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法定利息とは?民法改正による法定利率の変更についてわかりやすく解説

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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お金の貸し借りや代金など、支払いが遅れることで「利息」が発生することがあります。

このとき、契約で利率を定めていない場合などに、法律の規定に基づいて適用されるのが「法定利率」であり、その利率に基づく利息のことを「法定利息」と呼びます。

2020年4月施行の民法改正では、法定利息のルールは大きく変更されました。具体的には、法定利率が従来の年5%から年3%へ引き下げられるとともに、一定期間ごとに利率を見直す「変動制」が導入され、将来の変更が予定されることとなりました。

今回は、法定利息・法定利率の基本的な意味や、約定利率との違い、民法改正による変更点について、弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 法定利率は、約定利率を定めていない場合に適用される金利の基準である
  • 2020年民法改正で年5%から年3%に引き下げられ、商事法定利率は廃止された
  • 今後も、市場金利の状況に応じて、法定利率は変動する可能性がある

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法定利息とは

お金

法定利息とは、法律で定められた利率(法定利率)に基づいて計算される利息のことです。

お金の貸し借りなどでは、当事者同士で利率を決めることができます。一方、当事者間で利率を定めていない場合、民法で定められた法定利率によって利息が計算されます。

法定利息の具体的な計算は、次の計算式によって算出されます。

  • 法定利息 = 元本 × 法定利率 × 経過期間

例えば、100万円の借入金の返済が1年間遅延した場合、法定利率が年3%であれば、1年で3万円の法定利息が発生します。

法定利率は、金銭債務の支払いが遅れた場合に生じる遅延損害金の計算にも用いられます。法定利息について理解するため、「法定利率」「約定利率」「遅延損害金」の違いを解説します。

法定利息と法定利率の違い

「法定利息」と「法定利率」は似た言葉ですが、意味が異なります。

法定利率とは、法律によって定められた利率のことです。これに対して、法定利息とは、法定利率を用いて計算される利息のことをいいます。2020年4月施行の民法改正により、法定利率が従来の年5%から年3%へ引き下げられました。また、法定利率を3年ごとに見直す「変動制」が導入され、その後も2023年、2026年に見直しのタイミングがありましたが、現在も年3%となっています。

法定利率は、当事者間で契約上の利率(約定利率)について合意がない場合や、支払い遅延に伴う損害賠償(遅延損害金)を計算する際に用いられます。

法定利率と約定利率の違い

約定利率とは、契約の当事者が合意によって定めた利率のことです。

当事者間で約定利率を定めた場合、その利率が適用されます。一方、利息を付すことになっていても、その利率を定めていない場合などには、法定利率が基準となります。例えば、金銭消費貸借契約において「貸付金には年5%の利息を付す」と定めた場合、約定利率は年5%となります。

ただし、当事者の定める利率は無制限ではなく、金銭の貸付では利息制限法による上限があり、上限を超える部分は無効となります。利息制限法で定められた上限金利は、元本によって次のように定められており、支払いすぎた利息は過払い金として取り戻すことができます。

  • 10万円未満:年20%(年2割)
  • 10万円以上100万円未満:年18%(年1割8分)
  • 100万円以上:年15%(年1割5分)

利息と遅延損害金の違い

利息と遅延損害金は、いずれも元本以外の追加の金銭ですが、発生する原因が異なります。

利息は、お金を利用することの対価であり、返済期限までにかかるものを指します。一方、遅延損害金は、返済が遅れたことに対する損害賠償であり、返済期限後に支払うものです。

こうした意味の違いはあるものの、法定利率は両者の計算に関係します。利息が発生するものの約定利率が定められていない場合には法定利率が適用されます。また、遅延損害金においても当事者間で利率を定めていなければ法定利率が適用されます。

法定利率が適用される主なケース

次に、法定利率が問題となる主なケースについて解説します。

契約で利率を定めていない場合

約定利率の合意がない場合、法定利率が適用されます。

民法404条1項では、利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないとき、その利率を「利息が生じた最初の時点における法定利率」とすることが定められています。

したがって、利息が発生することについては合意しているものの、具体的な利率を定めていない場合、法定利率が適用されます。例えば、お金を貸す際に「利息を支払う」と決めたものの、年何%とするかを決めていなかった場合などが該当します。

