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墓じまいとは?手続の流れ、かかる費用、法律トラブル【弁護士解説】

墓じまいは、大切な先祖の眠る墓から遺骨を取り出して、現在の生活に最適な場所へ、お墓を引越しすることです。

「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)によれば、約50年後の2065年には、日本の人口は1億人を割る見通しになっています。一方で、離婚率は上がり、未婚、晩婚、少子高齢化も進んでいますから、家族でお墓を守っていくのが難しくなっている世帯は、今後も増えると予想されています。

子々孫々と受け継いできたお墓を、今後も変わらず守れればよいのですが、「お墓が遠い」、「お墓を守る家族がいない」といった理由で、先祖の供養が十分にできない家庭も少なくありません。墓じまいは、少子高齢化が進む現代において、新たな供養のかたちとして注目を集めています。

一方で、墓じまいのためには、法的な手続きを踏まなければならず、費用もかかります。墓じまいをきっかけに、悪質な業者にだまされたり、高価なお金を払ってしまったりといったトラブルも起こっており、法律知識をしらなければだまされてしまうおそれがあります。

今回は、墓じまいをする手続きの流れや費用、墓じまいで起こりがちな法的トラブルと解決法といった法律知識について、弁護士が解説します。

この解説でわかること
  • 墓じまいは、現代の少子高齢化、未婚、晩婚化などを理由に増加している
  • 墓じまいでは、離檀の申入れをし、改葬許可など行政の手続きを踏まなければならない
  • 高額の離檀料を要求されたり、悪質な業者にだまされたとき、弁護士に交渉してもらえる
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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

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墓じまいとは

はてな

墓じまいとは、大切な先祖が眠るお墓から遺骨を取り出して、最適な場所へと引越しすることです。具体的には、現在のお花を撤去し、遺骨を別の墓所に改葬したり、永代供養墓や納骨堂に収めたり、散骨など別の供養方法に切り替えたりします。

お墓を「しまう」というイメージから「墓じまい」と呼ばれます。

墓じまいによって、残された家族の負担を減らすとともに、より供養しやすい環境を作り出すことができます。墓じまいをせず、供養が十分でないままお墓を放置してしまうと、無縁墓となってしまうおそれがあります。引き継ぐ人のいないまま放置された無縁墓が増えており、不法投棄される墓石も増えています。

墓じまいを考える理由
墓じまいを考える理由

墓じまいと聞くと、「代々守ってきたお墓を捨てるようで、バチあたりだ」と罪悪感を抱かれる方もいます。しかし、そのまま放置して無縁墓としてしまうのではなく、墓じまいや改葬をして、無理なく供養を続けていくことのほうが大切です。

今回解説するとおり、墓じまいには法律などで決められた手続きを踏む必要があり、墓石の撤去、業者の選定、新しいお墓の契約などに費用がかかります。

墓じまいが増えている理由

墓じまいが注目されるようになった理由は多くありますが、現代における変化が大きく影響しています。時代が変わるにつれて、先祖の供養についても新しい時代に合わせた方式、態様が望まれるようになった結果、墓じまいが増加しています。

お墓を継ぐ人がいなかったり、実家を離れてお墓が遠くてなかなか墓参りにいけなかったりといった場合、お墓が手入れされずに無縁墓として放置されてしまうことは残念なことです。

【理由1】少子高齢化、未婚、晩婚化

「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)によれば、約50年後の2065年には、日本の人口は1億人を割る見通しが示され、日本の総人口は着実に減少傾向をたどっています。その一方で、国内で生まれる子どもの数は年々減少しており、死亡数は増えつづけています。

生涯未婚率も増加し続けており、未婚化、晩婚化も進んでいます。生涯独身や子どもをつくらないことを選択する夫婦、核家族など、家族の多様化が進み、お墓を継ぐ人が少なくなっています。

このような日本における変化から、お墓を継ぐ人がいない場合には、やむを得ず墓じまいをせざるを得ないことがあります。結婚をしたとしても、夫婦で両家の墓を守っていくことが難しいというケースもあります。

