相続・遺言

孫と養子縁組する相続対策のメリットとリスク【弁護士解説】

2020年6月3日

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孫と養子縁組相続税対策

相続対策のため、孫と養子縁組をするという方法をお聞きしたことがあるのではないでしょうか。孫だけでなく、息子の嫁などを養子にする方法も検討することがあります。

これらの方法はいずれも、法的にいうと「相続人を増やす」という効果があります。相続人を増やすことによって相続税を軽減する効果があったり、相続争いを起こりづらくしたりするメリットが享受できるからです。

しかし、「孫を養子にする」という相続対策は、あくまでも相続のための建前として行われるものであり、メリットがある一方でリスクも存在します。

そこで今回は、相続問題に関する養子縁組の注意点、特に「孫を養子にする」という相続対策について、弁護士が解説します。

孫と養子縁組する方法

孫と養子縁組する方法には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。

普通養子縁組は、次の要件を満たすときにおこなうことができ、普通養子縁組をすると、養子となった「孫」は「子」という地位を獲得し、法定相続人の1人として取り扱われることとなります。

普通養子縁組の要件

  • 養親が成人していること
  • 養子が養親または養親の存続より年上ではないこと
  • 未成年者を養子とするときは家庭裁判所の許可があること
    (ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合には、家庭裁判所の許可は不要です)
  • 未成年者を養子とするときは配偶者とともに養子縁組をすること
    (ただし、配偶者の嫡出子を養子とする場合には、単独での養子縁組が可能です)
  • 養子や養親に配偶者がいるときは配偶者の同意があること

通常、相続の場面において孫との養子縁組を進めるときには、この普通養子縁組が用いられます。

孫を養子とする場合には、「自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合」にあたるため家庭裁判所の許可は不要です。そして、養子となる者が15歳未満のときは、法定代理人が本人に代わって養子縁組の承諾をすることができます(「代諾」といいます)。

これに対して、特別養子縁組とは、実親の同意もしくは虐待、悪意の遺棄などの事実をもとに、主に養子の福祉の増進を図るため、15歳未満の子と結ぶ養子縁組のことをいいます。

孫と養子縁組すると、相続税が減る

孫と養子縁組相続税対策

孫と養子縁組をする最大のメリットは、相続税が減るということです。

養子縁組とは、民法に規定されているとおり、養子縁組をした養子・養親間において血族間におけるのと同一の親族関係を生じるという効果があります。つまり、養子縁組をした養子は、実子と同様に取り扱われることにより、「子が1人増えた」のと同じ効果があることから、相続税の計算方法に大きく影響を与えるわけです。

これは、相続税の計算方法が、「法定相続人の人数」によって変わるからです。法定相続人とは、民法によって相続人と定められた一定範囲の親族のことをいい、当然ながら「子」は法定相続人になります。

主に影響があるのは、次の4つの点です。

相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」とされています。この相続税の基礎控除額未満の相続財産しかない場合には、相続税はかかりません。

例えば、法定相続人の人数が3人のときは、相続税の基礎控除額は4800万円(3000万円+600万円×3)となります。

孫と養子縁組をする方法により法定相続人が増えることで、相続税の基礎控除額を増やすことができます。

生命保険金の非課税限度額

相続財産のなかに生命保険金が存在するときに、生命保険金の非課税限度額までは相続税が課税されません。生命保険金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」とされています。

例えば、法定相続人の人数が4人のときは、生命保険金の非課税限度額は2000万円(500万円×4)となります。

孫などを養子にすることにより法定相続人を増やすことで、生命保険金の非課税限度額を増額できます。

死亡退職金の非課税限度額

被相続人(お亡くなりになった方)の勤めていた会社で、死亡退職金が発生する場合に、死亡退職金の非課税限度額までは相続税が課税されません。死亡退職金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」です。

孫の養子縁組により法定相続人が増えると、この死亡退職金の非課税限度額も増やすことができ、相続税対策につながります。

相続税の累進税率

相続税額の計算をするときには、相続人が実際に受け取った財産に課税をされるわけではなく、相続財産の金額から基礎控除額を控除し、これに税率をかけて算出します。そして、相続税の税率は、以下のとおり、法定相続分に応ずる取得金額によって、累進的に増加します。

そのため、孫を養子にすることによって法定相続人の数を増やす相続対策は、相続税の税率を緩和することにもつながります。

相続税速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10% -
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

孫と養子縁組する相続対策のデメリット

孫と養子縁組相続税対策

孫と養子縁組をする相続対策に、相続税を軽減したり、相続トラブルを回避したりするメリットがあるとしても、無制限に「すべての孫と養子縁組をしておこう」ということが手放しにお勧めできるわけではありません。

そこで次に、孫と養子縁組する相続対策のデメリットについて弁護士が解説します。

孫養子の相続税は2割増し

法定相続人が増えることによる税効果について解説しましたが、一方で、孫を養子にした場合には、その養子の相続税は2割増しとなることが、デメリットの1つ目です。

せっかく相続税を減らす目的で孫を養子にしたとしても、2割加算によって合計した相続税額が上がってしまっては元も子もありません。

養子縁組の人数制限

デメリットの2つ目は、養子縁組によって相続税を減らす効果を得るには、人数制限があるという点です。

民法では、養子縁組をできる人数に制限はなく、何人でも孫養子をつくることができます。しかし、相続税法上、養子縁組を利用した租税回避行為(脱税行為)の防止のため、相続税の計算において法定相続人の人数に含められる孫養子の数は、次の人数に限定されています。

