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借金は分割払いにできる?交渉の方法と分割払い契約書【テンプレート】

解説の執筆者

弁護士法人浅野総合法律事務所

代表弁護士

浅野英之

東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。

「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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借金の返済が苦しく、一括で支払えずに悩む方からの相談が多く寄せられます。

一括で支払うのが難しいとき、債権者と交渉して分割払いにしてもらうことを検討すべきです。実際、話し合いによって分割払いの合意を実現したケースも少なくありません。突然の解雇で収入がなくなったり、事故や病気で出費が嵩んだりすれば、予定通りの返済は難しいでしょう。

分割支払いの合意は、債務者にとって自己破産を避ける有効な方法であり、債権者にとっても一定の返済が約束されるメリットがあります。しかし一方で、交渉の進め方を誤ると、分割払いを断られたり、裁判に発展したりするおそれもあるため注意が必要です。

今回は、借金を分割払いにできるケースと交渉のポイント、分割払いを合意する際の注意点について、弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 借金を一括で返せないとき、分割払いを実現するには妥当な和解案を提案すべき
  • 分割払いを続けることが、自己破産と比べて合理的な選択肢かを検討する
  • 分割払いについて債権者の承諾を得られたら、必ず分割払い契約書を作成する

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借金を分割払いにする方法

お金

はじめに、借金を分割払いにするための方法について解説します。

一括で返済しきれず、分割払いを実現するには、債権者の同意が必要となります。そのために、任意整理(交渉)と裁判手続きのそれぞれの方法を理解しておいてください。

任意整理における分割案の策定

第一に、任意整理(交渉)で分割案を策定する方法があります。

任意整理とは、弁護士が債権者と直接交渉し、将来利息のカットや元本の分割払いの合意を目指す手続きです。この交渉では、利息制限法の上限利率に従った「引き直し計算」を行い、過払い金がある場合は元本に充当して残債務を減らすことができます。これにより確定した残元本のみを分割払いにし、将来利息は付さないという和解案を提案するのが実務の通例です。

そして、残元本を3年から5年(36回〜60回)程度の分割払いとする合意を目指すのが基本となります(一方で、これ以上の長期分割は、債権者の同意を得られないことが多いです)。

債権者との合意が成立しないとき、特定調停を用いる例もあります。これは、裁判所が仲介して調整を図る手続きであり、裁判所で行われるものの、自己破産などの法的整理と異なり、話し合いによる分割条件の組み直しを目的としています。

裁判手続きにおける分割払いの定め

第二に、裁判手続きの中で、分割払いを定める方法があります。

債権者が債務者に対し、貸付金の返還を求めて訴訟を起こしても、現実問題として、債務者の資力が十分でなければ一括返済はできません。債権者側でも、勝訴しても強制執行する財産もない場合、分割合意に応じるケースも少なくありません。

民事訴訟法275条の2は、金銭の支払請求訴訟において被告が事実を争わない場合に、裁判所はその資力を考慮して、5年を超えない範囲での分割払いや遅延損害金の免除を命ずる「和解に代わる決定」をすることができると定めています。

また、民事訴訟法375条は、判決を言い渡す際に、特に必要があると認めるときは、3年を超えない範囲で分割払いの定めが可能であるという「判決による支払猶予」を定めています。

分割払いにするための交渉の流れ

次に、分割払いにするための交渉の流れについて解説します。

前章で「任意整理における分割案の策定」について解説しましたが、この方法で分割払いを実現するには債権者の同意を得る必要があり、交渉の進め方に注意しなければなりません。

STEP

残元本を確定する

まず、分割払いで支払うべき残元本を確定しましょう。

前述の通り、任意整理の方法で分割払いを行う場合、将来利息はカットするよう債権者と交渉するのが通例です。また、利息制限法の上限を超える利率で返済を続けていた場合、過払い金の返還請求、もしくは元本への充当が可能なケースもあります。

STEP

支払計画を作成する

次に、債権者に対して提示する支払計画を作成しましょう。

支払計画で重要なのは、債権者の同意を得られる合理的な提案とすることです。実務では、月収から固定費(家賃・光熱費など)を控除した額の3分の1を毎月の返済額の目安とし、3年から5年(36回〜60回)程度の分割払いを提案することが多いです。

一方、返済が滞らないよう、無理のない計画とすることも重要です。そのために、家計簿で収支を管理し、遊興費やサブスクなどの不要な出費を抑える努力も必要です。

STEP

債権者の性質に応じて戦略的に交渉する

支払計画を作成したら、債権者に提案して交渉を行います。

このとき、債権者が個人(友人や知人、家族など)か、金融機関(銀行、クレジットカードやローン会社など)かによって、交渉のポイントが異なります。

債権者が個人の場合

債権者が個人の場合、人間関係や信頼の有無が影響します。

そのため、誠意をもって交渉に臨むことが大切です。個人の債権者は、金融機関とは異なり「損得」ではなく「感情」で動くことも多く、感情的な対立が激しいと、メリットのある分割提案でも拒絶されるおそれがあります。

