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孫と養子縁組する相続対策のメリットとリスク【弁護士解説】

解説の執筆者:弁護士 浅野 英之

孫と養子縁組相続税対策

相続対策のため「孫と養子縁組をする」という方法をとることがあります。また、孫だけでなく、息子の嫁などの親族と養子縁組する方法を検討することがあります。

これらの方法はいずれも、法的には「相続人を増やす」という効果があります。相続人を増やすことには相続税を軽減する効果があったり、相続争いを起こりづらくしたりするメリットがあり、相続対策として有効です。そのため、富裕層を中心に、養子縁組を活用した相続対策がよく行われます。

しかし、「孫を養子にする」という相続対策は、あくまでも相続のための建前として行われるものであり、メリットがある一方でリスクも存在します。

今回の解説では、

  • 相続問題に関する養子縁組の注意点
  • 「孫を養子にする」という相続対策のメリットとリスク

といった生前の相続対策について、弁護士が解説します。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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孫と養子縁組する方法

相続の生前対策として、孫と養子縁組する方法には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。

養子縁組の方法のうち、普通養子縁組が最も一般的な方法であり、よく利用されており、相続の場面でも、孫との養子縁組は、この普通養子縁組が用いられるのが通常です。

普通養子縁組

普通養子縁組とは、次の要件を満たすときに行うことのできる養子縁組の方法です。

普通養子縁組の要件

  • 養親が成人していること
  • 養子が養親または養親の尊属より年上ではないこと
  • 未成年者を養子とするときは家庭裁判所の許可があること
    (ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合は家庭裁判所の許可は不要)
  • 未成年者を養子とするときは配偶者とともに養子縁組をすること
    (ただし、配偶者の嫡出子を養子とする場合は単独での養子縁組が可能)
  • 養子や養親に配偶者がいるときは配偶者の同意があること

普通養子縁組をすると、養子となった「孫」は「子」という地位を獲得し、法定相続人の1人として取り扱われます。

孫を養子とするケースは、上記要件のうち「自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合」にあたるため家庭裁判所の許可は不要です。そして、養子となる者が15歳未満のときは、法定代理人が本人に代わって養子縁組の承諾をすることができます(「代諾」といいます)。

特別養子縁組

特別養子縁組は、実親の同意があるときや、虐待、悪意の遺棄などの事実があるときに、主に養子の福祉の増進を図るため、15歳未満の子と結ぶ養子縁組のことです。

特別養子縁組は、特別な状況で、養子となる子の保護のために行われるものなので、相続対策として利用されることはあまりありません。

孫と養子縁組すると、相続税が減る

孫と養子縁組相続税対策

孫と養子縁組をする最大のメリットは、相続税が減るということです。

相続税には、基礎控除額、非課税限度額という考え方があります。いずれも相続税をへらす考え方であり、相続財産が、基礎控除額や非課税限度額を超えないときには、相続税がかかりません。

養子縁組は、養子と養親の間に「血族間と同一の親族関係を生じる」という効果が民法で定められています。つまり、養子縁組をした養子は、実子と同様に取り扱われます。そのため、養子縁組すると「子どもが1人増えた」のと同じ効果があり、相続税の基礎控除額や非課税限度額が増額されます。

孫と養子縁組することで相続税が減る効果が期待できるのは、次の4点です。

相続税の基礎控除額が増える

相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」とされています。相続財産が、この相続税の基礎控除額未満のときには、相続税はかかりません。

  • 相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

孫と養子縁組をする方法により法定相続人が増えることで、相続税の基礎控除額を増やすことができます。

例えば、法定相続人の人数が3人のときは、相続税の基礎控除額は4800万円(3000万円+600万円×3)となります。このとき、孫を養子縁組して法定相続人の人数が4人となると、相続税の基礎控除額が5400万円(3000万円+600万円×4)に増え、これより相続財産が少ないときには相続税はかかりません。

生命保険金の非課税限度額が増える

相続財産のなかに生命保険金が存在するときに、生命保険金の非課税限度額までは相続税が課税されません。生命保険金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」とされています。

  • 生命保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

孫と養子縁組すると、法定相続人が増えるため、この生命保険金の非課税限度額を増額することができ、相続税の節税につながります。

例えば、法定相続人の人数が4人のときは、生命保険金の非課税限度額は2000万円(500万円×4)となります。孫などを養子にして法定相続人を5人に増やすと、生命保険金の非課税限度額は2500万円(500万円×5)に増やすことができます。

