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降格で減額された差額の支払いを求め、解決金200万円を獲得した事例

担当弁護士

水野博文

  • 相談者
    50代後半・女性・会社役員
  • 事案の概要
    部長職から一般社員へ降格された方からの相談でした。依頼者の手元にあった賃金規程によれば、月額50万円以上の減額(約50%減)になる可能性があったため、役職の地位にあることの確認と差額賃金を求め、労働審判の申立てに進みました。労働審判では、職能資格制度上、降格・減給に関する定めが存在しないことを指摘するとともに、減額幅が大きすぎることから、権利濫用に該当することを主張しました。会社側からは、部長職の適格性を欠くことを理由とした反論がなされたものの、最終的に、差額分の賃金と将来の減額分も考慮し、解決金200万円を支払う内容で和解しました。
  • 本事例は、守秘義務およびプライバシー保護の観点から、個人を特定できる情報を削除するとともに、事案の本質を損なわない範囲で事実関係の一部を変更・抽象化しています。

ご依頼時の状況

依頼者は、部長職から一般社員へ降格され、大幅に賃金を減額されていました。

家族もいるため、降格後の賃金では生活に困窮するおそれがあり、当事務所へ相談しました。減額については、多い月には月額50万円以上、平均すると従前の賃金の約50%が減額される結果となっており、家族を抱える依頼者にとって生活への影響が非常に大きい状況でした。

法律相談では、依頼者が保有していた就業規則や賃金規程などを確認し、会社がどのような賃金・人事制度を採用しているかを検討しました。その結果、降格の有効性を争い、役職上の地位の確認と、従前の賃金との差額を請求する方針としました。依頼者が法的手続きによる解決を希望していたため、速やかに労働審判を申し立てました。

弁護士による対応と解決結果

弁護士による対応

降格の有効性を検討するにあたり、まずは規程類に根拠があるかを精査しました。

本事案では、職能資格制度を前提とした降格・減給の明確な根拠が存在しませんでした。そのため、この点を、就業規則や賃金規程を示して強く主張しました。また、仮に会社に一定の人事権が認められるとしても、本件の降格は減額幅が非常に大きく、権利濫用であると主張しました。

依頼者の勤務先では、就業規則には人事異動や評価を特定の月に全社員に対して行うという定めがあったところ、本件の降格はその時期とは異なるタイミングで行われていました。この点を根拠として、会社自身が定めた人事制度の運用にも反していることを強く指摘しました。

また、月額50万円以上に及ぶ大幅な賃金減額について、依頼者の生活に与える影響を具体的に示し、不利益の程度が著しいことも丁寧に主張しました。

会社側からは、依頼者が部長職としての適格性を欠いており、降格には合理性があるという反論がなされました。

解決結果

労働審判では、裁判官から、会社側に解決案を提示するよう働きかけがありました。

そして、降格前の役職が一定期間を前提としたものであったことや、人事異動・評価の時期に関する就業規則上の定めを踏まえ、少なくとも一定期間の差額賃金を補償すべきであるとの心証が示されました。また、当事務所からは、依頼者が将来も生活を維持できるよう、将来の減額分についても解決金として一定の補償をするよう配慮してほしい旨を求め、条件調整を行いました。

最終的には、労働審判において、会社が和解成立時までの減額分に相当する差額賃金の支払いに加え、将来の賃金減額も考慮した約200万円の解決金を支払う内容で調停成立となりました。

担当弁護士(水野)のコメント

降格を争う場合、会社がどのような人事・賃金制度を採用しているかが重要となります。

降格には、役職を引き下げるものと、資格・等級そのものを引き下げるものがあり、どちらに当たるかによって法的な評価が変わります。実際には厳密に区別できないケースもあるため、就業規則、賃金規程、職務・権限に関する社内規程などを確認し、会社が降格や減給を行う法的な根拠があるかどうかを慎重に検討する必要があります。

本事案では、降格の合理性だけでなく、降格・減給の根拠となる規定の有無や、人事異動を行う時期についての就業規則上の定めにも着目しました。会社自身が定めた制度と実際の運用との食い違いを具体的に指摘できたことが、良い結果につながったと考えています。

また、降格によって賃金が減額される場合には、その減額幅も重要です。本件では平均して約50%という大幅な減額であったため、依頼者やその家族の生活に与える影響を具体的に示し、不利益の大きさを裁判所に伝えることができました。

降格の事案では、同時に配転や懲戒処分などが行われることも少なくなく、降格のみを切り離して検討するのではなく、一連の人事措置を確認し、どの点を中心に争うのが労働者にとって有利かを見極めることが大切です。

参考となる解説