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過失割合10対0の交通事故とは?示談するときの被害者側の注意点

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

こちらの解説は、動画でもご覧いただけます。

交通事故被害の被害者・加害者それぞれの責任の程度を決める「過失割合」は、一定の割合(パーセント)で表され、被害者側の過失割合が小さいほど高額の賠償金を請求できます。なかでも、最も被害者に有利なのが「10:0(10対0)」の交通事故、つまり、被害者側の過失が一切ない事故です。

しかし、基本的には被害者有利な「10:0(10対0)」の交通事故でも、対処法を誤ると、適正な賠償額を獲得できないおそれがあります。

加害者側も、少しでも支払額を下げるために過失割合について徹底して争ってくることが予想されるため、しっかり準備しておかなければ、「9:1(9対1)」、「8:2(8対2)」などと過失が認められてしまい、得られる賠償額が目減りしてしまうおそれがあります。

今回の解説では、交通事故の被害者側の立場で、

  • 交通事故の過失割合「10:0(10対0)」の意味
  • 過失割合「10:0(10対0)」となる交通事故のケース
  • 過失割合「10:0(10対0)」で弁護士を依頼するメリット

といった交通事故被害の法律知識について、弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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過失割合が「10:0(10対0)」の交通事故とは

過失割合とは

過失割合とは、交通事故の結果を招いた過失の割合のことです。過失というのは、いわゆるミスのことであり、信号を確認しなかった、歩行者を見逃したといった、本来行うべき注意義務に違反したことをいいます。

加害者から受けとれる賠償額は「損害」と「責任」のかけ算で決まります。そのため、どれほど損害額が大きくても、自分側の過失割合が大きいと、受けとれる賠償額は低くなってしまいます。

例えば、どちらが悪いともいえない、過失割合「5:5(5対5)」の事故では、得られる賠償額は、実際に負った損害の50%になってしまいます。この点、過失割合「10:0(10対0)」の事故であれば、100%の賠償を得ることができます。

過失割合の決め方

過失割合は、被害者と加害者との示談交渉であれば、合意によって決めることができます。ただ、賠償額に大きく影響するため争いとなることが多く、当事者間で合意できないときは、裁判で決めてもらうこととなります。

裁判所では証拠を調べ、交通事故の態様や事故原因などから過失割合についての判断を下します。この際、交通事故の裁判例が多くあることから、事故態様によってある程度類型的に過失割合が決まっています。

過去の裁判例における過失割合の類型は、いわゆる「緑の本」(正式名称「別冊 判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)」)にまとめられており、裁判所でも参考にされています。

過失割合「10:0(10対0)」の意味

過失割合は、被害者と加害者の責任の割合によって定められており、「10:0(10対0)」、「9:1(9対1)」のように定められます。この中でも、事故態様からして被害者の過失が全くない場合(つまり、加害者側が一方的に悪い場合)が、「10:0(10対0)の交通事故です。一般に「じゅうぜろの事故」、「もらい事故」と呼ぶこともあります。

自動車同士の事故のとき、被害者側も走行中であると過失が少しは認められてしまうことが多く、「10:0(10対0)」の事故となるケースは決して多くはありません。お互いが走行中であるとき、交通事故が起きる確率は一定程度はあり、「被害者側も少しは責任がある」とされることが多いからです。

そのため、「10:0(10対0)」の事故となるのは、被害者側が完全に停止している「追突事故」や、加害者側の違反が著しい「センターオーバー」などが典型例です。

過失割合が「10:0(10対0)」となるケース

過失割合が「10:0(10対0)」となる交通事故のケースについて、どのような事故態様があるかを解説します。過失割合は裁判例によってある程度類型化されているため、まずはこれらの事故態様にあてはまるかどうかで、一般的な過失割合をある程度判断することができます。

以下では、事故の主体ごとに、次の2つの場合に分けて、あてはまるケースを解説していきます。

  • 自動車と歩行者の交通事故
  • 自動車同士の交通事故

自動車と歩行者の事故で「10:0(10対0)」となるケース

自動車と歩行者の交通事故では、弱者である歩行者が保護されます(専門用語で「優者危険負担の原則」という)。そのため、自動車と歩行者の事故では、自動車側の過失が大きいと判断されるのが原則となっています。

