労働問題

あっせん制度を利用して、労働問題を早期解決する方法【弁護士解説】

2021年8月17日

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

あっせん労働問題解決

あっせんは、労働者側で、労働問題をできるだけ速やかに、かつ、柔軟に解決したいときに利用できる制度です。

労働問題によって被害を受けてしまったとき、労働者側としては労働審判、労働訴訟などで争う手もありますが、労働審判、労働訴訟などの裁判所における手続きは、事実関係の認識が労使間で異なるときなどには、長期間かかることも少なくありません。

あっせんは、裁判に比べて費用も時間も削減でき、あっせんを有効活用すれば、労働トラブルを早期に解決するのに役立ちます。一方、あっせんは、訴訟や労働審判に比べて、裁判所による最終判断を下してもらえるわけではないというデメリットがあります。そのため、解決力の弱い面もあり、あっせんには向かないケースもあります。

今回の解説では、

  • あっせんの種類と内容
  • あっせんで労働問題を解決するまでの流れ
  • あっせんを弁護士に依頼するメリット

といった労使紛争の解決方法に関する法律知識について、労働問題を多く扱う弁護士が解説します。

あっせんとは

あっせん労働問題解決

あっせんは、裁判外紛争解決手続き(ADR)の一種で、あっせん委員が労使の間に入って話し合いを仲介し、和解を目指す制度です。裁判ではない場所で、話し合いを中心として問題解決を図るのが、ADR(Alternative Dispute Resolution)の特徴です。

あっせんは、パワハラや職場いじめ、嫌がらせなど、裁判で白黒つけるのは困難な労働問題について、話し合いで解決するために利用されることが多いです。労働審判や裁判などの手続きよりも、費用や時間がかからないため、労働者にとって利用しやすい制度です。

あっせんの種類

あっせんには、あっせんの行われる団体や組織によって様々な種類があります。この点は、労働審判、労働訴訟が裁判所のみで行われるのと異なります。

よく利用されるあっせんの制度は、労働委員会によるあっせんと、労働局によるあっせんです。どちらの制度を利用すべきかは、労働問題の内容や方針、目指す解決などによって適切な手続きを選択します。

  • 労働委員会によるあっせん
    都道府県労働委員会によるあっせんには、労働組合と会社との集団的労使紛争の調整を行うあっせん手続きと、労働者と会社との個別労使紛争の調整を行うあっせん手続きがあります(なお、東京都では例外的に、個別労使紛争の調整を行うあっせんは、労働委員会ではなく東京都労働相談情報センターで行われています)。
  • 労働局によるあっせん
    労働局によるあっせんは、労働者と会社との個別労使紛争の調整を行うあっせんです。

あっせん制度は、あくまで話し合いで解決する制度であり、勝ち負けを決めるのには適していません。一方で、あっせん委員は、労働問題に一定の法律知識を有しているため、一定の専門的判断にもとづいた解決が可能です。

あっせんのメリット

労働問題の解決のためにあっせんを利用することは、労働者側にとって多くのメリットがあります。

第一に、裁判や労働審判を行うのに比べて、短期的な解決が期待できます。労働問題の裁判は1年以上かかることも少なくなく、労働審判でも平均審理期間は70日程度とされているところ、あっせん手続きは原則として1回で終結します。費用も原則として一切かかりません。

第二に、あっせんは非公開で進めることができます。これに対して、労働審判は非公開ですが、訴訟は公開の法廷で行われます。

最後に、労働審判や裁判など裁判所における法的手続きは、証拠を重視して審理が進みます。これに対して、あっせんは必ずしも証拠が十分でなくても話し合いを中心に進める手続きであり、パワハラや職場いじめなど立証に難のある案件で特に効果を発揮します。

あくまで話し合いを申し出る方法であることから、今後も会社に在職し続けるとき、会社と完全に敵対することを避けることもできます。

あっせんのデメリット

あっせんを利用して労使トラブルを解決する方法には、残念ながらデメリットもあります。特に重要なのが、あっせんは話し合いを前提とした制度であり、労使の対立が激しいケースでは、あっせんだけでは最終的な解決が困難だという点です。

あっせんは、参加が強制ではありません。そのため、労働者側があっせん申請を行っても、会社が労働者側の主張と大きな隔たりがあるとき、あっせんに参加しないおそれがあります。会社側があっせんの不参加を選択すると、あっせん手続きを継続することができず不成立で終了します。

そのため、対立の大きいケースではあっせんだけでは問題解決ができません。この場合には、あらためて労働審判、訴訟など、裁判所で行われる、より強制力の強い制度の利用を検討することとなります。

あっせんは、あくまで話し合いにより労使間の妥協点を探る手続きであるため、会社側が、最初から譲歩の余地が一切ないとか、訴訟で徹底的に争うことを検討しているといったとき、会社側があっせん手続きに参加してこないおそれがあります。

このようなとき、あっせんによる解決はできませんから、訴訟提起や労働審判の申立てなど、より強制力の強い手続きを検討する必要があります。

あっせんと他の制度との違い

あっせん制度を労働問題の解決手段として利用するときには、前章で解説したメリット・デメリットをよく理解して、その他の制度とも比較して、最適な手続きを選択しなければなりません。

