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駐車場での事故にあった時の対応方法と、過失割合の注意点

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

駐車場内の交通事故

駐車場で事故にあってしまったという法律相談を受けることがあります。「交通事故」というと路上で衝突する事例が多いですが、駐車場など思わぬところでも事故被害にあうことがあります。

駐車場は、「徐行しているはずだから大丈夫」などとリスクを軽視して油断する人が多いため、むしろ事故が起こりやすい危険な場所です。駐車場には、駐車スペース探しに集中して歩行者を見ていない人、スマホに夢中で飛び出してしまう人も多くいます。実際、駐車場での事故で大怪我したり、車両が損傷したりして大きなトラブルにつながっています。

法律的には、駐車場は私有地であるため道路交通法が適用されない可能性があるという難しい問題もあります。

今回の解説では、駐車場の事故でよく問題となる、

  • 駐車場での事故に道路交通法が適用されるかどうか
  • 駐車場での事故直後の対応
  • 駐車場での事故の過失割合

といった駐車場事故の法律知識について、弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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駐車場での事故は、道路交通法が適用されないことがある

駐車場内の交通事故

はじめに、駐車場で起こる事故に関する法律問題を考えるにあたって、駐車場での事故の特徴である「道路交通法が適用されないことがある」という点について解説します。

道路交通法が適用されるかどうかは、不特定多数の人が出入りできるかどうかで判断します。不特定多数の人が出入りするときは道路交通法2条1号に定める「道路」にあたるとされるからです(最高裁昭和44年7月11日判決)。

  • 道路交通法が適用される駐車場
    店舗駐車場やデパートの駐車場のように私有地でも不特定多数の人が出入りできる駐車場や、公道上に設置されたコインパーキングなど
  • 道路交通法が適用されない駐車場
    個人用駐車場、自宅の駐車場、月極駐車場など私有地に設置され、不特定多数の人が出入りできない駐車場

道路交通法が適用されないと、事故直後の警察への報告義務がないなどの違いがあります。しかし「道路交通法が適用されるかどうか」は、争いになれば裁判所が法的に決めるという判断の難しい問題です。また、道路交通法が適用されないからといって当て逃げしてよいわけでもなく、周囲に注意せず過失を犯してよいわけでもありません。

事故について不法行為責任(民法709条)、運行供用者責任(自賠法3条)は、道路交通法が適用されなくても同じです。特に、デパートやショッピングモール、商業施設内などの広い駐車場では、一般道とほとんど変わらない状況の通路もあります。

したがって、今回解説する駐車場での事故に関する法律知識は、道路交通法の適用される駐車場でも、道路交通法の適用されない駐車場でも同様にあてはまります。

駐車場で事故被害にあった直後にすべき対応

駐車場内の交通事故

駐車場の危険を甘く見て、事故被害にあうとは予想もしていなかった人ほど、実際に事故にあってしまうと慌てふためき、どう対応してよいかわからなくなってしまいます。

駐車場の事故では、道路交通法が適用されなくても、相手を助けたり警察を呼んだりなど、やらなければならないことが多いのは一般道での交通事故と同じです。事故直後の大切な対応を平時からきちんと理解し、いざというとき焦らないよう準備してください。

負傷者の救護

事故の相手が負傷してしまったとき、道路交通法上、救護する義務があります。道路交通法の適用されない私有地の駐車場でも、相手がケガをしている人身事故では救護を行うべきです。

相手のケガの状況を確認し、安全な場所に避難させ、すぐに救急車を呼ぶようにしてください。なお、自分も負傷して動けないときは救護を待ちましょう。

危険の除去

駐車場内は常に車が走行しているため、二次被害が生じたり、事故の被害が拡大してしまったりしないよう、事故現場の危険を除去しておく必要があります。

事故車両を安全な場所に移動させたり、ハザードランプや発煙筒で事故があったことを周囲に知らせたりといった対応が必要です。

警察への報告

次に、事故が起こったことについて警察へ報告してください。報告する内容は次のとおりです。

  • 事故の日時
  • 事故の場所
  • 事故の内容
  • 事故による人身被害の有無、程度
  • 事故による物損被害の有無、程度

警察への連絡は、最優先となる負傷者の救護、危険の除去が完了した後に行うようにします。被害者、加害者のいずれでも「警察に言わず、大事にせず解決しよう」といった姿勢はおすすめできません。