自動車と歩行者の事故で過失割合「10:0(10対0)」となるケースは、次のとおりです。

歩行者が青信号で横断開始後の事故

信号のついている交差点での事故では、「歩行者が青信号で横断を開始した場合」に車両と衝突したとき、過失割合「10:0(10対0)」の事故となります。歩行者側が青信号であれば、自動車側が赤信号を直進した場合と、自動車側も青信号で、交差点に進入した後で右折・左折した場合の双方とも「10:0(10対0)の事故となります。

歩行者が青信号で横断を開始した後であれば、その後に黄信号、赤信号に変わったとしても歩行者側の過失は認められません。なお、歩行者が黄信号、赤信号で横断を開始したときは過失割合が修正され「9:1(9対1)」となります。

横断歩道上の事故

信号のない交差点での事故では「横断歩道上」の事故の場合に「10:0(10対0)」の事故となります。

なお、横断歩道近辺であっても、1〜2m以上離れた場所で衝突したときは、歩行者側にも一定の過失が認められ「7:3(7対3)」に修正されます。

歩道上に車両が侵入してきた事故

歩道のある道路で、歩行者が歩道を歩いていたにもかかわらず車両が侵入してきて事故になったとき、歩行者側の過失はなく「10:0(10対0)」の事故となります。

歩道のない道路でも、歩行者が道路の端を正常に歩行していたときには、同様に歩行者に過失はありませんが、突然の飛び出しやふらふら歩きをしたときは、過失割合が修正されます。

自動車と歩行者の事故の過失割合の修正要素

上記のような類型にあてはまり基本的に「10:0(10対0)」の事故であっても、具体的な事故状況によって修正要素が考慮され、過失割合は増減します。

自動車と歩行者の事故の過失割合の修正要素には、次のものがあります。

自動車の過失を重くする要素 歩行者の過失を重くする要素
  • 歩行者が児童・高齢者、幼児・身体障害者などであること
  • 著しい過失・重過失
  • 幹線道路上の事故
    (横断歩道上の事故では+5、その他の事故では+10)
  • 歩行者の横断禁止の規制あり
  • 車両の直前・直後に道路を横断したこと
  • 急な飛び出し・ふらふら歩き

自動車同士の事故で「10:0(10対0)」となるケース

自動車同士の事故では、どちらかが有利不利ということはなく、注意義務違反の程度に応じて過失割合が決められます。どちらも走行していたときには一定の過失が認められることが多いですが、片方の過失が著しいとき、過失割合「10:0(10対0)」の事故となります。

なお、単車(バイク)同士の事故や、単車と自動車との事故も、自動車同士の事故と同様の判断がなされています。

追突事故

停車中の被害者車両に対して、加害者車両が後ろから衝突した「追突事故」は、過失割合「10:0(10対0)」の事故となります。加害者車両に、前方不注視、車両距離不保持などの注意義務違反があるからです。

追突事故では、被害者車両は交通事故を避けようがないため、「不適切な急ブレーキを踏んだ」などの特別な事情のない限り、被害者の過失はありません。

センターラインオーバーの事故

センターラインの引いてある幅広の道路で、センターラインをオーバーして対抗車両と接触した事故は、「10:0(10対0)」の事故となります。

センターラインオーバーの理由には、酔っぱらい運転、居眠り運転などの例が多いですが、これに限らず、追い越しのためにセンターラインをオーバーして対向車とぶつかってしまったときも「10:0(10対0)」の事故に含まれます。

赤信号無視による事故

赤信号を無視して突っ切った結果交通事故になってしまったケースは、「10:0(10対0)」の事故となります。

自動車同士の事故の過失割合の修正要素

追突事故、センターラインオーバー、赤信号無視と、自動車同士で「10:0(10対0)」の事故になるケースは加害者側の悪質性が相当高いと考えられますが、被害者側でも注意して運転しなければ、修正要素によって一定の過失が認められてしまうことがあります。

追突事故では、被害車両が理由のない急ブレーキをかけると「7:3(7対3)」の事故となるほか、次のものが修正要素となります。

被害者の過失を重くする要素 被害者の過失を軽くする要素
  • 住宅街・商店街等での事故(+10)
  • 加害者車両が15kmの速度違反(+10)、30kmの速度違反(+20)
  • 被害者側の著しい過失(+10)、重過失(+20)
  • 幹線道路の走行線上での停止(-10)
  • 制動灯の故障(-10〜20)
  • 加害者側の著しい過失(-10)、重過失(-20)

