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借りた車で交通事故にあった時、損しないための対応方法と保険の知識

友人間や家族間で、「ちょっと車を貸してほしい」ということがあるのではないでしょうか。友人の車を借りてドライブやゴルフに出かけることは、それほど珍しいことではありません。

しかし、「少しの間借りるだけだから」と気を抜いていると、不幸にも交通事故にあってしまうことがあります。借りた車に乗っていて、いざ交通事故が起きてしまったとき、法律知識を理解しておかなければ思わぬ損害を被ることがあります。

今回は、「友人に借りた車で交通事故を起こしてしまった」という法律相談について、少しでも損失を減らすための対応を、交通事故にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 借りた車の交通事故では、車にひもづく保険、あなたにひもづく保険の双方を確認する
  • よく車を借りて利用するとき、自分の保険契約内容の見直しをおこない、トラブルを予防する
  • 借りた車の交通事故で、損失を減らすためには、過失割合・損害額について争う

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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借りた車で交通事故を起こしたときの問題点

はじめに、友人や知人、家族から借りた車で交通事故を起こしてしまったとき、どのような問題が起こるか、という点について、特に「法的な問題点」について弁護士がまとめてご紹介します。

自分の車で交通事故を起こしてしまったときでも、さまざまな悩み、不安、疑問が発生するのは当然ですが、他人の車で事故を起こしてしまったとき、特に次のような不安があるのではないでしょうか。

  • 損害保険は使えるのだろうか?
  • 任意保険の範囲はどこまでなのだろうか?
  • 自分が全ての損害を支払わないといけないのだろうか?

適切な対応ができず、親切で車を貸してくれた人に対して損害を与えてしまうようなことともなると、友人関係にもヒビが入りかねません。

しかし、友人・知人や家族の所有する車を運転する、というケースは日常的にありえますから、このようなケースをカバーできる保険に加入している場合があります。特に、家族間では車の貸し借りは頻繁に起こり得ることから、現在加入している損害保険で十分対応が可能な場合もあります。

そのため、借りた車で交通事故を起こしてしまったとき、まず初めに行うべきことは、「保険契約内容の確認」です。

借りた車の交通事故で、確認すべき保険契約は?

本

借りた車で交通事故を起こしてしまったとき、はじめに行うことが「保険契約内容の確認」です。

というのも、加入している損害保険が適用され、その補償の範囲で解決できるのであれば、借りた運転手も、貸した友人も、金銭的に大きな損失を負わなくても済むからです。

適用される可能性のある保険契約には、次の4つがあります。

いずれかの損害保険が利用できれば、十分に損害をカバーできる可能性があるため、順番に確認をしてください。

損害保険契約の内容は、お手持ちの保険証書、保険契約約款などで確認をすることができますが、不明点がある場合には、損害保険会社や担当者へ問い合わせをしてください。

自動車賠償責任保険(自賠責保険)

自動車賠償責任保険(いわゆる「自賠責保険」)は、「自動車賠償保障法」という法律によって強制加入とされている保険で、被害者の人的な損害のうち、最低限の補償をカバーする保険のことです。

自賠責保険とは
自賠責保険とは

強制加入の保険であるため、友人の車を借りて事故を起こしてしまったときにも、その車には自賠責保険がかけられていることが通常です。この自賠責保険については、確認するまでもなく、人の車を借りて起こした交通事故の場合にも、適用されることとなります。

ただし、自賠責保険は、あくまでも被害者保護のための最低限の補償となるため、自賠責の上限額を超える慰謝料、車両修理代などについては、任意保険でカバーする必要があります。

自動車にかけられた損害保険

借りた車で事故をしてしまったとき、確認すべき保険の2つ目は、車にかけられている損害保険です。強制加入である自賠責保険と違って、任意加入のため「任意保険」ということがあります。

つまり、車を貸した人が、その車にかけている損害保険が、運転者が別人であっても適用されるのかどうかを確認するということです。

しかし、車にかけられた保険は、運転者が限定されている可能性があります。保険会社としても「この運転者だから損害を補償する契約をしたのだ」という場合に、危険運転の可能性を下げるためにも、「一定の範囲の運転者でなければ保険金がおりない」という特約を設定していることがあるためです。

このことは、例えば、自動車を盗まれて交通事故を起こされてしまった場合などに、保険会社が責任を負うかどうか、という点で大きな問題となります。

このように運転者を限定する特約には次のようないくつかのパターンがあります。

  • 本人限定特約
    運転者が本人の場合のみ、保険契約の補償の対象となる特約
  • 本人・配偶者限定特約
    運転者が、本人及びその配偶者の場合のみ、保険契約の補償の対象となる特約
  • 家族限定特約
    運転者が、本人及びその家族の場合のみ、保険契約の補償の対象となる特約

この際、「家族」とは通常、同居の親族と、別居の未成年の子をいうとされていることが多いですが、詳しい内容は保険契約内容によって異なるため、保険会社に確認する必要があります。

なお、借りた車で事故を起こしてしまって車にかけられた保険を使う場合には、所有者にかかる将来の保険料が上がってしまい、迷惑をかける可能性が高いことにも注意が必要です。

運転者が別の自動車で加入する損害保険

借りた車で交通事故になってしまったときに、確認しておくべき保険の3つ目は、運転者が別の車を対象として加入している保険です。運転者が、自分でも車をもっているとき、他人の車を借りて運転していた場合にも、自分の車にかけている損害保険を利用できる場合があります。