【理由2】経済的な問題

お墓を維持していくためには、霊園や寺院に対して管理料を支払うことが一般的です。また、遠方からお墓参りにいくためにも費用がかかります。

そのため、経済的な理由で、やむを得ず墓じまいをせざるを得ないことがあります。このような場合には、納骨堂での供養や散骨など、継続的な費用が抑えられる方法を選択するケースが多くありますが、墓じまい自体にも一定の費用がかかることに注意が必要です。

【理由3】距離的な問題

実家から離れて都心部で暮らす人の中には、ご先祖を思う気持ちはあるものの、毎年実家に帰って供養をするのは難しいという人もいます。距離的な問題で墓じまいをする場合、現在の住居地に近い墓所に改葬したり、永代供養墓へ納骨したりといった方法をとることがあります。

結婚、就職、転勤、退職などのライフスタイルの変化にともない、距離的にお墓参りを頻繁に行うことが難しい人も多いです。人口の減少傾向に歯止めがかからない一方で、都市部への人口集中と地方の過疎化が進行しています。

墓じまいは、後ろ向きなイメージばかりではなく、より供養しやすい環境を作り、現代にあった新たな供養のかたちを模索していくという、前向きな意味もあるのです。

墓じまいの手続きの流れ

矢印

墓じまいを行うための手続きの一般的な流れについて、弁護士が解説します。墓じまいの際に行う手続きの中には、改葬許可申請手続きのように法律上必要となるものと、魂抜き法要のように慣習的に行われているものとがあります。

なお、墓じまいをする時期に決まりはありませんが、お盆やお彼岸など、お墓参りの多い時期は避けた方が無難です。

離壇の申入れ

墓じまいをすることを決めたら、まずは、現在の墓所に対して、離壇の申入れをします。離檀の申入れをするときは、「距離的に、お墓参りが難しい」、「子どもがいないため、お墓を継いでいくことができない」といった具体的な理由を伝えると、角が立たず、おすすめです。

お墓には管理者がいますので、まずは管理者に、墓じまいの意向を伝えます。お寺の檀家になっている場合には、墓じまいをするとともに檀家もやめることとなりますので、今までのお礼をきちんと伝えましょう。

離壇のときに支払う離壇料の相場は、法事1回分のお布施程度として、10万円から20万円程度が一般的です。離壇の際に、高額の離壇料を請求されて法的トラブルに発展するおそれのある場合には、弁護士にご相談ください。

別の墓所へ改葬する場合には、改葬許可証を受領します。

新しい墓所の確保、現地調査

次に、新しい墓所を確保し、現地調査します。お墓を移すためには、あらかじめ墓所と墓石を確保する必要があるからです。

墓じまいで大切なことは、墓じまいの後にどのようにご先祖を供養していくかを決めておくことです。墓じまいをした後の新しい墓所には、一般墓への改葬以外に、次のような選択肢があります。自身やご家族、特にこれから墓を継いでいく子孫の状況に応じて選択するようにします。

  • 納骨堂
    納骨堂とは、その名の通り骨を納めるお堂のことです。一般の墓所よりも場所をとらないため、比較的交通の便のよい都市部にもあることが特徴です。多くの方の納骨を行うため、ロッカー式や自動搬送式、タワー式など、様々な形式の納骨堂が存在します。
  • 永代供養墓
    永代供養墓とは、申込者が無くなった後でも、永代にわたって管理してくれるお墓のことです。永代供養墓には、合葬タイプと個葬タイプがあります。
  • 樹木葬
    樹木奏とは、墓所に遺骨を埋葬し、墓標として樹木を立てることで、より自然と共生することを目指した墓所のことです。
  • 散骨
    散骨とは、海や山などの自然に骨をまくことによって供養をすることです。
  • 手元供養
    手元供養とは、墓じまいをした後、ご遺骨を自宅で安置することです。

新しいお墓を決めてしまう前に、必ず現地調査をし、業者の見積もりをとるようにします。合わせて、改葬の手続きのために、受入証明証、埋葬証明証を取得します。

お墓が遠くにある場合、墓じまいと改葬以外に、分骨をする方法もあります。分骨とは、お墓に納骨されている遺骨を分ける方法で、現在では様々な分骨グッズが販売されています。なお、分骨に際しても、役所への確認や申請が必要となる場合があります。