死亡退職金の非課税限度額が増える

被相続人(お亡くなりになった方)の勤めていた会社で、死亡退職金が発生する場合に、死亡退職金の非課税限度額までは相続税が課税されません。死亡退職金の非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」です。

  • 死亡退職金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

孫の養子縁組により法定相続人が増えると、この死亡退職金の非課税限度額も増やすことができ、相続税対策につながります。

例えば、法定相続人の人数が3人のときは、退職金の非課税限度額は1500万円(500万円×3)であるところ、孫を養子縁組して法定相続人を4人に増やせば2000万円(500万円×4)以下の退職金には相続税がかかりません。

相続税の累進税率を緩和できる

相続税は、相続財産から基礎控除額を控除し、これに対して税率をかけることで算出します。そして、相続税の税率は、次のとおり、相続人1人が取得する財産額に応じて、累進的に増加します(「累進税率」といいます)。

相続税速算表は、次のとおりに定められています。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

相続税率が、1人の相続人が取得する財産ごとに考えられることから、1人の相続人が取得する財産額が減るほど、相続税の税率は低くなります。

そのため、孫を養子にして法定相続人を増やす相続対策をすると、相続人の数が増えることにより1人あたりの取得する財産額が減るため、適用される相続税の税率を緩和することができます。

孫と養子縁組する相続対策のデメリット

孫と養子縁組相続税対策

孫と養子縁組をする相続対策に、相続税を軽減したり、相続トラブルを回避したりするメリットがあるものの、この方法にはデメリットも存在します。そのため「すべての孫と養子縁組をしておこう」といった対策が手放しにおすすめできるわけではありません。

次に、孫と養子縁組する相続対策のデメリットについて弁護士が解説します。

孫養子の相続税は2割加算となる

孫を養子にすることで法定相続人を増やし、節税効果を生むことができると解説しましたが、一方で、孫を養子にしたとき、その養子の相続税は2割加算となるというデメリットがあります。

せっかく基礎控除額・非課税限度額・累進税率といった点で相続税を減らす目的で孫を養子にしても、一方で2割り加算によって結果的に相続税の合計額が上がってしまうおそれもあります。

ただし、被相続人の実子(養子となる孫の親)が死亡しており、孫が代襲相続(親の代わりに相続すること)するとき、2割り加算はされません。孫を養子にするときは、2割り加算の対象となるケースとならないケースとがあるため、慎重に判断しなければなりません。

相続税法上、養子縁組には人数制限がある

養子縁組によって相続税を減らす効果を得ることには、人数制限があります。

法定相続人が多いほど基礎控除額、非課税限度額があがり相続税が安くなるのですが、このような相続税の節税効果が生まれる養子には、相続税法によって次のような人数制限があります。

  • 被相続人に実子がいる場合:孫養子は1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合:孫養子は2人まで

民法では、養子縁組の人数に制限はなく、何人でも養子縁組できます。しかし、相続税法上、養子縁組を利用した租税回避(脱税行為)の防止のため、相続税の計算において法定相続人の人数に含められる孫養子の数が限定されているのです。

孫を養子に迎えることで、子どもの人数が上記の制限を超えるときは、法定相続人は上記の人数としてカウントし、相続税の計算をすることとなります。

例外として、次のいずれかに該当する養子は、実子として取り扱われるため、相続税の計算上も人数制限なくすべて法定相続人の数に含まれます。

  • 被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている子
  • 被相続人の配偶者の実の子で、被相続人の養子となっている子
  • 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていて、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった子
  • 被相続人の実の子、養子または直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子などに代わって相続人となった直系卑属

脱税目的の養子縁組は、否認されるおそれがある

租税回避(脱税行為)のみを目的にした養子縁組は、相続税の計算上、法定相続人の数に含めることはできないとされています。そのため、あからさまに節税のみを目的とした養子縁組は、税務調査で否認されるおそれがあり、その場合には相続税を追加で支払わなければなりません。

養子縁組の理由は家庭によって様々であり、養子と養親の合意があれば養子縁組自体は可能です。しかし、相続税法上は、相続税の負担を不当に減少させる結果となるような養子縁組は、税務署長により否認されるおそれがあります。否認されると、基礎控除額や非課税限度額の計算上、法定相続人の人数に算入されません。

相続税法63条(相続人の数に算入される養子の数の否認)

第15条第2項各号に掲げる場合において当該各号に定める養子の数を同項の相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格(第19条又は第21条の14から第21条の18までの規定の適用がある場合には、これらの規定により相続税の課税価格とみなされた金額)及び相続税額を計算することができる。