センターオーバーの事故における過失割合の修正要素には、次のものがあります。

被害者の過失を重くする要素 被害者の過失を軽くする要素
  • 被害者側の著しい過失(+10)、重過失(+20)
  • 被害者車両が15kmの速度違反(+10)、30kmの速度違反(+20)
  • 加害者車両の速度違反(-10〜20)
  • 追越禁止場所での追い越し(-10)
  • 加害者側の著しい過失(-10)、重過失(-20)

なお、著しい過失とは、脇見運転など著しい前方不注視、著しいハンドル・ブレーキ捜査の不適切、携帯電話で通話しながらの運転、15km以上30km未満の速度違反、酒気帯び運転が挙げられます。

重過失の例には、酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、30km以上の速度違反、過労・病気や薬物の影響により正常な運転ができないおそれがある場合などが挙げられます。

過失割合「10:0(10対0)」の事故を有利に進めるための注意点

過失割合「10:0(10対0)」の交通事故では、被害者の過失は全くなく、被害者は損害額を満額受けとれます。

一見して被害者側に有利なのは明らかですが、示談交渉を有利に進め、適正な賠償金を受けとるためには、注意しておいていただきたいポイントがあります。

保険会社の示談代行サービスが使えない

過失割合「10:0(10対0)」の事故では、保険会社の示談代行サービスが使えません。

交通事故被害にあったとき、保険会社が示談の窓口となってくれる示談代行サービスは、被害者側の過失が全くないときは利用できません。というのも、保険会社が示談交渉をしてくれるのは、弁護士のように「代理人」なのではなく、「(保険金を支払わなければならない)当事者」として交渉窓口となっているに過ぎないからです。

そのため、被害者の過失割合が0となる「10:0(10対0)」の事故では、被害者は賠償金を受けとる立場であり、支払う立場にはありません。そのため、保険会社は示談交渉の窓口になれません。

加害者側の保険会社は、事故態様について争ったり、あなたにとって不利な過失割合を提案したりして、支払う賠償額を下げようと交渉してきますが、弁護士を頼まない場合、これらの対応はあなた自身で行わなければなりません。

物損で先に示談しない

交通事故の損害には人損(人身に対する損害)と物損(車両や携行品など物に対する損害)があります。人損は治療終了後に交渉するため、通常は物損のほうを先に交渉し、示談します。

注意したいのは、過失割合について物損で示談が成立しているとき、人損の示談でも、物損で合意した過失割合を流用する例が多いことです。そのため、物損で安易に「9:1(9対1)」など譲歩した過失割合に合意すると、人損でもその過失割合を主張され、得られる賠償金が減ってしまうおそれがあります。

そのため、「10:0(10対0)」の事故と主張したいのであれば、物損の示談でも徹底して過失がないことを主張し、加害者が過失割合について争うときは決して譲歩してはいけません。人損には後遺障害慰謝料、後遺障害の逸失利益など高額化しやすい項目が多いため、物損が安価だからといって不用意に譲歩してしまうと、後悔することとなります。

加害者側の主張する過失割合を争う

過失割合が争いになるとき、保険会社は、加害者側の主張する過失割合を提案してきます。このとき、いわゆる「緑の本」(別冊判例タイムズ)の図を持ち出し、過失割合に関する専門的な知識に基づいて解説してくることがあります。

加害者側から「10:0(10対0)」の事故だと認めることは、よほど明らかなケースでない限りありません。多くのケースでは「9:1(9対1)」、「8:2(8対2)」など、早期解決のためと称して被害者にも一定の譲歩を求めてきます。

しかし、過失割合は、争いになるときには裁判所が決めるもので、そのとき参考となるのは過去の裁判例の蓄積であり、決して、保険会社が決めるものではありません。

実際の事故では、具体的な事故状況によって過失割合は様々に変化するため、すべて書籍の図のとおりに進むわけではありません。「緑の本」では各類型の修正要素が定められていますが、保険会社の主張は、加害者にとって有利な事情を最大限考慮し、被害者に有利な事情を無視しているおそれもあります。