改葬許可申請

お墓に関するルールを定める法律に、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)があります。

墓じまいの際の手続きについても、墓埋法の定めにしたがって進めなければなりません。

お墓に埋葬した遺体や遺骨を別のお墓に移動させることは、その全部を他のお墓に移動させることを「改葬」、その一部を異動させることを「分骨」といい、いずれの場合も、墓埋法にしたがった手続きをとらなければなりません。具体的には国民の宗教的感情と公衆衛生の観点から、市町村長の許可が必要であると定められています(墓埋法5条1項)。

改葬許可申請の際には、申請書に以下の事項を記載して、遺骨が現在ある市町村長に提出します(墓埋法施行規則2条1項)。

  • 死亡者の本籍、住所、氏名及び性別
  • 死亡年月日
  • 埋葬又は火葬の場所
  • 埋葬又は火葬の年月日
  • 改葬の理由
  • 改葬の場所
  • 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄及び墓地使用者又は焼骨収蔵委託者との関係

そして、上記の申請書には、以下の資料を添付する必要があります(墓埋法施行規則2条2項)。

  • 墓地又は納骨堂の管理者の作成した埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面
  • 墓地使用者等以外の者にあっては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本
  • その他市町村長が特に必要と認める書類

なお、改葬の場所を記載しなければならない関係上、申請の際には移転先のお墓をあらかじめ用意し、墓地の使用許可証、受入許可証を取得しておくことが必要です。

墓じまい、改葬には、お墓がある市区町村の役所への申請が必要となります。申請方法は市区町村によって異なりますが、行政書士などの専門家に申請書類の作成、申請手続きの代行を依頼することもできます。

魂抜き法要

遺骨を取り出す前に、「魂抜き法要」を行うことがあります。魂抜きとは、墓石に宿るご先祖の魂を、墓石を除去する際に抜いて、墓石をただの石に戻す法要です。魂抜き法要は、地域や宗派によって、閉眼供養、性根抜き、芯抜きなどとも呼ばれます。

墓じまいにあたって魂抜き法要はかならずしなければならないわけではありませんが、ご先祖の供養のための儀式ですので、多くの方が行うようです。

魂抜き法要の際には、僧侶に対してお布施を払うのが通常です。お布施の相場は、1万円~5万円程度が一般的です。

遺骨の取り出し、墓石の解体・撤去

法要を行った後、遺骨を取り出して移動させ、墓石を解体・撤去します。お墓を購入するときに費用を支払っていても、お墓の敷地は寺や霊園から借りていた形になっていますので、更地にして返還をする契約内容となっているケースが多いです。

解体・撤去にかかる費用は、事前に石材店に見積もりをとっておきましょう。解体・撤去してしまう墓石の一部を、プレート状にして思い出にとっておくサービスもあります。

遺骨の移動は、手で運ぶことが難しい場合には、ゆうパックなどを利用することもできます。

新しい墓所への納骨

移転後の新しい墓所へ、あらためて納骨を行います。

納骨の際には「納骨式の法要」を行います。このとき、僧侶にお布施を払うのが通常です。お布施の相場は、10万円~20万円程度が一般的です。

墓じまいにかかる費用

ここまで解説したとおり、墓じまいには、さまざまな手続きが必要となり、多くの手間と費用がかかります。また、改葬許可申請をはじめとした手続きを専門家に依頼したり、墓石を新たに購入したりといった場合には、更に多くの費用がかかることとなります。そのため、墓じまいには、100万円以上の費用が必要となることを少なくありません。

墓じまいにかかる主な費用をまとめると、次のようになります。

費目墓じまいの費用
離檀料10万円〜20万円
新しい墓所・墓石の確保石材店、霊園、寺院等の見積もり
改葬許可申請手続の代行10万円〜30万円
お布施(魂抜き法要・納骨法要)10万円〜30万円

墓じまいには多くの費用がかかる上、今後、誰が、どのようにご先祖の供養を行っていくのかにもかかわる重大な問題であるため、ご家族、ご親族との十分なお話し合いが必要です。