個人の債権者に対しては、お金を貸してくれたことへの感謝を伝えるとともに、どうしても支払いが難しい事情を具体的に説明しましょう。

債権者が金融機関の場合

金融機関は、借金の分割払いの交渉を日常的に受けています。

そのため、実務上の一定の相場に基づいて交渉することが適切であり、弁護士を窓口にして任意整理(交渉)を進めるのがよいでしょう。

金融機関にとっても、少しずつでも分割払いで返済が得られるなら、自己破産されて全く回収できなくなるのに比べてメリットがあります。

ただし、金融機関に支払計画を受け入れてもらうには、実務上の相場を理解する必要があります。前述の通り、月収から固定費を控除した額の3分の1程度を1ヶ月の返済金額の目安とし、3年から5年(36回〜60回)程度の分割払いで返済しきれない多額の借金がある場合、債権者の同意が得られない可能性があるため、自己破産などの法的整理を検討しなければなりません。

STEP

分割払い契約書を作成する

分割払いについて債権者の同意が得られたら、分割払い契約書を作成します。

分割払い契約書を作成することで、返済額や期間について証拠を残すことができます。また、債務者として誠意を見せ、債権者との信頼関係を再構築するとともに、突然の訴訟提起や強制執行といったリスクを回避することができます。

分割払い契約書のテンプレート

次に、分割払い契約書について、テンプレートをもとに解説します。

分割払い契約書は、分割返済について合意した内容を書面にした「合意書」「覚書」のことです。支払計画を証拠に残すことで将来の紛争を回避するという重要な役割があります。

債権者にとって分割払い契約書は、約束通りの返済を促せるメリットがあります。公正証書にすれば、裁判を経ずに強制執行できる強い効果を有します。一方、債務者にとっても、追加請求や前倒し返済といった過度な責任追及を免れられるメリットがあります。

分割払い契約書の書式の例は、次の通りです。

分割弁済契約書

◯◯◯◯(以下「甲」という)と◯◯◯◯(以下「乙」という)は、甲の乙に対する借入金の返済について次の通り合意した。

第1条 甲は乙に対し、借入金の残元本◯◯万円の支払義務があることを認める。

第2条 甲は乙に対し、前条の金員を下記条件に従って分割し、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う(なお、振込手数料は甲の負担とする)。

⑴ 20XX年XX月から20XX年XX月まで、毎月末限り◯万円
⑵ 20XX年XX月から20XX年XX月まで、毎月末限り◯万円
⑶ 20XX年XX月末日限り、◯万円

以上

第3条 甲が前条の支払いを一度でも怠ったときは、期限の利益を喪失し、乙に対して第1条の金員から既払い額を控除した残額及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から年3%の割合による遅延損害金を直ちに支払う。

第4条 甲及び乙は、本契約書を強制執行認諾文言付きの公正証書にすることに協力する(なお、公正証書作成費用は甲の負担とする)。

第5条 甲は乙に対し、甲の氏名、住所、電話番号、勤務先について正確な情報を提供し、変更のある場合は速やかに連絡するものとする。

第6条 本契約に定めのない事項、または、本契約の各条項の解釈に疑義が生じたときは、甲及び乙は誠意をもって協議をする。

第7条 本契約に関する一切の紛争は、◯◯地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

甲及び乙は、本書面の通り合意が成立した証として、本書面を2通作成し、署名押印の上、各自1通を保管する。

【作成日付・署名押印】

分割払いの合意内容を書面に残しておくことは、将来争いが起こってしまったときに証拠として活用できるという重要な意味があります。

借金を分割払いにしてもらう時の注意点

案内する女性

次に、借金を分割払いにするにあたり、債務者側で注意すべきポイントを解説します。

一括請求を放置してはいけない

一括で返済できないとしても、債権者からの請求を放置してはいけません。

放置すれば、滞納した分だけ利息や遅延損害金が加算され、返済額が増えるおそれがあります。最終的には訴訟を提起され、給与や銀行口座が差し押さえられたりするリスクがあります。さらに、信用情報機関に事故情報として登録され(いわゆるブラックリスト)、新たなローンや借入、クレジットカードの作成などができなくなってしまいます。

無理のない計画かを確認する

分割払いをするにしても、無理のない計画である必要があります。

「自己破産だけはしたくない」と恐れるあまり、無理な支払計画に応じてしまう人もいます。しかし、非現実的な計画では、将来返済が滞り、自分の首を絞めてしまいかねません。順調に収入が継続すれば支払える計画だったとしても、事故や病気、家族の事情なども考慮すべきです。

