★ ご相談予約をお待ちしております。

債権回収を、裁判所を利用して実現する方法と、裁判手続きの種類まとめ

債権回収を実現する方法には、債務者との話し合い(協議)による方法もありますが、任意に返済に応じてくれない債務者に対しては、裁判所を利用した裁判手続きによって回収を進めていく必要があります。

債権回収は、スピーディに進めなければ回収不能となってしまうおそれがあります。債務者が、債務の存在について争うケースや、債務額の主張に大きな開きがあるケースでは、交渉にこだわって長期化するのでなく、できるだけ早期に裁判手続きに移行し、確実な債権回収を実現できるよう努めなければなりません。

債権回収のうち、裁判手続きを利用する方法には、次のように多くの方法があります。

各裁判手続きにはメリット・デメリットがあり、迅速かつ円滑に債権回収を進めるためには、事案に応じた適切な手段を選択しなければなりません。

今回は、裁判手続きによって債権回収する手続きの流れと、弁護士に依頼するメリットについて、債権回収にくわしい弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 裁判による債権回収であれば、債務者の意思にかかわらず強制的に返済させることができる
  • 裁判による債権回収は、財産の保全、債務名義の取得、強制執行の順で進める
目次(クリックで移動)
解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

「迅速対応、確かな解決」を理念として、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

豊富な知識・経験に基づき、戦略的なリーガルサービスを提供するため、専門分野の異なる弁護士がチームを組んで対応できるのが当事務所の強みです。

\相談ご予約受付中です/

法律トラブルの相談は、弁護士が詳しくお聞きします。

ご相談の予約は、お気軽にお問い合わせください。

裁判手続きによる債権回収の流れ

矢印

裁判手続きにより債権回収する流れは、次の3段階に分けることができます。

交渉によって返済してもらえる可能性があるときは、まずは話し合いからスタートします。しかし、任意に返済してもらうのが難しいと予想されるとき、債権回収を強制的に実現するため、すみやかに裁判手続きへ移行する決断をしてください。

上記の順序にしたがい強制的に回収する流れへと進めていかなければ、債務者に逃げられてしまったり、他の債権者に先取りされてしまったりして回収困難となるおそれがあるからです。

債務者の財産を保全する

裁判手続きで強制的に債権回収が実現できるとしても、債務者がまったく財産を有していなかったり、財産隠しされてしまったりすると、回収が事実上不可能となってしまいます。「せっかく裁判で勝訴したのに回収できなかった」といった事態を避けるため、債務者の財産を把握し、保全しておくのが重要なポイントです。

そのため、あらかじめ財産がなくなってしまうことを防ぐため、民事保全手続きによって、債務者の財産を保全しておく方法が有効です。信用不安が予想されるときは、早急に対処しなければなりません。

民事保全でよく使われるのは、仮差押え、仮処分があります。

  • 仮差押
    不動産や預貯金などの財産を仮に差押えておき、裁判で勝ったときには債権の支払いに充当してもらうことができる
  • 仮処分
    散逸しやすい財産の処分を仮に禁止してもらうことができる

ただし、いずれも「仮」の手続きなので、裁判所に認めてもらうためには「債務者が逃げそうだ」、「交渉に全く応じてくれない」など、緊急性、必要性があることが要件となります。

債権回収を確実にするためには、あらかじめ人的担保(連帯保証人など)、物的担保(不動産への抵当権設定など)といった担保を取得することも有効です。担保をとっていたときは、担保権の実行による債権回収をすることもできます。

債務名義を取得する

債権回収で裁判手続きを利用する大きな目的は、「債務名義を取得すること」にあります。

債務名義とは、強制的な債権回収を認める文書であり、債務名義があれば、その記載された請求権の範囲で、強制執行(財産の差押え)により、強制的に債権回収を実現できるからです。

代表的な債務名義には、次のものがあります(このうち、公正証書以外は、すべて裁判手続きで作成されます)。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付判決
  • 仮執行宣言付支払督促
  • 裁判上の和解調書
  • 認諾調書
  • 公正証書(強制執行認諾文言付き)

強制執行(財産の差押え)

債務名義を取得すれば、強制執行(財産の差押え)が可能です。そのため、裁判で勝っても、債務者がしたがわないときには、最終手段として、強制執行の申立てをします。

強制執行では、債務者の財産を差押えて、強制的にお金に換え(換価)、債権の弁済に充当することができます。債務者が不動産(土地・建物など)を所有しているときには、競売して債権回収にあてる不動産執行、預貯金や給与を差押えて債権者に支払ってもらう債権執行がよく利用されます。

