刑事事件

持続化給付金の不正受給とは?詐欺罪になる理由とよくある手口

2021年9月2日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

持続化給付金の不正受給は、新型コロナ禍によって売上が減少した事業者を救うための給付金を、嘘をついて不正に受給する悪質な行為です。そのため、刑法上の詐欺罪(刑法246条)にあたり、「10年以下の懲役」という刑事罰を科せられるおそれがあります。

緊急事態のため審査が緩くならざるをえず、形式的な要件を見たせば支給を受けられる状況であったことを逆手にとり、不正受給の方法を教える指南役が暗躍し、さらに被害が拡大しました。

今回の解説では、

  • 持続化給付金の不正受給が詐欺罪にあたる理由
  • 不正受給で、詐欺罪の「共犯」となるケース
  • 持続化給付金の不正受給が詐欺罪となるときのその後の流れ

といった問題について弁護士が解説します。

なお、持続化給付金詐欺・持続化給付金の不正受給を行ってしまったときは、逮捕・起訴など最悪の事態を避けるため、早急に自首することがおすすめです。「弁護士による自首同行サービス」の解説もご参照ください。

詐欺罪とは

詐欺罪は、刑法に定められた犯罪のうち、嘘をついて被害者をだましてお金をとる行為です。

詐欺罪について刑法246条で次のように定められています。

刑法246条(詐欺)

1. 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

ある行為が犯罪にあてはまる要件のことを法律用語で「構成要件」といいます。詐欺罪の構成要件は、上記条文により、

  • ①欺罔行為があること
  • ②被害者を錯誤に陥らせたこと
  • ③財物(もしくは財産上の利益)を得たこと

という3要件です。

人をだますことを一般に詐欺と呼ぶことがありますが、刑法上の詐欺罪にあたるためには、だましたことによって財産を得ることが必要となります。

詐欺罪に該当したときには「10年以下の懲役」という刑事罰に処せられます。詐欺罪は、罰金刑が存在しないため、起訴され、執行猶予が勝ちとれなければ懲役刑を受けなければならない重大犯罪です。

なお、ネット上の詐欺でコンピュータ記録を利用するときは電子計算機使用詐欺罪となることがありますが、電子申請でも最終的に審査担当者のチェックが行われ、これをだましてかいくぐるため、通常の詐欺罪となります。

持続化給付金の不正受給が「詐欺罪」にあたる理由

持続化給付金は、新型コロナ禍の影響で売上が前年比50%以上減少したなどの受給要件がありますが、要件を満たさないにもかからず会計書類を偽造・改ざんするなど要件を満たすかのように装い給付金をだましとるのが、時速化給付金詐欺・持続化給付金の不正受給です。

そこで次に、このような持続化給付金の不正受給にあたる行為が、先ほど解説した詐欺罪の要件にあてはまることについて、詐欺罪の3つの構成要件に即して解説していきます。

持続化給付金の不正な申請は「欺罔行為」にあたる

持続化給付金の不正受給にはさまざまな手口がありますが、行政機関に対して虚偽の報告をする行為となりますから、詐欺罪の構成要件にいう「欺罔行為」にあたります。例えば、欺罔行為にあたる不正には次のようなものがあります。

  • 「収入が前年同月比で50%以上減少した」という要件を満たさないのに、虚偽の決算書を作成しこれを満たすかのように装った
  • 新型コロナ禍以外の理由による売上減少なのに、新型コロナ禍の影響があったかのように装った
  • 会社員なのに、売上表などを作成して個人事業主であると虚偽の報告をした

持続化給付金の不正受給では、これらの欺罔行為となる申請がインターネットを通じて行われ、虚偽の報告を行ったことについての記録が残ります。そのため、刑事事件としての立件が比較的容易です。

不正受給により「被害者を錯誤に陥らせた」

あなたが虚偽の報告をすることで持続化給付金の不正受給を企んだとき、新型コロナ禍における混乱状況では、十分な時間をかけて審査することが事実上困難でした。

そのため、受給要件を満たすかのような虚偽の報告がなされたときには、行政の審査担当者を錯誤に陥らせるため、詐欺罪の構成要件のうち「被害者を錯誤に陥らせた」という要件を満たすこととなります。

この点で、持続化給付金の不正受給は、被害者が国となるため、不正受給の返金(経済産業省)をしても示談ができません。なお、示談ができないとしても、不正に受給した全額を返金した事実は有利な情状として考慮してもらうことができ、逮捕や起訴を避けたり、執行猶予を獲得したりするのに有効です。

不正受給により「財物(もしくは財産上の利益)を得た」

最後に、持続化給付金について不正な申請をして、審査担当者が錯誤に陥った結果、給付金を受領したときには、「財物(もしくは財産上の利益)を得た」という詐欺剤の構成要件を満たすこととなります。

給付金があなたの指定する口座に振込入金された時点をもって詐欺罪が既遂となります。詐欺罪は未遂も処罰される(刑法250条)ため、虚偽の申請を行ったが結果として給付金を得られなかったときにも、詐欺罪と同様に処罰されます。

なお、不正受給の返金(経済産業省)をしても、一旦不正に受給してしまったときには詐欺罪の既遂となる点に注意してください。

指南役の不正受給に加担し、詐欺罪の「共犯」となるケース

持続化給付金詐欺では、不正受給のやりかたを教える、いわゆる「指南役」に誘われ、目先のお金欲しさに詐欺罪を犯してしまう例が増加しました。このようなケースで最も悪いのは、悪質な意図をもって被害を拡散している指南役ですが、これに加担してしまった人も詐欺罪であることに変わりはありません。

