人事労務

残業許可制により残業代を削減しようとする企業が注意すべきポイント

2020年8月18日

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残業許可制企業側注意点

残業が長時間となると、残業代が企業の人件費を圧迫していることも多く、様々な工夫を駆使して、残業代を少しでも減らしたいと考える企業も少なくありません。

その中でも、よく利用される方法が、残業を許可制とし、許可のない残業を認めない、いわゆる「残業許可制」です。残業許可制をとることによって、残業代が無駄にかかる不必要な残業を抑制し、残業代を減らすことができ、同時に、社員の健康を守ることにもつながります。

しかし一方で、残業の許可制を適切に運用しなければ、違法な長時間労働によって社員の心身を傷つけてしまうことはもちろん、折角減らそうとした残業代も、かえって高額となってしまい、労働者側から労働審判や訴訟での残業代請求を受ける事態ともなりかねません。

そこで今回は、残業許可制により残業代を削減しようとする企業が理解しておくべきポイントを説明し、残業許可制の正しい運用について弁護士が解説します。

浅野総合法律事務所のアドバイス

残業代請求は、労使双方にとって非常に重要な労働問題の1つです。労働審判や訴訟など、労働紛争の中でも、残業代請求がよく問題になります。

労働者側にとって、労働をした時間に対する対価である残業代(割増賃金)を請求することは、正当な権利であり、正確な計算により確実に請求しておくべきです。使用者側にとっても、平常時から残業代に関する基本的な知識を理解し、未払とならないよう労務管理を徹底しておかなければ、常に大きな紛争リスクを抱えることとなります。

「残業代請求」弁護士解説まとめ

労働時間の把握義務

残業許可制企業側注意点

2019年4月1日より施行された働き方改革関連法により、労働安全衛生法が改正され、使用者(会社)に、労働時間の把握が義務付けられることとなりました。使用者(会社)が把握すべき「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。

これ以前より、労働時間の把握義務については、厚生労働省の通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日基発339号、いわゆる「46通達」)により、労働者の始業時刻、終業時刻を、タイムカードや現認などの方法により正確に把握すべきことが定められていましたが、働き方改革の中で、法律上の義務に格上げされた形となります。

企業側に課されている労働時間の把握義務は、残業代の正確な支払いはもとより、長時間労働を抑制し、労働者に対する安全配慮義務を順守する意味もあります。

労働時間の把握方法は、原則として、タイムカードなどの客観的方法により行うものとされており、その他、自己申告や現認による方法も認められてはいるものの、その場合には、適正な自己申告などが行われるよう十分な配慮が必要とされています。

把握すべき労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、始業時刻・終業時刻・休憩時間はもちろんですが、その他に、始業前の準備作業、終業後の片付け作業、手待ち時間や仮眠時間についても、使用者からの拘束を受け、労働から解放されていないと評価される場合には、労働基準法にいう「労働時間」となり残業代請求の対象となることがあります。

企業が、残業許可制の導入によって残業代の抑制しようとするとき、どのような時間が労働時間になるかをきちんと理解し、これを正確に把握する義務を守らなければなりません。労働時間を適正に把握しなかった結果、支払うべき残業代を支払っていなかった場合には、刑事罰による制裁を受けるおそれもあります。

参 考
労働時間かどうかの判断基準と、ケース別の残業代請求のポイント

残業代(割増賃金)を請求するとき、どのような時間が「労働時間」となるのかを正しく判断しなければ、残業代の正確な計算はできません。 言い換えると、会社が労働者に対して残業代を支払わなければいけない時間と ...

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残業許可制の基本と、企業側のメリット・デメリット

残業許可制企業側注意点

企業には、労働者の労働時間を正確に把握する義務があり、把握した労働時間に対して、正しい計算方法にしたがった残業代を支払わなければならない義務があります。加えて、残業代をきちんと支払っていたとしても、労働者の心身を壊してしまうような違法な長時間労働は、安全配慮義務違反となり、慰謝料請求などの対象となります。

このような事態が生じないよう、残業許可制を導入する際に注意点をきちんと守って行わなければデメリット、リスクが多く存在します。

一方で、労働者がすべて、会社が適切な人事労務の策を講じなくても勤勉に働いてくれるとは限りません。残業許可制を導入しなければ、無駄な居残り残業、上司への付き合い残業、生活残業が増え、会社の人件費を無用に圧迫してしまうことがあり、残業許可制を導入することにはメリットも多くあります。

そこで次に、残業許可制を導入するにあたって企業側に生じるメリット、デメリットについて弁護士が解説します。

残業許可制とは

残業許可制とは、その名のとおり、残業を行うことについて、企業側の「許可」や「承認」を要することと定める会社内のルールのことです。

残業許可制のルールの下では、残業申請書、残業承認書など、会社が定めた所定の書式にしたがって、残業を行うこと、残業中に行う業務、必要となる残業時間などを会社に申請し、許可や承認を得られた場合にのみ、労働者は残業を行うことができます。

残業の許可が下りない場合には、労働者は残業を行うことができず、許可が下りなかったにもかかわらず、終業時刻後に行われた労働は、残業とは認められず、残業代が支払われず、労働時間としてもカウントされないこととなります。

残業許可制のメリット

企業側にとって、残業許可制の最大のメリットは、残業代の抑制です。

特に、従業員が生活のために給与を増やそうとして行う、いわゆる「生活残業」など、企業にとって価値のない残業がなくならない場合、残業許可制を正しく運用することによって、有用な残業と無用な残業の仕分けを行うこともできます。

また、残業許可制のメリットは、企業側にとっての金銭的なメリットだけではありません。労働者の心身の健康を保ち、安全配慮義務に違反しないようにすることができるとともに、限られた時間で業務を終了させ、成果をあげようと工夫を繰り返すことで業務の効率化、生産性の向上につながるメリットもあります。