なお、法定利率は、あくまで、利息が発生する場合に利率を決める基準に過ぎず、当事者が利息を支払う旨を合意していない場合にまで、利息を発生させる効果はありません。

金銭債務の支払いが遅れた場合

借入金や売買代金などの金銭債務の支払が遅れた場合、遅延損害金が生じます。

民法419条1項では、金銭の給付を目的とする債務に不履行があった場合、その損害賠償額は、「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率」によって定めるものとされます。例えば、支払期限を過ぎた時点で適用される法定利率が年3%であれば、これを基準に遅延損害金を計算し、元本に加えて請求することができます。

ただし、契約において、あらかじめ法定利率を上回る約定利率を定めた場合はそちらが優先します。契約書の中には、未払いに対する制裁を強化し、任意の支払いを促すため、遅延損害金について年14.6%などの約定利率を定める例があります。

損害賠償請求で遅延損害金が発生する場合

法定利率は、契約上の金銭債務だけでなく、損害賠償請求にも影響します。

例えば、契約違反によって損害賠償債務が発生し、その支払いが遅れた場合、当事者間で合意がなければ、法定利率に基づく遅延損害金が発生します。また、交通事故などの不法行為に基づく損害賠償請求についても、契約当事者間のように約定利率を定めることができないため、民法上の法定利率によって遅延損害金を計算することとなります。

なお、金銭の給付を目的とした債務の不履行では、法定利率によって定められた損害についての証明は必要とせず、不可抗力によっても免責されません(民法419条2項・3項)。

2020年民法改正による法定利率の変更点

はてな

次に、2020年4月施行の民法改正による変更点について解説します。

民法改正では、法定利息に関するルールが大きく見直されました。主な変更点として、法定利率の引下げ、変動性の導入、商事法定利率の廃止などがあります。

改正の背景には、従来の法定利率と実際の市場金利に大きな差が生じていたことがあります。従来の5%の法定利率は、明治時代に制定された基準が固定的に運用されてきたもので、低金利が続く現状とは乖離していることが問題視されていました。

なお、改正の全体像は「民法改正(2020年4月施行)」の解説をご参照ください。

法定利率が年5%から年3%に引き下げられた

2020年4月施行の民法改正では、法定利率が年5%から年3%へ引き下げられました。

改正前の民法では、法定利率は年5%とされていましたが、低金利が長く続いたことで、年5%という法定利率と実際の市場金利との乖離が大きくなっていました。前述「法定利率が適用される主なケース」の通り、法定利率は、当事者間で具体的な利率を定めていない場合の利息だけでなく、金銭債務の不履行による遅延損害金にも関係するため、大きな影響を及ぼします。

固定制から変動制に変更された

2020年4月施行の民法改正で、法定利率が固定制から変動制に変更されました。

改正前は、市場金利が変化しても法定利率は年5%のままであったため、市場金利と法定利率が大きく乖離し、公平性を欠く事態となっていました。このような社会情勢の変化は今後も起こる可能性があるため、民法改正では、市場金利の動向を反映できるよう、変動性が導入されました。

具体的には、市場金利の動向に合わせて3年ごとに法定利率を見直すものとし、見直し時点の短期貸付の平均利率を「基準割合」とし、過去に実際に法定利率の変動があった直近の期(直近変動期)における基準割合と当期の基準割合との差が1%以上に達した場合、その差(1%未満は切捨て)を直近変動期の法定利率に加減する形で調整されます(民法404条3項・4項)。

したがって、3年ごとに法定利率が増減する可能性があります。実際には、2020年4月から2023年3月までの第1期、2023年4月から2026年3月までの第2期、2026年4月から2029年3月までの第3期は、いずれも年3%となっています。

なお、利息が生じた最初の時点の法定利率が、その後も適用されます。そのため、利息の発生後に法定利率が変更されても、その債権に適用される利率も途中で変わるわけではありません。

商事法定利率(年6%)が廃止された

改正前は、商行為によって生じた債務には年6%の商事法定利率が定められていました。

そのため、改正前は、民事上の債権には年5%、商行為によって生じた債権には年6%というように、債権の性質によって異なる法定利率が適用されていました。しかし、商行為によって生じた債務だけを特別扱いする合理性が乏しいことなどから、2020年4月の民法改正に合わせて商法514条が削除され、商事法定利率は廃止されました。