そのため、個別労使紛争を解決する手段として、他の選びうる手段と比較することが重要です。個別労使紛争の解決手段として特に重要なのが、労働審判と訴訟です。

あっせんと労働審判の違い

労働審判は、労働審判官(裁判官)と、労使それぞれの委員1名ずつの計3名で構成される「労働審判委員会」が労働問題の判断を担います。

労働審判では、労働問題について労使双方の主張立証を整理した上で、調停手続きによって調整をし、調整が不可能なときには「労働審判」という最終決定を下す手続きです(労使いずれかが2週間以内に異議申立てをすると、訴訟に移行します)。

労働審判は、法律の専門家である裁判官が、最終的な判断を下してくれるという点で、あっせんとは異なります。この点で、あっせんは、最終的な判断を下してくれる第三者は存在せず、話し合いによって合意がまとまらなければそれで終了してしまいます。

そのため、労働審判は、あっせんよりも、解決力の高い制度です。

あっせんと訴訟の違い

訴訟は、裁判官が、労使双方の主張を聞き、主張を基礎づける証拠を審理した上で、裁判所としての最終決定を「判決」として下す手続きです。

訴訟の審理中に、裁判官が機をみて和解を勧めてくることがありますが、基本的には、訴訟は最終的な判断を下してもらうための手続きです。

これに対して、あっせんは、労使双方が互いの主張をあっせん委員に伝える点では変わりありませんが、あっせん委員は、問題解決のための最終判断を下すことはありません。労使いずれかの勝敗を決することもありませんし、金銭の支払を命じることもありません。

あっせんによる労働問題を解決するときの流れ

あっせん労働問題解決

労働紛争に直面した労働者が、あっせんの申請を行い、話し合いによって労働問題を解決するまでの流れについて、弁護士が解説します。

なお、あっせん申請は労働者側から行われることが多いですが、会社側からのあっせん申請、双方からのあっせん申請も制度上認められています。

労働問題の交渉を行う

あっせんを申請するには、労働問題が紛争状態にある必要があります(労使が協調的であり紛争がなければ、あっせん申請はできません)。

そのため、不意打ちであっせん申請を行うのではなく、まずは、労使間で協議、交渉を行い、話し合いによる解決が可能かどうかを検討することが必要です。

ただし、労使の力関係は、雇用している会社側がどうしても強くなってしまい、対等な話し合いの実現が困難なことがあります。内容証明による通知書などを送っても会社から誠実な回答を得られないとき、これ以上交渉を続ける必要はなく、あっせんや、労働審判、訴訟などの解決手段の利用を検討してください。

あっせん申請

交渉が決裂したときは、あっせん申請を行います。あっせんを申請するには、あっせん申請書を作成し、利用する機関(労働委員会もしくは労働局)に提出します。

あっせん申請書の所定の欄が狭くて主張が書ききれないときは、「別紙の通り」と記載し、別紙を添付して事件の経緯や労働者側の主張を詳しく記載することがおすすめです。

あわせて、主張を基礎づける客観的証拠を添付します。労働問題の場合、雇用契約書、就業規則、給与明細などの労働契約の内容を証明する書面、タイムカード、解雇予告通知書、解雇理由書など、問題の内容に応じて適切な証拠を入手し、あっせん申請時に提出するようにしてください。

なお、弁護士をあっせん申請の代理人とするときは代理人許可申請書を提出します。

あっせん開始

あっせん申請がなされると、あっせんの相手方となる会社に対して、労働委員会ないし労働局から通知が送付されます。会社側は通知によりあっせん申請が行われたことを知り、これに参加するか、不参加とするかを所定の期日までに回答します。

会社側があっせん申請に応じる場合には、労働者側の出したあっせん申請書に対して、会社側から答弁書により反論が提出され、あわせて、反論を基礎づける証拠が提出されます。

労使間の対立がそれほど大きくないときには、あっせん申請をしたことをきっかけに再度交渉の場がもたれ、あっせん当日を待たずに話し合いによる和解で解決できることもあります。

あっせん当日

あっせん当日は、労使が交互にあっせん委員から事情聴取を受け、事実についてそれぞれの主張を伝え、調整をしてもらいます。

あっせん当日は、労使双方が同じ場所に同席することはなく、顔を合わせることは基本的にありません。そのため、社長からのパワハラなどの労働問題が火種となっている場合でも、労働者側としても安心してあっせんに臨むことができます。

労使間の主張が食い違うときにも、労働審判や訴訟のように証拠審理や事実認定を厳密に行うことはなく、あっせん委員は勝ち負けを決めてくれるわけではありません。あっせん委員が行うことは、主に、金銭解決を行う場合の金額の調整など、話し合いの調整です。

