
弁護士法人浅野総合法律事務所
代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。

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代表弁護士
浅野英之
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。第一東京弁護士会所属(登録番号44844)。
「迅速対応、確かな解決」を理念とし、依頼者が正しいサポートを選ぶための知識を与えることを心がけています。
駐車場の事故では、道路上の交通事故に比べ、過失割合の判断が複雑になりがちです。
駐車スペースからの出庫・入庫時の接触事故、歩行者との衝突など様々なケースがありますが、道路上の交通事故ほど前例がなく、過失割合を類型的に判断できないことがあるからです。
一方で、駐車場では「徐行しているから大丈夫」などとリスクを軽視している人も少なくなく、事故が起こりやすい危険な場所です。駐車場内では道路交通法が適用されず、厳密には「交通事故」と言えないケースもあるため、慎重に検討しなければ大きなトラブルになるおそれがあります。
今回は、駐車場内の事故における過失割合の決まり方や、事故後の適切な対応について、弁護士が詳しく解説します。
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はじめに、駐車場で起こる事故に関する法律問題について、基本を解説します。
駐車場内での事故は、道路上のものに比べて低速での接触が多いものの、状況によっては重大な事故に発展します。また、駐車場は「私有地」であることが多く、厳密には道路交通法が適用されないケースもあるため、責任の割合が不明確になりやすいのが特徴です。
駐車場内でよく起こる事故には、その場所によって次のような例があります。
駐車スペースから出入りする際は事故が発生しやすいです。駐車場では、出庫する車が止まっている車の陰に隠れて視界が悪くなることが多いからです。駐車スペースから車を出す際や、バックで駐車する際などは、通路を走行する車との衝突事故がよく起こります。
駐車場内の通路でも、走行中の車両同士や歩行者との接触事故が起こります。
駐車場でも優先関係があり、主通路(広い通路)を走る車が優先され、狭い通路を走る車両には一時停止が求められます。しかし、「駐車場では徐行しているから大丈夫だろう」といった甘い考えで停止せず、走行中の車両や歩行者に接触するケースがよくあります。
駐車場の出口付近では、道路上の車との接触や巻き込み事故が多発します。こうした場面では、道路上を走行する車が優先されるため、駐車場から出る際はくれぐれも注意が必要です。また、右折・左折して出る際に歩行者を巻き込む危険もあります。
駐車場で発生する事故には、道路交通法が適用されない場合がある点に注意が必要です。
道路交通法が適用されるかどうかは、「不特定多数の人が出入りできるかどうか」で判断されます。道路交通法上の「道路」に含まれるかは、その場所が「一般交通の用に供するその他の場所」(道路交通法2条1号)に該当するかで判断されるところ、不特定多数の人が出入りできる場合、これに該当すると考えられているからです(最高裁昭和44年7月11日判決)。
道路交通法の適用の可否について、次のように区別することができます。
【道路交通法が適用される駐車場】
【道路交通法が適用されない駐車場】
区画ごとに判断され、同一の駐車場内でも、不特定多数が通行する「通路」は道路である一方、特定車両のみが利用できる「駐車区画」は道路でないと判断されるケースもあります。
ただし、道路交通法上の道路に該当しない駐車場でも、事故を起こした場合に不法行為責任(民法709条)、運行供用者責任(自賠法3条)が生じる点は変わりません。また、事故を起こさないように配慮して運転すべき注意義務があるのは当然です。死角に注意して安全確認を徹底し、進行方向や標識などのルールを守る点も、一般の道路と変わりありません。

