無料求人広告をめぐる詐欺トラブルへの対応方法【弁護士解説】

「求人サイトに、無料で広告を掲載しませんか?」という電話営業がかかってくることがあります。「人手不足」が深刻化している企業の中には、「無料」という甘い言葉に誘われて、契約してしまう会社も少なくありません。

しかし、昔から「タダより高いものはない。」という言葉がある通り、このような営業電話の狙いは、無料求人広告を装った「詐欺」であり、法外な金額を請求されてしまうおそれもあります。

無料期間が満了するタイミングで無断で更新をさせたり、解約の手続をとりづらくさせたりといった手口により、通常の求人広告よりも更に高い「ぼったくり」の費用を請求する手口が横行しています。

詐欺業者側の手口は、次々と悪質化、巧妙化しており、騙されないためにも自衛が必要となります。

そこで今回は、無料求人広告をめぐる詐欺トラブルでよくある手口のご紹介と、実際に詐欺に遭ってしまったときの対処法について、弁護士が解説します。

1. 無料求人広告詐欺とは?

少子高齢化による人手不足が加速しています。特に、中小企業やベンチャー企業などでは、求人競争に勝てず、たとえ有料で求人広告を出したとしても、十分に応募を確保できない場合もあります。

このような会社側の弱みに付け込み、「求人広告を無料で提供する」ことをエサにして、実際には多額のお金を騙し取ろうとするのが、無料求人広告詐欺のトラブルです。

無料求人広告の詐欺トラブルでよくある手口は、例えば次のようなものです。

無料求人広告詐欺の例

突然、電話やFAXで、求人広告会社を名乗る会社から、営業が来ます。担当者から、最初は、「一定期間(数週間~1か月程度)は掲載が無料になる。」、「有料になったら解約すればよいから試してみてほしい。」と説明があります。

人手不足に困って、採用が少しでもできるのであれば、と担当者の言う通りに申込書に記載し、FAXをすると、これによって契約を締結したこととされてしまいます。

しかし実は、申込書や契約書の裏面には、よく見ると小さな文字で、自動更新に関する条項やキャンセルに関する厳しいルールが記載されています。

その後、無料期間の満了日が来ても、顧客が気づかなければ解約は行われず自動更新されますし、気づいても、あの手この手を使ってキャンセルを阻止しようとします。その結果、求人広告の掲載料として、月額10万円~30万円といった高額の請求書が送られてきます。

ハローワークで求人票を出している会社を中心に営業をしているようで、厚生労働省からも注意喚起がなされています。

巧妙かつ悪質な手口の場合、通常の求人広告の営業と見分けるのがとても大変ですが、次の特徴のうち1つでもあてはまる場合には、「詐欺なのではないか?」、「実際には必要以上のお金がかかるのではないか?」と疑ってください。

ここでは、「無料求人広告詐欺ではないか?」と疑う要素となる、重要な事実について、弁護士が解説します。

1.1. 「無料」が強調された勧誘

無料求人広告詐欺のトラブルが多発しているのは、人手不足に悩む中小企業にとって、「無料で何でもできる」と勘違いさせてしまうような手法での勧誘が行われていることが最初の原因です。

このような求人広告を巡る詐欺トラブルは、「飛び込み」で営業されており、電話やFAXによって最初の勧誘がなされます。

その際には、「無料」であることが強調されます。FAXの場合、A4用紙1~2枚程度の要綱に、「無料」と大きな太字で書かれており、残りの部分には細かい文字が羅列されており、読みづらくなっている場合もあります。

電話での勧誘の場合にも、「無料サービスだからお金はかからない。」、「有料になる前に解約すれば大丈夫。」、「今だけのキャンペーンだからお得。」などといった営業トークで、「無料」であることが強調されます。

詐欺トラブルの事例において、営業担当者が、会社を訪問することはほとんどありません。申込書をFAXしなかったり、契約するか迷っていたりすると、しつこく電話がかかってきて、早く契約締結するよう催促されます。