過失割合の証拠を収集する

過失割合が「10:0(10対0)」だと主張するとき、事故態様を証明するための証拠を収集することが重要です。

前章でも述べたとおり、「10:0(10対0)」事故を起こしてしまった加害者側では少しでも支払う賠償金を減らそうと、「緑の本」(別冊判例タイムズ)の図で「10:0(10対0)」の類型に含まれる事故態様だったとしても、その図にあてはまらない理由や修正要素などの理由付けをし、過失割合を下げようとしてきます。

例えば、「10:0(10対0)」の典型例である追突事故でも、「停車位置が悪かった」などの個別事情が被害者側の過失となり、「9:1(9対1)」となることがあります。「被害者側の車両も動いていた」と反論されることもあります。

過失割合について被害者と加害者の主張が異なるときには、客観的に事故態様を証明するため、証拠が大切です。ドライブレコーダーの映像、実況見分調書、衝突部分の写真、現場写真などが重要な証拠となります。

弁護士に「10:0(10対0)」の事故を依頼するメリット

過失割合「10:0(10対0)」の事故について、被害者側が弁護士を依頼することには多くのメリットがあります。

「10:0(10対0)」だと、弁護士に依頼しなくても解決できると考える方もいますが、実際には加害者は「10:0(10対0)」だとは認めてこず、自分側の保険会社も示談代行をしてくれず、納得いかない解決となってしまう例は少なくありません。

正しい過失割合を主張できる

過失割合は、まずは話し合いで決め、合意できない場合には裁判で決まります。加害者側の保険会社は、交通事故トラブルを多く扱っているため、適切な過失割合をある程度理解していますが、加害者側から支払いを減らすため、多少無理のある反論をしてくることもあります。

弁護士が交渉窓口となることにより、過失割合の類型、考慮すべき修正要素を適切に反映し、正しい過失割合を主張することができます。保険会社もまた、弁護士がついて裁判をされてしまう可能性があることを知ると、「10:0(10対0)」であることを認めてくれるケースも多いです。

なお、そもそも加害者の記憶している事故態様が全く異なる場合や、過失割合「10:0(10対0)」を加害者側が認めてもなお、治療の必要性、後遺障害等級認定や損害額などに争いがあるとき、過失割合が「10:0(10対0)」であれば裁判に移行したほうが有利なケースが多いと考えることができます。

示談金を増額できる

弁護士に依頼すると、被害者側にとって有利な過失割合を主張してくれ、裁判する場合に備えて証拠収集からサポートしてもらうことができます。

交通事故の賠償金の基準には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つがあり、弁護士基準(裁判基準)が最も高額です。弁護士に依頼して裁判をすれば、弁護士基準(裁判基準)の賠償金を得られますが、示談交渉の際には、それより低い保険会社の基準によって提案されることが通常です。

素人である被害者が、交通事故トラブルを多く扱う保険会社と交渉するとき、専門知識が乏しいため、保険会社からの提案を妥当と勘違いして示談してしまうおそれがあります。

以上のことから、損害額の満額を受けとることができる「10:0(10対0)」の事故では、弁護士に示談交渉を依頼し、裁判をする可能性を示す方法によって、弁護士基準(裁判基準)の賠償金を獲得することが特に有効です。

精神的ストレスを軽減できる

「10:0(10対0)」の事故では、保険会社の示談代行サービスが利用できませんが、弁護士を窓口とすれば加害者側との直接のやりとりは不要です。「10:0(10対0)」の加害者側であるにもかかわらず不誠実で心無い発言をする保険会社をブロックし、精神的ストレスを軽減できます。

なお、弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用の負担は実質0です。

交通事故被害は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、交通事故の過失割合が「10:0(10対0)」の事故のケース、すなわち、被害者側にまったく責任のない交通事故の被害にあってしまったとき、被害者側で注意しておいてほしいポイントを解説しました。

過失割合が「10:0(10対0)」の交通事故ということは、加害者が一方的に悪く、いわばとぱっちりで巻き込まれた事故というわけですが、保険会社に窓口となって交渉してもらうことができず、加害者側からは「少しは過失があったはずだ」と主張され、とても嫌な思いをすることでしょう。

加害者側が過失割合について徹底して争い、裁判になるなど紛争が長期化するおそれのあるときは、ぜひお早めに、当事務所にご相談ください。

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