駐車場での事故では、過失割合がよく争いになります。
過失割合は、どちらにどの程度の事故の責任があるかを判断する基準であり、交通事故の場合、裁判例をもとに整理された「別冊 判例タイムズ」を参考にするのが実務です。しかし、駐車場内の事故では、道路上の交通事故より裁判例の蓄積が少なく、個別の事情をもとに判断されます。
駐車場での事故は、「どの場所で発生したか」「車同士か、車と歩行者の事故か」によって過失割合の考え方が異なり、主に以下のようなパターンに分類できます。
駐車区画に進入しようとする車両と、通路を走行する車が衝突した場合、基本の過失割合は「通路を走行する車:入庫中の車=8対2」となります。通路を走行する車よりも、駐車区画に入庫中の車の方が優先されるため、通路を走行する車の過失が重く評価されるからです。
通路を走行する車は、空きスペース探しに集中して前方不注視の注意義務違反をしがちですが、入庫中の車を発見した場合には配慮して減速・停車しなければなりません。
駐車区画から退出しようとする車両と、通路を走行する車が衝突した場合、基本の過失割合は「通路を走行する車:出庫中の車=3対7」となります。
通路を走行する車と、駐車区画から出庫する車の事故は、公道上の交通事故と同じく「直進車優先」とされます。そのため、通路を走行する車側の過失は低く評価されるのに対し、駐車区画から漫然と出庫し、通路を走行する車の進行を妨げた過失は重く評価されます
したがって、視界の悪い駐車場ほど、駐車区画から出庫するときは、左右をよく見て、慎重に発進しなければなりません。
2台の車両が同一の駐車区画へ進入しようとした事故では、基本的には双方が同等の注意義務を負います。ただし、先行車両の動静を注視しやすい位置にある後行車両には、より高度な注意義務が課されると考えられ、過失割合を「6対4」などと調整した裁判例があります。
駐車中の車両に対し、後退する車両が衝突する事故を「逆突事故」といいます。駐車中の車両に過失はなく、回避不能である状況を考慮し、後退車両の過失を100%と認定する傾向があります。つまり、この場合に過失割合は「10対0」となります。
「過失割合が10対0の交通事故」の解説

駐車場内の通路で車同士が衝突した場合、責任は等しいと考えられます。その結果、基本の過失割合は「5対5」となり、互いに相手の損害を賠償する義務を負います。駐車場内では全ての車に徐行義務があり、双方とも十分な注意を払っていれば事故は回避できたと考えられるからです。
駐車場内の通路では、一般的な道路のように信号や道幅による優劣、右折や左折、直進といった事情で責任の度合いは変わらないことが多いと考えられています。ただし、例外的に、次のような事情があるときは、過失割合が修正されることがあります。
駐車場内でも歩行者優先の原則が適用され、事故が発生した場合には車側の過失が重く評価される結果、「車:歩行者=9対1」が基本的な過失割合とされます。
むしろ、駐車場内では歩道と車道の区別がないことが多く、歩行者が現れるのが通常であるため、歩行者優先の考えが強く適用され、車両側には高度な前方注視義務や徐行義務が課されます。駐車場では、歩行者の横切りや飛び出しを想定しておかなければならず、特に、収容台数の多い大規模な駐車場では、歩行者の過失は低く評価されます。これは、通路上でも駐車区画内でも同様です。
一方で、歩行者側も、駐車場内では車が通るのが当たり前なので、最低限の注意義務があり、一定の過失(1割程度)が認められます。スマホに気を取られて前方不注視であった場合などは修正され、より大きな責任が認められるおそれもあります。その他、以下のような修正要素があります。
駐車場管理者が、施設の設置・保存に関して法的責任を負う場合があります。具体的には、駐車場の設備が、通常備えるべき安全性を欠く場合、占有者または所有者が土地の工作物責任(民法717条)を負います。責任が認められるケースには、入庫用フラップ板が故障して上がったままになっていた事例、立体駐車場の柵の強度が不十分で車両が転落した事例があります。