1.2. 誤解を生じやすい説明

本当に無料でサービスを提供してもらえるのかと不安になって、担当者に確認をしても「費用はかかりません。」と断言されます。

しかし、実際には、申込書や契約書の裏面などに、小さな文字で、自動更新に関する規定、解約・中途キャンセルに関する注意書きが記載されていることが少なくありません。

本来であれば、契約時にしっかりと説明をし、見やすく目立つ文字で記載されていなければならない重要なことですが、顧客が見落したり、誤解したりしてくれることこそが、無料求人広告詐欺を行う業者の思惑なのです。

もっと悪質なケースだと、契約条件の重要な部分は、申込書や契約書には記載されておらず、「別途説明する。」、「別紙に記載した通りに同意する。」とされており、別紙が後からFAXや郵送で送られてくるケースもあります。

1.3. 解約依頼に対応してくれない

しかし、このような上手い口車に乗せられて、「無料なら」という軽い気持ちで一たび求人広告掲載の契約をしてしまうと、詐欺業者の思うツボです。

このような求人広告の詐欺業者の事例では、対面で契約書を作成するようなことはなく、FAXで申込書や契約書といった書面を送付することを指示され、これにより契約が成立したものとされます。

無料キャンペーンの期間が終了することに気づいて、解約をするよう依頼をしても、詐欺業者の場合には、なかなか解約手続きの対応をしてくれません。

詐欺トラブルの被害にあった事例の中には、解約期間満了のぎりぎりであったり、期間満了日の当日になってはじめてFAXで解約書面が送られてきて、手続が遅れた場合には更新されてしまうという注意書きが記載されているケースもあります。

詐欺業者は、無料期間終了時のキャンセルを阻止するために、あらゆる手を使います。キャンセル用の電話やFAX番号が通じない、解約手続きの方法を教えない、といった事例も見られます。

1.4. 無断で勝手に更新される

もっと悪質な手口の詐欺の場合には、解約手続きをしづらくするだけでなく、勝手に更新されて、有料契約に移行してしまいます。

最初の契約書や申込書の裏などに、細かい文字で、期間が過ぎた場合には自動的に有料契約となること、その場合の費用がこっそり記載されていたり、後日FAXでこっそり送付されてきたりします。

会社のFAXには、他にも営業DMが多く届いていて、同様の営業DMと思って捨ててしまったら、その中に「期間満了したら自動的に有料契約で更新する。」と小さく記載されていた、というケースもあります。

あえて営業DMと間違えて捨てられてしまうことを狙って、改めて「無料」であることを強調した派手な体裁のFAXを送る、巧妙な詐欺の手口もあります。

後から詐欺業者に文句を言っても、「有料契約となることについてしっかりと通知している。」、「事前に申込書に記載し、同意を得ている。」といった反論をしてきて、聞く耳を持ちません。

1.5. 求人広告の効果は全くない

無料求人広告を巡る詐欺トラブルでは、求人広告自体の効果は全くありません。

というのも、掲載を約束した求人広告サイト自体が、詐欺のために作成したものであって、詐欺業者が広告費用を投下することもなく、アクセスが増えるはずもないからです。

求人広告の効果が全くなく、人材紹介が一切なかったとしても、「無料だから仕方ないか。」とあきらめて文句も言わずに期間が経過しているうちに、いずれ忘れてしまう会社も多いものです。

しかし、そのまま無料求人広告の存在を忘れてしまい、期間満了日を失念して、解約書面を送付するなどの解約手続きをとらなければ、「自動更新」によって有料化し、多額の費用をとられてしまうのが、よくある詐欺の手口です。

2. 無料求人広告詐欺に騙されないための予防策

詐欺まがいの悪質な手口を使う求人会社に騙されないために、新しい詐欺手口である「無料求人広告詐欺」をよく理解していただく必要があります。

「無料求人広告詐欺」を実際によく見かけるようになったのは、2018年から2019年にかけてであり、詐欺の中でも新しい部類といえます。そのため、きちんと知識をつけておかなければ、巧妙化する詐欺の手口についていくことができません。