きちんと記録に残し、事案に即した適切な解決を求めるようにしてください。

道路交通法の適用される駐車場では法律上の報告義務(道路交通法72条1項後段)を負いますが、道路交通法の適用されない駐車場でも警察には報告すべきです。

不特定多数の出入りのない私有地では道路交通法は適用されませんが、そのようなところに事故にあった相手を放置したとき、過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)などの刑事責任を負うおそれがあります。また、当て逃げしたとき、民事責任(損害賠償責任)が加重されるおそれもあります。

事故状況の証拠収集

事故状況の証拠収集は、事故直後に行わなければなりません。証拠はすぐに散逸してしまい、後からでは間に合わないからです。

事故現場で行っておくべき証拠収集は次のとおりです。

  • 衝突箇所を、様々な角度で撮影する
  • 現場の状況を撮影する
  • タイヤ痕を撮影する
  • 目撃者の氏名、連絡先を聞く

特に、後述するとおり駐車場の事故では過失割合が争いとなることが多く、利害関係のない第三者による目撃証言が役立ちます。

合わせて、後日の示談交渉のため、事故相手の氏名、連絡先、車のナンバーを控えておき、連絡先交換をしておくようにしてください。

保険会社への連絡

任意保険会社に加入しているときは、事故が起こったことについて連絡してください。保険会社への連絡は、事故直後に行う優先度の高い対応がすべて終わってからで間に合います。

保険会社には、事故状況を具体的に伝えてください。

加害者で保険金を支払う側はもちろん、被害者でも、車両保険や示談代行サービス、弁護士費用特約など利用できるサービスが多くあり、事故直後の保険会社の協力は必須です。

医師の診療

駐車場の事故でケガを負ったときは、現場での対応が終了したらできるだけ医師の診断を受け、治療を開始してください。

事故直後に診断を受けることで、事故とケガとの因果関係が証明しやすくなり、将来、治療費・休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害の逸失利益といった損害賠償請求を認めてもらいやすくなります。

駐車場での事故の過失割合

駐車場内の交通事故

駐車場で事故が発生したとき「どちらがどれくらい悪いのか」という責任を決めるため、過失割合を検討する必要があります。過失割合のルールを定めるいわゆる「緑の本」(正式名称「別冊 判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)」)を参考に、駐車場内の過失割合の基本について解説します。

なお、駐車場の事故では「その事故が駐車場のどの場所で起こったか」により過失割合の考え方が変わります。車同士の事故か、車と歩行者の事故かによっても異なります。そのため、過失割合の点では、駐車場での事故は次のとおり分類できます。

以下の解説は、過去の裁判例にもとづく基本的な基準であり、施設の規模、屋内か屋外かなど具体的な事故状況によっても検討が必要です。

特に、不特定多数の出入りしない駐車場の事故は道路交通法が適用されず、路上での交通事故ほど裁判例もないため、基本の基準だけで過失割合を明確に決められるケースはさほど多くありません。

駐車区画に入庫中の車と衝突した事故の過失割合

通路を走行する車と駐車区画に入庫する車の事故は、入庫する車が優先されることから、入庫する車側の過失割合が低くなります。通路を走行する車のほうが入庫中の車に配慮して減速、停車しなければならないからです。

そのため、通路を走行する車と入庫中の車の衝突事故では、過失割合を「8:2(8対2)」とするのが基本です。

入庫中は通路をふさぐ形となり、駐車に集中するため、衝突事故の起きやすい場面です。通路を走行中は空きスペースを探すため前方不注視の義務違反を犯しがちですが、入庫中の車には十分注意しなければなりません。

駐車区画から出庫中の車と衝突した事故の過失割合

通路を走行する車と、駐車区画から出庫する車の事故は、一般道での事故と同様に直進車が優先されることから、通路を走行する車側の過失割合が低くなります。駐車区画から出庫するときは、左右をよく見て飛び出さないよう注意しなければならないからです。

