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雇止めの有効性を争い、解決金として約1000万円が支払われた事案

担当弁護士

水野博文

  • 相談者
    20代前半・男性・飲食店スタッフ
  • 事案の概要
    会社から雇止めの通知を受けた時点で相談を受け、撤回を求める(復職を目指す)方針で交渉を受任しました。強く復職を希望したため、当初から訴訟の可能性も考えながら準備を進めました。労働審判でも、会社側から退職前提で解決金の提案があったものの、依頼者が復職を強く望んだため、審判による判断を求めました。審判内容が地位確認を認める内容であったため、会社が異議申立てをして訴訟に移行し、尋問を経てもなお有利な心証が維持され、約1000万円で和解が成立しました。
  • 本事例は、守秘義務およびプライバシー保護の観点から、個人を特定できる情報を削除するとともに、事案の本質を損なわない範囲で事実関係の一部を変更・抽象化しています。

ご依頼時の状況

依頼者は、有期雇用契約で勤務していた会社から雇止めの通知を受けていました。

当事務所への相談時、依頼者は復職を強く望んでいたため、まずは会社に雇止めの具体的な理由を明らかにするよう求めるとともに、雇止めの撤回を求める方針で交渉を開始しました。しかし、交渉段階では、会社側から、雇止めを撤回する意思も金銭で解決する意思もないとの回答がありました。そのため、交渉による解決は難しいと判断し、法的手続きへと移行しました。

本件では、主に、労働契約法19条に基づき、契約更新への合理的な期待が認められるか、雇止めに合理的な理由があるか、また依頼者に就労意思が継続しているかが問題となりました。

弁護士による対応と解決結果

弁護士による対応

会社側の回答を受け、当事務所は速やかに労働審判を申し立てました。

更新への合理的な期待について、これまでの雇用期間、更新回数、更新期間の変化、担当していた業務の性質、会社側の言動などを整理し、契約が今後も更新されると期待することに合理性があったと主張しました。一方で会社からは、依頼者の勤務態度に問題があったとして、多数の問題行動を記載したリストや面談記録が提出されました。これについても、一つひとつ事実を確認し、そもそも事実と異なるもの、事実であっても問題行動とは評価できないものを分けて反論しました。

注意・指導についても、依頼者にヒアリングをした上で、実際には指導されていない事項を明らかにするとともに、指導があった事項については、その後改善していたことや、相当期間が経過した後も契約が更新され続けていたことなどを時系列に沿って主張しました。

就労意思については、依頼者が一時的にアルバイトをしていたものの勤務日数は少なかったため、雇用契約書や給与明細を提出し、引き続き元の会社で働く意思があることを立証しました。

地位確認と未払賃金請求を認める内容の審判が出されたものの、会社が異議を申し立てたため、訴訟へ移行しました。訴訟では、会社側の複数の上司への尋問が予定されたため、陳述書の信用性を精査し、会社に迎合的な態度を示していることを準備書面で反論しました。

解決結果

訴訟では、更新への合理的な期待の有無と、雇止めの合理性・相当性が争点となりました。

尋問前の和解協議では、会社側から約500万円の解決金が提示されましたが、依頼者は依然として復職を強く希望しており、和解には応じずに尋問まで進みました。尋問後、裁判所からは、地位確認請求と未払賃金請求の双方について、依頼者側に有利な心証が示されました。

その心証を前提として和解協議を進めた結果、最終的には会社が依頼者に約1000万円を支払う内容で和解が成立しました。

担当弁護士(水野)のコメント

雇止めを争う場合には、まず、契約更新を期待する合理的な理由の有無を検討します。

本事案では、雇用期間や更新回数だけでなく、更新を重ねるごとに契約期間が長期化していた事情がありました。この事情は、次回の更新だけでなく、将来も継続的に雇用され続けるであろうという期待を生むものであり、労働者側の主張を裏付ける重要なポイントとなりました。

また、会社側から多数の問題行動を指摘されることはよくありますが、内容を一括して受け入れたり、否定したりするのではなく、事実関係をもとに一つひとつ分析し、具体的に反論するのが効果的です。本件でも、事実と異なる事項や、仮に事実であっても雇止めの理由とするほどの問題とは評価できない事項などが混在しており、丁寧に反論したことが結果につながりました。

さらに、勤務態度を理由に雇止めを行う場合、それまで会社がどのような注意・指導を行っていたかも重要です。本件では、明確な書面による注意・指導が十分になされておらず、指導後にも契約更新が行われていたことなどを主張した点が、有利な心証の根拠となっています。

雇止めの事案では、契約期間や更新回数だけで結論が決まるわけではありません。業務内容、更新期間の変化、会社側の言動、注意・指導の経緯などを総合的に確認し、更新への期待と雇止め理由の双方を具体的に検討することが重要です。

参考となる解説