養子縁組の有効性について争われた最高裁判決(最高裁平成29年1月31日判決)では、「節税の動機と縁組の意思は併存し得る」と指摘し、節税の目的があることだけでは、養子縁組がただちに無効となるわけではないという判断を示しました。

ただし、養子縁組自体が有効であっても、相続税の計算上、節税効果があるかどうかは、税務署長の判断に委ねられることとなります。税務署長に否認されれば、相続税の節税効果を得ることはできません。

養子縁組した孫に精神的負担を与える

孫を養子にする相続対策によって、孫が精神的負担を感じてしまうことがあります。

養子縁組は、本来は実子ではないのに子どもとして扱う特別な制度であり、必ずしも相続対策のためにあるわけではありません。相続税などのお金の問題に目がいくあまり、子の感情、気持ちへの配慮が行き届かないと、養子縁組の対象となった孫のためにはならないおそれがあります。

親権者である親は、子どもの法定代理人として財産上の手続きを行うことができます。

しかし、未成年者の孫を養子にすることで、親子の間に利益の対立が生まれてしまうとき、本来法定代理人が行う手続きについて、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を求めることが必要となる場合があります。

特別代理人は、代理人と本人の利害対立がある場合など、代理権の行使が不適切な場合に、家庭裁判所の選任する者です。利害対立を避ける目的であるため、法定相続人以外の第三者を選任する必要があります。

姓が変わることによる影響がある

養子縁組した孫の姓(名字)が変わってしまうこともデメリットとなります。孫が幼い場合など、姓が変わることで学校でいじめられたり生活に支障が出たりなどの悪い影響が及ぶおそれがあります。

相続税の節税ばかりを考えて、実際に養子縁組の対象となった孫の気持ちを考えずに進めることには大きなリスクがあるということです。

養子縁組した孫が相続トラブルの原因となる

養子縁組した孫には遺留分が生じます。そしてこのことで、養子縁組した孫が相続トラブルを生むおそれがあります。

遺留分とは、民法に定められた法定相続人(兄弟姉妹以外)に認められた、相続できる最低限度の財産のことをいいます。遺言や遺贈により、遺留分を下回る財産しか相続できなかった法定相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することで、最低限の相続財産を確保できます。

この遺留分は、養子縁組した孫にも生じます。現在は、相続対策のための養子縁組に賛成していたとしても、将来紛争が生じたとき、養子縁組した孫が持つ遺留分の権利が、円満解決の妨げとなるおそれがあります。

また、養子となって相続を受ける孫と、養子とならずに相続を受けない孫との間で感情的な相続トラブルが生じるおそれがあります。

孫との養子縁組を解消する方法

孫と養子縁組相続税対策

以上のとおり、相続対策としてよく行われる孫と養子縁組する方法には、メリットとともにデメリットもあります。そのため、一度行った養子縁組を解消しようと考えることがあります。

普通養子縁組であれば、養子と養親の同意により、養子離縁届を提出することで解消できます。

しかし、相続トラブルが既に顕在化してしまったとき、片方(例えば養親)が離縁を求めても他方(例えば養子)が同意しないおそれがあります。離縁の合意ができないときには裁判で争うこととなります。

裁判において離縁が認められる理由は、民法804条で次の3つと定めれれています。

裁判上の離縁が認められる理由

  • 他の一方から悪意で遺棄されたとき
  • 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
  • その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき

以上のとおり、要件が限定されていることから、離縁の争いがおこる可能性があるときは、養親と養子との間の信頼関係が破壊されてしまったことについて、客観的な証拠を収集しておくことが大切です。

例えば、暴力や脅迫、相続人としてふさわしくない行為があったなどの事実を主張立証することが考えられますが、このことは相続の場面では、相続人から廃除するための事情とも重なります。

相続問題は浅野総合法律事務所にお任せください!

孫と養子縁組相続税対策

今回は、相続対策としてよく行われることのある「孫と養子縁組をする」という方法について、そのメリット・デメリットや対応方法、注意点を弁護士が解説しました。

孫と養子縁組をして相続人を増やすことによって、相続税の基礎控除を増やし、生命保険や死亡退職金の非課税枠を増やすことができ、相続税の節税効果が期待できます。また、早めに生前対策を進めておくことで、家族が円満に相続に納得してくれる可能性が高まります。

相続対策は、弁護士による法律問題とともに、背税理士による相続税の問題もあわせて、総合的に検討すべきとても難しい問題です。ご家庭の状況にあわせた最適な解決方針を考えなければ、相続トラブルに発展するおそれもあります。

相続問題にお悩みの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。

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