特に、債務者が企業のときには、取引のために使用している口座を差押えられてしまえば信用が低下し、経営に支障が生じるため、確実に払ってもらえると期待できます。

なお、強制執行もまた裁判手続きであり多くの手間と費用がかかるため、債務名義を得た後で、最後に一度、強制執行によるプレッシャーを武器に交渉するのがおすすめです。

裁判で債権回収を実現するための手続き

裁判

債権回収を話し合いでは実現できないときにとるべき、裁判手続きを利用して債権回収を実現する方法には、次のものがあります。

上記の裁判手続きのうち、どの手段をとるのが最適かは、債権者側の方針、債務者の交渉態様、財産の状況などによって選択する必要があります。

最もよく利用されるのは「通常裁判を行い、勝訴判決を取得し、強制執行を行う」という流れですが、債権者が手続き費用をできるだけ抑えたいという意向があるケースや、債務者の財産がなくなるおそれが強く、逃げられる前に早急に進める必要があるケースなどでは、その他の方法をとることもあります。

民事調停

債権回収の方法として、民事調停を利用するケースがあります。民事調停は、裁判手続ではあるものの、調停委員の仲裁のもとに債権者と債務者が話し合って解決するという制度であり、あくまでも当事者の協議を促進するための制度です。

当事者間の交渉ではうまく進まないものの、それほど主張に大きな差がないケースのように、第三者が間に入れば調停成立の可能性があるとき、民事調停が適しています。民事調停では、通常訴訟より申立費用が安く、手続きも簡易なため、弁護士に依頼せずに進めることもできます。かならずしも法律と証拠にもとづいた解決ではなく、柔軟に話し合いを進められるメリットもあります。

民事調停のメリット・デメリット
民事調停のメリット・デメリット

ただし、通常訴訟に比べて強制力が弱く、相手が民事調停を欠席し、話し合いに応じないときは調停不成立となり終了してしまいます。また、話し合いで解決するため、債権者側にも一定の譲歩を求められることが多いです。そのため、当事者間の主張の乖離が大きいとき、民事調停で解決することはできません。

支払督促

支払督促は、債権者の申立てに基づいて、実質的な審理なしに、簡易裁判所の書記官が債務者に金銭支払いを命じてくれる手続きです。

通常訴訟に比べると、期日のために裁判所にいく必要はなく、申立手数料も通常訴訟の半額と安いため、裁判所からのプレッシャーがあれば払ってくれそうなときは有効に活用できます。支払督促は、オンライン申立てをする方法もあります。

支払督促とは
支払督促とは

支払督促が送達されて2週間経過すると、支払督促に仮執行宣言を付すことができ、仮執行宣言付支払督促が得られれば、これを債務名義として強制執行(財産の差押え)を進めることができます。ただし、2週間以内に債務者が督促異議を申し立てると、通常訴訟に移行してしまいます。

支払督促によって債権回収するときの進め方は、次のとおりです。

  1. 支払督促の申立て
  2. 支払督促の発布・債務者への送達
  3. 仮執行宣言の申立て
    (異議申立て期間経過後、30日以内)
  4. 仮執行宣言の発布・債務者への送達
  5. 仮執行宣言付支払督促による強制執行

支払督促を利用した債権回収に向いているのは、債権の存在や債権額に争いがなく、債務者から督促異議が申し立てられる可能性が低いケースです。このような場合、単に債務者の中での支払いの優先度が低いだけで、裁判所からのプレッシャーがかかれば返済に応じてくれることが多いからです。

通常訴訟

通常訴訟は、債権回収で最もよく利用される裁判手続きです。債権回収の話し合いが難航し、交渉で払ってもらうのが難しいというときは、すみやかに訴訟提起をするようにしてください。

通常訴訟では、債権者・債務者がそれぞれ訴状・答弁書・準備書面といった書面で主張を行ったり、証拠を提出したりしながら、裁判所の審理を進めます。特に、裁判所の審理では証拠が重要となります。そのため、訴訟をするのであれば、回収スべき債権の存在を証明するため、次のような証拠の準備が欠かせません。

  • 契約書
  • 借用書
  • 発注書・受注書・納品書など
  • 仕事を依頼し、業務遂行したことを示すメール、チャットのやりとり
  • 債務者が債務の存在を認めた証拠

通常訴訟では、債務者が争ってくるときには半年〜1年程度の期間がかかってしまうことがあります(債務者が控訴・上告してくるときは更に長期化します)。一方で、債権回収の訴訟では、事実関係にはあまり争いがないことも多く、裁判手続きの中で和解をすることで、早期に解決できるケースも少なくありません。

通常訴訟のメリット・デメリット
通常訴訟のメリット・デメリット

特に、債権についての証明が十分できており、債務者の資力不足から、一括払いが難しく分割払いの和解をするといったケースでは、訴訟提起でプレッシャーをかけることにより、債権回収を促進することができます。

通常訴訟による債権回収は、次のような流れで進みます。

  1. 訴訟提起(訴状提出)
  2. 期日の呼出
  3. 答弁書提出
  4. 第1回期日〜(主張の整理)
  5. 証拠調べ(書証調べ、証人尋問など)
  6. (和解)
  7. 判決
  8. 判決書による強制執行