履行可能であり、ある程度の余裕のある計画でなければ、結局は破産をせざるを得なくなり、「そうであれば最初から破産しておけばよかった」という事態になりかねません。

他社への借り換えは根本解決にならない

他社への借り換えで乗り切ろうとするのは、その場しのぎでしかありません。

例えば、クレジットカードのリボ払いの返済に充てるために別のローン借入をしても、返済期間が長引いて利息の総額が増えるだけで、多重債務に陥る危険が高まってしまいます。借入の審査が通らなくなると、SNSで見かける怪しい個人間融資や闇金などに手を出す人もいますが、法外な利息を請求されるなど、さらに深刻なトラブルに巻き込まれるおそれがあります。

自己破産を選択すべき状況か検討する

支払い計画に無理があると、結果的に自己破産を早めるおそれがあります。そして、最終的に破産が避けられないのであれば、現段階で選択する方が合理的な場合もあります。

前述の通り、実務では、月収から固定費を控除した額の3分の1程度を返済額の目安とし、3年から5年(36回〜60回)の分割払いが一つの目安となります。つまり、この目安を超える金額や、5年以上の分割でなければ完済できない場合、自己破産を検討する必要があります。

保証人の負担を考える

連帯保証人がいる場合、分割払いの交渉を始めると保証人への請求をされる可能性があります。分割払いの交換条件として、新たな保証人を立てるよう求められることもあります。

連帯保証人は、法律上、債務者と同等の重い責任を負います。債務者が支払えない場合はもちろん、債務者への請求をせずに保証人への請求を行うことも可能です。そのため、分割払いを申し出る際は、保証人への不利益が生じないかどうか、慎重に検討する必要があります。

保証契約の基本」の解説

ペナルティが重すぎないか確認する

分割払いの交渉をすると債務者の信用は低下するため、債権者から追加のペナルティを設定されるケースがあります。例えば次のようなものです。

  • 遅延損害金
    滞納時に発生する追加の利息のこと。
  • 期限の利益の喪失条項
    一度でも滞納すると分割払いが無効になり、一括返済を求められる条項。
  • 違約金
    契約違反に対する制裁として一定の金銭支払いを求めるもの。
  • 追加の保証人・担保の提供
    支払いの確実性を高めるため、追加の保証人や担保の提供を求められること。

債権回収を確実にするため、住所や連絡先を変更する際の報告義務を課したり、財産の所在や勤務先を開示させたりするケースもあります。このような要求に応じれば、未払いとなった際に強制執行による財産の差押えが容易になります。

分割払いを認めてもらえても、過度に厳しいペナルティを受け入れると、支払いが滞った際に状況がさらに悪化します。交渉の際は、現実的な条件かどうかも考慮してください。

弁護士に相談して債務整理を検討する

自力での分割交渉に行き詰まったら、速やかに弁護士に相談してください。

弁護士に債務整理を依頼すると、債権者に「受任通知」を送付します。この通知が届いた時点で、債権者からの電話や書面による直接の督促、返済の請求をストップさせることができ、精神的な平穏を取り戻した状態で、落ち着いて生活の立て直しを図ることが可能です。

弁護士は、借金問題の解決実績をもとに、相談者の家計や財産の状況を丁寧にヒアリングし、最適な手続きを提案します。例えば、裁判所を介さずに将来利息のカットを交渉する「任意整理」や、住宅を手放さずに借金を大幅に減額する「個人再生」、全ての支払い義務を免除してもらう「自己破産」など、選択肢は複数あるため、メリット・デメリットを比較する必要があります。

専門知識を持つ弁護士を介することで、個人での交渉では応じてもらえなかった条件での合意を目指せるケースも少なくありません。借金問題は、時間が経つほど遅延損害金が膨らみ、解決の選択肢が狭まってしまうため、先延ばしは禁物です。無理な返済計画で首を絞めてしまう前に、当事務所の無料相談をご活用ください。

【まとめ】借金の分割払い

弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、借金を分割払いにすべきケースとその方法、注意点を解説しました。

借金を一括では返済できない場合、債権者と話し合って分割払いにしてもらうことを検討しましょう。分割払いの合意が実現できれば、自己破産を避けることができ、無理のない範囲で毎月の返済を続け、借金を減らしていくことが可能です。

一方で、不利な条件を安易に受け入れると、長期にわたって返済に苦しむこととなります。「自己破産していた方が良かった」と後悔しないよう、自身の支払い能力を慎重に見極め、無理のない計画を立てることが重要です。また、分割払いの合意が成立したら、分割払い契約書などの書面を作成して証拠を残すことで、将来のトラブルを回避できます。

どうしても借金を返しきれないとき、法的には複数の対処法があります。それぞれの方法のメリット・デメリットを理解し、最適な解決策を選択するために、ぜひ弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 借金を一括で返せないとき、分割払いを実現するには妥当な和解案を提案すべき
  • 分割払いを続けることが、自己破産と比べて合理的な選択肢かを検討する
  • 分割払いについて債権者の承諾を得られたら、必ず分割払い契約書を作成する

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