そして、詐欺罪に対する関与の程度が低いケース、例えば、

  • 指南役に運転免許証のコピーを送っただけ
  • 指南役から送られてきた資料を窓口に提出しただけ
  • SNSで宣伝したり友人を勧誘したりしただけ

といった例でも、あなたの行為の結果、不正受給が起こったときには共犯として処罰されるリスクがあります。共犯には、共同正犯、教唆、幇助の3種類がありますが、いずれも、犯罪行為をすべて自分で行わなくても、共犯者と共同して犯した罪全体の責任を負います。

特に、共謀共同正犯では、共謀し、互いの行為を利用しあっていれば共犯者が行った罪の責任を負わされてしまいますから、一定の加担をした場合には詐欺罪で処罰されるリスクがあります。共謀共同正犯では、詐欺罪の実行行為である「欺罔行為」を行っていなくても、事前に話し合いをして犯罪の実現に加担したとき、実行犯と同様の罪となるという考え方です。共謀共同正犯は、正犯と同等の重い責任を負います。

持続化給付金を不正受給するために、運転免許証などの身分証明書が不可欠であり、この点で、たとえ実際にだます行為をしたのが指南役でも、あなたの協力なくしては犯罪が行えず、とても重大な役割を担ったと評価されてしまいます。

なお、もらった持続化給付金100万円の大半を指南役に報酬として渡していても、被害額は100万円となります(実際、半分以上が指南役の報酬であったケースもあります)。

詐欺罪にあたるとは知らなくても処罰されるケース

持続化給付金の不正受給に加担してしまった方の中には、

  • 詐欺罪だとは知らなかった
  • 指南役にすべて任せていたからよくわからない
  • 指南役からみんなやっているから大丈夫といわれた
  • 審査が緩く、不正受給や詐欺は発覚しない

といった甘い考えで詐欺罪に手を染めてしまう方が少なくありません。内心では違法ではないかと後ろめたい気持ちで指南役に聞いても「大丈夫」といわれ、目先のお金欲しさについ従ってしまうこともあります。

詐欺罪の構成要件を満たしても、詐欺罪の「故意」がなければ詐欺罪は成立しません。全くやましいことがないのであれば無罪を主張すべきです。

しかし、刑法の「故意」とは「持続化給付金を不正に受給しよう」という悪質な意図(「確定的故意」といいます)までなくても、「もしかしたら違法な行為かもしれない」という程度の意図((「未必の故意」といいます)で足ります。指南役に巧妙にだまされていたとしても、この程度の意図があれば、「故意」があると認められ、詐欺罪となります。

なお、指南役の関与が大きいケースでも無罪にはなりませんが、指南役とのやりとりや連絡先などの情報を積極的に捜査機関に伝えることで、反省の態度をより強く示し、有利な情状として考慮してもらうことができます。

持続化給付金の不正受給が詐欺罪となるときのその後の流れ

最後に、持続化給付金の不正受給が詐欺罪になるとき、その後に逮捕、起訴され、処罰されるまでの流れについて解説します。

逮捕されたときの流れ

持続化給付金に関する詐欺罪で逮捕されると、逮捕から48時間は警察、その後24時間は検察の身柄拘束を受けます。この期間内に検察が勾留請求し、裁判所が勾留決定をすると、勾留請求日から10日間、勾留により身柄拘束が継続します。その後、10日を上限として勾留延長されることがあります。

以上のことから、逮捕後の身柄拘束は、最大で23日間続きます。また、持続化給付金の不正受給では、指南役や勧誘者など複数の人が関与し、情報共有や証拠隠滅が行われるおそれがあることから、勾留の際に接見禁止が付されることがあります。接見禁止となると、弁護士以外と面会することができなくなります。

なお、逮捕されない場合でも在宅事件として捜査を受け、取調べのための出頭を要請され、後に起訴されるケースもあります。

起訴されたときの流れ

検察官が、勾留期間中に起訴すると、刑事裁判となります(なお、勾留期間中に起訴されなければ釈放)。

持続化給付金の不正受給のうち、被害額が大きいもの、多くの勧誘をしていたり指南役と判断されたりするものについては、詐欺罪により起訴されるケースが多いです。

起訴後1ヶ月程度で初公判が開かれ、単純な事案では1回で結審し、次の期日で判決が下されます。持続化給付金100万円の不正受給のみなど軽微なケースでは、情状弁護をよく行えば執行猶予を獲得できる可能性が高いです。

早期の自首がおすすめ

自首は、犯罪内容を捜査機関に告白し、その処分に服するという意思表示をすることです。刑法42条では、「捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定められています。

自首にはこのように刑を軽くする効果のほか、逮捕や起訴を避け、前科がつくことを回避したり、実名報道されないようにして不利益を最小限に抑えたりするメリットがあります。犯罪と犯人が発覚する前に行わなければ刑法上の「自首」と評価されないため、早期の対応が必須となります。

自首の効果を最大限に発揮するためには、刑事事件を得意とする弁護士に、自首同行を依頼する方法が有効です。

参考解説

刑事事件は浅野総合法律事務所にお任せください!

今回は、持続化給付金の不正受給が、刑法上の詐欺罪にあたる理由について、詐欺罪の構成要件、詐欺罪の故意といった法律的な観点から解説しました。

持続化給付金詐欺・持続化給付金の不正受給は、軽い気持ちで行われることが多いですが、実際には、思ったよりも簡単に詐欺罪にあたってしまいます。指南役にまかせていた、実際に申請したのは自分ではないなど、気持ちを軽くして加担しやすくするのも、指南役の悪質なやり方の1つであり、詐欺罪が成立することに変わりはありません。

逮捕、起訴などの取り返しのつかない事態となってしまう前に、早急な自首と返金手続きを行うことがおすすめです。

刑事事件についてお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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