そのため、あっせんで労働問題を解決しようとするとき、労働者側であっても一定の譲歩が必要となる場合が少なくありません。

あっせん成立による終了

あっせんによる調整の結果、労使の譲歩などがあり合意が成立するときには、あっせん成立により手続きが終了します。

あっせんの話し合いにより合意に達したときには、和解書を作成し、労使双方が署名押印し、労使間の約束としておくことが大切です。特に、あっせん解決後も、その会社で働き続けるとき、同種の労働問題、違法行為が再発しないよう、必ず最終的な解決を書面化することが重要です。

あっせん不成立による終了

あっせんに会社側が参加してくれない場合や、あっせん当日の調整によっても隔たりが大きく和解が困難なとき、あっせんは不成立となり、手続きが終了します。

特に、あっせんは、会社側が弁護士を依頼していないことも多く、労働法についての間違った知識や価値観、思い込みに固執していると、和解が困難なことがあります。

あっせん不成立によって終了するときには、同一の労働問題について再度あっせん申請することはできないため、次は、労働審判や訴訟など、より解決力の高い別の手段による解決を試みることとなります。

あっせんによる労働問題の解決を弁護士に依頼するメリット

あっせん労働問題解決

あっせん制度を利用して労働問題を解決することは、労働者にとって、会社側と完全に敵対することなく、しかしながら社内での話し合いではなかなか調整の難しい労使対立を、スピーディに解決することができるメリットがあります。そして、このことは会社側にとってもメリットであり、対立がそれほど激化する前であれば、会社も応じてくれる可能性が高まります。

一方で、あっせんは、労働局、労働委員会という労働問題の専門的な機関が関わる手続きであり、専門的な用語が使われることがあります。あっせん終了時に交わす和解書が、自分にとって不利なものとなっていないかも検討が必要です。

そのため、あっせんによる解決を目指すにあたり、弁護士を代理人としてつけるメリットがあります。弁護士を依頼することで、書面を代わりに作成してもらったり、あっせん期日に同席してもらったりすることができます。

あっせん時に弁護士を依頼する労働者側のメリットは、次のとおりです。

  • 法律の専門知識を補うことができる
    :あっせんは、話し合いの場として活用されることが多く、労働法の専門的な争点について法律論が交わされることは少ないです。しかし、関与するあっせん委員は労働法の知識豊富な専門家であり、解決に至る方針について、労働法の専門知識を有していたほうが理解が容易となることが少なくありません。労働問題を得意とする弁護士にあっせんの代理人を依頼することで、当事者だけでは不足する法律の専門知識を補うことができます。
  • 書面作成の手間を省くことができる
    :あっせん申請の際に提出するあっせん申請書の作成、証拠の収集・整理にはとても手間がかかります。あっせん申請書には、過不足なく必要な情報を記載し、できるだけわかりやすく、かつ、自分の主張を有利に評価してもらえる記載としなければなりません。労働問題を得意とする弁護士は、あっせんはもちろん、労働審判や訴訟などの法律書面を多く記載しており、依頼することで書面作成の手間を省くことができます。
  • 当日の対応を任せることができる
    :あっせん当日は、あっせん委員の質問に対して、適切な対応を行う必要があります。どのような対応をするかは、あっせんで労働問題を有利に解決できるかどうかに大きく影響します。労働問題を得意とする弁護士は、労働問題に関する多くの交渉を経験しており、会社側の対応を予測し、最良の対応を選択することができます。
  • 和解の相場観を知ることができる
    :あっせんを、和解によって終了するとき、多くの場合には、会社側から労働者側に対して一定の金銭が支払われることがあります。この金銭を「解決金」と呼びます。労働者側に不利とならないようにするためには、労働問題のケースごとに解決金の相場観を知り、相当な解決金を取得することを内容とする和解にする必要があります。また、和解書の中に、労働者側にとって不利な内容が記載されていないかも、締結前にチェックが必要です。

なお、弁護士を依頼するタイミングは、あっせんを決意したときではなく、もっと前でも構いません。むしろ、弁護士を窓口として会社と交渉し、あっせん前に労働問題を解決できる場合も少なくありません。

交渉からあっせんに至る流れは、必ずしも会社と完全に敵対する流れではありません。労働審判や訴訟に進んで徹底的に戦う方向とは異なり、弁護士を間に入れたとしても、労使間の公平をバランスよく調整してもらうことができます。

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あっせん労働問題解決

今回は、労働問題を解決するにあたり、労働者側においてあっせん手続きを利用するメリットやその方法、進め方を弁護士が解説しました。

あっせん手続きをうまく活用すれば、労働問題を円満かつ迅速に解決することができます。しかし、利用方法を誤ったり、利用すべきでないケースに利用する場合には、あっせんにはデメリットもあります。結局、労働審判や訴訟で解決せざるを得ず、時間を無駄に浪費することにもなりかねません。

労働問題にお困りの方で、あっせん手続きの利用を検討している方は、ぜひ一度、当事務所へ法律相談をご依頼ください。

解説の執筆者

弁護士 浅野英之
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院終了。

豊富な知識・経験に基づいた戦略的リーガルサービスを提供します。
専門分野の異なる複数の弁護士がタッグを組むことで、お客様にとって最も有利なサービスを、総合的に提供できることが当事務所の強みです。

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