PGA、プランスゴールドの投資詐欺被害について、非常に多くの問い合わせをいただいています。同案件に関する当事務所への問い合わせは、「相談予約・お問い合わせ」にいただいたもののみ対応しており、電話での質問にはお答えしかねます。
なお、PGA、プランスゴールドの投資詐欺被害の弁護依頼については、既に募集を締め切っておりますのでご注意ください。
PGA・プランスゴールドの詐欺被害によって、深刻な被害を受けた多数の被害者に向けて、解説をまとめましたので参考にしてください。PGA・プランスゴールドは、巨額の詐欺被害を生んでおり、大きな社会問題となっています。
悪徳な投資詐欺商法は跡を絶ちません。悪徳商法は、巧妙な手口や甘い言葉で、「もしかしたら儲かるのではないか」と思わせ、被害者から多額のお金を奪っていきます。悪質な詐欺によってなけなしのお金を奪われ、経済的に困窮してしまう被害者も多くいます。
被害者の会・集団訴訟・弁護団の違い
PGA・プランスゴールドの詐欺被害のように、多数の被害者が、同様の手口でだまされて損害を負ったケースで、被害回復に用いられるのが、被害者の会、集団訴訟、弁護団といった手法です。はじめに、これらの用語の意味と違いについて解説します。
被害者の会とは
被害者の会とは、同じ被害にあった被害者の方たちが組織する団体のことです。
被害者の会は、被害者だけでも組織することができます。ただし、被害を回復したり、告訴・告発したりといった法的な手続きには弁護士のサポートが必要なので、弁護士が中心となって組織するケースも少なくありません。この場合、被害者の会が中心となって弁護団を組み、集団訴訟を起こすという方法を取ることが多いです。
被害者の会の目的
被害者の会の目的は、一次的には被害回復や告訴・告発といった法的手続きにあります。しかしそれだけでなく、被害状況の共有、メンタルケアなどの目的もあります。そのため、入会したからといって全ての手続きに参加を強制されるわけではありません。
被害者の会のルール
被害者の会のルールは、会において決められます。集団的な被害回復を目指すため、内部ルールを遵守しない人は、被害者だったとしても入会できなかったり、退会を命じられたりすることがあります。被害者の会の詳しい内容やルール、入会手続きは、会ごとに異なるので、ホームページで情報収集したり、個別に問い合わせたりするのがおすすめです。
集団訴訟とは
集団訴訟とは、多数の被害者がいるケースにおいて、集団的に訴訟手続きを行うことです。この場合、複数の被害者が共同で原告となって、加害者を訴えることとなります。
集団訴訟に向いているのは、被害状況や手口が類似していて、法的な争点が共通しているケースです。被害者それぞれに固有の事情があったり、目標が同じでなかったりする場合、同じ手続きで進めるとかえって審理が遅れるおそれがあります。
集団訴訟のメリット
集団訴訟には次のようなメリットがあります。
- コストを削減できる
裁判費用や弁護士費用を原告全員で分担することで、個人の負担を軽減できます。 - 法的手続きを効率化できる
必要な作業を被害者間で分担したり、同じ弁護士に依頼したりすることで、手間を省いて効率化し、一括して解決することができます。 - 被害者間で情報や証拠を共有できる
多くの被害者が情報や証拠を共有することで、勝訴の可能性を高めることができます。
集団訴訟のデメリット
一方で、集団訴訟では次のようなデメリットやリスクを受け入れなければなりません。
- 個別事情の反映が難しい
一律の解決となり、個々の事情は考慮されないので、一人ひとりの被害者に寄り添われない可能性があります。 - 訴訟の進行が遅くなる
多数の原告が関与するので、調整や手続きに時間がかかり、解決までの期間が長引くことがあります。 - 少額の賠償金で終わる場合がある
集団訴訟で獲得できた賠償金は原告全員に分配され、抜け駆け的に救済を求めることはできません。
弁護団とは
弁護団とは、PGA・プランスゴールドの詐欺被害のように、一般消費者が被害に遭った「消費者事件」について、複数の弁護士が一つの事件のために協力して弁護活動を行う団体のことです。
弁護団は、同一の事務所内の複数の弁護士によって組まれることもありますが、法律事務所の枠を越えて多数の弁護士が参加することもあります。被害の規模、被害額、被害者の数などから想定される業務量によって、弁護団の規模や弁護士数、かかる費用も様々です。
集団的な被害が生じている消費者事件は、一件ごとの被害額はさほど高額でなく、弁護士費用を負担すると採算が取れないケースもあります。この場合に、同一の被害を受けた被害者が共同して費用を負担することで泣き寝入りを防げるのが、弁護団のメリットです。
PGA・プランスゴールドに関する詐欺被害について