通常訴訟は、裁判手続きのなかで最も正式なものであり、訴状や準備書面などの書類作成に手間がかかるほか、他の手続きより多くの申立費用(印紙代)を要します。そのため、あらかじめ証拠収集を十分に行い、債権回収が実現できるかどうか、見通しの検討が必要となります。

少額訴訟

少額訴訟は、60万円以下の債権回収で利用できる、簡易裁判所で行われる簡易な裁判手続きです。

少額訴訟では、原則として1回の期日で、集中して審理を行い、その日のうちに判決を言い渡されます(民事訴訟法368条)。そのため、早急な解決が可能であり、通常訴訟に比べて費用も安いというメリットがあります。

少額訴訟メリット・デメリット
少額訴訟メリット・デメリット

一方で、債務者が異議を述べたときには通常訴訟に移行してしまうこと、同一の簡易裁判所に対して1年に10回までしか提起できないことといったデメリットがあります。そのため、争いが大きいときには、少額訴訟を使うとかえって時間がかかってしまうおそれがあります。

少額訴訟による債権回収は、次のような流れで進みます。

  1. 訴訟提起(訴状提出)
  2. 期日の呼出
  3. 答弁書提出
  4. 第1回期日において判決
    (異議申立てがされると、通常訴訟に移行)
  5. 判決書による強制執行

なお、少額訴訟の審理では、即時に調べられる証拠しか調べてもらえないため、少額訴訟で債権回収を実現するには、有利な書証を持参したり、証人に同行してもらったりといった準備が必要です。

即決和解

即決和解は、当事者間で合意した内容について、簡易裁判所で即時に和解を成立させる裁判手続きです。

当事者間で作成した和解書しかないと、和解書どおりに支払われなかったとしてもすぐに強制執行はできず、あらためて訴訟提起しなければなりません。即決和解しておけば、債務名義を取得でき、約束どおりに払われなかったときすぐ強制執行することができます。

即決和解は、公正証書に比べて費用が安く、金銭債権以外の内容も盛り込めるメリットがあります。

債権回収の裁判手続きを弁護士に依頼するメリット

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

最後に、債権回収を裁判手続きによって実現するとき、弁護士に依頼するメリットについて解説します。

最適な裁判手続きを選択できる

上記に解説したとおり、債権回収のために利用できる裁判手続きには、最もよく利用される通常訴訟だけでなく、民事調停、支払督促、少額訴訟など多くのものがあり、状況にあわせた最適な手段を選択しなければなりません。また、債務者の対応が不誠実なときは、民事保全、強制執行(財産の差押え)を活用する必要があります。

このような手続きの選択は、費用面や回収可能性を比較し、債務者側の対応も見ながら慎重に検討しなければなりません。

債権回収の経験豊富な弁護士に相談すれば、状況に応じたアドバイスをもらうことができます。

迅速に債権回収を進められる

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

債権回収で裁判手続きを利用するとき、いずれの手続きを選択するとしても、裁判所に提出するための書類を作成しなければなりません。裁判所へ提出する書類は複雑であり、特に、通常訴訟などの正式な方法であるほど、弁護士に依頼せずに債権回収を実現するのは困難です。

弁護士は、裁判所の手続き書類の作成、裁判手続きの申立てを日常的に行っているため、速やかに書面を作成し、手続きを進行してもらうことができます。債権回収は、債務者に逃げられる前に行う必要があるため、スピード重視で進めなければならないため、弁護士への依頼が有効です。

請求する債権額の上限がない

債権回収は、弁護士だけでなく、司法書士、行政書士などが担当することがあります。一般的に、弁護士費用よりも、他の士業の費用のほうが割安に設定されています。

しかし、行政書士は、債権回収について代理人として交渉することが禁止されているため、あくまでも交渉は本人が行う必要があります。また、司法書士は簡易裁判所で行う裁判手続き(訴額140万円まで)しか代理することができません。

そのため、代理人として裁判手続きを行い、債権回収を確実に図るためには、弁護士に依頼することが結果的に早く、コストの面でも優位であることが多いです。

まとめ

今回は、裁判手続によって債権回収を実現するために理解すべき知識について弁護士が解説しました。

「裁判所を利用した債権回収」というと、時間や費用がかかりハードルが高いと考える方も多いでしょう。しかし、「費用をかけずにもう少し交渉しよう」、「話し合いで払ってもらえるかもしれない」と交渉にこだわりすぎ、問題解決を先延ばしにしていると、債務者の財産がなくなったり破産してしまったりして、回収できなくなるおそれがあります。

債権回収トラブルでは、長期化すれば証拠が散逸したり、財産隠しされたりなど、本来であれば得られた有利な解決を逃してしまうリスクがあります。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所では、多くの企業のサポートをしており、債権回収についても、豊富な回収実績があります。

裁判手続きによる債権回収をお考えの方は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。

目次(クリックで移動)