な時期にサービスを終了すると、課金額について返金請求、損害賠償請求を起こされるおそれもあるので、慎重な判断が必要です。

今回は、ポイントの有効期限や失効などに関する法律問題について解説しました。
ポイントサービスを導入することは、顧客離れの防止、囲い込みといった販促効果を生むメリットがあります。「契約自由の原則」があるため、企業は、事業目的を達成するために様々なサービス設計について知恵を絞り、工夫を凝らすのは良いことです。
しかし、事業者のメリットを優先するあまり、ユーザーに不利益の大きい有効期限の設定、一方的な都合によるサービスの終了やポイントの失効は、結果的に大きな法的リスクを伴います。炎上トラブルに発展すれば、企業の社会的信用を損なう要因ともなりかねません。
ポイントサービスの開始、運用はもちろん、企業法務についてお悩みの会社は、ぜひ一度弁護士に相談してください。
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/