
担当弁護士
久保川真
- 相談者
女性・40代前半・専業主婦 - 事案の概要
夫が子供を連れ去って別居したため、子の引渡しを求めて家庭裁判所に審判と保全処分を申し立てました。しかし、家庭裁判所調査官から、父親の監護状況に特段の問題はないという内容の、依頼者にとって著しく不利な調査報告書が提出されました。当事務所は、その後に依頼を受け、依頼者が専業主婦であったことから子供と過ごす時間が長く、主たる監護者としての役割を担っていたこと、連れ去った夫が依頼者と子供の交流を認めていないことなどを主張しました。最終的に当方の主張が認められ、依頼者を監護者と認める審判が下されました。
- 本事例は、守秘義務およびプライバシー保護の観点から、個人を特定できる情報を削除するとともに、事案の本質を損なわない範囲で事実関係の一部を変更・抽象化しています。
ご依頼時の状況
依頼者と夫との間には当時5歳の息子がいました。
しかし、夫婦間の不和が続いた結果、夫が息子を連れ去って別居し、その後の依頼者からの連絡を拒絶する状態となっていました。依頼者は、連れ去りの翌日に近隣の弁護士に相談しました。
依頼者は、子供を取り戻して自分で育てることを希望し、相談した弁護士のサポートの下、子の引渡し審判、子の監護者の指定審判、審判前の保全処分(いわゆる「3点セット」)を申し立てました。しかし、家庭裁判所の調査官から、父親の監護状況に問題はないとする意見を伝えられ、不利な流れになることが危惧されたため、当事務所に相談に来られました。
当事務所が受任した時点では、既に家庭裁判所調査官から父親の監護状況に問題はないとする報告書が提出され、裁判所の心証が固まりかけている厳しい状況でした。
弁護士による対応と解決結果
弁護士による対応
引渡しの審判では、同居時点で主たる監護者が誰であったかが争点となりました。
当方は、依頼者が専業主婦であったこと、夫が会社員であり日中は職場で勤務していたことなどから、子供と過ごす時間は依頼者の方が長く、主たる監護者と言える状況にあると主張しました。また、夫が子供を連れ去った後、依頼者と子供の面会交流をなかなか認めなかったことが、正当な理由のない面会拒否にあたることも強く主張しました。
調査官の報告書が家庭裁判所では重視される傾向があり、その評価を覆すのは容易ではありません。当事務所は、報告書の作成後に判明した夫による面会拒否などの事情を整理し、報告書の評価が実態を反映していないことを示すことに注力しました。
あわせて、当方が監護者となっても父子の交流は実現できること、どのような方法で交流を実施するかといった点を具体的に提案しました。
一方、依頼者が同居時に、夫に暴言を吐くなど、モラハラに該当する言動があり、その証拠が夫側から提出されたため、不利な判断が下されるリスクも説明せざるを得ませんでした。
解決結果
丁寧に証拠を積み重ねた結果、依頼者を子の監護者に指定するという審判が下されました。
心証が著しく悪化しかねないモラハラの様子の録画が証拠提出されるなど、依頼者にとって不利な事情はあったものの、子の監護者としては依頼者がふさわしいという結論になりました。ただし、裁判所からは、同居中の激しい対立を考慮すると、今後、父親が子供と面会できなくなる可能性があることを懸念し、離婚後の取り決めを十分に行うよう指導がありました。
当事務所としては、離婚の話し合いについても依頼を受け、毎週のビデオ通話または対面での交流を離婚条件として定めました。
担当弁護士(久保川)のコメント

本件のように、配偶者による子供の一方的な連れ去りの事案が生じた場合、解決に向け、できる限り速やかに行動を起こすことが非常に重要です。連れ去った配偶者が監護実績を積み重ねると、監護状況に問題はなかったと判断され、子供を取り返せなくなる危険があるからです。
なお、不適切な連れ去りがあったとしても、相手の同意なく自力で連れ戻そうとすることは「自力救済」として禁止されます。その後の離婚の争いでも、親権や監護権、親子交流(面会交流)などについて判断する際、不利な事情として考慮されるおそれがある上に、悪質なケースでは、未成年者略取・誘拐罪などの犯罪となる危険もあります。
子供の連れ去りに直面したとき、根本的な解決を図るには、早い段階で弁護士に相談して、審判や保全処分といった法的手段を講じることが重要です。
参考となる解説