残業許可制のデメリット

残業許可制のデメリットは、今回解説するとおり、注意点を守って正しく運用しなければ、支払うべき残業代が未払いの状態となってしまうおそれがあり、労使対立の結果、労働者から多額の残業代請求をされてしまうおそれがあることです。

また、残業を許可制にして、労働時間を短くする一方で、業務量は一向に減らず、業務の効率化もなされず、結局は持ち帰り残業、サービス残業などの違法な残業を招いてしまうと、社員の労働意欲を減退させることにもつながります。

したがって、残業許可制のデメリットを理解し、残業許可制が正しく運用されず、企業にとってのリスクとなっている場合には、次に解説する注意点を理解し、正しい残業許可制の手続、進め方をとることが重要です。

残業許可制を導入するときの4つの注意点

残業許可制企業側注意点

残業許可制の基本を理解していただいたところで、残業許可制のデメリット、リスクを顕在化してしまわないよう、制度導入にあたって企業側で注意しておくべきポイントについて、主に4つに分けて弁護士が解説します。

残業申請の手続きを整備する

残業許可制を正しく運用するためには、会社が、残業申請の手続きを整備しておかなければなりません。具体的には、タイムカードを正しく打刻することはもちろんのこと、残業申請書、残業承認書を準備し、承認手続きについてマニュアルなどにまとめ、社員に周知することが必要です。

残業許可制とすることを決めておきながら、残業申請の手続きが整備されておらず、残業の申請と許可が正しく行われていないと、結局は、許可をしていない時間についても残業時間と評価されるリスクがあるからです。

残業申請書には、残業をする日時、残業中に遂行する業務、残業を必要とする時間などを詳しく記載させ、必要と考える残業のみに許可を与えるようにします。

また、実際には、急遽残業が必要となり、事前申請ができない場合もあります。このような場合に備えて、やむを得ず残業を行った場合の事後申請の手続きについても整備しておく必要があります。

管理職の教育研修を行う

残業申請の手続きを整備したら、実際に現場で残業初認を行う管理職に対して、教育研修を行わなければなりません。

どのような基準で残業を承認するのか、残業を承認しない場合にどのようにして社員を帰宅させなければならないのかといったことについて、実際に残業許可制を運用する管理職が、正しく理解している必要があるからです。この点で、残業許可制をとることで、管理職の仕事を増やしてしまうかもしれません。

部署ごと、事業所ごとなどで不公平感の出ないよう、残業許可制が社員のモチベーションの足を引っ張ることのないように、どのような基準で残業を承認するのかについては、会社が統一的な基準を定め、管理職に対して徹底することがお勧めです。

残業許可制を実際に運用する管理職が、労働法に関する正しい知識を理解しておらず、会社として決めた残業許可制が実際には正しく運用されていなかったという場合、結果として、労働者から残業代請求をされてしまうリスクが残ることとなります。

タイムカードを正しく活用する

残業許可制を運用するにあたって、実労働時間を正確に把握するためには、タイムカードを正しく活用することが重要となります。というのも、残業代を支払うべき「労働時間」とは、実労働時間(実際に使用者の指揮命令下に置かれていた時間)であり、在社時間(労働者が会社に滞在していた時間)とは異なるからです。

この点で、タイムカードや入退出のセキュリティ記録などは、労働者が会社施設内にいる時間を把握することはできるもののの、正確な労働時間をあらわしていない場合もあることを理解しなければなりません。

しかし、その上でもなお、会社側には労働時間の正確な把握義務があり、その手段としてタイムカードを利用している場合、タイムカードの記録は労働審判、訴訟などの法的手続きにおいて、とても重視される証拠となります。

そのため、残業許可制とタイムカードを併用する場合に、タイムカードに記録された打刻が実労働時間を指し示していない場合には、会社側において、残業申請書、残業承認書、パソコンのログ履歴、遂行した業務の進捗状況など、タイムカード以外の証拠を用いて反証できるよう準備しておく必要があります。

違法な残業代未払を放置しない

残業許可制を正しく運用してもなお、労働時間の正確な把握、管理は困難な課題であり、残念ながら違法な残業代未払が生じてしまうおそれがあります。

例えば、業務時間終了後は、仕事がなく、残業の許可もされていない従業員は速やかに退社すべきであるにもかかわらず、現場の人事労務管理が徹底されていなかった結果、従業員が社内に残って仕事を続けてしまっていたという場合、会社の意図に反して、未払の残業代が生じてしまっているおそれがあります。

労働者側から残業代請求を受けたとき、労働審判や訴訟などによって残業代の支払を命じられると、制度的な問題は全社的に波及するおそれがあります。つまり、1人の労働者に対して未払の残業代がある場合、他の社員もまた残業代を請求できる結果、会社全体で相当高額な残業代を支払わなければならなくなってしまう可能性があるということです。

そのため、違法な残業代未払は放置せず、労働者からの請求を慎重に吟味し、適時適切に改善を積み重ねていかなければなりません。

「人事労務」は浅野総合法律事務所にお任せください!

残業許可制企業側注意点

今回は、残業許可制を制度導入し、残業代を削減し、人件費を抑制しようと考えている企業が注意しておくべきポイントについて弁護士が解説しました。

確かに、残業代許可制を正しく運用すれば、許可のない残業に対して残業代を支払う必要がなくなり、無駄な残業が減り、人件費を節約することができます。しかし、許可のない残業を放置し続ければ、残業代許可制の正しい運用とはいえず、労働者側から残業代請求をされたときには敗訴してしまうおそれがあります。

企業内の残業代問題をはじめ、人事労務問題についてお悩みの会社は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

「残業代請求」弁護士解説まとめ

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