PGA・プランスゴールドに関する詐欺被害について、その概要、争点、救済の必要性を解説します。なお、係争中の案件についての解説は、断定的な判断や救済を保障するものではなく、現時点における暫定的なものであることを理解してください。
相手方となりうる者
Prance Gold Holding社(以下「PGH社」)及びその役員が相手方となるのは当然です。ただし、本店所在地がセーシェル島であり、役員も外国人なので、実質的な請求は難しい可能性があります。
同社の活動には日本人が関与しているところ、同社関係者のほか、PGA・プランスゴールドについて勧誘、広報に関わったインフルエンサーや、詐欺被害の拡大に貢献した人物が相手方となる可能性があります。そのため、多数を勧誘したインフルエンサー、イベントやセミナーに関与した者、日本のトップリーダーらを主要な対象者として検討することができます。
PGA・プランスゴールド詐欺被害の事案概要
PGH社は、「独自の取引アルゴリズム(Prance Gold Algorithm: PGA)を世界最大の3つの暗号通貨取引所で運用し、利益(つまり、BTCの量の増加)を生み出す取引のみを実行する」と謳い、投資者の預金や暗号通貨を、PGAに基づく投資で運用し、高額の利益を分配するという名目で資金を集めました。また、紹介報酬が得られるマルチ商法的な仕組みも内在していました。
投資者はサイト上で配当を確認でき、一見すると順調に配当額が増えているかのように装っており、ある一時点までは出金も可能でした。その結果、試しに少額から始め、安心して追加の投資を行ったという被害者も多くいます。
昨年10月に出金が停止され、詐欺であることが発覚しました。現在もなお、被害金の回収を求める人は多く、被害金額は400億円を超えるとも言われています。
争点
「投資」は、健全に運用されていても損失が出ることもあり、「自己責任」が基本です。そのため、プロジェクトが破綻したというだけで責任追及できるとは限りません。しかし、出資を受ける時点で「破綻が必至な投資スキームである」と認識していたか、もしくは、容易に認識可能であった場合は責任を負います。したがって、PGAの投資スキームが破綻する可能性について。勧誘当時に認識することができたかどうか、という点が主な争点となります。
PGH社が約束していた利益は、常識からして不可能といえるほど高配当であり、実際は運用を行わず、集めた資金から配当を出す、いわゆる「タコ足配当」が疑われます。高配当を約束し、期間を定めて出金ロックをかけるオプションを提供したり、急に出金できなくなったりといった事情からして、投資者に利益を帰属させない、いわゆる「金融商品まがい取引」であったことも疑われます。
PGHの役員だけでなく、積極的に勧誘、広報を行った者も、上記のように問題ある投資の責任を負う可能性があります。ただし、その責任の範囲は、それらの者が知っていた事情、関与の程度、立場に応じて負うべき注意義務とその違反の程度などによって異なるため、相手方となる人ごとに判断しなければなりません。
救済の必要性
本件は、年齢層としては、学生から高齢者まで、居住地も北海道から沖縄まで、全国で幅広い人が被害に遭っており、老後の生活資金を失ったり、借入をして投資をしたりしている人もいます。
本件の黒幕となっていた者は、被害者から預った多額の金員を手中にし、被害回復や刑事訴追を免れようとしています。そのため、社会正義の実現と、社会的弱者の権利保護の側面からも、被害者救済の必要性が高い事案であると考えています。
「仮想通貨詐欺の返金方法」の解説
PGA・プランスゴールド詐欺被害の弁護方針
次に、PGA・プランスゴールド詐欺被害の弁護において、検討すべき弁護方針を解説します。なお、詐欺被害・消費者被害の救済方法についての一般論であって、PGA・プランスゴールド詐欺被害の弁護についての当事務所の方針を示すものではありません。
民事事件と刑事事件の違い
詐欺被害・消費者被害は、民事事件と刑事事件の2つの争い方があります。
民事事件とは、損害賠償請求や返金請求の交渉を行い、決裂する場合には民事訴訟を提起して勝訴を目指す方法です。刑事事件とは、捜査機関に告訴・告発をして立件を目指し、刑事訴訟において厳格な処罰を求める方法です。
消費者被害・投資被害のケースでは、これ以外にも、事案に応じて、金融商品取引法(金商法)、商品先物取引法、金融商品販売法、消費者契約法、特定商取引に関する法律(特商法)など、消費者被害を目的とする数多くの法律が関係します。
ポンジ・スキームとは
ポンジ・スキームとは、新規の投資者から集めた資金を既存の投資者への配当に充当し、あたかも投資が成功しているかのように見せかける詐欺の手法です。持続的な投資はないため、新規の投資が途絶えると、このスキームは崩壊します。