  • 被相続人に実子がいる場合:孫養子は1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合:孫養子は2人まで

孫と養子縁組をおこなうことによって、上記の人数を超える子がいる場合には、法定相続人の人数は、上記の人数としてカウントし、相続税の計算をすることとなります。

さらに例外として、次のいずれかに該当する養子は実の子として取り扱われるため、相続税の計算上も、人数制限なくすべて法定相続人の人数に含まれます。

  • 被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている子
  • 被相続人の配偶者の実の子で、被相続人の養子となっている子
  • 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていて、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった子
  • 被相続人の実の子、養子または直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子などに代わって相続人となった直系卑属

脱税目的の養子縁組はできない

デメリットというよりは当然のことではありますが、租税回避行為(脱税行為)のみを目的にした養子縁組は、相続税の計算上、養子の数に含めることはできないものとされています。

あからさまに節税のみを目的とした養子縁組は、のちに税務調査がなされたとき否認されるおそれがあり、その場合には相続税を追加で支払わなければなりません。

養子縁組の有効性について争われた最高裁判決(最高裁平成29年1月31日判決)では、「節税の動機と縁組の意思は併存し得る」と指摘し、節税の目的があることだけでは、養子縁組がただちに無効となるわけではないという判断を示しました。

親権問題に影響するおそれ

デメリットの4つ目は、孫を養子にする相続対策によって親権問題に影響するおそれがあることです。

養子縁組は、本来、子ではない人を子として取り扱うという民法の親族法における特別な制度であり、相続対策のためにあるわけではありません。相続税などのお金の問題に目がいくあまりに、子の感情、気持ちへの配慮が行き届かないと、養子縁組をすることとなった孫のためにはならないおそれがあります。

未成年者の孫を養子にすることによって、親と子との間に利益の対立が生まれてしまうとき、通常であれば親権者である親が法定代理人としておこなうことのできる財産上の手続き、相続上の手続きなどについて、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を求めることが必要となる場合があります。

この特別代理人とは、代理人と本人の利害対立がある場合など、代理人が代理権を行使することが不適切な場合に、家庭裁判所の選任する者です。

利害対立を避けるために選任されるのですから、法定相続人以外の第三者を選任する必要があります。

姓が変わることによる影響

デメリットの5つ目は、姓(苗字)が変わってしまうことにより、養子縁組の対象となった孫に悪い影響が及ぶおそれがあることです。

さきほどのデメリットと同様、相続税の節税ばかりを考えて、実際に養子縁組の対象となった孫の気持ちを考えずに進めることによるデメリットです。

養子縁組した孫に遺留分が生じる

デメリットの6つ目は、養子縁組した孫に遺留分が生じることです。遺留分とは、民法に定められた法定相続人のうち、兄弟姉妹以外に認められた、相続できる最低限度の金額のことをいいます。

遺言や遺贈の結果、遺留分を下回る財産しか相続できなかった法定相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することにより、遺留分だけの相続財産を確保することができます。

そして、この遺留分は、養子縁組した孫にも生じます。現在は、相続対策のための養子縁組に賛成していたとしても、将来紛争が生じたとき、養子縁組した孫が持つ遺留分の権利が、円満解決の妨げとなるおそれがあります。

また、養子となって相続を受ける孫と、養子とならずに相続を受けない孫との間で感情的な相続トラブルが生じるおそれがあります。

孫との養子縁組を解消する方法

孫と養子縁組相続税対策

ここまで解説したとおり、相続対策としてよく行われる孫との養子縁組には、メリットとともにデメリットもあるため、一旦はおこなった養子縁組を解消したいと考えることがあります。

普通養子縁組は、養子と養親が同意をして、養子離縁届を提出することによって解消することができます。

しかし、相続トラブルがすでに顕在化してしまっている場合など、片方が離縁を求めても、他方がこれに同意しない場合があります。

離縁の合意ができない場合には、裁判で争うことになりますが、裁判において離縁が認められる理由は、民法において次の3つとされています。

裁判上の離縁が認められる理由

  • 他の一方から悪意で遺棄されたとき
  • 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
  • その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき

離縁の争いがおこる可能性があるときには、養親と養子との間の信頼関係が破壊されてしまっていることについて、客観的な証拠を収集して準備しておきましょう。

このことは、相続の場面においては、暴力や脅迫、相続人としてふさわしくない行為など、相続人から廃除するための事情と重なることが多いです。

相続問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

孫と養子縁組相続税対策

今回は、相続対策としてよく行われることのある、「孫と養子縁組をする」という方法について、そのメリット・デメリットや対応方法、注意点を弁護士が解説しました。

相続対策は、弁護士による法律問題に注意すべきことはもちろんのこと、税理士による相続税の問題もあわせて、総合的に検討しなければならないとても難しい問題です。さらには、法律問題だけでなく、当事者間の感情的な問題をもあわせて解決しなければなりません。

相続問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へ、お気軽に法律相談ください。

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