そこで次に、無料求人広告詐欺に騙されないための予防策について、弁護士が解説します。

2.1. 「無料(タダ)ほど高いものはない」

まず何よりも、「無料(タダ)ほど高いものはない」という古くからある教訓を、しっかりと理解することです。

少子高齢化、労働人口の減少にともなう人手不足で、なかなか求人手段を選んでもおれず、「効果が出るのであれば、どんな手段でも使いたい」という会社も多いでしょうが、適切かつ効果的な求人サービスは、他にも数多く存在します。

求人広告を営業する会社は、ビジネスのために、仕事として営業をしています。そのため、「永久に無料」というのでは仕事になりませんし、「全員が無料期間で解約した」というのでは全くお金が稼げません。全くリスクなくサービス提供を受けられることなど、どの業界でも存在しません。

このことを頭に入れて頂ければ、無料求人広告をうたう詐欺業者が、どこかでお金を得ようと、虎視眈々と狙っていることに気づいて頂けるはずです。

2.2. 業者名をインターネットで検索する

インターネットが一般に普及した現在、継続的に詐欺行為をはたらくことは昔よりも難しくなっています。

特に「求人会社名+詐欺」といったキーワードでグーグル検索すると、悪質な手口を繰り返し用いている業者の場合には、詐欺被害にあった方の口コミ、体験談が数多く出てくるはずです。

「無料で求人ができる」という、中小企業の人手不足の足元をみた甘い言葉に騙されず、現実を見て、まずは営業をしてきた業者名をインターネットで検索してみてください。

3. 無料求人広告詐欺にひっかかってしまったときの対処法

ここまで解説してきた予防策を知らず、残念ながら無料求人広告詐欺に引っかかってしまうと、詐欺業者から「期間満了により自動更新されたので、今月分32万4000円支払え。」といった請求書が送られてきます。

無料求人広告詐欺の巧妙なところは、高額ではあるけれども払えなくもない絶妙な金額を請求してくる点にあります。

「契約書チェックをしっかりとせずに見逃していた自分が悪いのではないか。」、「高い勉強代だった。」とあきらめる前に、無料求人広告詐欺にひっかかってしまったときの対策について、弁護士が解説します。

3.1. 詐欺業者の請求には絶対応じない

詐欺業者によるしつこい請求に屈して、求人広告費を支払ってしまった場合、たとえ詐欺行為による不当な利得であったとしても、これを取り返すには被害者側から訴訟をしなければなりません。

「警察に相談しよう。」という方もいるかもしれませんが、ビジネス取引上の紛争であることから「民事不介入」を貫く警察は、あまり大事に取り上げてはくれません。

詐欺業者による請求に応じなければ、詐欺業者側から、求人広告費を請求する訴訟を提起しなければなりませんが、支払意思がないことを断固たる態度で伝えれば、訴訟コストや勝算を考えて詐欺業者側からあきらめてくれる可能性もあります。

ただし、詐欺業者の中には、弁護士に依頼して内容証明郵便を送って来たり、簡易裁判所へ少額訴訟を提起したりといった方法で、更にプレッシャーをかけてくる会社もあります。このような場合には、次に解説する通り、「詐欺」や「錯誤」といった法的主張を行うため、弁護士にご相談ください。

3.2. 契約が成立していないことを主張する

無料求人広告詐欺の被害にあったとき、詐欺業者に対してどのようなクレームを言っても、「書面に記載してあるから」と、裏面に細かく書いてあったり、通常の注意力であればなかなか気づかないFAXなどをたてにとって反論してきます。

しかし、このような非常識的で、著しく不公正な方法によって、契約が有効に成立しているとは考えられません。

そのため、悪質な業者の請求に応じて支払ってしまう前に、また、「詐欺」「錯誤」などを理由とする前に、そもそも悪質な手口によって騙して契約をしたことについて、「契約が有効に成立していない」という反論をすべきです。

3.3. 「詐欺」を理由に契約を取消す

民法96条では、だまされて行った意思表示は、後から取り消すことができるものと定められています。これが「詐欺を理由とする取消」です。

つまり、無料求人広告詐欺が、当初の勧誘内容が全くの嘘で、これに騙されて契約をしてしまったといえるケースの場合には、この民法のルールを用いて、求人広告掲載についての契約を後から取り消すことができます。