その結果、典型的なポンジ・スキームの詐欺では、しばらくは高配当を払って安心させておき、一定期間が経過すると支払いを止め、「投資が失敗した」などと理由をつけて残額を返金しません。ポンジス・キームの中には、ネズミ講のように階層構造を作って被害を拡大させる例もあります。
ポンジ・スキームを仕掛ける詐欺師の目的は、自分が利益を得ることにあります。そのため、被害者に利益が還元されることはなく、元金が全額戻ることも期待できません。つまり、ポンジ・スキームは、お金を預けた瞬間から、破綻が避けられない仕組みであると言えます。
損害賠償請求、返金請求
投資詐欺の被害にあった場合、まずは弁護士から内容証明を送り、損害賠償請求と返金請求を行います。相手が話し合いに応じるなら、支払額や支払方法を交渉し、和解書を作成します。和解で終了する場合でも、詐欺をはたらく人が将来も誠実に支払いをするとは信用しがたいため、賠償義務の履行にインセンティブをもたせるため、次のような合意をするのが実務です。
- 全損害額を確認し、一部が支払われたことを条件に残額を免除する
- 支払いを遅滞したときは支払額が増額することを定める
- 法定利率を超える遅延損害金を設定する
- 担保や連帯保証人を設定する
- 公正証書や即決和解を利用して債務名義を得る
訴訟手続き・ADR
訴訟外の交渉による解決が難しいときは、訴訟を提起して損害賠償請求と返金請求を行います。例えば、詐欺であることを否定したり、被害額に乖離があったり、誠実に話し合わず、連絡もなく放置したりといったケースでは、逃げられる前に早急に訴訟提起をしなければなりません。
当事者間の話し合いが困難なら、ADR(裁判外紛争解決)を利用する方法もあります。投資被害で活用できるADRは、全国銀行協会相談室・あっせん委員会(全銀協)、証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAX)、日本商品先物取引協会、紛争解決センター(日本弁護士連合会)などがあります。
財産の保全(仮差押え・仮処分)
民事訴訟を提起して損害賠償請求、返金請求を行う場合には、債務名義を得るまでに相手方の財産が散逸してしまわないよう、あらかじめ財産を保全しておくことが重要です。勝訴しても、財産の所在が不明だったり、そもそも無資力だったりすると、被害回復が困難になってしまいます。
詐欺をはたらく相手に対して、効果的に財産を保全するには、相手に知られることなく秘密裡かつスピーディに行わなければなりません。民事保全の手続きには、その財産の種類に応じて、不動産の仮差押え、預貯金債権の仮差押え、処分禁止の仮処分などがあります。また、証拠が隠滅されてしまう危険があるケースでは、訴訟に先行して証拠保全手続きを利用することもあります。
振り込め詐欺救済法による口座凍結
振り込め詐欺救済法(正式名称「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」)は、平成20年6月21日に施行されました。必ずしも振り込め詐欺でなくても、犯罪に用いられた疑いのある預金口座なら、取引の停止などの措置を講じて凍結することができます。
預金口座を利用した詐欺の場合、被害者に気づかれる前に引き出されることが多いです。そのため、被害者側では、迅速に口座凍結を行い、被害回復の原資を確保する必要があります。弁護士が調査して同法の取引停止措置を申請すれば、口座凍結を実施することができます。詐欺被害に利用された口座を知っていて、詐欺から間もないなど、まだ財産が残っている可能性があるなら、口座凍結の方法を検討する必要があります。
告訴・告発
被害回復のためには、民事事件だけでなく刑事事件の手続きも必要です。刑事事件の手続きの中で、被害者が検討すべきなのが、告訴・告発です。
犯罪被害について、被害者が捜査機関に処罰を求める行為を「告訴」、被害者以外が処罰を求める行為を「告発」といいます。投資詐欺の場合、詐欺罪をはじめとした犯罪が成立する可能性が高く、告訴・告発の対象となります。
告訴・告発をするには、告訴状などを作成し、捜査機関(警察署など)に提出します。不当な受理拒絶は許されないものの、形式面の不備や事件性の低さを指摘し、「受理しない」という対応をされることがあります。そのため、告訴状の提出には、法律知識に基づいた十分な準備が必要です。
まとめ
今回は、PGA・プランスゴールドの詐欺被害について解説しました。
同案件は、ポンジ・スキームに該当する可能性が高く、出金が停止された現在においては、詐欺であることが明らかとなりました。
なお、当事務所では、依頼いただいた方のサポートを優先するため、本件の弁護については募集を締め切りました。また、集団訴訟では、個別の被害回復ではなく、依頼者全体の利益を優先するため、原則として個別のお問い合わせ、説明は行っておりません。ご理解いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。