したがって、現在は商取引によって生じた債務にも、民法上の法定利率が適用されます。

中間利息控除に法定利率が用いられることが明文化された

2020年4月施行の民法改正で、中間利息控除にも法定利率を用いることが明文化されました。

中間利息控除とは、将来受け取るべき金銭を、損害賠償などで現在一括して受け取る場合に、その間に運用すれば得られるはずの利息相当額を差し引く考え方です。例えば、交通事故で後遺障害が残り、将来得られるはずだった「逸失利益」を請求する場合に問題となります。

改正前も、実務上は法定利率である年5%を用いて中間利息を控除する扱いとされていましたが、改正後の民法には、損害賠償請求権が生じた時点の法定率を用いて中間利息の控除を行うことが明文化されました(民法417条の2)。

なお、法定利率が年5%から年3%へ引き下げられたことで、中間利息として控除される金額は従来より小さくなり、請求額が増えることとなります。

法定利息と民法改正の注意点

最後に、法定利息と民法改正に関する注意点について解説します。

約定利率の定め方に注意する

民法改正で法定利率が引き下げられたものの、約定利率の方が優先します。

そのため、契約を締結する際には、法定利率だけでなく、約定利率をどのように定めるかにも注意しておかなければなりません。特に企業間の取引では、これまでの商事法定利率(年6%)から現在の民事法定利率(年3%)に下がることで、大きな影響が生じるおそれがあります。契約書に遅延損害金の利率を定めなければ、支払いが遅れた場合の制裁が十分でなくなるケースもあります。

そのため、売買代金や業務委託料などの支払いが遅れた場合に備え、契約書に遅延損害金の利率が明確に定められているかを確認しておくことが大切です。もっとも、約定利率の設定も完全に自由ではなく、契約の内容や当事者の属性などによっては、利息制限法や消費者契約法などによる規制を受け、過度に高い利率は無効とされるおそれがあります。

したがって、民法改正による法定利率の変更を踏まえ、既存の契約書についてもリーガルチェックが必要となります。利息や遅延損害金の利率が明確に定められているか、また、その利率が法令上適切な内容となっているかを確認しておきましょう。

適用される法定利率の基準時を確認する

2020年4月施行の民法改正で変更された法定利率は、今後も変動する可能性があります。

そのため、法定利息や遅延損害金を計算する際には、いつの時点の法定利率が適用されるのかを確認することが重要です。

利息については「その利息が生じた最初の時点」における法定利率が適用されます(民法404条1項)。契約の締結日ではなく、利息が最初に発生した時点を確認することがポイントです。

また、金銭債務の不履行によって生じる遅延損害金については、「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点」における法定利率が適用されます(民法419条1項)。不法行為に基づく損害賠償債務は、不法行為時から遅滞に陥ることとされているため、不法行為時の法定利率が適用されます。

以上の基準時が、改正民法が施行された2020年4月1日よりも前か後かによって、適用される利率が決められます。そして、一度適用される法定利率が決まれば、その後に法定利率が変更されても、適用される利率が途中で変わることはありません。

【まとめ】法定利息・法定利率について

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、法定利率と、それに基づく法定利息について解説しました。

法定利息とは、当事者間で約定利率を定めない場合に、法律で定められた法定利率に基づいて発生する利息です。金銭の貸し借り、遅延損害金など、様々な場面で法定利率が適用されます。

2020年4月施行の民法改正で、法定利率は年5%から年3%に引き下げられ、3年ごとに状況に応じて見直される変動制が導入されました。また、年6%の商事法定利率は廃止され、商行為についても民事の法定利率が適用されることとなります。

利息や遅延損害金をめぐってトラブルが生じた場合、適用される利率を誤ると、請求できる金額を誤って不利益を被るおそれがあります。特に高額な金銭債権や長期間にわたる未払いがある場合、利息の額も大きくなるため注意が必要です。

この解説のポイント
  • 法定利率は、約定利率を定めていない場合に適用される金利の基準である
  • 2020年民法改正で年5%から年3%に引き下げられ、商事法定利率は廃止された
  • 今後も、市場金利の状況に応じて、法定利率は変動する可能性がある

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