人事労務

障害者雇用納付金制度と障害者の法定雇用率のポイント

2020年12月2日

障害者雇用納付金制度と障害者法定雇用率

障害を持つ人が、障害を持たない人と同様に雇用される機会を確保するために、企業は、障害者を雇用する割合を義務付けられ、この割合に満たない場合に納付金の支払義務を課されることとなっています。

これが「障害者の法定雇用率」と「障害者雇用納付金制度」です。

障害者の法定雇用率は、一般労働者と同じ水準で障害者が常用労働者となり得る機会を設けるため、常用労働者の数に対する雇用割合として定められています。そして、国や地方公共団体、民間企業は、この障害者の法定雇用率に基づいた雇用義務が課せられています。

障害者の法定雇用率は、見直しを重ねて雇用率の引上げが図られており、2021年3月にも引き上げられることとなっているため、障害者雇用納付金制度の対象となる企業は注意が必要です。

今回は、障害者雇用納付金制度と障害者の法定雇用率について、その制度概要やポイント、注意点を弁護士が解説します。

「人事労務」弁護士解説まとめ

障害者の法定雇用率とは

障害者雇用納付金制度と障害者法定雇用率

障害者の法定雇用率とは、障害者の雇用される機会を確保するために、常用労働者の数に対する雇用割合を一定割合以上とするよう、企業側に義務付ける制度です。

国や地方公共団体、民間企業は、障害者法定雇用率に基づいて、障害者を雇用する義務を負います。

障害者の法定雇用率は、少なくとも5年後とに見直すこととされています。

2018年4月に2.2%に引上げ

2018年4月、障害者の法定雇用率が2.2%に引き上げられました。

この際、2021年4月1日までには、法定雇用率が2.3%に引き上げられることが決定していました。

2021年3月に2.3%に引上げ

上記の方針にしたがって、2021年3月より、障害者法定雇用率が2.3%に引き上げられました。

これにともなって、1人以上の障害者を雇用すべき企業の範囲が、労働者数43.5人以上に広がりました。つまり、労働者を43.5人以上雇用している会社であれば、障害者を1人以上雇用すべき義務を課されることとなります。

障害者雇用納付金制度とは

障害者雇用納付金制度と障害者法定雇用率

障害者雇用納付金制度とは、障害者の雇用水準を引き上げるために、国が、障害者の法定雇用率を達成していない企業から一定の納付金を徴収する制度です。

この制度は、障害者の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的とした「障害者の雇用の促進等に関する法律」(いわゆる「障害者雇用促進法」)に定められた制度です。

障害者雇用納付金制度の目的

障害者を雇用するためには、職場環境の整備のほか、障害者の雇用管理を行うための制度を整備するなど、会社にとって多くの経済的な負担が生じます。

障害者の雇用割合を上昇させることは、一企業だけで実現できるものではなく、社会全体で実現していくべき課題であり、そのため、一企業だけに負担を集中させないよう、その責任を分担することが、障害者雇用納付金制度の目的です。

障害者を雇用することとなると、企業側にはバリアフリー対策など、一定の経済的な負担が生じます。この経済的負担を調整し、障害者の雇用率を引き上げるために、法定雇用率に満たない企業から障害者雇用納付金を徴収し、法定雇用率を達成した企業に対して、調整金や報奨金といった名目で金銭を支給する制度となっています。

これらの助成は、納付金を財源として、障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金、特例給付金などの名目で、法定雇用率を達成している企業に支給されます。

障害者雇用納付金の算出方法

障害者法定雇用率を満たさない企業は、その算定基礎日における不足1人につき月5万円の障害者雇用納付金を支払わなければなりません。算定基礎日は、常用労働者数を把握する日であり、各月1日もしくは賃金支払日です。

ただし、常用労働者が100人を超え200人以下の企業は、2015年4月から2020年3月31日までは、不足1人につき月4万円に減額されるという減額特例が適用されます。

したがって、障害者雇用納付金の算出方法は、次のとおりです。

常用労働者100人を超える企業法定雇用率に不足する人数×月額5万円
常用労働者100人を超え200人以下の企業
(2020年3月31日までの減額特例)
法定雇用率に不足する人数×月額4万円

法定雇用率以上の障害者を雇用する企業に対して支払われる調整金、報奨金は、常用労働者の人数によって変わります。

常用労働者が100人を超える企業に対しては、その法定雇用率を超える人数1人につき月額2万7000円が支払われます。常用労働者が100人以下の企業に対しては、障害者を常用労働者の4%または5人のうち多い数を超えて雇用している企業に対して、その超過する人数1人につき月額2万1000円が支払われます。