すでに交通事故にあってしまった時点で、車を貸してくれた人には迷惑をかけてしまっているわけですが、自分の車の損害保険を利用すれば、所有者の保険料を上げてしまって更なる迷惑をかけてしまう心配はありません。

自動車保険には「他車運転特約」というものがついている可能性があり、この特約が付加されていれば、他人の車を借りて運転している場合であっても、自分の車を運転しているのと同様に補償を受けることが出来ます。

そして、このことは自分が被保険者・契約者となっている保険契約だけでなく、同居のご家族の保険の「他車運転特約」を利用できる可能性もありますので、保険会社に確認をしてみてください。

ドライバー保険

最後に、「ドライバー保険」という特殊な保険についてもご紹介しておきます。

ドライバー保険は、自分が車を所有していない場合であっても、運転者として交通事故を起こしてしまったときに損害保険による補償を受けることができるようになる保険契約のことをいいます。

運転免許を保持していれば、誰でも加入することができますので、「よく車を借りて運転することがある」という人は、加入を検討してみてください。

借りた車の交通事故で、少しでも損失を減らす方法

計算機

最後に、借りた車で交通事故を起こし、いずれの損害保険契約を確認しても、どの保険も適用されなかったときの対応について、弁護士が解説します。車を貸してくれた友人、知人に迷惑をかけないためにも、自分で相手方と交渉し、損害賠償を支払う努力をすべきです。

交通事故一般に言えることですが、支払うべき責任のある金額を少しでも下げ、むしろ、相手方からより多くの損害賠償、慰謝料を勝ち取るため、法律と裁判例を踏まえた交渉を行う必要があります。このとき、弁護士に相談し、法的サポートを受けることが有益です。

責任・過失割合について争う

借りた車の交通事故の場合はもちろん、交通事故一般にいえることですが、「過失割合」についての争いが重要となります。

過失割合とは、つまり、交通事故の当事者である自分の車と相手の車とで、「どちらがどれくらい悪いのか」という責任の問題のことです。一定の割合(パーセンテージ)であらわされ、自分に責任のある分だけ、もらえる賠償額が減額されます。

過失割合とは
過失割合とは

この「過失割合」は、事故の状況によってある程度類型的に定まっていますが、話し合いで決まらないときには裁判で決めることとなります。このとき、過失割合に関して裁判で有利な解決を得るためには、証拠が非常に重要です。

過失割合で勝つためには、次のような、事故状況を証明する証拠を準備する必要があります。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 同乗者、目撃者の証言
  • 警察による実況見分調書
  • 周囲の防犯カメラの映像

損害額について争う

交通事故の責任が、主に自分側にあることとなったとき、支払うべき損害額は、大きく分けて物損と人損に分けられます。他人の車を借りて交通事故を起こしてしまったとき、損害額を少しでも下げるため争うべき点は、主に次の通りです。

まず、「人損」について、特に大きな争いとなるのが、後遺障害に関する慰謝料です。後遺障害は、認定される等級によって慰謝料の相場が決められています。

次に、「物損」については修理費などの実費がこれに該当しますが、相手方からの請求額が高額すぎる場合には、本当に必要な修理であったか、また、本当にその交通事故による損害だったかどうか、証拠書類などを精査して調べる必要があります。

支払方法について交渉する

以上のように、交通事故によって支払うべき損害賠償額、慰謝料額は、「責任」と「損害」の掛け算で決定されることとなります。自分側の責任が重く、損害も多額であって、保険の利用もできない場合には、損害賠償を全額支払う資力がないという場合もあります。

このような場合、次に行う交渉は、支払方法に関する交渉です。つまり、相手方に対して、損害賠償額の減額、分割支払いを求める交渉を行います。

なお、交通事故の損害賠償は、破産をしても免責されない「非免責債権」に該当する可能性もあることから、破産を検討する際には、一度弁護士にご相談することをお勧めします。

まとめ

今回は、友人から借りた車で交通事故を起こしてしまったときの、適切な対応について弁護士が解説しました。

不幸にも交通事故の被害者となってしまったときには、責任割合を争ったり、被った損害についてもれなく請求したりすることで、被害回復を図る必要があります。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、交通事故について豊富な解決実績を有しています。

人の車で事故を起こすと、とてもやっかいなことになります。友人関係を破綻させてしまわないためにも、ぜひ一度当事務所へ相談してみてください。

交通事故のよくある質問

借りた車で交通事故を起こしてしまったとき、どの保険が使えますか?

借りた車での交通事故では、その車にかけられた自賠責保険、任意保険のほか、あなたが加入する他の損害保険やドライバー保険が使えるケースがありますので、保険契約の内容を確認するようにしてください。もっと詳しく知りたい方は「借りた車の交通事故で、確認すべき保険契約は?」をご覧ください。

借りた車での交通事故による損失を減らす方法はありますか?

借りた車での交通事故でも、損失を減らすためには、他の事故と同様に、過失割合や損害額について争い、少しでも支払う金額を減らすことが重要です。このとき、事故態様についての証拠が重要です。もっと詳しく知りたい方は「借りた車の交通事故で、少しでも損失を減らす方法」をご覧ください。

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