3.4. 「錯誤」を理由に契約の無効を主張する

民法95条は、契約の重要な部分について、その認識を誤って意思表示をしてしまった場合に、その意思表示が無効となることを定めています。これが「錯誤を理由とする無効」の主張です。

つまり、無料求人広告詐欺が、被害者となる会社の誤解を誘うような不適切な広告を用いていたケースの場合には、この民法のルールを用いて、求人広告掲載についての契約が無効であることを主張することができます。

3.5. 「公序良俗違反」を理由に契約の無効を主張する

民法90条は、公序良俗に反する契約が無効であることを定めています。公序良俗とは、「公の秩序又は善良の風俗」のことをいい、これに違反する契約が無効となるという意味です。

そして、無料求人広告詐欺が、被害者の誤解を招くことを狙い、わざと読みづらい小さな文字で契約書に「自動更新」、「キャンセル」に関するルールを書いたり、責任追及を逃れるために会社名や責任者を記載しなかったりといった態様が、一般的な契約の常識に反することは明らかです。

3.6. 「債務不履行」を主張する

無料求人広告詐欺の場合、求人の効果を上げてサービスの対価として掲載費をもらうことが目的ではありません。うまく被害者を騙せれば、求人応募を増やそうなどとは端から考えていません。

そのため、当初の勧誘で謳っていたような劇的な効果は一切期待できず、無料掲載期間中の間、求人応募など一切ないことも少なくありません。

当初の勧誘の際に、どのような勧誘をしていたかについて証拠が残っている場合に、これに違反して一切効果が上がっておらず、勧誘文句に伴った求人広告活動を行っていない場合には、「契約内容にある債務を行っていない」ことを意味します。

そのため、仮に契約が有効に成立していたとしても、「債務不履行」を主張して契約をただちに解約することができ、かつ、これによって被った損害の賠償を求めることができます。

4. 内容証明郵便で意思表示する

無料求人広告詐欺の業者と戦うときには、被害者が解約の意思表示をしたか否かや、解約の意思表示をした日にちが、訴訟などの際に争点となることがあります。

言った、言わないの争いを招かないためにも、ここまで解説したように契約の効力を争う主張はすべて、配達証明付き内容証明郵便の形式で送付するようにしてください。

配達証明付き内容証明郵便は、郵便物の到着日と、郵便物の内容が記録される郵便の形式です。

なお、悪質な業者は、契約書や申込書にあらかじめキャンセル方法のルールを指定しておき、「指定の方法に従わなければ、キャンセルは受け付けない」と主張してくることがあります。そのため、合わせて、契約書などに記載された業者指定の方法でも解約の意思表示を伝えるようにします。

契約書や申込書からは会社名がわからない場合や、匿名での営業であったようなケースでは、内容証明郵便の送付先が定まらない場合があります。このような場合であっても、事後にきちんと証拠に残せるよう、メールやSMSの方法によって解約の意思表示を送付した上で、電話で解約の意思表示を伝え、その一部始終を録音しておきましょう。

5. まとめ

今回は、契約勧誘時には「無料」と宣伝して契約しながら、その後「自動更新」などの手法によって有料契約に勝手に移行する、「無料求人広告詐欺」について弁護士が解説しました。

ビジネスは信頼関係を基礎に成り立っていますが、人手不足の現状を逆手にとって、「無料求人広告詐欺」という悪質な詐欺行為をはたらく会社が増加している以上、怪しい営業は最初から疑ってかからなければなりません。

悪質な詐欺業者の中には、弁護士に依頼して内容証明郵便を送付したり、支払督促、少額訴訟などの裁判手続きを利用したりするケースもありますが、これらの手段を利用されたからといって、「詐欺ではない。」、「支払わなければならない。」と決まったわけではありません。

万が一、詐欺まがいの悪質な「無料求人広告詐欺」に引っかかってしまった方は、できるだけお早めに、弁護士に法律相談ください。

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