「常用労働者」の対象となる労働者

障害者雇用納付金制度は、企業による自主申告制となっていますが、申告義務のある企業は「常用労働者が100人を超える企業」とされています。このとき、「常用労働者」として計算されるのは、次のいずれかに該当する労働者です。

  • 雇用期間の定めがない労働者
  • 雇用期間の定めがある労働者であって、その雇用が更新され雇入れから1年を超えて引続き雇用されることが見込まれる労働者
  • 過去1年を超える期間について引続き雇用されている労働者

つまり、上記3つの労働者の合計が100人を超える場合には、障害者の雇用割合を計算し、法定雇用率に満たない場合には納付金を納めなければなりません。

そして、この障害者雇用納付金の算出方法についても、先ほど解説した計算式のとおり、常用労働者の数に応じて一定の割合をかけて計算されることとなっています。

上記3つの条件のいずれかを満たす労働者のうち、週の所定労働時間が30時間以上の労働者は「常用労働者数1人」とカウントします。

これに対して、上記3つの条件のいずれかを満たしていても、週の所定労働時間が20時間以上30時未満の場合には、「常用労働者数0.5人」として数えます。

障害者雇用納付金の申告対象となるかどうかの判断基準

障害者雇用納付金制度と障害者法定雇用率

先ほど解説したとおり、障害者雇用納付金の制度は、企業による自主申告と納付を基本としています。

そのため、納付金の申告義務の対象となる「常用労働者数が100人を超える企業」に該当するかどうかは、企業側が自主的に計算し、判断しなければなりません。

常用労働者数は、原則として、毎月1日もしくは毎月の賃金締切日において確認することとなっています。

この点で、労働者の入退社が多い会社ですと、1年を通じて労働者数が月ごとに変動することがあり、労働者が100人前後の会社の場合には、「障害者雇用納付金の申告をすべきかどうか」という点でお悩みになることがあります。納付金を支払いたくないのはやまやまですが、違反に対してはハローワークによる雇用率達成指導が行われ、企業名公表を受けるなどのリスクを負うおそれがあるため、慎重な判断が必要となります。

障害者雇用納付金は、法定雇用率を達成しない場合の罰金という意味合いのものではありませんが、申告・納付を正しく行わないと大きなリスクを負うこととなります。きちんと企業の社会的責任を果たし、障害者雇用の安定、雇用率確保への責任を果たすことが健全な発展にとって重要となります。

労働者が100人を超える月が、1年度中に5カ月以上ある場合には申告の対象となります。

1年度は、4月1日から翌年3月31日までとされています。

1年度の途中に事業廃止などをする場合には、労働者数が100人を超える月が5カ月以上なくても申告が必要となることがあります。

障害者雇用納付金の申告・納付に違反した場合は?

障害者雇用納付金制度と障害者法定雇用率

障害者の雇用確保を進めるという目的にそって整備された納付金制度を維持するため、これらの制度に定められた申告・納付を怠った企業に対しては制裁(ペナルティ)が科されることとなります。

障害者雇用納付金制度は、先ほど解説したとおり、事業主による自主申告制を基本としていますが、障害者雇用促進法52条に基づいて、訪問による調査が実施されています。訪問による調査によって、納付金の申告・納付を正しく行っていなかったことが判明した場合には、ハローワークからの指導が行われ、それでも是正がなされない場合、厚生労働省のホームページに企業名が公表されることがあります。

いずれも、障害者雇用確保を目的とした制度の適正な運用と、企業間の平等な負担を守るといった観点から違反者になされる制裁として機能します。

そのため、障害者雇用納付金の対象となる企業においては、これらの制裁を受けて社会的信用を低下させてしまったり、企業イメージを損ねたりしないよう、慎重な対応が必要となります。

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障害者雇用納付金制度と障害者法定雇用率

今回は、2021年3月に引上げが予定されている障害者の法定雇用率と、障害者雇用納付金制度について、制度の概要やポイント、注意点を弁護士が解説しました。

障害者雇用が進まない企業に対しては、雇用率達成に向けた指導が行われ、雇用状況が改善されない場合には企業名公表をされてしまうことがあります。

一方で、障害者を雇用するためには、ハード面においてはバリアフリー化、ソフト面においては人事評価制度の修正など、障害者が活躍できるような労働環境の構築が必須となります。そのため、十分な準備をして障害者雇用を推進するためには、早めから時間をとって採用活動を進めていくことがお勧めです。

障害者雇用をはじめ、企業の人事労務についてお悩みの会社は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

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