墓じまいに関する法的トラブルと解決策

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

最後に、墓じまいをする際に生じやすい法的トラブルと、その解決策について、弁護士が解説します。

墓じまいには相当高額なお金がかかることもあるため、金銭トラブルが生じやすいタイミングです。そして、悪徳な業者にぼったくられて損をしてしまわないためにも、よくあるトラブルと解決策を理解して進めるようにしてください。

悪質な業者によるトラブル

墓じまいで起こる法的トラブルには、悪質な業者と契約してしまうことによるケースがあります。

悪質な業者を避けるために、業者選びのポイントを理解しておかなければなりません。まずは見積書を出してもらうようにして、どこまでの作業を、いくらで行ってもらえるのかを比較して検討するのがおすすめです。

また、優良な業者を選ぶためには、契約書を事前に見せてもらい、弁護士に契約書チェックを依頼するのも大切です。墓じまいという重要な業務において契約書を締結しない業者は避けた方が良いでしょう。なお、墓地によっては、石材店などの業者があらかじめ指定されていることがあります。

高額な離壇費用の請求

墓じまいをするとき、お寺の檀家になっている場合には、あわせて離壇の申入れをすることとなりますが、この際、お寺から離壇費用を請求される例があります。お寺との離壇を巡るトラブルは少なくありません。

高額な離壇費用を請求されてしまった場合には、自分ひとりで解決しようとせず、ぜひ弁護士にご相談ください。弁護士であれば、法律問題について専門的な知識と経験を有しており、本人に代わって交渉を行うことができます。

なお、弁護士資格を持つ者以外が、法的紛争の代理をすることは、弁護士法によって禁止されています。

親族間の不和と相続問題

弁護士浅野英之
弁護士浅野英之

ご先祖の供養は、あなたにとって重要であるのと同様に、他のご家族、ご親族にとっても重要な問題です。

そのため、ご家族、ご親族間で、墓じまいと改葬についての方針が一致しない場合、トラブルが激化することが予想されます。すでにご両親がお亡くなりになっている場合には、その意向を聞いて決めることもできません。

また、ご家族、ご親族間のトラブルは、相続問題とも関係してくることがあります。お墓の世話を行い、ご先祖の供養をすることが、財産の配分と密接にかかわってくることがあるからです。そのため墓じまいを巡るご家族間、ご親族間のトラブルは、相続分野、遺言分野を多く取り扱う弁護士のアドバイスを受けるのがおすすめです。

まとめ

今回は、墓じまいについて、墓じまいの手続きの流れやかかる費用、法的トラブルの対処法などを、法律の専門家である弁護士の立場から解説しました。

墓じまいや改葬は、家族の負担を少なくして、ご先祖の供養をきちんと行うために重要な手続きであり、年々その件数は増加しています。相続問題の一部としても、お墓の問題はよく争点となるため、きちんと準備しておいてください。

当事務所のサポート

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

墓じまい、改葬をはじめ、相続問題にお悩みの方は、ぜひ、弁護士法人浅野総合法律事務所へご相談ください。

弁護士が、墓じまいを最後まで責任をもってサポートすることができます。また、面倒な改葬許可申請の手続きに関するアドバイスを行い、お寺との話し合いを代理したり、申請書類の作成についても代行して行うことができます。

相続問題のよくある質問

墓じまいとは、どのようなものですか?

墓じまいとは、現在の先祖が眠る墓から、別の墓やその他の埋葬へ、供養の方法を変更することです。少子高齢化が進み人口が減少し、事実上供養をつづけるのが難しい家庭で、墓じまいがよく検討されています。もっと詳しく知りたい方は「墓じまいが増えている理由」をご覧ください。

墓じまいで起こる法律トラブルには、どんな例がありますか?

墓じまいは、法的手続きの手間と、費用のかかるものであるため、法律トラブルの起きやすいタイミングです。よくある例は、現在の埋葬先から多額の離檀料を請求されたり、悪質な業者と契約してしまって無駄な費用を払わされてしまったりといったケースです。詳しくは「墓じまいに関する法的トラブルと解決策」をご覧ください。

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