次に、駐車場内で事故を起こした直後の対応について解説します。
駐車場内の事故には道路交通法が適用されない場合がありますが、相手を助けたり警察を呼んだり、争いとなる場合に備えて証拠を確保したりといった対応は共通します。
事故の相手が負傷していたら、道交法上、救護義務があります。
道交法が適用されない私有地の駐車場でも、ケガをした相手を救護すべきことは当然です。ケガの状況を確認し、安全な場所に避難させ、すぐに救急車を呼びましょう。
駐車場内は常に車が走行しているため、二次被害や損害の拡大を防ぐため、事故現場の危険を除去する必要があります。例えば、車両を安全な場所に移動させる、ハザードランプや発煙筒で事故があったことを周囲に知らせるなどの対応があります。
次に、事故が起こったことを警察に連絡してください。
人身事故の場合は特に、たとえ軽傷でも、警察への届け出が法律上義務付けられています(道路交通法72条)。警察に報告する事項は次の通りです。
負傷者の救護と危険の除去が済んだら最優先で行います。「警察に言わず、内密に解決しよう」という姿勢はかえってトラブルの元となるためおすすめできません。警察に届け出ると、「交通事故証明書」が発行され、記録に残すことができます。
なお、道路交通法が適用されない私有地内の事故では、警察が「民事不介入」を理由に対応してくれないおそれがあります。
しかし、たとえ私有地でも、事故によってケガした相手を放置すれば過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法5条)、故意にぶつけたり当て逃げをしたりすれば不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負います。
過失割合の判断は、事故の証拠の有無に大きく左右されます。
トラブルを避けるため、事故直後に証拠を確保することは、駐車場内でも重要です。以下の証拠は時間が経過した後では入手が難しいため、すぐに着手すべきです。
事故後はできる限り速やかに保険会社に連絡し、事故の詳細を伝えましょう。
保険会社に連絡する際は、事故の日時・場所・状況を正確に知らせ、相手の氏名や連絡先、車両の情報などを伝えてください。加害者はもちろん、被害者でも、車両保険や示談代行、弁護士費用特約など、利用できるサービスが多くあります。
直接自分で加害者と示談交渉をするとトラブルになりやすいので、その場の口頭の約束で解決しようとせず、保険会社を介して手続きを進めるのが安全です。
最後に、駐車場の事故で負ったケガは、現場対応が終了したら、速やかに医師の診断を受け、治療を開始してください。事故から時間が経過すると、事故とケガの因果関係が疑われ、将来の治療費や休業損害、慰謝料などを否定されるおそれがあります。

最後に、駐車場での事故の示談の流れについて解説します。
駐車場で事故を起こした場合も、当事者同士で話し合いが可能であれば、示談によって解決を図ることができます。駐車場内での事故は両者に過失が認められることが多く、お互いに譲歩して妥協できるケースが少なくないからです。
示談交渉を有利に進めるには、請求すべき賠償額を正確に算定することが重要です。
駐車場内の事故による被害が比較的軽微でも、その場で少額の金銭を支払って解決したり、相手の連絡先を聞かずに終わらせたりするのは避けるべきです。実は大きな被害を受けていたり、後遺症が残ったり、相手の重過失が明らかになったりした場合、適切な補償を得られなくなります。
なお、賠償額の基準には、以下の3つがあり、基準によって大きく金額が異なります。
保険会社の提示額が低い場合は、弁護士に相談・依頼することで、より適正な賠償額を得られる可能性があります。
賠償額を算定したら、相手と示談交渉を行い、合意可能かを確認します。
示談交渉では、感情的にならず冷静に、相手の主張に流されないようにしてください。相手が保険会社だと、不当に低い提案をしてくることもあるため、安易に示談に応じてはなりません。示談が成立したら、合意内容を文書に残すことが重要です。合意書や承諾書などを作成し、賠償額や支払い方法を明確にすべきであり、口頭での約束で済ませるのはトラブルの元です。
示談交渉が決裂した場合は、裁判やADR(裁判外紛争解決手続き)を利用します。
駐車場内の事故のうち、事故態様や過失割合に争いがあるなど、対立の激しいケースでは「裁判」、損害額が小さい場合などで紛争を迅速に解決したい場合は「ADR」の活用が適切です。ADRは、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センターなどで無料相談を受けられるため、示談交渉が難航した場合の選択肢として有効です。

今回は、駐車場で発生した事故の対応や過失割合の考え方について解説しました。
駐車場は、運転者も歩行者も気が緩みやすい場所ですが、事故が多発する危険なエリアでもあります。駐車場の事故の中には、道路交通法が適用されず、厳密には「交通事故」ではないケースもありますが、被害者の救護や警察への報告といった義務は、公道上の交通事故と同様に求められます。
一方で、過失割合の判断については、過去の裁判例が乏しく一律の基準がないため、個別の状況に応じて慎重に検討しなければなりません。
駐車場で事故の被害に遭った場合、加害者との示談交渉や裁判を通じて適正な賠償を求めなければなりません。十分な補償を受けるためにも、ぜひ弁護士に相談してください。
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