そのため、通路を走行する車と、出庫中の車の衝突事故では、過失割合を「3:7(3対7)」とするのが基本です。

車同士が通路で衝突した事故の過失割合

車両同士が、駐車場内の通路の交差点で出合い頭に衝突した事故では、過失割合を「5:5(5対5)」とするのが基本です。そのため、互いに相手の損害を賠償しなければなりません。

一般道での事故とは異なり、直進車か右左折中といった事情は過失割合に影響しません。過失割合が平等になるのは、駐車場内の通路ではすべての車が高度の徐行義務を負っており、衝突事故が起こってしまった責任はいずれにもあると考えられるからです。一般道のように信号や道幅による優劣もつけづらいです。

ただし、道幅が異なったり、先に交差部分に侵入していたり、一切減速していなかったりなど一方に著しい過失があるときは、過失割合を10%~20%程度の範囲で増減修正します。

車と歩行者が衝突した事故の過失割合

歩車道の区別のない駐車場が多く、歩行者が横切ったり飛び出してきたりすることが容易に想定できます。そのため、車はいつでも停止できる速度で徐行し、十分注意しなければならないとされ、車側の過失が重く評価されます。

そのため、駐車場内で車と歩行者が衝突した事故では、過失割合を「9:1(9対1)」とするのが基本です。このことは、駐車場内の通路でも駐車区画内でも同様です。

駐車場内で車が通ることを想定して歩行者側の注意も必要であり、スマホに気を取られて前方不注視である方もいるなど全く責任がないわけではないため、歩行者にも10%の限度で責任があるとされています。

その他、以下の修正要素により、歩行者側の過失が増減することがあります。

  • 隣接区画での乗降あり(-10%)
  • 歩行者が児童・高齢者(-5%)
  • 歩行者が幼児・身体障碍者(-10%)
  • 車両側の著しい過失・重過失(-10%)
  • 歩行者の急な飛び出し(+10%)

駐車場での事故の示談の流れ

駐車場内の交通事故

駐車場での事故を起こしてしまったときには、話し合いを行い、示談することが必要です。特に、前章で解説したとおり、駐車場内の通路における事故の責任は、過失割合が「5:5(5対5)」であるため、話し合いできちんと解決することが重要です。

そこで次に、駐車場での事故の示談の流れについて解説します。

賠償額を算定する

示談交渉を有利に進めるため、まずは請求すべき賠償額を正確に算定してください。

なお、駐車場での事故被害がそれほど大きくないとしても、その場で少額のお金を受けとり、相手の連絡先も聞かないといった解決をしてはなりません。実は大きな被害を受けていたり、後遺症が残ってしまったり、相手の重過失が明らかになったりといった場合に、その場での解決をしてしまっては損をするからです。

なお、賠償額の基準には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3つがあり、弁護士基準(裁判基準)が最も高額、かつ、妥当なものです。相手や保険会社からの提示額が低いときには、弁護士に相談することがおすすめです。

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示談交渉する

請求すべき賠償額を算定したら、交渉によって解決可能かどうか、示談交渉をします。

交渉の結果、合意に至るときには、合意書・承諾書などの書面を作成し、賠償額を受けとります。

裁判・ADR

示談交渉が決裂したときは、裁判やADRなどの法的手続きに移行します。

駐車場内の事故のうち、事故態様や過失割合に大きな争いがあるなど、対立の激しいケースでは裁判を、損害額の小さな争いに過ぎない場合など紛争を迅速に解決できるケースではADRを活用することがおすすめです。

交通事故被害は浅野総合法律事務所にお任せください!

駐車場内の交通事故

今回は、駐車場で起こった事故被害について、事故直後の対応、過失割合の考え方といった法律知識を弁護士が解説しました。

駐車場内は気が緩みやすく、事故が多発する危険な場所です。駐車場での事故には道路交通法が適用されないものもありますが、一般道での事故と同様、被害者の救護、警察への報告といった義務があります。過失割合についても、過去の裁判例が乏しいことから一概にはいえず、基本的な基準をもとに個別のケースごとに検討せざるをえません。

一方、被害者側になってしまったとき、加害者側と示談交渉や裁判をし、しっかりと主張立証しなければ、賠償金が得られず被害回復が困難になってしまうおそれがあります。

駐車場での事故被害にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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